| 2007年『昆虫ある記』を振り返って(5) 2008/01/09 | | | | | 今日は昨年6月の記事の中からヒラタクワガタを取り上げてみた。
南九州の梅雨は長い,と聞いていたがその通り。都城市の町中にはやたらとコインランドリーが多いのはそのせいでもあるとは,うちの雨樋取り付け工事を請け負った業者の方から聞いた話だ。 6月後半に見えたお客さんは長雨のことも考慮して1週間の滞在としたが,それは正解だった。丸一日,天気が安定していた日はなく,良くても半日は雨ということが多かった。お一人は虫大好き女史ライター,そしてもう一方は昆虫写真家というコンビだったが,雨続きでは可愛そうだなあ,とは要らぬ心配だった。敷地内だけでも楽しんでいただけたし,私が室内撮影の仕事で同行できない日は,お二人であちこちロケハンしていただいた。 このころの私はダンゴムシとアシナガバチの撮影を始めたばかりのころで,とくにアシナガバチの巣探しは難航していた。ロケハンに出たお二人がアシナガバチの巣をついでに見つけてくれ,これは助かった。虫探しにはうまくいかない時期が続くこともあって,そういうときは何かのきっかけがあるといい。 結局これも昨年の記事で書いた事だが,なんと私の仕事部屋を取り囲むようにしてアシナガバチの巣がいくつも敷地内で見つかったのであった。まさに燈台下暗しであった。
「ヒラタクワガタとアカメガシワ」(6月19〜23日)
ノコギリクワガタが家の門灯に飛来し始めたのは6月の中頃だった。 宮崎に移転したらクワガタムシを少しまじめに撮影しようと考えていた。それは仕事の上でこれまでにも依頼が多かったこともあり,いつもそれに満足に応じることができずこれではマズいと感じていたからだ。 引っ越し前の冬の間に所沢市の雑木林でノコギリクワガタ幼虫を採集しておいたのも,まずはノコギリクワガタの蛹化シーンあたりから撮影に取り掛かるつもりでいたからだ。仕事で使われるクワガタムシの写真は,ノコギリクワガタがもっとも多い。とくに生活史を掘り下げた写真はノコギリクワガタが圧倒的に使われる。もちろんそれは児童書の世界だが,昆虫写真の市場とはほとんどが児童書である。
しかし蛹室作りのタイミングをつかみ損ねたため,蛹室を止む無く人口蛹室にしての撮影にはどうも抵抗があった。4匹ばかりの前蛹からはメス1匹,オス(2タイプ取り混ぜて)3匹の蛹を得る事ができたが,今回は資料カットに留めて野外での蛹室や蛹化連続カットなどは,次期シーズンに再トライすることにした。 それであらためて敷地の林を観察してみるとノコギリクワガタ幼虫の入っていそうな根株がいくつか見つかった。敷地の林で思う存分撮影できるなら,これに勝る条件はあるまい,そう思って少し期待を抱けた。
さてノコギリクワガタはポツポツ夜間の門灯に来るけれど,さして写真になるシーンは見当たらない。飛翔シーンなら撮れそうだったが,これもクワガタ自身の飛びたい衝動を捉えるのがたいへん厄介だ。ときおり高い梢の間を飛んでいることもあってとても格好良かったが,高過ぎてどうにもならない。いったいどうしたものかと思案していたら,アカメガシワの樹液にヒラタクワガタの姿が目立ち始めた。 アカメガシワの樹液が出るのは,幹内にコウモリガ幼虫がトンネルを穿ったせいだ。コウモリガ幼虫は糞を幹の外に出すため大きな穴を開けるが,そこが他の昆虫たちにとっての樹液レストランとなっていた。 これまでヒラタクワガタは夜行性とばかり思い込んでいたが,昼間からにぎやかに樹液に集いそしてそこで交尾までしていることにかなり驚いたものだ。またアカメガシワ樹液にやってくるクワガタは他にもコクワガタがいたが,圧倒的にヒラタが多く,なぜかノコギリクワガタは一度も見ていない。 ヒラタ,ノコギリの両種が同じ樹液で観察できるようになったのは,クヌギ樹液が盛んに出始めた6月の末ころとなった。
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