月一とはいかないまでも、年に数回は宮崎市内に出向く。
用事はさまざまだが、その折にできるだけ立ち寄りたい場所がある。
宮崎県総合博物館がその一つ。
昨年の12月26日にも用事のついでに子供と見学してきた。
用事はさまざまだが、その折にできるだけ立ち寄りたい場所がある。
宮崎県総合博物館がその一つ。
昨年の12月26日にも用事のついでに子供と見学してきた。
私が通っていた松山の小学校には、道を挟んで大きな消防署があって、その裏に旧愛媛県立博物館があった。たいへん古い話だから、今ではまったく状況が違うことをまずお断りしておこう。
ともかくその当時(昭和30年後半)の博物館は、ナフタリン臭に満ちたいかにも怪しい雰囲気の建物であった。上の写真にあるような近代的デザインで見応えあるディスプレイとはまったく異なる。
旧愛媛県立博物館は学校のそばだから下校時によく遊びに行ったものだ。しかし、小学生のころは一人で訪れるのが怖いくらいになんだか不気味であったから、必ず友達を伴っ て入館していた。ガラス展示ケースが所狭しと並べてある大部屋は、まるで迷路のようであり、ふと角を曲がれば目の前に巨大なライオンの剥製が現れたりした。
そのころの私は昆虫標本にはあまり興味が無く、貝殻や水晶などの標本展示にかじりつくように眺めていたと思う。貝の化石や水晶は欲しくてしょうがなかったように憶えている。
さて、昨年の暮れに訪れた宮崎県総合博物館の2階特別展示室では、日本自然科学写真協会(SSP)の写真展『自然の中の不思議を知る』が、開催されていた。この写真展は今月の18日まで。
会場はとても広くてびっくりした。
入り口から入って最初の壁には「九州ゆかりの写真家」として、九州在住の方の作品がまとめてあった。このコーナーの写真だけには顔写真とプロフィールなども掲示されていた。
私も以前は日本自然科学写真協会の会員であったが、宮崎へ移転したおりに退会した。
じつは退会したのはこの会だけでなく、CanonのCPS会員など他にもいくつかあって、その最大の理由は経済的なことだった。
東京から宮崎への引っ越しは、まさに人生一大事の出来事。それに伴っての支出はこれまでに経験のない額であり、経費の綿密な見直しを余儀なくされたわけである。ほんとにびっくり。
昆虫写真家という肩書きでいろんな場所に顔を出すと、「たいへんだねえ。食べて行けないでしょう?」と同情とも憐れみともとれる言葉をかけてもらうことが多かった。それは少し昔のことだが、今の自分もその当時とさほど変わっていないように思う。年収は同年代のサラリーマンよりかはるかに低いからだ。
これは新開孝という一個人の事情であって、他の写真家の方のことはまったく知らないので、もしもこれから昆虫写真家になりたい、という希望を抱いている方がこのブログを読まれていたとしたら、あまり参考にはならないと思う。が、いづれにせよ昆虫に限らず自然写真家のプロとして生きて行くのがいかにたいへんかは、それなりの覚悟を決める必要があることは言うまでもないだろう。
これまでの武蔵野編「昆虫ある記」でも、私は仕事の楽しい部分しか書き綴ってこなかったように思う。それで良いのかもしれないが、世間のことを良く理解している方なら、見えてこない裏側の事情なども薄々は想像できているはずだ。
低収入にも関わらず、ではなぜ私はこうして昆虫写真家稼業を続けていられるのか?
その答えは、嫁さんの存在である。嫁さんの経済的支え無くしては今日の自分は無かったし、今後もそうかもしれない。このことは、いづれ書いておくべきだとずっと思っていた。
昆虫写真家のなりふりは、外側から見ているぶんにはたいへん羨ましい姿に映るようだ。それはそうかもしれない。会社や上司の管理下にあるわけでなく、自由に仕事ができる。好きなことのかなりのことが職業となっている。
が、しかし、もしも私に対して「どうしたらプロの昆虫写真家になれますか?」と問うならば、それもしつこく問いただすなら、渋々ながら一つお答えしよう。
「昆虫に理解のある、そして勤勉な嫁さんをもらいなさい!ただし、あなたにも家事一切、育児までがこなせる能力が必要だよ。」と。
しつこくお断りしておくが、これはあくまでも新開個人の意見であるからして、他の写真家の方々からはまったく違う意見が戻ってくるはず。
「止めておけ!」という厳しい意見のほうが現実的であり、責任ある発言だとも思える。ほんとうは私もそういう簡潔な答えにしておきたい。なぜ「止めておけ!」と言うのか、問うた方自身でよ~く考えるべきことかもしれない。その熟慮ができ、自分の足下がしっかり見える人に対してならば、やはり先のような答えしか、私にはない。
独身ならなんとかやっていける、という考え方もあるだろうが、これからの日本、ますます高齢化社会となってどうしようもなくなりそうだ。健康な貧乏人(私のような)は医療保険などの重税に苦しむばかり。そういう社会事情に思いを馳せれば、結婚して元気な子供をたくさん作りなさいよ、と説教みたく言いたくもなる。あまり言いたくもないが。
昨日、1月5日が今年の仕事始め、というのが世間一般だろうと思う。
仕事始め、ということで少しこれまでに触れなかったことを書いてしまった。おかげで他に用意していた写真の記事を書きそびれてしまった。ま、たまにはこういうことも書いて良いのかもしれないが、書きながら、こういう話を公開の場でするべきではない、という声も頭の隅にはあった。あったが、いったん書いてしまうと消去するのも勿体ない。
本日はこれまで、、、。明日からは虫の話題に戻ります。