| 2007年『昆虫ある記』を振り返って(7) 2008/01/11 | | | | | 今日は昨年の8月の記事から「タイワンクツワムシ」を選んでみた。 (今続けている2007年を振り返るシリーズの記事はあらたに書き下ろしており,昨年,写真に添えた文章とは内容が違うことをお断りします。)
8月に入ってからは昆虫たちも夏枯れの時期となるが,セミの鳴き声は元気だ。クワガタムシもカブトムシもひところは樹液によく来ていたがパタリと集まりが悪くなった。そのころになってカブトムシの撮影をすることになった。細かい撮影リストと絵コンテが私の手元に届いたのは8月に入っていたので少し焦った。カブトムシの撮影にはクワガタムシも絡んでくる。わずかに飼育していたカブトとクワガタムシを大事にしながら,撮影を終えることができたが.時間的な余裕もなくなんとか仕事をこなしただけで少し悔しい気もした。 このころ毎晩ヤママユの羽化も待っていたが,なかなか羽化してくれず,さすがに連日連夜の撮影待機につらくなった時期もあった。ヤママユの繭はいくつか用意できていたが,ビデオ撮影に使える繭は数が少なかった。7月に一回目の撮影を済ませてはいたが,2回目の撮影ができたのは9月に入ってからだった。
「タイワンクツワムシ」(8月24日)
私が初めて宮崎県を訪れたのは2006年の2月末のこと。なんとその年の5月には今住んでいる土地屋敷の物件を決めた。まさに千載一遇の出会いだったと言える。宮崎県はそれまで地図でしか眺めたことがなかった。だから「何故,宮崎に決めたの?」という質問はよく受けるのも当たり前だろう。
ところではじめて宮崎市内の叔父宅に泊まった日の朝,裏の草むらから聞こえる虫の鳴き声が気に掛かっていた。関東ではまず聞いたことがない鳴き声だ。おそらくそれではないだろうか?くらいでしばらく自信がなかったが,三股町に住み始めてそれがタイワンクツワムシの鳴き声であることがわかった。 一旦聞き慣れてくるとその特徴ははっきりと掴める。しかもうちのすぐそばの林のなかではクツワムシも鳴いており,それと比較してもタイワンクツワムシの鳴き声はよく違いがわかる。それとタイワンクツワムシはほぼ1年中見られ,12月でも少し暖かい日には鳴いている。 タイワンクツワムシは明るい草地にも多く,散歩に連れ出した飼い犬がこれを捕らえて美味しそうに食べることもあった。犬はコオロギやトノサマバッタなどの体臭もよく嗅ぎ分けることができるようで,草むらに鼻先をつっこんでは夢中で追いかけ回す。ただし飛び出したバッタなどが,一旦地面に静止すると犬は目の前にいるバッタの姿を見失ってしまう。犬の視覚は人に比べて極端に弱いようだ。こういうときはニオイもあちこちに拡散しているせいか,嗅ぎ付けることもできずウロウロしてしまう。カエルの場合も同じことが観察できる。 犬も味には好みがあるようだ。キリギリス,クビキリギス,タイワンクツワムシ、ショウリョウバッタ,コオロギ類などは好んで食べるが、一方イナゴ類は捕らえても吐き出してしまう事が多かった。 トノサマバッタの交尾つがいを私が先に見つけたことがあった。 撮影する前に犬には「待て!」を命じた。犬は物欲しそうにしながらもちゃんと伏せたので、私は腹這いになってカメラを構えた。1カット撮影し,少し体勢を変えたところでいきなり犬(名前はチョロ,推定2歳)が飛び出しガブリとトノサマバッタのつがいを食べてしまった。 私はカッとなって「なにすんだ!この馬鹿者が!!」と声に出して犬の頭を強く叩いてしまった。自分でも驚く程に久しぶりに怒った。弱者に対して衝動的な怒りをぶつけたときは余計に後味も悪い。 叩いたあとですごく後悔したが,それからしばらくの間,チョロはバッタなどを見つけても,ちらりと私の顔を窺うようになった。
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