| Eumenesはギリシャ語で「情け深い」という意味だそうだ。 発音はウーメネス。
日本にはウーメネス属が5種類いるとされる。 その5種類とは、スズバチ、ミカドトックリバチ、ムモントックリバチ、キアシトックリバチ、キボシトックリバチ。
これらは泥バチとも呼ばれる。ちょっと田舎に行けば、軒下の外壁に半球状の泥の塊が付着しているのをよく見掛けるが、これらは泥バチたちの仕業である。 うちのマンションのベランダにも毎年、スズバチが泥巣を造っていく。 「顔に泥を塗る」という言葉もあるように、我が家の白壁に泥を付けられることを嫌う人は多い。まんざら同情できないわけではない。 しかし、「情け深い」という命名にもあるように、この泥の塊は親バチが子育てをするためにこしらえた、いわゆる「ゆりかご」なのである。 その辺のことを理解していただき、体裁の悪さをとやかく文句言うばかりでなく、この機会にこそ、少しは身近な昆虫の生き様にも関心をもっていただきたいのである。
さて、本日見つけた泥壷はコナラの梢にあった。 この泥壷がウーメネス属5種のうち、どの種のものなのか?
おおよそ泥壷の外形でもって判別できるはずだが、長い冬を過ごして風雨に晒された壷は、すでに原型をとどめてはいない。 はて困ったのだが、壷口の直径が決め手となって、おそらくはキアシトックリバチであろうと推測した。ノギスを使って計測してみたところ、壷口直径は約1.7ミリであった。それが決め手となったのである。
以上の事は、昨年、神田古書店で買い求めた『自然観察者の手記ー昆虫とともに五十年』(岩田久仁雄/著)を参考にした。この分厚い手記は、まさに昆虫の生活を野外観察で緻密に綴った名作中の名作。
蛇足ながら、和名についてミカドトックリバチを近年の図鑑類ではトックリバチと表記されているように思えた。『自然観察者の手記ー昆虫とともに五十年』(岩田久仁雄/著)では、学名の種小名micadoからミカドトックリバチと表記しているのは、これは素直な表現と受け取れる。和名の混乱があるとすれば、整理したほうがいいのではないだろうか。
(写真上/コナラの枝についていた泥壷) (写真中/壷の内部。中の二重になった繭壁のうち、外壁をはずしたところ) (写真下/二重の繭壁を取り払って、中の幼虫を見てみた)
撮影地は、埼玉県比企郡鳩山町。  | |