ムカデ類の最近のブログ記事


自然観、ふたたび

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昨年のある忘年会の席上で、「新開さん、三股町の自然が豊かです、なんて

あんまり言わないで下さい。」と言われて、ああ、そうでもあるなあと思った。

三股町に住んでほぼ4年、東京で暮らしていたころとはガラリと違う昆虫の顔ぶれ、

そして環境を眺めながら、「ここにはかつてあった里山の自然環境が色濃く残っている」

などと、地元で開催する写真展や講演では幾度となく繰り返してきた。

その発言は見方によっては正しく、しかしながらある見方によれば正しくない。

まず、私の住む敷地から周囲を眺めてみるとすぐにわかるのだが、

ほとんど全部、田畑以外は杉の植林で占められている。

光景そのものはざっと見た限り、自然の豊かさを物語ってはいない。

「里山風景」などほとんど無いに等しいとも言えよう。

その植林とは長い期間手入れもされず放置されたままのところばかりで、

いわゆる「緑の砂漠」。多くの生き物にとっては死の世界に近い。

圧倒的な杉植林の光景を見ていると、自然観察を生きがいにする者にとっては、

なんとも絶望的である。植林したなら、これをちゃんと生産の場として活用せよ!

と怒りさえ湧いてくる。山が死んでいるのだ。なぜ、こうなったのか?

それと「自然」と一言で現すが、その「自然」の意味合いが人によって全く

違うことも考慮しておきたい。

ある人によってはサクラが数千本植わった山肌が素晴らしい自然でもあるし、

紅葉が毎年楽しめる場所こそが自然豊かな場所であったりする。

これまでも繰り返して書いてきたように、

私は自分の敷地内の林をせっせと手入れしている。

まずは、はびこったササ藪を刈り取っているのだが、

これを見ていたある方は「新開さん、あんまりササを刈ってしまわないで。

自然はあるがままの姿がいいと思うけど。」と、おっしゃる。

自然があるがままの姿とは何か?

それこそ人それぞれの自然観があって、どれが正しいとは言い難いが、

放っておく、というのは自然を素直に認める姿勢だと言えるだろう。

私が自分の林を手入れしている理由とは、

自分が昆虫や他の生き物を撮影するのに都合良い形に仕立てているのであって、

よく世間で言われる、「自然の保全」を実行しているつもりはない。

だから傍目から、それは自然破壊の一つではないかと言われればその通りなのである。

自然を保全せよ、保護せよ、今はそれが大事なときだ、とはよく主張されるけれど、

今の社会形態のままでその主張が通るはずもない。

私はテレビや新聞などから取材を受けることがしばしばあるが、

そのときに必ず聞かれるのが「自然の保護とか、どう考えられます?」と

質問を受けることが多い。

そのときの答えは

「少なくとも日本では、これだけの人口があって、

そのすべての人々が今のあるいはそれ以上の

生活水準を平等に求めていく限り、自然保護というのはあり得ない話でしょう。

私自身も含めて、それを主張する立場にないです。」

と答えてきた。

今も留まることなく物凄い勢いで進む自然破壊とは、その捉え方も複雑ではあるが、

間違いなく次々と自然は消失しつつあって、

それを食い止める方策などどこにもない、と思える。

私の尊敬する足田輝一さんがかつて書いていたように、

生活水準を数十年昔に戻す、などという覚悟無くしては。

しかし、それは不可能だと思う。誰しも不自由な生活など今更、望みはしない。

さて、今日は都城市の神柱公園に出向き、

ケヤキの樹皮下で越冬?しているフサヤスデの一種を見てきた。

フサヤスデ.jpg8匹が身を寄せ合っていたが、一番大きな個体で、その体長は2.3ミリ程度。

この写真はオリンパスの35ミリマクロに2倍テレコンをつけて最大倍率で撮影した。

最大倍率だと画面の横幅がほぼ9ミリの世界を切り取ることになる。

いろいろこの倍率撮影で試してみたが、絞りはF16が最適と思う。

F22以上に絞り込むと深度はより深くなるが、焦点が甘い絵柄になってしまう。

ライティングはカメラの内蔵ストロボのみ。

2倍テレコンとレンズを組み合わせるとレンズ長が長くなるので、内蔵ストロボの光を

うまく当てる工夫が必要になってくる。その工夫については明日以降に書きたい。

フサヤスデSP.を見つけたケヤキの写真はここ↓

ケヤキ.jpgケヤキの樹皮めくりはあんまりやりたくないが、

その副産物としていろいろな虫が見つかった。

なかでもおそらくヒメクダマキモドキの卵と思われる卵は、怪しい光彩を帯びていた。

たまご.jpg



肉だんご

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初めて見るシャクトリムシ(シャクガ類の幼虫)は、イネ科の花穂で食事中のようであった。

特徴のある色紋様をまとっているが、

本種の名前調べはまだ進んでいない。体長は1センチあるかないか。

X20594315.jpgすぐ隣にはノイバラがあって、私は最初、ケブカチョッキリの姿を探していたのだ。

ケブカチョッキリのしわざでノイバラの新梢部分があちこち茶色に萎れている。

その萎れた所で、さきのシャクトリムシと同種の2匹目が見つかった。

X20595061.jpgおお!こちらはなんとも見事な隠れ技ではないか。

自分の落ち着くべき場所をピタリと見つける、そこが不思議である。

などと眺めているうちに、いつのまに忍び寄ったのか、

最初に見つけた一匹目がムカデに捕らえられていた。

X20594634.jpg捕獲されたシャクトリムシもおとなしくはしていない。体を激しくねらせ抵抗する。

人でも咬まれると痛いムカデの攻撃だが、シャクトリムシは意外と長く暴れていた。

それに手を焼くかのごとく、ムカデは獲物を抱えたまま急いで歩き始めた。

どうやらしっかりした足場を確保するためではないだろうか。

ノイバラの葉上に移動してから、おとなしくなった獲物を抱え込んで食事にとりかかった。

X20594913.jpgシャクトリムシの体は強靭なアゴでもみ潰され、あれよと言う間に肉団子と化していった。

X20594982.jpg体液を吸い尽くされ小さくなった肉団子から、腸内の排泄物がかたまりとなって残り、

そのかたまりは、ポイッと捨てられてしまった。

なんともあっけない食事だったが、ムカデはなお空腹なのか次の獲物を求めて

ノイバラのジャングルに潜り込んで消えていった。

( 写真/   E-3  ズイコーデジタル35ミリマクロ+2倍テレコン )