menu前ページTOPページ次ページspace.gif

高尾山のキジョランとアサギマダラ 2006/08/01(その1)
 今日は高尾山に行ってみた。それも表の高尾山。

 これまで裏高尾へは、毎年何度かは足を運んでいるが、表の高尾山口から登ったことは一度もなかった。その理由は簡単で、あまりにも観光地化し過ぎて訪れる人が多過ぎるからであった。

 しかし、今日はアサギマダラの幼虫探しと、もう一つ「ある昆虫」を探す目的があったので、観光客が多いのどうのは、どうでも良いことにした。

 そこでまずはケーブルカーに乗って、一気に標高472メートルの稜線へと上がった。ケーブルカーを利用したのは、「ある昆虫」が表高尾の登山道で見つからない場合は、あとで他の場所へと移動する時間的な余裕が必要だったからだ。そのためには、高尾山登山口の一日千円という高い駐車場料金も仕方があるまい。

 さて、ケーブルカーの駅から歩いて下りながら、アサギマダラの食草キジョランを探してみた。キジョランは「鬼女蘭」と書くが、鬼女とはその種子の白い毛束からきているそうだ。蘭とはいうものの蘭の仲間ではなく、キジョランはガガイモ科の常緑つる植物である。

 歩いてまもなくキジョランはすぐに現れ始め、さらに登山道からはずれて斜面を薮こぎすれば、やがてキジョランの群落を見る事が出来た(写真上)。キジョランはまだ蕾みばかりで、開花は来週以降であろうと思われた。
 
 キジョランの葉っぱには、アサギマダラ幼虫特有の丸い食痕が多数見つかるが、これは若い幼虫のかじり痕であり、しかもどれも古い。結局、アサギマダラの幼虫は見つからなかった。

 しかし、ここは怪しいなあ、と粘って最後に近付いたキジョランの葉うらでは、羽化したばかりのアサギマダラ成虫が蛹殻にぶら下がっていたのである(写真中)。

 今日は曇っていて気温も低めのせいだろうか、アサギマダラは正午を過ぎてようやくウオーミンングアップし始めた(写真下)。

(E-330  魚眼8ミリ)

新開 孝

カラスアゲハ♂の吸水 2006/08/01(その2)
 高尾山の登山道脇で、カラスアゲハのオスが吸水していた。

 このオスはたいへん落ち着いていて、吸水に余念がない。しかも、吸いながらお尻からはピュップ、ピュップと排水も盛んである。だいたい4秒間隔で排水している。これは撮影チャンスとばかり、その排水の様子(写真上)を道に寝転がってカメラを構えてみた。

 さすがに夏休みともあって、家族連れの登山客の方もいる。小学生の男の子兄弟二人が、撮影する私とカラスアゲハをじっと見学し始めた(写真中)。ご両親は画面の右、登山道の先の方から子供達の様子を見守っている。

 あとで裏高尾に移動してから、新鮮なカラスアゲハ、オスの吸水行動を撮影できた(写真下)。

(写真上/E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)
(写真中/E-330  魚眼8ミリ)
(写真下/E-500  ズイコーデジタル50-200ズーム)新開 孝

クサカゲロウsp.幼虫の食性 2006/07/31(追加)
 アカメガシワの葉っぱの葉柄近くには、一対の花外蜜腺があって、ここには数多くの昆虫が訪れる。

 もう一ヶ月以上も前から気になっているのだが、蜜腺を訪問するお客さんに意外な顔ぶれを見つけている。
 それは、背中にガラクタを山積みした、クサカゲロウの一種の幼虫である。

 アカメガシワの蜜腺カウンターがにぎわっていないときにでも、必ずと言っていいほど、この「がらくた屋」が1匹、2匹、いやそれ以上の数を見かける。

 最初は、このクサカゲロウ幼虫のねらいは、蜜腺にやってくる小昆虫であろうか、と思っていたのだが、どうやらそうではなくクサカゲロウ幼虫は大アゴをしきりに蜜腺にあてがい、吸入している様子である。

 もっとも、本来は肉食のクサカゲロウであるから、蜜腺を訪れた昆虫を獲物とすることもあり得ることだろう。彼らの獲物は、アブラムシ類に限らず、あらゆる昆虫類を餌食とするから、アカメガシワの葉上レストランは、メニュー豊富な五つ星レストランなのかもしれない、と想像してみる。

(E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

ルリシジミのメス 2006/07/31(その1)
 ヤマハギの蕾みで産卵しているルリシジミのメスがいた。

 ヤマハギにまとわりつくように飛んでから、はねを半開して日光浴(写真上)。このあと地面へと舞い降り、何度もクロヤマアリに邪魔されたあと、ようやく吸水を始めた(写真中)。

 地面での吸水では満たされなかったか、今度はヌルデの葉上にあった水滴に口吻を伸ばした(写真下)。

 「ルリ○○○」という瑠璃色の和名がついた昆虫は数多い。植物にも多く見られるが、とくに昆虫だけに絞って見ていくと、では瑠璃色とはどんな色だったのだろうか?と気になってしまう。もっとも命名する段階で、昆虫の体色を厳密に吟味しているわけでもないだろうから、「ルリ」色っぽい、というイメージが先行しているのだろう。
 以前に、この「ルリ」が和名についた昆虫を片っ端から撮影してみて、それを一同に並べてみたら、「瑠璃色」の正体が少しは見えてくるのではないか、とそんな単純な発想で撮影リストを作ってみたことがある。が、しかし、昆虫の体色というのは同じ種類でも条件によって千差万別であり、これを写真でそれぞれきちんと再現するのは不可能に近い。
 
(E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

ジョロウグモの幼体 2006/07/31(その2)
 ジョロウグモの成体は特徴がはっきりしていて、その識別に迷うこともないが、このところ雑木林の縁でよく見かける円網に陣取っている写真のクモは、ジョロウグモのよく知っている成体の姿とはかなりかけ離れている。

 もっとも、昆虫の場合、とくに完全変態するものなどは、親と子どもの姿は全く別物であって、その違いからすればクモの幼体と成体の違いなどはごく僅かでしかないのかもしれない。しかし、例えばこれから出版されるクモ図鑑に期待したいことは、できるだけ幼体の姿も載せて欲しいということである。

 クモの成体の識別については、ほとんど素人の私から見れば、幼体となるとまるっきりわからない世界となってしまう。

(E-500 マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

ノミの夫婦 2006/07/30(その1)
 エゴノキの実に、エゴヒゲナガゾウムシの姿が多い。

 すでにほとんどの実は、このヒゲナガゾウムシのメスが残した産卵痕がついている。たくさんの産卵痕を見ていくと、その穿たれた大きな穴に、頭を突っ込んでいるメスや、あるいはお尻を差し入れて産卵中のもの、そしてその側でメスの仕草を見守るオスなどと、エゴヒゲナガゾウムシたちは、今まさに活況の最中である。

 あるメスが産卵中のところへオスがやってきて、プロポーズを始めた瞬間に出会した。そのオスはきわめて小柄であり、メスと比べると体長では半分しかない。
 メスは産卵中であるから、オスが背中に這い登っても交尾は不可能だ。

 エゴヒゲナガゾウムシを見ていると、その体の大きさにはずいぶんとバラツキがあることに気付く。今日は極小のメスを見て驚いたりしたが、体格の大小はオス、メスの性別に関わり無く生じる。
 その理由は、幼虫時代を過ごしたエゴノキの種子内の栄養状態に大きく左右されるからであろう。エゴノキの種子にも大小のバラツキがあるから、豊かなゆりかごとそうでないものとでは、当然ながら幼虫の成育の差にも大きく影響するに違いない。

(EOSキッスデジタルN  マクロ65ミリ)
 新開 孝

目の上のたんこぶ 2006/07/30(その2)
 エゴノキの実に穴を穿ち、そこへ産卵中のエゴヒゲナガゾウムシのメス。

 そのメスの頭部に直立して付着しているダニの一種が、逆光のせいでよく目立つ。なんとも鬱陶しい感じがするが、よくよく見れば、ダニの刺点はヒゲナガゾウムシの複眼と頭部体表面の境界線あたりだ。

 この状況ではヒゲナガゾウムシ、メスの視界には嫌でもダニの姿が入っていると想像される。しかしながら、いったん取りついたダニは、少々のことでは取り払うこともできないのではないか、と思う。

(EOSキッスデジタルN  マクロ65ミリ)新開 孝

オオフタオビドロバチの育児室 2006/07/29
 先日、紹介したオオフタオビドロバチの竹筒巣内を割り開いてみた(写真上)。
写真画面左側が、筒巣の出入り口。

 竹筒の長さは13センチで、筒の内径は約16ミリ。その筒内には7室の育児室が泥壁で仕切られ設えてあった。
 7室全部で、すでにオオフタオビドロバチの卵はふ化しており、当然ながら再奥の部屋(画面右はし)の幼虫がもっとも大きく成長していた。
 画面左端の巣口に接した部屋では、まだ幼虫はふ化後間もなく体長は2ミリ程度しかない(写真中)。

 入り口から5番目の部屋がもっとも広くなっている。ここの幼虫と餌の芋虫を外に出して並べてみた(写真下)。餌として親バチが貯えた芋虫はワタノメイガだろうか。この部屋ではその餌の数ももっとも多く、8匹詰め込まれていた。一番少ない部屋では5匹であった。

 餌として貯えられた獲物のワタノメイガ幼虫たちは、いずれもピンセットでつまむとしきりに体をよじる運動はするが、歩くことはできない。みんな親バチによって麻酔がかけられているからだ。我が子に生き餌がちゃんと行き渡るようにという、母バチの配慮であり、餌の芋虫が生きている限りは腐る心配もない。

 それでも育児室そのものの環境が、できるだけ乾燥していることが必要であり、そのためにも地面からある程度の高さがあって、雨がかからぬ、という条件の巣場所といえば自然界ではそうそう多くはない。
 したがって、住宅のベランダのような場所こそは、上記のような条件を満たしているので、内径の大きさをいろいろ揃えて竹筒を設置してみれば、様々な種類の泥バチ達が育児巣を求めて訪問してくれるに違いないのである。

 先日、お母さんとお子さん(小学低学年)を対象にした講演会で講師をしたのであるが、そのときオオフタオビドロバチの写真が出てくると、会場のお母さん数人から、「わあーっ、刺される!!」と声が出て、こちらが驚いてしまった。
 ベランダにそんなハチが出入りするなんて、恐い!!というのである。どうやらハチといえば、すぐに刺される、という異常なまでの反応は、近頃の民放テレビのお馬鹿なスズメバチ報道の影響も強いのではないかと思う。

 ハチに刺されて死ぬなどというのは、こう言うと語弊を招くとは思うが、まずは宝くじに当たるような出来事であり、交通事故死する確率よりかはるかに低い、という、この単純な事実に気付かない人があまりにも多い。
 で、まずは、民放テレビなどの「恐怖!!スズメバチの逆襲!!」などと言うような関連の報道を、真に受けては欲しくないのである。
 
 少なくとも家屋近辺に出入りする泥バチたちは、この上なく安全なハチだと申し上げたい。

 謂われも無い誤認識でもって、数多くの殺戮を積み重ねる日常の殺虫行為を、何の意識にも問わず、というところで少しは考え直して欲しい、と思うのである。

 「知る」、という行為は、自らが努力すべきであり、特に受けてねらいのマスコミ報道には、厳しく客観性を帯びたフィルターを掛けて欲しい。「知る」という行為は自らの責任においてなされるべきなのである。と、思う。

 
(写真上、下/EOS-5D  マクロ100ミリ)
(写真中/EOS-5D マクロ65ミリ)新開 孝

吸いもどし 2006/07/28(その1)
 イチモンジセセリが鳥の糞に口吻を伸ばしていた。

 鳥の糞を餌とする昆虫は多いが、特にチョウの姿はよく目立つ。
 イチモンジセセリはときおり、お尻を曲げては糞に一粒の透明な液体を注いでいた。これは「吸いもどし」と呼ばれている行動で、乾燥した糞から養分を吸い上げるということだろう。

 (E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

パラシュート 2006/07/28(その2)
 葉っぱにペタリと貼付いた白い物体は、鳥の羽毛にも見える(写真上)。
実際、昆虫の天敵である鳥の目から見て、そう見えるのかどうかはわからないが、少なくとも生きた昆虫の姿と判断がつかないのでは、と思われる。

 すでにご存知の方も多いはずだが、この白い放射状のようなものは、ベッコウハゴロモ幼虫が体から分泌しているワックス状物質である。
 で、この白い放射状物質を、傘を閉じるように束ねてしまえば、ベッコウハゴロモ幼虫の正体が知れる(写真中)。

 ベッコウハゴロモ幼虫は、尾端部にある複数のワックス分泌器官からそれぞれ数条の糸状物質を伸ばしており、分泌器官の角度を自在に操作することで、自らの体を白い羽毛状の傘で覆いかくすことができる。

 しかし、身の危険を感じて逃走しなければならないときに、彼らは傘を閉じてからジャンプするという技を持っている。梢から一気にジャンプして姿を消すのである。
 そのとき高所から落下する際には、再びワックス傘を広げる。するとそれは、見事にパラシュートの役目を果たし、落下速度を極めてゆるやかに抑えることができる、という事実を今日は目の当たりにしたのであった。

 ただし、このパラシュートは非常に脆い。軽いという利点はあるが、素材がワックスだから、ポキポキと折れ易いのである。

 (写真上/E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)
 (写真下/キッスデジタルN  マクロ65ミリ)新開 孝

オオフタオビドロバチ 2006/07/27
 今年もオオフタオビドロバチが、ベランダに置いてある竹筒で営巣した。

 今のマンションに引っ越してから4年間の毎年、オオフタオビドロバチはどこからともなく飛来して、私が設置した竹筒を子育ての場所としている。

 しかし、今年の夏はうっかり観察を怠ってしまった。今朝、気付いた時点ではすでに一本の竹筒内での営巣をほぼ完了し、その最後の仕上作業中であった(写真上)。

 泥壁で育児室が閉鎖される前に、かろうじて天井からぶら下げられた卵と、餌として貯えられた蛾の幼虫(写真中)を見ることができた。

 作業が終わると(写真下)、オオフタオビドロバチの母バチは天空高く舞い上がり、また新しい別の育児場所を求めて旅立っていった。

(E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)

新開 孝

キマダラセセリの幼虫 2006/07/26(その1)
 アズマネザサの葉っぱに糸をかけ、葉っぱを縦に折りたたんで巣にしている幼虫を見かけた。
 この幼虫は、顔の模様からキマダラセセリであることがわかる。

 幼虫が吐き出す糸には縮んでいく性質があるのか、一カ所で何度も糸吐きを繰り返していくうちに、葉っぱがしだいに合わさっていく。
 巣造りは葉っぱの先端部からはじまり、最後には一枚の葉っぱのほぼ全体が、折り畳まれることになる。その巣トンネルは、幼虫の体長よりか数倍も長い。

(E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

セスジスズメの幼虫 2006/07/26(その2)
 ある方から、セスジスズメの幼虫をいただいた。
その幼虫は、家庭菜園のサトイモの葉を暴食していたそうで、過去には駆除されたこともあるそうだ。

 セスジスズメの幼虫は、街中のつる草、ヤブガラシなどでよく見かけることがある。しかし、サトイモの葉っぱも食べることを私は初めて知った。家庭菜園などはけっこう気に掛けて見ているが、普段からサトイモだけは注目してなかったせいだと思う。

 それにしても眼玉模様のような紋様が並んだ姿は、まるで妖怪そのものだ。案外、昔の人はこういう幼虫を想像力を逞しくして見ていたことだろう。そして、いろんな奇抜な妖怪の存在を怖がったり、楽しんだりしていたに違いない。

 さて、このセスジスズメ幼虫を私に引き合わせてくれた方は、家庭菜園を楽しまれているおばさまだが、以前なら駆除していたものの、私のささやかな影響を受けられてから、この「キモイ芋虫」を、なんとも神秘的で不思議な生命として、眺める楽しみを見出されたようであった。

(EOS-5D  マクロ100ミリ)

新開 孝

宮崎は夏晴れ 2006/07/25
 今朝は、クマゼミのにぎやかな合唱で目が覚めた。

 朝から気温はぐんぐんと上昇し、いっそうクマゼミの鳴き声も凄まじくなる。クマゼミのオスをさっそく撮影してみたが、ほんとうに久しぶりに青空を背景にした写真となった(写真上)。
 これまで、どれだけ青空背景の写真を撮りたかったことか!

 さて、いよいよ本日は、三股町の新居=我が家を引き取る、最後の現場確認であった。
 空には大きな入道雲が出て、どうやら宮崎は梅雨もほぼ明けたのではないか、と思えるほどの好天。そして、蒸し暑い!!

 先月、我が家(もう、「我が家」と胸をはって言えるようになった)の外壁で見たコガネグモ2匹は、いずれも大きな卵のうをこしらえて健在。これは嬉しい。このような大型のクモが敷地内で繁殖するということは、ここに棲息する、あるいは出入りする昆虫がいかにも多いことを物語っている。

 台所の窓では、大きなアシダカグモもいたし、家の外壁の地際には無数のツマグロヒョウモン蛹がぶら下がっている。屋内にはウシアブやクロヒカゲや、シオカラトンボなど、薮と間違えて飛び込んでくる昆虫は数知れず。お化け屋敷ならず、まさに昆虫屋敷と言える(写真中)。

 で、私の仕事部屋、そしてそこへ連結するスタジオの配置なども、だいたい構想が決まってきた(写真下/庭からの展望、霧島山系が見える)。


(写真上/E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)
(写真中、下/E-330 魚眼8ミリ)

新開 孝
menu前ページTOPページ次ページspace.gif
Topics Board
ホーム | 最新情報 | 昆虫ある記 | ギャラリー | リンク | 著作紹介 | プロフィール