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トノサマバッタ、産卵事情 2004/10/06(その4)
狭山丘陵で、トノサマバッタが路上で産卵しているのに出会した。それもアスファルトのひび割れた隙間で(写真上、中)。

実は狭山丘陵のこの一角は、トノサマバッタの大産地だったのだが、W大学という有名私立大学の造成地開発で、それまであった裸地と草地が、壊滅的打撃を被ったのである。それは凄まじい破壊行為であったが、教育という大儀名分の前では、一部市民の抗議の声など、瞬く間にかき消されてしまった。

それから数年経って、
このアスファルトの割れ目のわずかな土の露出は、トノサマバッタのメスにはかなり魅力的な場所になった。今日、私が観察している間にも、次々と産卵にやってくるのだ。これには驚いた。
しかし、さすがに車の行き来もある中で、犠牲になったメスも見受けられた(写真下)。見事にぺしゃんこになったこの遺体が語るものは、トノサマバッタのメスがここで産卵に没頭していて、車の接近にさせ身じろぎもしなかったという事実である。

新開 孝

ツツハムシ幼虫、歩く 2004/10/06(その3)
イヌシデの幹を這い登る、ツツハムシ類の幼虫がいた。
この幼虫は自分の糞で作ったケースから体を乗り出して歩くから面白い。危険を察知すると瞬時にこのケース内に体を引っ込めてしまう。
その様はまるで、ヤドカリのようだ。

ツツハムシと言うよりか、ヤドカリハムシとでも呼びたいくらいだが、遡って孵化したときのケースは母親の糞である。つまり母親は、産卵時に卵を自分の糞で包んでから放り捨てるのだ。孵化したばかりの幼虫は、親の遺産の家(糞だけれど)が用意されているわけで、まず住宅問題で悩むことはない。
幼虫は成長するに従い、今度は自らの糞を使って、親の形見の家を増築していく。
何故にイヌシデの幹を登り歩いていたのか、その理由はよくわからないけれど、新鮮な葉っぱを食べたかったのではないか?

いずれにせよ、このツツハムシ幼虫はこの糞ハウスに籠ったまま、地面の落ち葉の間で冬越しするのである。新開 孝

ゴマダラチョウの産卵 2004/10/06(その2)
小さなエノキの木でさかんに産卵しているゴマダラチョウに出会した。
昨日までの三日間、低温と雨に動きを封じられていた昆虫たちが、一斉に活動を始めたのを象徴するかのような出来事だった。
もう産みたくてたまらない!そんな勢いで、枯れ葉だろうが、なんだろうが構わず産みまくるゴマダラチョウのメスであった。

今日、産卵された卵から孵化した幼虫たちは、このあとゆっくり成長して4令幼虫となり、やがては地上の落ち葉に潜り込んで越冬する。新開 孝

ハグロハバチの成虫 2004/10/06(その1)
今朝、ギシギシの葉で見つけたこの葉蜂は、ハグロハバチだ(写真上)。
あまりにも地味なためこれまで撮影したことがなかった。それどころか姿を見かけても種名を調べようとせず無視してきた。
当「ある記」の9/21で幼虫を紹介したように、幼虫の方は派手な衣装を纏っており目を惹く。それでやはり幼虫を知ったからには成虫もきちんと見ておこうと思い直した。そしたら今朝、成虫に出会ったわけである。しかも、産卵中のメスだった(写真下)。
赤い矢印の向きに産卵管を刺し込んでいるのがおわかりだろうか。
ギシギシの主脈に対して、体から直角に産卵管を伸ばして卵を産み込んでいる。
ということは、年内のうちに幼虫がまた発生するのであろう。新開 孝

キアシナガバチのオス 2004/10/04
昨日からの雨と低温のため、キアシナガバチたちはじっと動かない。
こういう日は顔のアップを撮影するチャンスだ。

とは言っても、雨の中での撮影は厳しい。そこで、そっと葉っぱごと吹きさらしにしておいた部屋に持ち込む。
オスは頬が角張っているところに特徴がある。さらに人の鼻筋にあたるところが、鋭利な稜線となっていてなんとも掘りが深い顔付きだ。
この稜線を写真で表現するには、ライティングの工夫が必要だが、
ハチが動き出す前に撮影を完了しなければならない。迅速な作業となるが、影の出方をすぐに画面チェックできるデジタルカメラだと非常に便利だ。

天気情報によれば、これからしばらくは雨と低温が続くようだ。
それでもオス蜂がこうして残っている限り、まだ交尾の撮影のチャンスがあると、思いたい。
晴れる日が待ち遠しい。新開 孝

「私は葉っぱ」 2004/10/03
台所の窓を開けるとクスノキが植わっている。
いつのまにやらアオスジアゲハがここに卵を産みつけていく。
卵や小さな幼虫を摘みとっては、水差しで飼っていたが、そのうち5匹が蛹になった。最後の幼虫も今朝、蛹化準備に入ったから明日あたりは6匹となるはずだ。
蛹は皆、水差しの葉裏でおとなしく蛹化してくれた。したがってアオスジアゲハ幼虫を飼うには、糞が散乱しないよう水差しの下を工夫するだけで良い。
何も事情を知らない人が我が家を訪れると、窓辺に置いたこのクスノキの水差しに怪訝な顔をするかもしれない。
しかも水差しからは、ときおりパリパリという葉っぱをかじる音までするから、
何事ぞと驚かれるだろう。
それはともかく、葉っぱの裏に頭を上にしてくっついた蛹の姿は、溜め息が出るほど、葉っぱにそっくりだ。
とりわけ蛹の体に沿って走る数本の黄色いラインは、葉っぱの葉脈をそのままなぞったようでもあるし、また葉っぱの形をデッサンしたようにも見える。

人の目から見れば、アオスジアゲハはクスノキにとって、実に有り難く無い害虫であろうが、ここまで自分達の姿に似せている蛹を知れば、クスノキも少しはにんまりしているのかもしれない。「可愛いやつよ」と。
アオスジアゲハはクスノキにすがって生きているわけだから、進化の過程においてクスノキと何らかの密約を交わしていたのではないか。

本日は朝から雨。
予定していた飯能市吾野での仕事は流れたが、一応現場まで出向き、飯能市内のファミレスで打ち合わせだけを行った。
雨脚はいっこうに弱まることなく、帰宅してから気になっていたアオスジアゲハの蛹を室内で撮影してみた。新開 孝

アカタテハ、蛹の実験 2004/10/02(その2)
タテハチョウ類の蛹は、お尻の一点でぶら下がる格好をしている。
お尻の先には小さな鉤が多数生えていて、その鉤をあらかじめ吐いて作った足場糸に引っ掛けている。
危なっかしいと言えばそうだが、その上さらに自ら体を揺らして、激しい振り子運動も行うから、そばで見ていて落っこちはしないかとハラハラさせられる。
今回は仙台育ちのアカタテハの蛹を使って、その振り子運動を見てみた。
蛹のお尻のあたりを筆で軽く触れてみると、
「触ってはいやよ!!」
とばかり、振り子運動を始める。
下の写真はストロボをマルチ発光させて撮影したもの。
最初に筆先から大きく画面左へと振れた瞬間のみ、正面からもストロボ光を浴びている。

この振り子運動は、動いて逃げることのできない蛹が、外敵からの自己防衛のため行うようだ。
今回の蛹は筆で触れた瞬間のみ、短い振り子運動を行ったが、
蛹の個体によっては、刺激を与えたあと数十秒もの間この運動を続けることがある。
しかし、こうした振り子運動も羽化が近づくと行わなくなり、
そのタイミングを天敵にねらわれたら撃退効果を発揮できない。
新開 孝

トノサマバッタの跳躍!! 2004/10/02
昨日に引き続き、トノサマバッタ。

草地でトノサマバッタに出会っても、ほとんどの場合は、こちらが姿を見つける前に足下から大きく跳躍して逃げられてしまう。飛び去るトノサマバッタを見送りながら、悔しい思いをするのである。

トノサマバッタの後ろ脚は、強烈な跳躍力を産み出すのだが、その瞬発力と同時に普段は折り畳んでいた4枚のはねも全速力ではばたく。
後ろ脚で台地を思いっきり蹴り、離陸しながら高速ヘリコプターとなってさらに高度を上げていくのだ。
その後は長くて50メートルから、2、30メートルの飛距離を伸ばし、すとんと草むらに姿を消す。
トノサマバッタを捕獲するには、このすとんと落下した地点から目を離さず、落ち着いて迅速にそこへ駆け寄り、2度目のジャンプをされる前に捕虫網を上手に使って掬えばいい。
こういうとき、もう一人いれば、トノサマバッタを追い出す役と捕獲する役との分業ができて効率が上がる。
実は今回の跳躍シーン撮影のため、我が家の子供たちに手伝わせ、トノサマバッタを捕獲した。
もちろん子供たちは喜んで手柄を立ててくれた。自分でネットインできると余程、うれしいようだ。

さて、今回の写真は銀塩ポジ写真をスキャンしてデータに取り込んでいる。
前にも書いたが、トノサマバッタ跳躍のような非常に高速な動きを、思い描いた絵柄で撮影するには、室内のセットでしかも特殊な機械装置を使うのもやむを得ない。
その装置は、デジタルカメラと組み合わせて使うことができないので、仕方なく銀塩カメラの出番となった。
私のねらいとは、
まず、トノサマバッタが跳躍した瞬間に足下で立ち上がる砂煙りを写し止めること。
跳躍感あふれるポーズになること。
できれば、はねが全開する前の瞬間であること。
この3つの条件を満たす写真を得るためには、できるだけ成功率の高い撮影方法を選択しなければならない。
当初はトノサマバッタが跳躍した際の地面の振動を感知する振動センサーなるものを試してみたが、
私が持っているセンサーの応答作動は感度調整が微妙で、確実性を高めるためには試行錯誤に時間が掛かり過ぎる。
そこで従来から飛翔撮影でよく使ってきた、赤外線センサーに切り替えてみた。
さすがにこの方法での撮影は順調にいった。
赤外線ビームの位置は固定したままだが、跳躍のときの初速やはねを広げるタイミングなども様々で、
私のねらいのカット以外にも面白いカットが撮れていた。

今日アップした写真ははねを広げているので、当初のねらい通りではないが、
こういうカットも面白いと思った。
もっと大きなサイズでお目にかけることができず、申し訳ないが、
この一連の撮影カットのうち、いずれかを来年に出版予定の本に掲載するつもりでいる。

新開 孝

トノサマバッタ 2004/10/01(その2)
トノサマバッタは裸地が混じった広い草地環境に住む。あまり草丈の高い草地にはいない。そのような環境は日本の里山には意外と少なく、大抵は河川の土手のような場所がすみかとなっている。

オスをおんぶするメス。あるいは、メスにしがみつくオス。どちらでもいいが、明らかにメスの方が体格では上回る。偉そうにふんぞり返るのは人間の男性だが、トノサマバッタではそういう理屈は通らない。
「よろしくお願いしまあーす!」
そんなオスのか細い声が聞こえそうだ。

ところでトノサマバッタには、体色が緑色型と褐色型
があって、例えば今回のような交尾カップルに出会った場合、両者とも緑色型というケースは、それほど多くは無い。
私が過去に撮影した経験でも、こういう緑カップルの例は極めて稀だったことを思い出した。

トノサマバッタのオスは左利きなのか?
交尾するときのお尻は、必ず左から捻るようにしてメスにインサートする。
いや、もちろんこれは私の観察の範囲のこと。
新開 孝

災難!?キアシナガバチの巣 2004/10/01(その1)
9/22にアップしたキアシナガバチの巣。
今日は彼らの交尾の様子を撮影したくて見に行ってみた。
ところが巣はもぬけの殻で、しかもそこにはオオスズメバチが陣取っていた(写真上)。
カリカリと巣を懸命にかじっている。どうやらキアシナガバチの幼虫や蛹が欲しいようだが、すでに繁殖を終了したこの巣では、無いものねだりである。
だが、オオスズメバチは執拗に巣をかじりまくる。そこへキアシナガバチのワーカーと思しき者が攻撃を仕掛けるものの、ほとんど相手にはならない。オオスズメバチが「何や、お前!」と凄んでみせると、キアシナガバチははじけるように逃げてしまうだけだ。
よくわからないのだが、キアシナガバチにとって、この巣はもはや見捨ててもいいのではないかと私には思える。空っぽなのだから。
しかし、オオスズメバチへの反撃を幾度となく繰り返すのを見ていると、キアシナガバチにとって、巣場所というものはかなり大事な聖地でもあるような気がしてきた。

巣の近くのコブシの木には、多数のキアシナガバチが避難していた(写真下)。

新開 孝

イシサワオニグモ 2004/09/28
仙台市滞在最終日は、青空も出て気温も少し高め。Tシャツ一枚でも汗ばむくらいだ。
直径40センチほどの円網に陣取っているのはイシサワオニグモ。
遠目でも鮮やかな橙色の体がよく目立つ。初めて見るオニグモだが、これほど特徴的な姿をしていると図鑑での名前調べも簡単だ。

図鑑の解説によれば、このクモの体色にはかなり赤っぽいものから、薄めのものまで変異の巾が大きいようだ。新開 孝

風船虫 2004/09/27
今日も仙台にてアップ。

コップの水の中には小さく切った折り紙と「風船虫」が。
これから始まる楽しい実験。

あら、不思議!
風船虫は折り紙につかまって、ふうわりと、水面に浮上しまあす!

あれれ、仲間につかまってそのまま浮上なんてことも、、、。

風船虫は水生カメムシの仲間。
とくにコミズムシ類が御活躍!

新開 孝

ナシカメムシ 2004/09/26
今日は宮城県に来ている。
東北高速道のパーキングエリア、長者原で
久しぶりにナシカメムシを見た。
ここはハクチョウの越冬で有名な伊豆沼の
少し南に位置する。

パーキングエリアにある遊園地内の植え込みを見て回ると、ヒメリンゴとサクラに多数のナシカメムシ卵塊がついていた(写真上)。
ナシカメムシはクヌギカメムシの仲間で、ゼリーで卵を覆う習性は同じだ。ゼリーは透明で、卵は平面的に並んでいるところが、クヌギカメムシとは異なる。
中にはすでに孵化した幼虫(写真中)もいる。
産卵ピークを過ぎているようなので、成虫はいないかと思ったが、しつこく探してみると産卵中のメスや幹で吸汁する個体がいくつか見つかった(写真下)。

ナシカメムシは地味な姿をしており、地衣類にうまく擬態している。
このカメムシは関東以南では山地性であり、あまり見かけることがないが、ここ東北では平地にも多いようだ。
今頃孵化した幼虫は、2令まで育ちそのまま越冬する。
新開 孝

シロヘリクチブトカメムシ 2004/09/25
9/22にアップしたシロヘリクチブトカメムシ幼虫が、その後脱皮して5令幼虫となっていた。しかもハグロハバチ幼虫を吸血しようとしている(写真上)。

また、すぐ近くの草むらでは成虫も見つけた(写真下)。
成虫の方はお腹がパンパンに膨らんでおり、食事シーンを期待しても無駄であることがわかった。

シロヘリクチブトカメムシが関東地方でも生息するようになってから、まだ数年程度であろうか?このカメムシに出会うのは、毎年残暑のころ9月半ばから10月にかけてであるが、それ以外ではどこでどのように暮らしているのか、皆目わからない。
幼虫はふつう集団で見つかることが多く、草丈の低い草地環境に生息している。
カメムシの幼虫というのは各令(各ステージ)で体の模様ががらりと変わり、なかなかやっかいではある。
初めて出会った幼虫の模様から成虫の姿を連想しようとしても、これがうまくは当たらないことの方が多い。
結局、幼虫を飼育してみて成虫の正体を見極めるのが早道ではあるが、調べてみたい幼虫が次々に増えてしまい、悲鳴を上げる前に挫折するのが落ちである。


『久しぶりに銀塩写真』

ここ2年以上、標本撮影の仕事を除いて、銀塩ポジフイルムでの撮影からは完全に遠のいている。
したがって現像出しでラボへ行くこともほとんどない。かつてはラボからの請求書額にびっくりこいて青ざめていた頃が懐かしいくらいだ。
このごろでは請求書が届かない月もあり、ラボのカウンターのお姉ちゃんたちもただでさえ入れ替わりが激しいのであるから、今やもう私が出向いても、反射的に上がりを出してくれる顔馴染みの女の子はいないのではないかと思う。
ところが、昨日、今日にかけてベルビア100FをEOS-1D RSに装填して、久々にフイルム撮影を行った。
こうした銀塩うんぬんという表現も、近いうちには死語となるのであろうが、デジタルカメラに撮影の仕事を100%委ねることができないのも現状ではある。
つまりこれは赤外線センサーを使った、超高速ストロボ撮影の領域のこと。
今回は平行してデジタルカメラでの手押し撮影も敢えて挑戦してみたのだが、あまりにも効率悪く、しかも何度も同じ行動をとらされる昆虫モデルの方が先にバテてしまうのである。
いつか撮影できればいいや、などというアマチュアなら楽しみながらできる世界だが、楽しみだけでは済まされないのがプロのつまらなさでもある。楽しいだけでは終われないのである。
もっとも、デジタルカメラの恐ろしく長いタイムラグの問題は、それなりに挑戦してみる価値はあった。
そのタイムラグをいかに読むかという、余興である。余興は楽しいものだ。

そういうわけで、来週あたりにはほんとうに久しぶりにラボへ出掛ける。
ラボは杉並にあり、近くには中野があって、この界隈の雑然とした空間を彷徨い歩くのも、実は私の楽しみでもあったりする。
ラボへ行くのはそんな楽しみに浸る、いい口実であったりする。
しかし、よく立ち寄ったおいしいとんかつ食堂が一軒つぶれてしまい、それが少し寂しい。
新開 孝
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