
本書のことは伊藤年一さんのブログで知ってはいたが、実際にページを開いてみて
頭が下がる思いがした。タイトルは虫の顔とあるが、昆虫の基礎知識全般についての
解説、コラムもふんだんに盛り込まれており、表紙はくだけたデザインながら、
内容はとても濃い。帯の文面通り「マニアックな内容!」としながら、
「自然学習に自由研究に」とセールス面にも抜かりがない。
「今日から親子で顔面マニアだっ!」にはさすがにズッコケそうになったけれど。
虫の顔を切り口にして昆虫世界を面白く語る手法はさすがで、伊藤さんのお人柄が
現れている。こういう本ならたしかに親子でも楽しめるかと思えた。
著者紹介にもあるように、伊藤年一さんは学習研究社で長く編集の仕事をされていた。
だから以前、駆け出しのころの私は伊藤さんからお仕事をいただく立場であったし、
編集者の目からしていかように評価されるのか、ずいぶんと気にもしていたものであった。
その伊藤さんが今は私と同じ土俵に立っておられる。ベテラン編集者として表も裏も
知り尽くし、なおかつ幾人もの昆虫写真家を育てた方でもある。
その豊かな経験と素晴らしいセンスを備えられた伊藤さんに勝負を挑まれたら、
私などは即座にギブアップ!と唸るしかない。
もっとも、伊藤年一さんは単に昆虫写真家にとどまらず、様々な本の制作にも
携わっておられ、「同じ土俵」などと書いては、本当は失礼にあたるだろう。
生き物研究所所長としてのさらなる幅広いご活躍を期待しています。