草むらのフィールドサイン

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夕方の犬の散歩も、今日は慌ただしい。
ま、その理由はともかく、駆け足で散歩していると田んぼの畦で野焼きした跡に遭遇した。
まだ火が残っているようで煙がくすぶっている。
焼け残ったセイタカアワダチソウの枯れ茎に、モズのはやにえが立てられていた。

 はやにえはツチイナゴだったが、つい先程まで生きていたのだろうと思えるほど、新鮮である。体のどこにも損傷は無い。突き刺されたところ以外は。

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どうやら野焼きのせいで草むらからいぶり出されたツチイナゴが、目ざといモズに捕らえられたということだろうか。その狩りはもしかしたらほんの先程の出来事ではなかったろうか。
私が見つけたのは、はやにえのみだが、そこにはついさっきまでモズがいたはず。
こうして生き物が残した生活の痕跡を、フィールドサインとも呼んでいるが、これは日本語では何か適当な言葉がないものであろうか?ちょっと、勉強して考えてみたい。

そのフィールドサイン。散歩コースの終了間際にもう一つ見つけた。
カヤネズミの古巣だ。

W2165177.jpgカヤネズミの古巣はうちの敷地内でも見つかっているが、夏の繁殖期には見た事が無い。
かつて東京都町田市の小野路で、繁殖中のカヤネズミの巣を撮影したことがある。

巣の中には子どもがいて、親が出て行く姿を見た。そこで親が戻ってくるまで待っていたのだが、やがて親ではなく、なんと巣を察知したシマヘビがススキ原を泳ぐようにしてやって来たのであった。
このとき私はたいへん迷った。
シマヘビを撃退すべきか、あるいは静観すべきか、、、と。

しばらく考えたのち、私は何も手出しをしないことに決めた。
自分の無知さかげんを少しは自覚していたからだ。

シマヘビは躊躇することなく、正確にカヤネズミの巣へと到達し、頭を入り口から突っ込むと巣をグルグル巻きにした。そしてその数秒後には「チイー!」と仔ネズミの悲鳴が弱々しく巣内から漏れてきた。最期の叫びだった。

無知なだけに私も居たたまれない気持ちとなったが、シマヘビが残酷なわけでもなく、ただ日常の生活に過ぎなかったわけだ。

カヤネズミの巣は、たいへん頑丈に出来ている。一度はその巣作りの様子を見てみたいものだと思う。
カヤネズミの生態については、1988年に出版された「カヤ原の空中建築家/カヤネズミの四季」(白石哲 著/白石久美子 絵)が詳しい。
本書は文研出版の科学の読み物シリーズの一冊で、対象は小学中級以上だが、内容はかなり専門的で濃い。ほ乳類の生態を詳しく綴った啓蒙書が数少ない中で、本書はまさにカヤネズミ入門書と言える。
著者の研究したフィールドは福岡県の久留米市で、筑後川の河原が舞台となっている。

本書はずいぶん昔に、神田の書泉グランデで買い求めたと記憶している。

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