| でんぐり返ったナナホシテントウ。このテントウ虫の状況を簡単に説明しよう。 まず、彼(彼女?)はまだ生きている。体に触れると脚の関節から黄色い汁まで出す。息を吹き掛けるともぞもぞ脚を動かす。 しかし元気は無い。 脚で抱えている大きな荷物、これが問題である。 誰の目から見ても明らかなように、このお荷物は繭である。 テントウ虫はこの繭に脚が絡んでしまったのであろうか? それで自由を奪われ、食事にありつけず飢えて弱ったのか? もしそうだとしたら、それはかなり悲惨な最期ではある。 もったいぶらずにきちんと説明しよう。 この繭を紡いだ犯人は、実はテントウ虫の体中から抜け出してきたのである。 つまり寄生バチの一種である。 その寄生バチの名前はテントウハラボソコマユバチという。 ずいぶんと長い名前だから、ここに書いてもすぐ忘れる方が多いと思う。 まあ虫の名前なんぞ覚えてもこの日本社会ではなんの役にも立たないが。 さて、その名前からしてこの寄生バチがテントウ虫専門であることが わかる。 今回の写真のナナホシテントウ以外ではナミテントウが同じく犠牲になる。 それ以外のテントウ虫にも寄生するかどうかは知らない。 いずれにせよ寄生昆虫の実に巧妙な生き様には驚くばかりである。 つまり繭を抱えてでんぐり返ったナナホシテントウは、 繭が仕上がる以前までは元気に生活していたのである。 寄生バチの幼虫はナナホシテントウの体内で自分が成長するに足る養分を奪い、 しかしながらナナホシテントウの健康を大きく損ねないだけの配慮をしているのではないか、と思われる。 今回のナナホシテントウは、ビデオ撮影の仕事用として私の部屋で飼育していたもの。 今日、餌を補充しようとケースを覗き込んだら写真のような状態だったわけである。 残念ながら寄生バチの幼虫がテントウ虫の体から脱出する瞬間を まだ見たことが無い。 テントウ虫の体のどこから出て来るのか、外見上からはその脱出口がわからないのである。 | |