午前7時少し前のことだ。
寝室のカーテンを開ける。するとガラス窓の向こうに人影が見えた。男性である。
距離は40メートル位先なので顔つきまでは判別できないが、年齢は50後半~60前半
と思える。
道路沿いにタラノキが植えられてある。男は高枝バサミで次々とタラノメを切り落としていく。
少々焦っているようだ。
毎年、タラノメが採れるころに地主の方がテープを張り巡らせる。
銀色に輝くテープは、注意勧告を意味していることは誰の目にも明らか。
立ち入るベカラズ。タラノメを採るベカラズ。暗にそう書いてあるようなものだ。
高枝バサミを操る男性もその勧告を充分に意識しているのだろう。
辺りを気にしている。一台の車がやってくると、すかさず道路の反対側の窪みに身を伏せた。
なかなか反応が素早い。
車が通り去ると、タラノメを抱えるようにしてテープを跨ぎ、猛烈に走り出した。
ハハア~ン!?車の置き場所にも用心したナ。通りから死角になった細道の
奥に男の車は止めてあった。
わが家の寝室の窓はタラノキのある場所からはどう見えているのだろう?
気になって出向いてみた。逆方向から見ると寝室の窓は白く反射し室内に人がいても
特にじっとしてれば全くわからない。男が私という目撃者があったことには気付きようも無か
ったろう。
タラノキを仔細に眺めていると、モズのはやにえがあった。ガの一種だ。
冬のあいだこのするどい棘に注目していたのだが、はやにえは一つも見つからなかった。
ガは春先に活動するキリガ類だろうか?先日、アブラナの花でも吸蜜していた。
ふと見れば先ほど男が使っていた高枝バサミがころがっている。
おや?いくら焦っていてもまさか、さっきの男が忘れていったものではあるまい。
この高枝バサミは地主のKさんが置いたものではないだろうか?
いやそうだとすれば、これは「どうぞ、どうぞ、タラノメをお採りください。」
と言っているようなものだ。
Kさんが置き忘れたのかもしれないが、ここを通り掛かった男は高枝バサミがあるのを見て、
「これはチャンス!」と飛びついたのも当然の成り行きであったのかもしれない。
宮崎に移住して3年目の春を迎えた。
これまでの3年間にいろいろな出来事があったが、盗難、不審人物、不法投棄といった
ことに関わる事例も多い。これは全国どこでも似たようなことだろうと思うが、
わが家の周辺はのどかな田舎風景であり、人の出入りは都会や町に比べればはるかに
少ない。だが一見誰も来ないような場所にも、常に誰かの視線が注がれていることがよく
わかる。人の目が少ないからこそ、むしろ不法投棄も平気な輩が後を絶たない。
先月だったか、うちのすぐ近くにある農家の方の納屋から耕運機が盗まれた。
盗まれた夜、わが家全員は松山の実家に帰っていて、夜も灯りが消えていたという。
納屋はうちから見下ろせる位置にあるから、灯りがともっていれば盗難はなかったのかも
しれないし、人気が無くなるのをねらっていたのかもしれない。
不審人物の一人は最近になって現れるようになった。
何をもって不審と見做すかは問題だが、同じ場所の路上に車を止めてはしばらく
そのままじっとしているだけ。それを不審としてどこまで取り沙汰するかだが、
まあしばらくは静観するしかないようで、私以外に近所の方もずいぶん気になさっている。
同じ場所に車を止めるといっても、その時間帯や留まっている時間の長さに規則性が無い。
通勤途中とか営業の出先という見立ては当てはまりそうに無い。やはり不可解だ。
歳のころは30代前半だろうか。ともかく若い男性だ。町内でその男の運転する車と
すれ違うことが2回あったから、同じ町内に住んでいる可能性もある。
わけがわからないと、やはり人は不審ではないか、との気持ちがつのる。
脇目もふらず虫を探し歩き、たまに殺気すら帯びてしまう私。
その私を知らない方が目撃したなら、はたしてどう感じるだろうか?
いや想像するまでもない。
「なんやそこの道に、不審人物がおるでえ~!!警察に電話せいや!!」
寝室のカーテンを開ける。するとガラス窓の向こうに人影が見えた。男性である。
距離は40メートル位先なので顔つきまでは判別できないが、年齢は50後半~60前半
と思える。
道路沿いにタラノキが植えられてある。男は高枝バサミで次々とタラノメを切り落としていく。
少々焦っているようだ。
毎年、タラノメが採れるころに地主の方がテープを張り巡らせる。
銀色に輝くテープは、注意勧告を意味していることは誰の目にも明らか。
立ち入るベカラズ。タラノメを採るベカラズ。暗にそう書いてあるようなものだ。
高枝バサミを操る男性もその勧告を充分に意識しているのだろう。
辺りを気にしている。一台の車がやってくると、すかさず道路の反対側の窪みに身を伏せた。
なかなか反応が素早い。
車が通り去ると、タラノメを抱えるようにしてテープを跨ぎ、猛烈に走り出した。
ハハア~ン!?車の置き場所にも用心したナ。通りから死角になった細道の
奥に男の車は止めてあった。
わが家の寝室の窓はタラノキのある場所からはどう見えているのだろう?
気になって出向いてみた。逆方向から見ると寝室の窓は白く反射し室内に人がいても
特にじっとしてれば全くわからない。男が私という目撃者があったことには気付きようも無か
ったろう。
タラノキを仔細に眺めていると、モズのはやにえがあった。ガの一種だ。
冬のあいだこのするどい棘に注目していたのだが、はやにえは一つも見つからなかった。
ガは春先に活動するキリガ類だろうか?先日、アブラナの花でも吸蜜していた。
ふと見れば先ほど男が使っていた高枝バサミがころがっている。
おや?いくら焦っていてもまさか、さっきの男が忘れていったものではあるまい。
この高枝バサミは地主のKさんが置いたものではないだろうか?
いやそうだとすれば、これは「どうぞ、どうぞ、タラノメをお採りください。」
と言っているようなものだ。
Kさんが置き忘れたのかもしれないが、ここを通り掛かった男は高枝バサミがあるのを見て、
「これはチャンス!」と飛びついたのも当然の成り行きであったのかもしれない。
宮崎に移住して3年目の春を迎えた。
これまでの3年間にいろいろな出来事があったが、盗難、不審人物、不法投棄といった
ことに関わる事例も多い。これは全国どこでも似たようなことだろうと思うが、
わが家の周辺はのどかな田舎風景であり、人の出入りは都会や町に比べればはるかに
少ない。だが一見誰も来ないような場所にも、常に誰かの視線が注がれていることがよく
わかる。人の目が少ないからこそ、むしろ不法投棄も平気な輩が後を絶たない。
先月だったか、うちのすぐ近くにある農家の方の納屋から耕運機が盗まれた。
盗まれた夜、わが家全員は松山の実家に帰っていて、夜も灯りが消えていたという。
納屋はうちから見下ろせる位置にあるから、灯りがともっていれば盗難はなかったのかも
しれないし、人気が無くなるのをねらっていたのかもしれない。
不審人物の一人は最近になって現れるようになった。
何をもって不審と見做すかは問題だが、同じ場所の路上に車を止めてはしばらく
そのままじっとしているだけ。それを不審としてどこまで取り沙汰するかだが、
まあしばらくは静観するしかないようで、私以外に近所の方もずいぶん気になさっている。
同じ場所に車を止めるといっても、その時間帯や留まっている時間の長さに規則性が無い。
通勤途中とか営業の出先という見立ては当てはまりそうに無い。やはり不可解だ。
歳のころは30代前半だろうか。ともかく若い男性だ。町内でその男の運転する車と
すれ違うことが2回あったから、同じ町内に住んでいる可能性もある。
わけがわからないと、やはり人は不審ではないか、との気持ちがつのる。
脇目もふらず虫を探し歩き、たまに殺気すら帯びてしまう私。
その私を知らない方が目撃したなら、はたしてどう感じるだろうか?
いや想像するまでもない。
「なんやそこの道に、不審人物がおるでえ~!!警察に電話せいや!!」