玄関で声がしていたのに、しばらく気付かず、部屋で仕事をしていた。
いつもなら犬のチョロが吠えるが、吠えなかった。
また我が家への来客は99.9%、車なのでエンジン音や走行音(ハイブリッド車)で
部屋にいてもすぐにわかる。仕事部屋が道路に一番近いからでもある。
ようやく声に応答しながら、廊下を玄関まで駆けて出た。
玄関の引き戸を少しだけ開けて、顔だけのK子ばあちゃんがいた。
「いそがしい〜け?」
首を引っ込めながら「モモを、もってきたよ」とシルバーカーに戻った。
K子ばあちゃんの訪問は久しぶりのこと。
ビニール袋にいっぱい詰めた「モモ」、スモモ(プラム)が重そうに揺れて
玄関先に置かれた。
「ことしは、ようけできたから。 まきをもらうからなあ、これもってきた」
庭の隅に積んであった薪(アカメガシワ)を抱えて運んでいる横で、
私はさっそくスモモを一個づつ丁寧に洗った。
漬け込み作業は、明日だ。 うちではすでに梅酒を漬け込んである。
我が家の庭にも、一本だけスモモの木があるが、今年は一個しか実がつかなかった。
その一個も、どうやら鳥に食われてしまったようだ。
日中は陽射しもあり、かなり蒸し暑かった。 モンキアゲハが百日草に来ていたが、
羽化したばかりの新鮮個体だった。 夕方近く雷がゴロゴロ鳴り、夕立となった。
雨が止むと涼しくなったが、逆に部屋の中が蒸し風呂になった。