| ウスタビガは、壷細工のような薄緑色した繭をつくることでよく知られている。 そしてちょうど今時分の関東平野部の雑木林では、ウスタビガのでっかい終令幼虫が見つかるころだ。しかし、いざ探して次々と見つかるものでもない。
今日は林の中を歩いていて、ふと足を止めた。この、ふと何かの予感を感じ取る技は、自然観察を長く続けているうちに養うことができるが、人それぞれの個性も絡んで、技には様々なバリエーションがあると思う。おそらく興味の対象の違いによって、ふと立ち止まるタイミングも違ってくることだろう。
さて、ふと立ち止まったその瞬間、「チィー」と間延びした鳴き声が頭上の梢から聞こえた。この「チィー」という音は、幼いネズミの鳴き声にそっくりでもある。 静かに佇んでいれば、ようやく聞き取れる小さな一鳴きであったが、コナラの梢をしばらく眺めていると1メートルも離れていないすぐ近くに、声の主が見つかった。それは丸々と肥えたウスタビガの終令幼虫であった(写真)。 ウスタビガ幼虫を、その「ネズミ鳴き」の声で見つけたのは、後にも先にも今日が初めてのことであった。
ウスタビガ幼虫が鳴くときの様子を見ていると、体をググッと縮めるような仕草をする。発音の仔細はよくわかっていないようだが、幼虫の体のどこかを収縮時に擦っているのではないか、と言われている。
ささやかな「チィー」という発音でもって、外敵を追い払うつもりであろうか?少し可愛そうだが、この幼虫の体に触れてみると「チィー」を聞く事が出来る。
(E-500 35ミリ+1.4倍テレコン) | |