『原発事故で、生きものたちに何がおこったか。』

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『原発事故で、生きものたちに何がおこったか。』 永幡嘉之 :写真・文(岩崎書店)

原発事故.jpg永幡嘉之さんの東日本大震災に関わる著作は、「巨大津波は生態系をどう変えたか」(講談社ブルーバックス:2012年)、「大津波のあとの生きものたち」(少年写真新聞社:2015年)、に続く三作目となった。こうした単行本だけでなく、雑誌や各誌に精力的に発表して今日に至っており、これからも大津波、原発事故が自然界に及ぼした影響について、永幡さんの調査・分析は続くかと思う。
 風評被害を恐れるあまりに、事実から目を逸らしたり、自然のことを真剣に理解する努力に背を向けるといった、日本社会にはそういう一面も強くある。そういう逆風のなかで、生き物の調査・研究を続け、声を発することはかなりの精神力も必要であろう。

永幡さんと初めて会ったのは、都内のある集まりであったが、私がしたたか酔う前に、お話ができて良かったと思う。後日、永幡さんから、ブナ属とロシア極東の自然のテーマについて書かれた「日本海の向こう側」という新聞連載記事のコピーを送っていただいた。さらに「月刊むし」に投稿された記事の別刷りもたくさん送ってくださり、分厚い「永幡ファイル」がファイルケースの引き出しに納まっている。もちろん全て目を通している。おそらく永幡さんが発表された記事の一部ではあろうかと思うが、そのファイルや傑作として評価の高い『白畑孝太郎〜ある野の昆虫学者の生涯』(無明舎)など、仕事ぶりから窺える、生物学者としての優れた才能、素晴らしい文才、そして繊細な写真表現力は、これからもますます活躍の場を広げていくことだろう。
初めて東京でお会いしたときは挨拶だけだったが、その後2005年の6月、私は山形県米沢市に赴き、三日間に渡り永幡さんのフィールドを案内していただいた。小学館のネオ図鑑に載せるコルリクワガタの生態写真を撮影するのが目的だったが、極めて条件の良いポイントを案内してくれて、撮影は予想以上の成果を上げることができた。移動する車中、あるいは夜の居酒屋で熱く語る永幡さんとご一緒できた時間は大変有意義で、印象深く、今でもときおり思い出す。
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