いない虫、いる虫

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私の住む地域に生息していないと確実にわかっている虫も数多くいて、
そのような虫の存在に行き当たるとき、

ああ、ここは九州なんだなあ、とあらためて思う。

もちろん、その反対に、九州だからこそ見られる虫もたくさんいるわけで、
そんな虫に出会ったときには、

ああ、ここはやっぱり九州なんだねえ、九州に来てしまったんだよね、と感激に浸ることができる。

それは当たり前のことではあるが、虫の顔ぶれを見分けることで、自分の住んでいる自然の地域性を認識できるというのは、大事なことなんだと思う。
それは図鑑などから得た知識と、自分の体験から得た知識とが、ちゃんと融合してから納得できることだからである。

今日はうちの敷地内にたくさん咲き誇るムラサキケマンの花を前にして、

ああ、ウスバシロチョウは九州にはいないんだよな、と、感慨に耽って見とれてしまうのであった。
もっとも、その先で、ではなぜ九州にはいないの?と突き詰めて問い続け、思考を継続するかどうかについては、個人差が大きいと思う。私はめんどくさくなって、思考を停止してしまうほうだ。

W2186280.jpgウスバシロチョウの幼虫は、ムラサキケマンを食草としており、四国や本州の広い範囲ではそれほど珍しいチョウではない程度に分布している。
しかし、なぜか九州にはいない。

四国、愛媛県の山中で春に一回だけ現れる本種を、網をもって追いかけた高校生のころを懐かしく想い出す。想い出すけれど、あのころの本当の気持ちや興奮に行き当たることはもうなくて、今はほんの少しその香りをなぞってみるだけなのだろう。

ちかごろ、そのような情熱や興奮をもってチョウを追いかける青年や少年を見かけない。
それは、実質いないということではなくて、おそらく私は自分自身のありし日の姿を追い求めているに過ぎないのかもしれない。

 今日は、下の子がインフルエンザにかかって学校を休んだ。上の子が直ったかと思えば、まるでバトンタッチするがごとく、今度はしたの子がきっちりと発熱してダウン。39度も熱があればシンドイだろう。
私は原稿書いたりしながら、つきっきりで看病する一日だった。


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