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ヤマイモハムシ 2006/08/11
 体長5、6ミリの本種は、ヤマノイモの葉っぱで見つかる。

 ハムシ(葉虫)とはその名の通り、成虫も幼虫も葉っぱを食べるベジタリアンであり、なおかつ種類により食べる植物もほぼ決まっている。
 だからヨモギハムシは、ヨモギで見つかり、ヤナギハムシはヤナギで見つかる、という具合。

 ヤマイモハムシは近所でちらほら見かけるハムシだが、かと言ってヤマノイモを暴食するほど、繁殖しているわけでもない。どこか控えめに生活しているように見える。
 
 (E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

「ゴマダラ岬」巡り 2006/08/10
 今日の午前中は、埼玉県三芳町、多福寺の雑木林で、昆虫観察会の下見を行なった。

 さて、観察コースを巡るうちにエノキの小木で、多数のゴマダラチョウ幼虫を見つけた。
 ほとんどが1令幼虫であり(写真上)、2匹だけ角が生えた2令幼虫も混じっていた(写真中、下)。これからふ化しそうな卵もある。

 この幼虫たちはいづれも例外無く、葉っぱの表側、その先端部分に静止しており、また頭の方向も葉の基部へ向けている。その几帳面な習性には驚くばかりであるが、葉っぱを岬に例えるなら、その岬の突端にゴマダラ幼虫は必ずや留まっているのであり、ふと、これは「ゴマダラ岬」だなあ、と思った。
 幼虫が頭部を持ち上げれば、それはそれで「ゴマダラ燈台」となるわけだ。

(E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)

 さてさて、明後日に講師として参加する「三富昆虫探検隊」の下準備だったわけだが、この催しは今年で3回目となる。

 じつは6月に八王子市、長池公園で行なった昆虫観察会が、今年最後の観察会になるようなことを以前に書いてしまった。そう書いたのも、「三富昆虫探検隊」の企画については例年よりか開催の打診を受けたのが遅く、今年は開催しないものと私自身は早くから勝手に思い込んでいたからである。したがって、「最後だから!」ということで八王子まで駆けつけてくださった参加者の方々には何だか申し訳ないような気もしている。

 今年は何といっても武蔵野地域で活動できる最後の年でもあるが、しかし、この秋/冬は特に撮影や原稿書きで忙しく、観察会の予定は明後日以降にはない。また講演会については2、3件あるのみで、こちらも追加予定は入れないことにしている。
 それもこれも来年、3月末の宮崎移転に備えて、今継続中の仕事を年内に完了しておかなければならないからで、移転後は新住居での生活、仕事場の新設、新しいフィールドの探索、等々、やるべきことが山積している。
 また我が家の子供達もこれまでとまったく異なる生活環境や、新しい学校生活などにいきなり投げ込まれるわけで、とくに心情面でのフォローもこまめに必要だろうと思う。
 なんだか切羽詰まったような書きぶりになってしまったが、それでも後が無い、という今の状況は、良い意味での緊張感がほどほどにあって、そのせいか今年の撮影テンポは過去のなかでももっとも調子が上がっていると自分で思う。
 

新開 孝

キイロショウジョウバエの羽化 2006/08/09
 キイロショウジョウバエは、我が家のカブトムシやクワガタムシの餌にやってきては繁殖している。
 私が飲みかけの焼酎のグラスを置くと、フワリとどこからともなく寄って来るのもショウジョウバエたちだ。

「猩猩」(しょうじょう)とは「大酒飲みの人」という意味もあるが、グラスにやってくるショウジョウバエに、ほとんど不潔感をおぼえることはない。私の場合、その理由はクヌギの樹液にやって来るショウジョウバエの姿と重なって見えるせいかもしれない。
 
 さてそうは言っても、これまでショウジョウバエの撮影をきちんとしてこなったのも事実であり、またその理由も明らかだ。
 理由の一つは、ショウジョウバエの体が極めて小さく、撮影が厄介であること。
 二つめには、いつでもどこでも撮影できるからと、先延ばしにしてしまい、腰が重かったこと、などが主なところである。つまり怠慢ということ。

 先日からキイロショウジョウバエの幼虫や蛹などを眺めているうちに、まずは羽化シーンを撮影しておきたくなった。このシーンは来年出版予定の本で、是非使いたい。

 で、まず蛹をきれいに洗ってから、濡れたティッシュの上に並べてみる。すると半日程度で、蛹のなかでしだいに成虫の体が出来上がっていく状況が実体顕微鏡下で観察できる(ルーペでもいいが、現在、紛失中)。
 真っ赤な複眼と、黒く小さな翅がしっかりと見えてきたら、そろそろ撮影待機となる。

(EOS-5D  マクロ65ミリ)

 蛹といってもその大きさは、体長2.8ミリ程度。
その蛹の背中側と腹側、そして頭の向きなどを把握しておき、そっと面相筆の先で蛹をセッティングするのは、けっこう熟練を要する作業だ。蛹は表面張力だけで舞台のバナナの皮にピタリと貼付く。

 撮影用レンズは、Canonの65ミリマクロ。これを最大に繰り出して、約5倍という撮影倍率での接写となる。
 照明にはストロボが3灯、そしてモデリングライトとして小型蛍光灯を2台使う。これだけの倍率だと、ファインダーは真っ暗で、モデリングライトは必要で、しかも被写体の左右から投射したほうがいい。

 スタジオ用ストロボでは発光部が大き過ぎて、細かい配光位置の調整が効かないので使わない。そのため今回のような超接写撮影ではモデリングライトが別途必要となるのが欠点だ。(ちなみにクリップオンタイプのストロボ、サンパックのB3000Sでは、発光部内にモデリングランプを自分で組み込んでいる)。

 さて、ストロボ3台が自在アーム3本の先にあって、小型蛍光灯が2台、そして長く伸びたレンズの先端、それらが被写体の舞台を囲んでいるわけである。カメラを支える三脚は野鳥カメラマンが使うような大型のもの。被写体が2.8ミリの小ささでも、撮影セットはかなり大掛かりに見えることだろう。

 舞台はフィルムケースを切って作ったお椀を、小型自由雲台に乗せている。この舞台には先の機材類が20センチからせいぜい数センチもの近距離で取り囲んでいるから、舞台の上の蛹の位置や傾きなどを面相筆で微調整するのはさらに難しい。
その作業をしている様は、まさに歯医者さんが狭い口内を治療する光景に似ているとも思う。
 
子供の付き添いで歯科医院を訪れると、そばから治療の様子や、医療器具の観察ができて、とても参考になる事が多い。治療器具類は機能性を追求して設計されているだけあって、そのまま撮影機材に応用したくなるものもある。
 また乳歯にはめる鋳物充填物を指先でつまみ上げ、その1センチに満たない大きさのものを肉眼で確認し、正確に一発ではめ込む技なども、驚嘆するしかない。
 
  
新開 孝

クズの葉に産んであった卵 2006/08/07
 直径2ミリ程度の、昆虫の卵としては比較的大きめの卵がクズの葉うらで見つかった(写真上)。

 これはもしかしたら、トビイロスズメの卵かと思う。このトビイロスズメは、幼虫も成虫もかなり大型のスズメガだ。

 さてはすでにふ化した幼虫でもいるのではないかと探してみれば、すぐ近くの葉っぱでおそらく同種と思われるふ化幼虫が見つかった(写真下)。
 トビイロスズメ幼虫はゆっくりと成長し、秋ごろに土中に潜り込む。そのまま幼虫で越冬し、来年の初夏になってようやく蛹化するそうだ。
 つまり成虫も年一化ということになる。

(E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

コンボウヤセバチ 2006/08/06(その1)
 ベランダに置いた棚を、ゆっくりと物色するかのように飛翔していたのは、コンボウヤセバチであった。

 コンボウヤセバチがうちのベランダにやって来た理由は、ここで毎年営巣する泥バチ類をねらってのことではないか、と思う。

 コンボウヤセバチ科は国内では2属5種が記録されているが、これまでにわかっている種では、寄主は単独性のカリバチやハナバチであるそうだ。
 あるいは稀に竹筒内の巣や泥巣から羽化することもあるということだから、うちのベランダで営巣するオオフタオビドロバチやスズバチがねらわれてもおかしくないわけである。

 それにしても本種はこれまで2、3回しか見た事がない。いずれもあっと言う間の出来事で、しっかりとその姿を観察できたことはなかった。
 今日はしっかりとその姿を観察できたが、ほんとうに変ちくりんなハチである。

(EOS-5D  マクロ100ミリ)
新開 孝

キイロショウジョウバエ 2006/08/06(その2)
 我が家では、カブトムシとノコギリクワガタを子どもが飼っている。
マンションの灯火に飛来したものや、裏の小さな林で見つけたもので、特別に採集に出向いたものではなく、日常生活の中で偶然に拾った個体ばかりである。

 で、その餌にはデザートの残りのメロンやバナナを与えているが、そこにはすぐにキイロショウジョウバエが発生する。
 キイロショウジョウバエは、私が飼っているヒメカマキリモドキ(本日、最後のメスが死んでしまった)の生き餌としても重宝してきた。

 このキイロショウジョウバエも、ルーペで拡大してみればそれなりに可愛い姿なのである。
 およそ10日間で、卵から成虫にまで成長するというから、キイロショウジョウバエの繁殖力は凄まじい。

(EOS-5D  マクロ65ミリ)新開 孝

森のクラゲ 2006/08/05(その1)
 ここ数日、真夏の猛暑が続く。
 
 緑の水中を漂う「森のクラゲ」がなんとなく涼しげで、羨ましい。


 
 「森のクラゲ」の正体は、アサギマダラの蛹殻である。
 じつは先日、8/1に高尾山で撮影していたカットで、キジョランの葉うらで見つけたもの。見つけたそのときには、まだアサギマダラ成虫がぶら下がっていたことは、すでにアップしている。


(E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)


新開 孝

クマバチの芸術 2006/08/05
 クマバチの巣を眺めていると、坑道の拡張作業でもしているのか、ときおり巣穴からポロポロと小さな木屑がこぼれ落ちてくる。あるいは排便であろう粘液も落ちてくる。

 そこで、巣穴の下、50センチくらいのところに白紙を受け皿として置いてみた。木屑のような軽いものは風で飛ばされてしまうが、それ以外はだいたいが落下点に残っている。

 さて、どのくらい待ったであろうか、巣穴の奥でモゾモゾする様子が窺えたので、カメラを構えてみた。
 すると真っ黒なお尻がゆっくり巣穴の外へと差し出されてくる。
 その動きがピタリと止まった次の瞬間、
 ムニュムニューっと、うこん色した一筋の軟便が、垂れ落とされたのであった。

 数回にわたって、それはまさに絵の具がチューブから絞り出される様子そのもの。私が用意した白いキャンパスには、クマバチの芸術作品が出来上がった。

 この作品は、6本足のタコのようにも見えるが、その体にあたる部分は、ほとんど液状の排便を先に見たのであった。液状であるから途切れることなく垂れて、キャンパス上では、水たまりとなったのである。

 このキャンパスをもうしばらく設置しておくと、どんな作品に仕上がっていくだろうか?

(EOSキッスデジタルN  マクロ100ミリ)新開 孝

クマバチの母娘 2006/08/04
 クマバチの巣は、人里の木造建築物に巣をかまえることも多いが、雑木林では梢の枯れ枝に造られる。

 さて、一ヶ月以上も前に雑木林のエゴノキの立ち枯れ枝で、クマバチの巣を二つ見つけていた。その巣の高さは、一つは目線の位置で、二つ目は地上から2メートルほどであり、クマバチの巣としてはかなり低いほうだ。
 林の樹種構成にもよるだろうが、ここ武蔵野近辺では、エゴノキそしてアカマツ、クワなどの朽ち枝部分での営巣が目立つ。

 二つの巣を見つけた時点では、すでに子育てがかなり進んでいると思われ、当初は巣内の花粉団子や幼虫などの様子も覗いてみたいと迷ってはいたが、やはり断念して今日に至ったのである。

 それで今日は、成虫の巣からの出入りを観察してみると、一つの巣内には複数のメスがいることがわかった。つまり越冬明けの母バチが単独で穿ってこしらえた巣内では、すでに娘たち数匹が成虫として育っており、母バチと同居しているのである。
 一旦外に出掛けると長い時では1時間、短くても40分くらいは戻ってこない。 もしかしたらオスバチも羽化している可能性もあるが、まだそこまでは確認できていない。いずれにせよ、オスバチはメスよりか出現が後になる。

 ハチの仲間でも最大級サイズの卵や、そしてまず天敵に襲われることなく完璧な育児をこなすというクマバチ特有の子育て法など、今後はじっくりと撮影してみたい課題でもある。
 そういう撮影については、もはやフィールドで行なうのは無理な話であり、これもたくみにクマバチを自分の住居の敷地内に誘致するのが一番、手っ取り早い。

(EOSキッスデジタルN  マクロ100ミリ)

 なお、本日は二つの巣をそれぞれキッスデジタルNと、OLYMPUSのE-330に50-200ズームという組み合わせの、2台のカメラで待機してみた。
 マクロ100ミリでは近付き過ぎかと思ったが、クマバチの行動にさして影響は与えなかった。ズームレンズは200ミリの望遠側で使い、少し巣から距離をおいてみた。これは35ミリ換算で400ミリ望遠相当になるが、さすがにこの距離だと撮影する上では緊張感から解放され、リラックスして待機できた。
 今日のカットはたまたまキッスデジタルNのものとなったに過ぎない。新開 孝

キボシアシナガバチ 2006/08/03(追加)
 アシナガバチ属(ポリステス)のなかでも、巣の繭のふたが鮮やかな黄色をしているのが、キボシアシナガバチの特徴。

 本種は住宅周辺にもっとも普通に見られるコアシナガバチとよく似ているが、巣がわかれば区別は容易い。
 キボシアシナガバチはとてもおとなしいハチであるから、巣の近くで撮影していても刺しにくることは無い。もちろんハチをいたずらに刺激しないよう振る舞う位は最低限のマナーだ。これは他の昆虫でも言えることだろう。

 さて、働きバチたちは肉団子を抱えてはさかんに帰巣してくる。肉団子が大きいときは、すぐに他の働きバチと分配して、それぞれが幼虫に給仕していく。アシナガバチの巣での子育ての様子を見ていると、見事な分業、助け合いなど、まさに社会性昆虫の暮らしぶりの面白さに惹き込まれる。

 さらに巣の様子を見ていると、すでにオスの姿もあった。まだ一匹しかいないが、これからも羽化してくることだろう。

(E-330  魚眼8ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

ワカバグモの狩り 2006/08/03(その1)
 ワカバグモがササキリ類の幼虫を捕獲していた(写真上)。

 私としては、そのササキリ類が何の幼虫なのか知りたくて、しばらくしつこく観察してみた。するとワカバグモは危険を察知したのか、空中に身を投じてしまった(写真下)。

 写真では、ワカバグモのお尻から伸びているはずの糸が写り込んでいないが、これは空中にぶら下がった瞬間なのである。

 
(EOS-5D  マクロ100ミリ)新開 孝

伝書バトの死と運のつき、とは 2006/08/03(その2)
 おそらくはオオタカの仕業であろうと思う。

 昨日、エントツドロバチを観察した梅の木を今日も再び訪れてみたのだが、その傍らに積んであった枯れ草の山の頂きに、首が喰いちぎられたハトの死骸があった。むしり取られた羽毛が地面に散らばっており、これはまさにオオタカの所業と言える。

 ここの畑で作業しているおばさんは、このところ毎朝6時半には水やりに来ていると、話していた。それ以後もときどき、畑の世話に来ているようなので、オオタカがさて、伝書バトを捕らえて食事にありついて間もなく、それほど時間が経たないうちに、おばさんの登場となってしまったに違いない。と、想像してみた。

 オオタカが選んだ食事場所は、運が悪かったとしか言いようが無い。 
 伝書バトの足輪を見れば、その飼い主の電話番号から、ごく近所から飛来したハトであることもわかった。

(E-330  魚眼8ミリ)

 運が悪いと言えば、今日の私もついて無かった。

 じつは、梅の木の場所に着いてカメラを構えた瞬間、目の前の梢で、エントツドロバチが狩りを始めたのであった。梅の葉っぱを巻いた中には芋虫が潜んでおり、それを懸命に追い出そうとしていることがわかった。
 しかも、しばらくすると葉っぱの隠れ家の中から、たまりかねて芋虫が飛び出し、口から糸を吐き、その命綱の先にぶらり、とぶら下がったのであった。

 これはエントツドロバチが芋虫を狩る瞬間を、見事にとらえることができる、またとないシャッターチャンス!!とにかく芋虫にピントを合せておけばいい。

 ところが、そこで私の運は尽きた。

 芋虫にフォーカスを合わせようとした瞬間、向こうから農家の方が一輪車を押してやってきたのである。少し前から視界に入ってはいたのだが、小道のど真ん中に立ちふさがっていた私は、撮影を中断せざるを得なかったのである。ここでは控えめに道を譲ることが、礼儀というものだろう。
 で、結果は知れている。エントツドロバチは空中で芋虫を見事に捕らえて、一気に上空へと舞い上がっていったのであった。
 私は農家の方に軽く会釈をしてから、呆然とエントツドロバチを見送るしかなかった。

 状況的には撮影を強行しようと思えば、できなかったわけでもない。しかし、私はまさに人の土地に入り込んでいる立場であり、しかもその農家の方とはまだ挨拶も交わしていなかった。農家の方が重い水タンクを載せた一輪車を押しているところを邪魔することなど、許されることではない。他の場所では、事後承諾が通るほどの、農家の方との親しい付き合いもあるが、ここではそうではなかったのである。

 あわよくば、エントツドロバチが獲物を抱えているカットだけでも今日はおさえておこうと考えていた。しかし、仕事のねらいは他にあって、そちらを優先しなければならなかった。それと、昨日見たエントツドロバチの巣はすでに獲物の搬入を終えている可能性もあり、実際にそうであった。
 私が幸運にも見ることができた狩りの主は、昨日と同じ個体かどうかは判然としないが、別の場所で営巣していることは間違いない。
 
 ここの梅の木は、泥バチ類の狩りの様子を撮影する上では、かなりいい条件を備えているように感じる。数日間も通えば必ず良い成果が上がる事だろう。もし私に弟子でもいれば、「お前さん、しばらく頑張ってみんかい!」と、自信をもってそそのかしていたに違いない。

 だが、私は今のところ泥バチの撮影に深入りする時間的な余裕はない。
じつは昨日もエントツドロバチの帰巣を待ちながら思ったことだが、こうした泥バチ、いや「家バチ」とも呼ばれる狩りバチ類の撮影は、来年の宮崎に転居してからじっくり行なえば良いこと、と割り切っているのであった。
 また、そうでもしない限り、ここ武蔵野のフィールドで片手間に撮影したところで、その成果は実に薄っぺらいものでしかないことも、明らかである。

 すでに宮崎のわが敷地内では数多くの泥バチの営巣を確認しており、さらに誘致作戦を展開すれば、それこそ庭の中で多種類の、それもうんと掘り下げた撮影ができることは、間違いないのである。

 エントツドロバチをはじめ、泥バチ、家バチの興味津々の撮影は、来年、宮崎の新住居で再開したいと、考えている。新開 孝

エントツドロバチ 2006/08/02(その1)
 エントツドロバチとは、通常、オオカバフスジドロバチと呼ばれている。
 しかしながら、彼らが泥で作る泥巣の入り口には、必ず煙突状の筒があって、その特徴ある巣作りの様子から、エントツドロバチと言う呼び名はいかにもふさわしい、と思える。

 このエントツドロバチの巣と、そしてハチそのものを目撃する機会はそれほど多くはない。少なくとも私自身の経験では。

 今日は、梅の梢で芋虫を捕らえたばかりのトックリバチを見つけ、撮影しようと近付いて逃げられた。かなり悔しい場面だった。
 泥バチたちが狩りをするシーンは、いざ撮影しようと思い立ってもすぐに叶うような生易しいものではない。毎年この時期には、布団の中で「明日こそはいいチャンスに恵まれたい」、と願いつつ就寝する日が多く、ちょうど昨晩も泥バチの撮影祈願をしたばかり。
 これは祈願成就か!と勇んだのがいけなかったのか、その殺気がハチを追いやってしまったようだ。

 で、素早く獲物を抱えて飛び去るトックリバチを見送っていると、入れ替わりに他の泥バチの飛ぶ姿を目にした。
 なんとエントツドロバチが芋虫を抱えて、梅の木のウロの中へと飛び込んでいくではないか!
 エントツドロバチの巣は、梅の木の窪んだ場所に隠すようにして設えてあった。その場所なら雨を凌ぐ事が出来る、うってつけの営巣空間だ。

 待つこと40分。ルリジガバチの撮影などを挟んで、腰を落ち着けていると、バシン!!と私の頭に追突したものがいる。それが獲物を抱えたエントツドロバチであった。巣のそばに陣取っている私に機嫌を損ねたのであろうか。しかし、すぐに体勢を直して泥巣の中に獲物を搬入した。

 この泥巣の場所は縦に長いウロの奥にあり、エントツドロバチの姿を真横から撮影するのはほとんど不可能であった。


(写真上/梅の木のウロにあった泥巣口/E-330 魚眼8ミリ)
(写真中/獲物を搬入する/E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)

(写真下/煙突から出て来たエントツドロバチ/E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)
 新開 孝

ルリジガバチ 2006/08/02(その2)
 エントツドロバチが狩りをして戻ってくる間、私は梅の木のかたわらにうずくまっているしかなかった。幸いにしてそこは木陰であったから、炎天下の待機は我慢もできたのであるが、いささか退屈でもあった。

 しかし、ときおり空中で獲物を捕らえるオニヤンマのダイナミックな飛翔や、遠くのエノキの梢に金属光沢の輝きをちらつかせるヤマトタマムシの飛翔など、いかにも心和む夏の風景が目を楽しませてくれる。
 
 ときおり腕時計を気にしてみるなど、わずかな視線の移動のうち、梅の木の反対側に、ほっそりしたハチの姿がチラリと見えた。このハチの登場には我慢ならず、ついに私は監視の持ち場を離れて、そっと梅の木の裏側に回ってみた。

 そのハチは素早く移動すると、並べ置かれた水タンクの上に伏せた板の、庇の下に潜り込んだ。私も急いで庇の下を覗き込んでみた。すると、ヒメグモの一種に飛びかかり、一瞬にして抱きかかえたルリジガバチを目の前にしたのである。

 獲物を口にくわえたまま、一旦は空中に舞い上がったものの、ルリジガバチはどうにか畑の隅に積まれてあった板きれに着地して、クモをくわえ直している。
 クモに飛びかかった直後に、麻酔針を急所へと正確に打ち込んだのであろう。その早業を写し止めることは、至難の技と思える。

 ルリジガバチは見るからにスマートであり、洗練され尽くしたような体型には、惚れ惚れとする。そして、まさに瑠璃色の体表面は派手過ぎもせず、真夏の日射しに控えめに輝いていた。

(E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝
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