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モモスズメとコミスジ 2003/09/29
前回(9/23)、スズメガ類の幼虫がこの時期に多いと書いたばかりだが、今日はモモスズメの立派な幼虫(写真上)。
空掘川沿いのヤマブキの植え込みで見つけたのだが、写真ではちょうど糞をするところである。路面を見るとおびただしい糞がころがっており、ヤマブキも幼虫の回りは刈り込んだように葉がなくなっているので、これまた目立ってしようがない。名前のごとく幼虫はモモをはじめウメ、サクラ、アンズ、カイドウ、などバラ科の樹木につく。立場違えばこれはただの害虫ということになる。モモスズメの体型を見ていると頭は尖ったように先にいくほどすぼまっており、お尻のほうが太くなっている。胸脚も体にぴったりすぼめているので余計に頭部のほうが小さく見える。これは弱点の頭を目立たなくする効果をねらってはいないだろうか?
ガードレールの下から路上にはみだしているクズの葉では、コミスジの幼虫がたくさん見つかった(写真下)。写真ではわかりにくいと思うが、右下の主脈上に下向きに止まっている。クズの葉の先端部分をかじり食べ残しの枯れ葉が何枚もぶら下がるので、この幼虫もいたって見つけ易い。すでに終令となっているが年内羽化は稀で、落ち葉の間などで冬越しすると思う。新開 孝

クチバスズメとアケビコノハ 2003/09/23
近くの雑木林でクチバスズメの幼虫を見つけた。クヌギの幹にべったりと止まっていたので目立つことこの上ない(写真上)。本種を含むウンモンスズメガ亜科数種の幼虫たちは、よく似通っているので注意が必要だ。
しかも9月から10月にかけてこれらの幼虫たちが現れる。皆似たものどうしだが、幼虫が食べていた、あるいは止まっていた植物がなんであったかがわかれば、種名の検討はつけ易い。いずれにせよスズメガ科の幼虫たちは大柄なものが多く、身近な環境に棲んでいる種類もかなりある。芋虫遭遇事件でよく騒がれるのもこのグループであることが多いようだ。お尻にツノが生えているので印象もはっきり残るのだろう。クチバスズメの幼虫を手にのせて林を歩いていると、少し見上げた位置に枯れ葉のようなアケビコノハがいた。ピカピカの新鮮個体だ。この成虫が止まっている場所はアケビがあって、9/3に幼虫を見つけた場所とほとんど同じであった。うしろ翅を見たいので軽くつつくとバタバタッとぎこちなく2mほど飛んだ。やはり羽化して間もないのであろう。力強い飛翔はできなかった。新開 孝

ゴマダラチョウ幼虫 2003/09/19
エノキは町中の何処に行っても生えている。鳥が実を食べ、あちこちで糞とともに種子を播いているからだ。
ときにはアスファルトとコンクリートの隙間から大人の背丈もあるようなものまで、実生で育ったエノキは逞しい。マンション裏の小道にもエノキの小木が何本も生えており、いつもそこにはゴマダラチョウの幼虫が見つかる。今朝は暖かい日射しを受けて、3令幼虫が体をくの字に反らしているのに出会った。この幼虫は時期的にみて年内羽化はないであろうと思う。それにしてもなかなか立派なツノだ。自信たっぷりのようにも見受けるが、そっと息を吹きかけると体をすっと伏せてしまった。しばらくすると、ゆっくり体を反らし始める。
この幼虫が鎮座しているエノキはマンション裏の駐車場に行く小道沿いなので、これからも毎日、気にかけてみよう。新開 孝

ヤマトシジミ 2003/09/15
マンション裏手のムクノキ根元にヒガンバナが花を咲かせた(写真下)。毎年ながら「おっ」としばらく足を止める。このムクノキは8月(8/7〜10)にノコギリカミキリのメスがコーリングしていた木だ。空掘川の遊歩道に出てみると、エノキの枝でヤマトシジミが交尾していた。右の翅がくたびれているのがオス。左のメスは新鮮な個体だが、今朝あたり羽化したのかもしれない。9月のこのころヤマトシジミはかなり数が増える。陽気のいい草原では足元にわんさか舞う姿がある。地味だがこのチョウほど年がら年中、目にするチョウは他にない。食草はこれまた町中から都会に至るまでどこにでも生えるカタバミだ。いつかこのチョウを小学校理科の教材にする試みの記事を何かで見た。モンシロチョウやアゲハが教科書には出てくるが、確かにヤマトシジミの方が余程身近で、かつ入手もし易い。ただ、その試みの気持ちは良くわかるのだが、いかんせんヤマトシジミは小さい。これは子供にとっても観察し難く、色・姿の魅力という点ではやはりしんどいようである。新開 孝

クロアゲハとスミナガシ 2003/09/14
昨日の雨から一転、今朝はよく晴れる。今日は町田市、野津田公園での観察会本番。私は昆虫観察の講師として呼ばれていたが、時間を間違えて1時間以上も早く着いてしまった。そこで小野路に回ってみた。アワブキにはスミナガシ幼虫のカーテン巣が多数ある。若い幼虫が多いが4令も少しいた(写真上)。観察会で披露するために4頭採集しておいた。アオバセセリの幼虫は見つからない。






谷戸のあぜ道を歩くと、クロアゲハのメスが地上で何かを吸っている(写真中、下)。そっと寄ってみると獣糞だ。どうも野生の匂い?がする。タヌキの糞だろうか?ここにはキツネもいるし、アナグマもいる。糞の中身など詳しく見ておけばよかった。イヌのかもしれんが。クロアゲハはずいぶんと糞に御執心で、私が這いつくばってカメラを差し向けてもおかまいなく朝食を続ける。クロアゲハのうしろ翅の尾状突起の長さは、南西諸島では短くなる。八重山諸島ではさらに短くほとんど無尾型の個体も混じるようだ。クロアゲハは町中でも見かける普通種だが、こうして目を遠方にまで広げると面白いことがわかる。
新開 孝

野津田公園 2003/09/08
東京都町田市、野津田公園の雑木林を訪れた。この日は『野津田・雑木林の会』のスタッフの方と観察会の下見をすることになっていた。駐車場に車を止めて広場のコブシを見上げると、多数のアカスジキンカメムシ幼虫がかたまっている。さて、観察会は草地の昆虫を中心に見るということなので、林より草地を重点的に歩いた。クズではハゴロモヤドリガ幼虫を背負ったベッコウハゴロモやスケバハゴロモがけっこう見つかり、ヤドリガの真新しい繭も数個ある。広いススキ原では夥しいナンバンギセルが花を咲かせている。こんなに無数のナンバンギセルを一ケ所で見るのは初めてだ。会員の方たちが適度に草刈りしており歩き易い。ススキに止まっていたエビイロカメムシを見たりしているうちに、羽化直後のオオカマキリが見つかった(写真上)。レースのような柔らかい翅がゆっくり伸びていく。これにはスタッフの方も大喜び。たしかにいいタイミングだった。私はさっそく撮影する。撮り終えて脇へ回ると、そこにはクスサンのメス(写真下)が、待ってました、とばかりぶらさがっていた。私はさっそくスタッフの方たちの前でそっとクスサンに息を吹き掛けた。「見ていてください。はねを拡げてくれますよ。」言葉通りの反応に、またもや拍手の歓喜。女性のほうがこういうときはやりがいを感じる。男だと低い声で「おーっ!」とか「はあーっ!」だろうが。それはさておき、クスサンはここ多摩地方では近年、あまり姿を見かけない。日本各地で大量発生が話題になっているのとは逆である。細々と世代交代しているようだが、さて来年あたりはどうであろうか?
新開 孝

緑の博物館 2003/09/05
狭山丘陵に『緑の博物館』がある。広大な雑木林と湿地の谷戸からなる、まさに緑の野外博物館だ。今日はタマムシを撮影するために訪れてみた。奥の斜面林で伐採されたところがある。南向きで陽当たりがよく、2年前そこで多数のタマムシが産卵していた。しかし伐採地は3年経って草丈がかなり伸びている。積まれた材は草に埋もれてしまいタマムシの姿もまったく無い。上空を見渡したが飛翔する姿さえない。伐採地ではサトクダマキモドキのオスがいただけ。斜面林を見下ろす尾根道に出ると私の汗にクロヒカゲが寄って来た。はらってもすぐ戻ってくる(写真上)。足下からはセミヤドリガの白い幼虫を腰につけたヒグラシが飛び出した。タマムシをあきらめて林のなかを歩いていると、ヤマカガシの幼蛇に出会った。しかもヒキガエルをくわえている。ヒキガエルも親指くらいの幼体だ。撮影しようとしたがヤマカガシは獲物を吐き出し、落ち葉の影に隠れてしまった。ハンノキでおびただしい虫喰いあとがある。よく見るとハバチ幼虫のしわざだ。物凄い数だ(写真中)。尻をぶらんと垂れている姿勢には何かわけがありそうだが。クロクサアリの行列を眺めていたら、ワキグロサツマノミダマシをくわえたヒメベッコウバチの一種が近くを歩いている(写真下)。ハチは一旦獲物を置いて飛び去ったがしばらくして戻って来た。私が気になるらしくクモをすぐにはくわえようとしない。ここはこちらも我慢のしどころである。微動だにせず岩となるのである。昆虫というものは動くものには敏感だが、人がいてもじっと動かなければ岩や木と同じ存在に見えるようで、平静に行動する。こういうことを日々繰り返している昆虫写真家は肥る。というのは冗談だが、ようやくハチも安心したのかクモをくわえて運び始めた。新開 孝

アケビコノハとオオカマキリ 2003/09/03
雑木林でアケビコノハ幼虫を見つけた。目玉模様が大きいのですぐわかる。アケビの葉を食べていた。アケビは庭や公園にもよく植えてあるので、この幼虫はごく身近な芋虫だ。写真の幼虫は成熟した終令幼虫だが、体の色はこの他にうす緑色のタイプも見つかる。毒々しいが手にもっても大丈夫。もうじき葉っぱを綴った中で蛹になり、年内に羽化する。アケビコノハは成虫越冬だ。少し歩くとオオカマキリも見つかった。羽化したばかりだろう、体はまだ柔らかい。オオカマキリはまだまだ幼虫の方が多い。動きもぎこちなく、おどおどしている。今は羽化時期のようだ。オオカマキリの成虫を見かけ始めると、夏も終わりやなー、という気分になる。
新開 孝

遊歩道の昆虫 2003/09/02
(写真上)は脱皮を終えたばかりのクワコ幼虫。止まっている葉はヤマグワである。ここは私のマンション裏の駐車場に抜ける小道であり、ほとんど毎日のようにそばをすり抜ける。ここのヤマグワに限らず、空掘川の遊歩道の植え込みにはあちこちにヤマグワが生えており、散歩すればクワコ天国が嫌でも目に入る。植え込みにあるヤマグワはほとんどが鳥の落とした糞に混じった種子の実生である。つまりヤマグワの果実を食べる鳥たち。種子をあちこち散布してもらうヤマグワ。ヤマグワで育つクワコ。そしてクワコを食べる鳥たち。という具合に生物連鎖がなりたっていて、これは見ていて楽しい。クワコはさらにクモや寄生バチ・ハエ、アシナガバチなど様々な天敵に取り囲まれている。ヤマグワを喰う昆虫にはキボシカミキリ、クワカミキリ、クワエダシャクなど、思い付くまま書き出すとキリがないほどだ。また小鳥たちをねらって、たまにだがチョウゲンボウも上空を舞う。もちろん植え込みそのものも生態系に取り込まれる。(写真下)のキバラヘリカメムシ幼虫群は、野生のものよりこうして人工植栽のニシキギなどで見かけることのほうが多い。生物と生物の関わりが複雑になればなるほど、見ていて頼もしい。キバラヘリカメムシにとって天敵はなんだろうか?えっ!?カメムシ嫌いの人間!なるほど、そうかもしれない。
新開 孝

アカスジキンカメムシ 2003/08/30
近くの空掘川沿いの植え込みにコブシが数本あり、ここでは毎年アカスジキンカメムシが繁殖している。隣にはアメリカハナミズキもあってこちらにも産卵するが、コブシの方が好まれるようだ。ハナミズキではむしろオオミズアオの大きな幼虫を見ることが多く、この蛾は野生のミズキにもよく産卵していく。アカスジキンカメムシの幼虫は4令と5令が混じって集団を作っていた(写真)。この数からすると皆、兄弟であろう。梢を丹念に見て行くと、コブシの実にたかっている幼虫はさらに数多く見つかり、一本の木に100頭前後は確実にいそうであった。幼虫たちは気温が下がった日や、夜には集団を作って休んでいるが、このときには異兄弟も一緒になって肩を寄せ合っていることが多い。またそこに成虫が加わることも珍しくない。アカスジキンカメムシは本来、山野で生活していたのであるが、街路樹や公園の植え込みといった人がいじくった空間にも居着いているわけである。農薬をむやみに散布せず適度な人力の手入れを施して管理すれば、植物環境が豊かな生態系を伴ったまま維持できる見本のような気もする。新開 孝

明浜町、俵津 2003/08/24
真珠筏が浮かぶ穏やかな湾、そして背面にはミカン畑と照葉樹林の山にはさまれた小さな集落が俵津。
湾から外は対岸の大分県を望む宇和海となる。地図を広げ宇和海に面した愛媛側の海岸辺りを、北の佐田岬からずっと南下して高知県の宿毛市まで眺めてみると、地名には「浦」「浜」「崎」「鼻」といった文字がつくものが圧倒的に多い。特に「崎」「鼻」といった突端を表わす文字のつく地名が多いことは、海岸地形をよく物語っている。俵津のように「津」がつく地名は意外に少なく「法花津」「坂下津」「島津」「狩津」「米津」くらいしか見当たらない。また佐田岬の「串」、明浜町の「宮之串」という地名が目を引くが、これは朝鮮語の岬を指す串(こす)に由来する語だそうだ(谷川健一『日本の地名』岩波新書より)。さて、俵津の集落をパワーショットG5片手にぶらぶらしてみた。狭い路地をあてもなく歩くと庭木の花や植え込みに、昆虫の姿を見ることができる。ここに写っているオオスカシバ(写真上、ランタナで吸蜜)、モンキアゲハ(写真下、ノウゼンカズラで吸蜜)は東京でも見ることができる昆虫だが、やはりここ明浜町、俵津の南予らしい雰囲気の中で見るとなんだか違った昆虫に会ったかのような気分になる。相変わらず猛暑続きだがモンキアゲハの姿はさすがに多い。ナガサキアゲハは1頭見かけただけ。俵津ではサツマヒメカマキリを探す予定であったがどうも見当たらない。夜の灯りに飛来することを期待してみたが、これも収穫なしであった。
新開 孝

法花津峠のチッチゼミ 2003/08/23
じつを言うと私はまだチッチゼミを見たことがない。鳴き声はさんざん聞いているのに今までに姿を見る機会はゼロである。図鑑を開いても「小枝の上側で鳴いていて、姿がみえにくい。」と書かれているので、あながち私の努力が足りないだけではなさそうだ。「チッ、チッ、チッ、チッ、、、、」という時計の秒針が刻むような音色は、猛暑のなかでものどかな気分にさせてくれる、と私は感じる。愛媛県宇和島市の薬師谷渓谷で午前中撮影したあと56号線を北上し「法花津峠(ほけづ)」へ回ってみた。昼食は途中にあったラーメンの「豚太郎(とんたろう)」に寄る。ここも広くチェ−ン店を展開しており、本店は高知県にあるようだ。味はそこそこ。正油ラーメンが450円。東京ではあまり見かけない細長いモヤシがたっぷり入っているのが嬉しい。セルフのおでんもある。が、しかし今日入った店はどうしたことか、出汁が今一つよろしくない!どこの店でも無難な味という保険が失効中!のようだ。で、法花津峠。ここは宇和海から遠く九州まで見渡せる展望良好な場所(写真上)。展望台から先には手摺などなく絶壁にちかい急斜面となっている。そこには背の低いウバメガシがアカマツとともに岩にへばりつくように繁茂している。そして足下からチッチゼミのあの鳴き声が聞こえてくるではないか。つまりチッチゼミは私の目線よりずっと低い位置に潜んでいるのだ。これは姿を見る、いや撮影できるチャンスではないだろうか!私は頭を左右、斜めとねじっては鳴き声の出所を正確に突き止めようとした。しかし、アカマツもウバメガシもその近くへ寄るにはかなり急勾配を下る必要があり、ロープで確保しないと危険極まりない。悔しいがあきらめるしかない。チッチゼミ撮影にロープを準備!これは教訓として頭に刻んでおかねばならない。山道をゆっくり国道へと降りていると、ミカン畑ではスプリンクラーがゆったり散水している(写真下)。そこから聞こえてくる音が「チッ、チッ、チッ、チッ、、、、」。
新開 孝

宇和島の『大介』うどん 2003/08/22
東京でもつい最近、セルフの讃岐うどん店が出現したが、なんといっても本場は四国である。そして私が四国で仕事をする際、よく立ち寄るのが愛媛県南予を中心にチェーン店がある『大介』うどんである。撮影の仕事でフィールドを巡るにしても、私は食については少しはこだわる方だ。仕事の段取りの中で、昼飯をどうするかは重要なポイントになる。コンビニのおむすびで済ませることがないわけでもないが、常々それは避けたいと願っている。それくらいなら自宅や宿で、手製おむすびなり弁当箱にめしを詰めたほうがはるかにいい(めしには「塩っぺ」を乗せる)。しかし外食に頼る場合、できれば500円以内で納得のいく食事をとりたい。そんなとき『大介』うどん!である。さて、今日は愛媛県宇和島市の薬師渓谷を訪れてみた。ここは国道56号線から谷間を少し山あいに入ったところだ。渓谷には数段の滝があり涼しいため、夏の間流しそうめんの店が開かれる。しかし昼食はこのそうめん屋ではない。国道を少し南下したところにある『大介』うどんで決まりだ!。外食産業から道路事情までめまぐるしく変貌するニッポンである。宇和島とて例外であり得ない。このあたりを訪れるのも数年ぶりだから、いざ知っているつもりがどうも様子が違う。事前に国道を走りながら至近距離の『大介』うどんの店鋪はきちんと確認しておいたのだ。話が脱線したが、ここで必ず見ることができるチョウがアオバセセリとスミナガシの幼虫である。そしてクロコノマチョウとイシガケチョウも。とくに前2種はヤマビワの木に必ずついている。スミナガシの越冬蛹を初めて見つけたのもここであった。幼生期の写真はタイミングさえはずさなければ容易である。しかしチョウの成虫となるとこれは狩猟の範疇に近い難しさがある。目の前を飛んでいても極めてシャッターチャンスが少ないので、普通種といえど納得いくカットを揃えようとすると侮れない。今日は特にナガサキアゲハの大きなメスがクサギの花に来ており、一旦去ってもしばらく待っていると谷間を大きく回遊しては同じ木に戻ってくることがわかった。優雅な動きのわりに意外とシャッターが切れない。ここはじっくり構えることにした。

写真上:ムラサキシジミのメス、アラカシの新芽に産卵していたが休憩中
写真中:アオバセセリ幼虫、ここではヤマビワが食樹
写真下:クサギで吸蜜するナガサキアゲハのメス新開 孝

面河村のハリサシガメ 2003/08/19
オミナエシが咲く気持ちの良い草地に着いた(写真上)。松山に来てからこちらは夏らしい天気で、東京のどんより曇り空の日々が嘘のようだ。ここは私の実家から車で1時間半ほどの面河村。草地といっても山あいのわずかな面積で背丈の低い草が生え、所々地面がむき出しになっている。実はこの草地、日当たりの良さ、草の生え具合、農薬の有無、など諸々の条件において、ハリサシガメの絶好の棲息場所であるのだ。今日、ここへ案内してくれたのは松山市在住のT氏。氏は熱心な昆虫研究家であり写真家なのだ。私は松山に帰るたびいつも御世話になっている。ハリサシガメはどういった場所に棲息するのか検討もつかず、一度は見てみたいと思いつつ偶然でも出会うことがなかったが、ついに長年の念願が叶った。この時期は羽化ピークの終わり頃であり、見つかった成虫はどれも新鮮な個体である。いずれもほとんど地面でじっとしているが、一旦歩き始めると意外にすばやい。通常は獲物のアリを待ち伏せしている(写真中)。さらに面白いのが幼虫だ。彼らも成虫と同じくアリなどを襲って吸血するのだが、その亡きがらをいくつも戦利品のごとく自分の体に背負っている。どうやら体の表面には粘着質があって砂なども一緒にくっついている。この二重の隠ぺい工作のおかげで、幼虫の姿を見つけるのはかなり難しい(写真下)。T氏は今後もこのカメムシの生活史を掘り下げて調べていくそうだ。私は東京に戻ったらめぼしい環境を選んで探してみようかと思うが、面河村の標高を考えると近場ではなく、少し山地に入ったほうがいいのかもしれない。新開 孝
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