|  | | | 我が家の庭にこいのぼりが泳いだ。
こいのぼりは、嫁さんの親戚のものだが、うちには立派な竿が立っていたので、せっかくだからと、そのこいのぼりを上げてみた。
先日、雨が降る前に、そろそろこいのぼりを降ろそうか、ということになったのだが、一番上の吹き流しのロープを固定していた針金が絡んでしまい、降ろすことができなくなった。がっちり絡んで動かないのである。さて、困った。
竿そのものも、付け根のところでぐらついていたので、いっそ切り倒すしかないか、そう考えてみたが、それにしてもヘタをすると竿が電線に倒れかかってしまう危険性が高い。どういう手段をとるにしても、高所作業車(バケット付きクレーン車)が必要だろうと思われた。
こいのぼりをどうするか、それをめぐって、嫁さんとは口論になるほど、頭を悩ました。
「こいのぼりの竿を切り倒すのなんか、簡単っ!!てお父さん、そう言ってたじゃない。」 「なんだよ、以前はそう感じたけど、それは計算違いだったんだから、今更おれを責めるわけ!どうみても、これはプロに頼まなければ、どうにもならんよ。高所作業車が必要と思うよ。」 あれこれ思案しているうちに、先日、小型のクレーン車が我が家にやって来た。通常のクレーン車ではどうにもならんだろうなあ、そう思っていたのだが、運転してきたおっさんは、なんとクレーンの先端に立ち、竿の中段あたりまで上がったのである。そもそもクレーンの先端は人が立つ場所にはなり得ない。足場の幅は30センチもないのだ。何とかそこに立っても、こいのぼりまでの高さにはまだ足りない。
そこで洗濯竿を使って、なんとか針金の絡みを緩めることにした。ただでさえ足下が不安定の上に、長い洗濯竿を振り回すのだから、下から見ていてハラハラする。まさに鳶職の技といえるのだろう。洗濯竿でいろいろ角度を変えて突いているうちに、少しづつこいのぼりが降りてき始めた。
嫁さんも歓喜の声を上げる。「ああ、少し降りてきた!!」
最初は無理だろう、そう思っていた私だが、クレーン車のおっさんは一生懸命に手を尽くしてくれた。それはいろいろな現場での長い経験から、おっさんには確信が持てていたからだろう。道具は手近にあるものを使い、それを応用すればいいのだ。
安全ロープも使わず、どう見ても危険きわまりない作業だったが、軽々とその作業をこなした、おっさんに頭が下がる思いであった。
最後は高枝バサミを使って針金を切断し、ようやくのことで、こいのぼりを降ろすことができた。
 | |