もっとキンカメムシを知りたい

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日本の図鑑にはまだ載っていないキンカメムシ。

本種の国内での分類学的調査はまだ完了しておらず、したがって

正式和名はまだ無い。

まあ、本種の詳しい生態もわからないのであるが、ともかくアカギがホストである。

これだけは、はっきりしている。そして海外からやってきた虫でもある。

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金キラ金に輝く体はタマムシみたいだが、よくよく見れば本種はけっこう毛深いのである。

写真では鮮明でないが、逆光で見ると体の背面には白い短毛がびっしりと生えている。

沖縄の湊和雄さんが「ラデンキンカメムシ(螺鈿キンカメムシ)」という綺麗な名称を

ブログに書かれていた。私などもこの「ラデンキンカメムシ」という名称はいいなあ、と

思う方だがきちんと調査が完了した段階で正式和名が決まることだろう。

名前は大事なことだが、さらに本種の生態、そして日本に入ってきたルートなども

興味深い。

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奄美大島にはアカギがたくさん植わっている。それも街中を中心に人が植えたものだ。

鳥が種の運び屋となって、アカギは主に道路沿いに分布を拡大してきた。

アカギはもともと奄美大島には自生していなかったそうだ。

そのアカギが増えて、さらに大木化してくると

今度は社会生活の邪魔者扱いされるようになった。

では何故、人はアカギを植えたのか?

そこを私はまだよく調べていない。いや知りたいと思う。

今や邪魔者扱いされるアカギに綺麗なカメムシがよそからやって来て発生し始めた。

もしも、このカメムシがアカギの脅威、言い換えれば害虫となればちょうどいいかも、

などと考える人もいる。だが、キンカメムシがついたところでアカギの

勢力が衰えることは無さそうである。期待は的外れのようだ。

むしろ、この美麗なカメムシを見て喜ぶ人の方が多い。それも当然だろう。

同じキンカメムシの仲間で、アカギカメムシがいる。

本種のホストは主にアカメガシワである。うちの敷地内でも発生するようになった。

しかし、奇妙なことだ。何がと言えば、アカギカメムシという和名である。

アカギカメムシの和名は、アカギの木と関係があるのだろうか?と

普通ならそう疑問に感じる。

同じことがミカンキンカメムシにも言える。

ミカンキンカメムシのホストはセンダンであり、ミカンを加害することはあっても、

特にミカンとの深い関係はない。

ミカンキンカメムシは、センダンキンカメムシとしたほうが、よりわかり易い。

だがしかし、名前とは不思議なものだ。

そういう理屈はあまり意味がない。名前は一瞬にして、あるいは歴史のなかで

決まっていく。理屈に合わなくても、いつのまにか実体と重なって定着する。

やがて名前は一人歩きし始める。

一人歩きし始めた名前が実体となり、もはや否定しがたい存在となる。


今日の写真は、昨日、奄美大島で撮影したもの。

今回、成虫の集団を期待していたが、タイミングが悪かった。

24時間、島に滞在していれば撮影できたと思う。

ただし幼虫集団の綺麗な写真があらたに撮れた。

これから育っていく集団がいくつもあるのがわかった。

アカギの実がある限り、繁殖を続けていくのだろうか?

秋深まって、さらに冬となって、彼らはどう過ごしているだろうか?


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