| クヌギカメムシふたたび 2006/11/30(その1) | |  | | | 「日本原色カメムシ図鑑」によると、クヌギカメムシは東日本において、ヘラクヌギカメムシやサジクヌギカメムシの2種よりかはるかに少ない、と記述がある。 専門家の方からも直接、クヌギカメムシは関東では少ないと聞いている。
さて、私の住んでいる清瀬市や近所の所沢市などの雑木林では、たしかにクヌギカメムシは数が少なく、ヘラクヌギカメムシのほうが圧倒的に多いことを実感している。 ところが以前から気になっていたのだが、さいたま市の秋が瀬公園では、毎春、多数のクヌギカメムシであろう幼虫を観察している。もしかしたら秋が瀬公園では、クヌギカメムシが多いのではないだろうか? 幼虫の姿だけでクヌギカメムシと断定するにはいささか不安もあったから、ほんとうにクヌギカメムシが多いのかどうか見極めるために、秋が瀬公園にまで出掛けて、今日は成虫を観察してみることにしてみた。
結論から言えば、まず秋が瀬公園では、多数のクヌギカメムシを見る事が出来た。そのほとんどがメスであり、クヌギの幹で産卵しているものが多かった(写真)。オスは1匹だけいた。しかも私が今日見た範囲では、全てがクヌギカメムシであり、ヘラクヌギカメムシは全くいなかったのである。 これで秋が瀬公園にクヌギカメムシが多産することは間違いない、と言い切れる。
そこでクヌギカメムシとヘラクヌギカメムシの2種の間にはどういう関係があるのだろうか?とあらためて疑問が湧く。 生態も形態も非常に酷似した両種は、本来その生息域をすみわけているのではないか?そんな仮説が成り立つような気がする。 両種の詳しい分布データがあれば、そういう仮説の検証もできるのだろう。
(E-330 マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)
クヌギカメムシという昆虫はいかにもマイナーであり、これまで昆虫写真家の大御所の方々にはほとんど相手にされてこなかったようだ。いやクヌギカメムシに限らず、カメムシというグループそのものが、マイナーとされているのだ。 昆虫と言えば、チョウ、カブトムシ、クワガタムシ、トンボ、カミキリムシ、セミ、ホタル、バッタあたりが世間で認知されたグループであろう。それ以外の昆虫となると、世間でも少数派の虫好きの方でさえ、「雑虫」という扱いをする。そういうなかで、商売にはならない「雑虫」をよく相手にする昆虫写真家というのは、私くらいかもしれない。 私はしかし、マイナーであるとか、世間に知名度が高く人気があるからとか、そういう尺度で、撮影対象の昆虫を選ぶ事はあまりない。「雑虫」か否かは、判断基準とならない。もちろん全く意識しないかといえば、それは嘘になる。当たり前だが、やはり売れる写真はきちんとおさえなければ、この仕事は続かない。
ただし、昆虫写真家としての私なりの姿勢はある。 それはさまざまな昆虫の魅力を自分なりに発見できたとき、その発見の感動に素直に従う、という姿勢である。これはじつに簡単なことのようだが、実践するにはそれなりの心構えと、戦略めいたやりくりが必要とされる。世間の仕事の需要にきっちり応えていくのと同時に、写真家という肩書きには各々の個性が強く要求もされるのである。  | |