春のころオオスズメバチ女王を何度か目撃した。
庭のクヌギの樹液に来ていたようだ。どこかで営巣するのだろうなあ、
とその姿をぼんやり眺めていた。
しかし、この夏は、ついに一度もオオスズメバチを見ていない。
いや、オオスズメバチだけではない。コガタ、ヒメ、キイロ、も
ほぼゼロに近い。ヒメは若干、飛来したが、例年に比べるべくもない。
我が家の林のことではあるが、周辺の林でもほとんど見かけなかった。
蜂採りのシーズンで、Hさんも「今年は少ないねえ〜」
とクヌギを見上げながらため息をつく。まだ成果は上がってないようだ。
たしかに樹液はタラタラと滴り落ちているが、集まる虫の姿も少ない。
サトキマダラヒカゲやシロテンハナムグリが、ちらほらの程度。
そこに、スズメバチの姿が、無い!
曇り空の下、気温も低めだったが、ノコギリクワガタ♂が庭に2頭。
すぐ傍のクヌギ林に1頭、佇んでいた(下写真)。
ノコギリクワガタの♂は、どれも気が強く元気に見えた。
羽化時期後半に入ったであろう、コウモリガ。
ノコギリクワガタのいたクヌギ林を少し覗いてみれば、
ジョロウグモに捕まったものがいた。
オニグモの一種に捕まったものも、1頭。
別の場所でもジョロウグモの巣網でボロボロになったコウモリガが、1頭
見つかっている。チョウやガは、鱗粉のおかげで巣網に掛かりにくいが、
飛び古して鱗粉が落ちてしまえば、クモの餌食になってしまう。
クモの餌食になる数が多くなるということは、やはり発生時期も終盤に入った、
と言えるだろうか。
クリの樹幹にあったコウモリガ幼虫のドーム型蓋に、穴が空いていた。
通常ならこの穴には、羽化殻が突き出ているのだが、羽化殻がない。
これはおかしい、と地面を探してみたら、やはり蛹の死骸がころがっていた。
蛹の腹部は大きく裂け、シデムシ類の幼虫が頭を突っ込んでいた。
ドーム型蓋は、地面に向かっており、何らかのアクシデントで羽化直前に
蛹は地面へと落下してしまったのだろう。
クリの幹は地面に対してほぼ平行に、大きく曲がっていて、
コウモリガ幼虫のトンネル開口部は地面向きに空いていたのである。
蛹は頭部でもってドーム型蓋を突き破るが、おそらくは穴が元に戻ろうと
する圧力に支えられて、飛び出すことなく静止する。
しかし、今回のケースでは真下向きのゆえ、蓋の穴による
圧着力(蛹を固定する力)に対して、
重力のほうがが勝ってしまったのではないだろうか?
文章だけで、蛹の死の原因を説明するのはもどかしいが、
コウモリガの羽化したあとに残る、蛹殻(羽化殻)を観察してもらいたい。
幼虫トンネルの開口部は、宿主樹の状態により様々だが、通常多くは
水平かあるいは若干斜め下向きである。真下に近い向きは稀である。