愛媛の冬

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 昨年12月の28日から、愛媛県の実家に正月帰省し、宮崎に戻ったのは昨日の1月2日。
私と嫁さんの実家、松山市と西予市のそれぞれに滞在するのは例年のこと。四国も高速道路がどんどん拡張されて、遠く離れた両家間の移動もほんとうに短時間化された。
 
 28日から31日の午前中までは、宇和海に面した小さな町にある嫁さんの実家に投宿。穏やかな海面には真珠養殖の筏が並ぶ。


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 海沿いの主要道路は複雑に入り組んだ海岸地形のため、カーブがたいへん多く、しかも道幅も狭い。そのため、道路の直線化、拡幅工事はあちこちで盛んであり、トンネルの数が増えたり、海の埋め立て箇所も多く見かける。じつは写真の湾も道路拡幅工事のため、その一部が埋め立てられる予定であり、嫁さんの親戚の所有する真珠筏も工事終了まで移転している。

 正月帰省のあいだ、私の密かな楽しみは町にある神社を訪れることだ。神社は2カ所あって、鎮守の森こそないがそこそこ昆虫観察ができる。
 
なにせ人影がほとんどなく落ち着いた場所であるから、ゆっくり虫探しもできる。この2つの神社境内にはいづれにもオガタマノキが植えられている。毎冬、そのオガタマノキを探索しているのだが、これまでミカドアゲハの越冬蛹を見つけたことがない。どうしても気になって、今年も探してみたがやはり見つからなかった。
 
やはりと言うが、もちろん、最初から諦めているわけではない。毎年、新鮮な期待を抱いて探す。いまにも越冬蛹が目の前に現れるだろう、とわくわくしながら探す楽しみがある。

 今回はしかし、どうしてもミカドアゲハの越冬蛹を撮影しておきたい。そこで、30日の朝、少し遠出をして過去に蛹を見つけたことがある公園に赴いてみた。

 場所はかつて御荘町と呼ばれていたが今は地名も変わったようだ。ここは愛媛県の最南端にほぼ
位置しており、嫁さんの実家からだと1時間半程度で行ける。公園にはオガタマノキとトウオガタマノキがたくさん植栽されており、昔からミカドアゲハの生息地としてよく知られている。
 冷たい北風が強く吹く中、オガタマノキの白い花がぽつぽつと咲き始めていた。花の時期は5月ころだが、なぜかこの真冬に花が開き始めている。

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 この公園でミカドアゲハ越冬蛹を見つけたのは、もう19年も昔の10月のことだった。
 そのころに比べて、どの木も大きくなっている。手の届く梢は数えるほどしかないが、それでも梢をたぐり寄せて丁寧に探索していくうちに、2時間があっという間に過ぎてしまった。
 途中、真新しいモズのはやにえが見つかるが、肝心の蛹はまったく見つからない。はやにえは、いづれも成虫越冬のオオクモヘリカメムシとツチイナゴだ。

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 2時間も費やしたのはちょっと予想外だった。
 オガタマノキに隣接しているトウオガタマノキも少しだけ探してみたが、こちらは枝葉がたいへん混み合っていて、探索しづらい。

 で、最初にここも怪しいと感じたのが、オガタマノキの幹に絡んでいるツタの葉陰だった。もう残された探索場所はそこくらいしかない。

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 まさか?と思いながら適当なツタの葉を一枚摘み、手探りしてみれば、
 なんと!そこに綺麗な緑色の蛹が潜んでいた。

 蛹のあった位置は地面から60センチほどの高さだ。ツタの茂みは葉数も
多いから探すのはたいへん厄介だ。だから探索も後回しにしていたわけだが、さすがに一枚一枚めくっていくのは疲れる。
 そこで手触り探索を続けてみたら、別の木で2頭目の蛹が同じような高さの葉裏で見つかった。

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 あとで嫁さんに蛹を見せたら「なあんだ、アオスジアゲハの蛹じゃん!」と言い放った。
 ミカドアゲハの蛹を知らない人なら、たしかに間違えて当然かもしれない。それほどアオスジアゲハとミカドアゲハの蛹の姿はよく似ている。しかし、形態はよく似ていても、その蛹化習性はまったく正反対だ。  
 
 つまり、蛹の頭の向きが両種では逆向きになっており、アオスジアゲハでは葉っぱの付け根の葉柄部に頭部を向けており、ミカドアゲハではその反対向きとなる。
 
 この頭の向きを決める因子として、重力は無関係だ。蛹化の場所が決まったあと、丹念に吐いてこしらえる糸座の位置が頭の向きを決めるようだ。つまり葉っぱの葉柄部にしっかりと糸を掛けるのは両種ともに共通しており、そこへ頭を向けて定位するか、お尻を向けて定位するかは、両種それぞれにきちんと決まっているわけだ。なぜ、そのような向きの違いが生じたのか、その理由は大きな謎だ。

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 さて、強い北風の寒さも厳しく、まあミカドアゲハ越冬蛹が2頭見つかったことだし、とりあえず探索を終了することにした。ちょうど正午も過ぎたころだ。お腹も減った。
 公園を出て国道沿いにある「大介うどん」を目指して車を運転していたら、懐かしい「八幡神社」が目に入った。この神社を訪れたのは20年以上前のことだ。その当時、森のなかでサツマニシキの幼虫を初めて拾ったことを思い出した。せっかくだから森に入って、サツマニシキの食樹、ヤマモガシを見ておこうと思い直した。神社境内では正月の飾り付けや掃除で忙しそうに働く若者の姿があった。

 八幡神社での記事は、明日に紹介したい。
それでは、また明日ということで、、、、、。






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