繭を紡ぐ蛾のなかでも、とくにヤママユガ科に含まれる種類は
「野蚕」と呼ばれる。
野蚕の代表種とも言えるヤママユ、ウスタビガの飼育は例年行っている。
木洩れ日に透けるヤママユ幼虫の体はなんともいえぬ色合い。
葉っぱを胸脚で押さえて食べる仕草、その噛み音、、、、。
緑色に染められた絹糸の繭は、惚れ惚れとする出来映え。宝物にしたい!
魅力溢れるイモムシたちの姿を前にして、時間よ止まれ!と言いたくなる。
それは叶わないので、写真に撮る。撮ることがいつのまにか、仕事になっていた。
さて、野蚕の撮影にあたっては飼育が必要である。
自然林のなかで野蚕の姿を探し出すことは容易ではない。
稀に遭遇することはあっても、そのわずかな出会いを積み重ねているうちに
自分の寿命が尽きてしまうだろう。
例えば室内でふ化した幼虫を元の林に放したとしよう。
それが20~30匹という数だとしても、その幼虫たちが繭を紡ぐまでを追跡するのは
まず不可能である。いや、50~100匹の数であっても。
イモムシというのはそのほとんどが、鳥や他、小動物の
餌なのである。
餌となって消えぬよう、なんらかの保護をしながらようやく撮影ができる。
一昨日、室内飼育していた幼虫たちを野外のコナラに放した。
もちろん袋がけして、保護している。
いづれ葉の数が足りなくなれば、袋がけの場所も替える。
この方法とて手の届く範囲で手頃な梢があればよし。そうでなければ高い場所での袋がけ
というのは、まず実用的ではない。
こういう飼育方法ができるのも、自分の所有する林があればこそ。東京のマンション暮らしで
は到底叶わない夢物語だった。
ま、もっとも林があるということは、その管理手入れに費やす時間、労働力も相当なもんである。
近頃は腰痛も絶えない。パソコンに向かっている時間も長いからだろうか。
山仕事はやるならやるで、朝から夜までずっとやり続けるほうが体に馴染むというもの。
ヤママユ幼虫のいるコナラの梢で、ムシヒキアブの一種が交尾していた。
さて、この光景を目の当たりにしてまず思ったことは、これは困るなあ、という溜息に近い
もの。つまり、ムシヒキアブの一種とわかっても種名まで調べるのはかなり厄介であり
とくに写真で判別するのは不可能に近い、ということである。
(写真上、下:オリンパス ライトペンEPL-1 パナソニック45ミリマクロ )
(写真中: オリンパス ペンEP-1 M 9-18ミリ )