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ジョロウグモの幼体 2006/07/31(その2)
 ジョロウグモの成体は特徴がはっきりしていて、その識別に迷うこともないが、このところ雑木林の縁でよく見かける円網に陣取っている写真のクモは、ジョロウグモのよく知っている成体の姿とはかなりかけ離れている。

 もっとも、昆虫の場合、とくに完全変態するものなどは、親と子どもの姿は全く別物であって、その違いからすればクモの幼体と成体の違いなどはごく僅かでしかないのかもしれない。しかし、例えばこれから出版されるクモ図鑑に期待したいことは、できるだけ幼体の姿も載せて欲しいということである。

 クモの成体の識別については、ほとんど素人の私から見れば、幼体となるとまるっきりわからない世界となってしまう。

(E-500 マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

ノミの夫婦 2006/07/30(その1)
 エゴノキの実に、エゴヒゲナガゾウムシの姿が多い。

 すでにほとんどの実は、このヒゲナガゾウムシのメスが残した産卵痕がついている。たくさんの産卵痕を見ていくと、その穿たれた大きな穴に、頭を突っ込んでいるメスや、あるいはお尻を差し入れて産卵中のもの、そしてその側でメスの仕草を見守るオスなどと、エゴヒゲナガゾウムシたちは、今まさに活況の最中である。

 あるメスが産卵中のところへオスがやってきて、プロポーズを始めた瞬間に出会した。そのオスはきわめて小柄であり、メスと比べると体長では半分しかない。
 メスは産卵中であるから、オスが背中に這い登っても交尾は不可能だ。

 エゴヒゲナガゾウムシを見ていると、その体の大きさにはずいぶんとバラツキがあることに気付く。今日は極小のメスを見て驚いたりしたが、体格の大小はオス、メスの性別に関わり無く生じる。
 その理由は、幼虫時代を過ごしたエゴノキの種子内の栄養状態に大きく左右されるからであろう。エゴノキの種子にも大小のバラツキがあるから、豊かなゆりかごとそうでないものとでは、当然ながら幼虫の成育の差にも大きく影響するに違いない。

(EOSキッスデジタルN  マクロ65ミリ)
 新開 孝

目の上のたんこぶ 2006/07/30(その2)
 エゴノキの実に穴を穿ち、そこへ産卵中のエゴヒゲナガゾウムシのメス。

 そのメスの頭部に直立して付着しているダニの一種が、逆光のせいでよく目立つ。なんとも鬱陶しい感じがするが、よくよく見れば、ダニの刺点はヒゲナガゾウムシの複眼と頭部体表面の境界線あたりだ。

 この状況ではヒゲナガゾウムシ、メスの視界には嫌でもダニの姿が入っていると想像される。しかしながら、いったん取りついたダニは、少々のことでは取り払うこともできないのではないか、と思う。

(EOSキッスデジタルN  マクロ65ミリ)新開 孝

オオフタオビドロバチの育児室 2006/07/29
 先日、紹介したオオフタオビドロバチの竹筒巣内を割り開いてみた(写真上)。
写真画面左側が、筒巣の出入り口。

 竹筒の長さは13センチで、筒の内径は約16ミリ。その筒内には7室の育児室が泥壁で仕切られ設えてあった。
 7室全部で、すでにオオフタオビドロバチの卵はふ化しており、当然ながら再奥の部屋(画面右はし)の幼虫がもっとも大きく成長していた。
 画面左端の巣口に接した部屋では、まだ幼虫はふ化後間もなく体長は2ミリ程度しかない(写真中)。

 入り口から5番目の部屋がもっとも広くなっている。ここの幼虫と餌の芋虫を外に出して並べてみた(写真下)。餌として親バチが貯えた芋虫はワタノメイガだろうか。この部屋ではその餌の数ももっとも多く、8匹詰め込まれていた。一番少ない部屋では5匹であった。

 餌として貯えられた獲物のワタノメイガ幼虫たちは、いずれもピンセットでつまむとしきりに体をよじる運動はするが、歩くことはできない。みんな親バチによって麻酔がかけられているからだ。我が子に生き餌がちゃんと行き渡るようにという、母バチの配慮であり、餌の芋虫が生きている限りは腐る心配もない。

 それでも育児室そのものの環境が、できるだけ乾燥していることが必要であり、そのためにも地面からある程度の高さがあって、雨がかからぬ、という条件の巣場所といえば自然界ではそうそう多くはない。
 したがって、住宅のベランダのような場所こそは、上記のような条件を満たしているので、内径の大きさをいろいろ揃えて竹筒を設置してみれば、様々な種類の泥バチ達が育児巣を求めて訪問してくれるに違いないのである。

 先日、お母さんとお子さん(小学低学年)を対象にした講演会で講師をしたのであるが、そのときオオフタオビドロバチの写真が出てくると、会場のお母さん数人から、「わあーっ、刺される!!」と声が出て、こちらが驚いてしまった。
 ベランダにそんなハチが出入りするなんて、恐い!!というのである。どうやらハチといえば、すぐに刺される、という異常なまでの反応は、近頃の民放テレビのお馬鹿なスズメバチ報道の影響も強いのではないかと思う。

 ハチに刺されて死ぬなどというのは、こう言うと語弊を招くとは思うが、まずは宝くじに当たるような出来事であり、交通事故死する確率よりかはるかに低い、という、この単純な事実に気付かない人があまりにも多い。
 で、まずは、民放テレビなどの「恐怖!!スズメバチの逆襲!!」などと言うような関連の報道を、真に受けては欲しくないのである。
 
 少なくとも家屋近辺に出入りする泥バチたちは、この上なく安全なハチだと申し上げたい。

 謂われも無い誤認識でもって、数多くの殺戮を積み重ねる日常の殺虫行為を、何の意識にも問わず、というところで少しは考え直して欲しい、と思うのである。

 「知る」、という行為は、自らが努力すべきであり、特に受けてねらいのマスコミ報道には、厳しく客観性を帯びたフィルターを掛けて欲しい。「知る」という行為は自らの責任においてなされるべきなのである。と、思う。

 
(写真上、下/EOS-5D  マクロ100ミリ)
(写真中/EOS-5D マクロ65ミリ)新開 孝

吸いもどし 2006/07/28(その1)
 イチモンジセセリが鳥の糞に口吻を伸ばしていた。

 鳥の糞を餌とする昆虫は多いが、特にチョウの姿はよく目立つ。
 イチモンジセセリはときおり、お尻を曲げては糞に一粒の透明な液体を注いでいた。これは「吸いもどし」と呼ばれている行動で、乾燥した糞から養分を吸い上げるということだろう。

 (E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

パラシュート 2006/07/28(その2)
 葉っぱにペタリと貼付いた白い物体は、鳥の羽毛にも見える(写真上)。
実際、昆虫の天敵である鳥の目から見て、そう見えるのかどうかはわからないが、少なくとも生きた昆虫の姿と判断がつかないのでは、と思われる。

 すでにご存知の方も多いはずだが、この白い放射状のようなものは、ベッコウハゴロモ幼虫が体から分泌しているワックス状物質である。
 で、この白い放射状物質を、傘を閉じるように束ねてしまえば、ベッコウハゴロモ幼虫の正体が知れる(写真中)。

 ベッコウハゴロモ幼虫は、尾端部にある複数のワックス分泌器官からそれぞれ数条の糸状物質を伸ばしており、分泌器官の角度を自在に操作することで、自らの体を白い羽毛状の傘で覆いかくすことができる。

 しかし、身の危険を感じて逃走しなければならないときに、彼らは傘を閉じてからジャンプするという技を持っている。梢から一気にジャンプして姿を消すのである。
 そのとき高所から落下する際には、再びワックス傘を広げる。するとそれは、見事にパラシュートの役目を果たし、落下速度を極めてゆるやかに抑えることができる、という事実を今日は目の当たりにしたのであった。

 ただし、このパラシュートは非常に脆い。軽いという利点はあるが、素材がワックスだから、ポキポキと折れ易いのである。

 (写真上/E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)
 (写真下/キッスデジタルN  マクロ65ミリ)新開 孝

オオフタオビドロバチ 2006/07/27
 今年もオオフタオビドロバチが、ベランダに置いてある竹筒で営巣した。

 今のマンションに引っ越してから4年間の毎年、オオフタオビドロバチはどこからともなく飛来して、私が設置した竹筒を子育ての場所としている。

 しかし、今年の夏はうっかり観察を怠ってしまった。今朝、気付いた時点ではすでに一本の竹筒内での営巣をほぼ完了し、その最後の仕上作業中であった(写真上)。

 泥壁で育児室が閉鎖される前に、かろうじて天井からぶら下げられた卵と、餌として貯えられた蛾の幼虫(写真中)を見ることができた。

 作業が終わると(写真下)、オオフタオビドロバチの母バチは天空高く舞い上がり、また新しい別の育児場所を求めて旅立っていった。

(E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)

新開 孝

キマダラセセリの幼虫 2006/07/26(その1)
 アズマネザサの葉っぱに糸をかけ、葉っぱを縦に折りたたんで巣にしている幼虫を見かけた。
 この幼虫は、顔の模様からキマダラセセリであることがわかる。

 幼虫が吐き出す糸には縮んでいく性質があるのか、一カ所で何度も糸吐きを繰り返していくうちに、葉っぱがしだいに合わさっていく。
 巣造りは葉っぱの先端部からはじまり、最後には一枚の葉っぱのほぼ全体が、折り畳まれることになる。その巣トンネルは、幼虫の体長よりか数倍も長い。

(E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

セスジスズメの幼虫 2006/07/26(その2)
 ある方から、セスジスズメの幼虫をいただいた。
その幼虫は、家庭菜園のサトイモの葉を暴食していたそうで、過去には駆除されたこともあるそうだ。

 セスジスズメの幼虫は、街中のつる草、ヤブガラシなどでよく見かけることがある。しかし、サトイモの葉っぱも食べることを私は初めて知った。家庭菜園などはけっこう気に掛けて見ているが、普段からサトイモだけは注目してなかったせいだと思う。

 それにしても眼玉模様のような紋様が並んだ姿は、まるで妖怪そのものだ。案外、昔の人はこういう幼虫を想像力を逞しくして見ていたことだろう。そして、いろんな奇抜な妖怪の存在を怖がったり、楽しんだりしていたに違いない。

 さて、このセスジスズメ幼虫を私に引き合わせてくれた方は、家庭菜園を楽しまれているおばさまだが、以前なら駆除していたものの、私のささやかな影響を受けられてから、この「キモイ芋虫」を、なんとも神秘的で不思議な生命として、眺める楽しみを見出されたようであった。

(EOS-5D  マクロ100ミリ)

新開 孝

宮崎は夏晴れ 2006/07/25
 今朝は、クマゼミのにぎやかな合唱で目が覚めた。

 朝から気温はぐんぐんと上昇し、いっそうクマゼミの鳴き声も凄まじくなる。クマゼミのオスをさっそく撮影してみたが、ほんとうに久しぶりに青空を背景にした写真となった(写真上)。
 これまで、どれだけ青空背景の写真を撮りたかったことか!

 さて、いよいよ本日は、三股町の新居=我が家を引き取る、最後の現場確認であった。
 空には大きな入道雲が出て、どうやら宮崎は梅雨もほぼ明けたのではないか、と思えるほどの好天。そして、蒸し暑い!!

 先月、我が家(もう、「我が家」と胸をはって言えるようになった)の外壁で見たコガネグモ2匹は、いずれも大きな卵のうをこしらえて健在。これは嬉しい。このような大型のクモが敷地内で繁殖するということは、ここに棲息する、あるいは出入りする昆虫がいかにも多いことを物語っている。

 台所の窓では、大きなアシダカグモもいたし、家の外壁の地際には無数のツマグロヒョウモン蛹がぶら下がっている。屋内にはウシアブやクロヒカゲや、シオカラトンボなど、薮と間違えて飛び込んでくる昆虫は数知れず。お化け屋敷ならず、まさに昆虫屋敷と言える(写真中)。

 で、私の仕事部屋、そしてそこへ連結するスタジオの配置なども、だいたい構想が決まってきた(写真下/庭からの展望、霧島山系が見える)。


(写真上/E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)
(写真中、下/E-330 魚眼8ミリ)

新開 孝

宮崎のクマゼミ 2006/07/24
 今日は宮崎に来ている。
東京は小雨で気温も低めだったが、ここ宮崎は31度を越す蒸し暑さだ。久しぶりに陽射しも出てきた。

 街中を歩いてみると、クマゼミやアブラゼミもにぎやかに鳴いている。やはり南国、九州だ。
 宿泊先の叔父の家の庭や周りの植え込みには、無数のクマゼミ抜け殻があった(写真上)。
 シャワ、シャワ、シャワ、とクマゼミの力強い鳴き声を聞いていると、夏はいいなあ、と思う。やはり、私は生まれも育ちも四国だからかもしれない、そんな気がした。

 今年は宮崎には、もうこれで5回目となる。
旅先にいるというよりか、なんだか心落ち着く土地というほうが、ふさわしいくらいだ。はやく引っ越してきたいと思う。新開 孝

キチョウ 2006/07/23(その1)
 東京近辺での今頃のキチョウは、卵、幼虫、蛹、成虫と、ほとんど全てのステージが見られる。

 今日は、室内作業が忙しい中、裏の草地で少しだけ撮影してみた。ヒメジョオンの花にはいろいろ昆虫が来ていたが、キチョウは吸蜜にとても執心していた。このところの雨続きで活動が押さえられていたせいだろうか。

(E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)

新開 孝

ヒゲナガカメムシ 2006/07/23(その2)
 エノコログサの穂を見ていると、たくさん群がっている細長いカメムシがいる。エノコログサの種子から吸汁したり、交尾したりとにぎやかだ。

 本種はナガカメムシ科のヒゲナガカメムシと思われる(よく似た種ではクロスジヒゲナガカメムシがいる)。

 で、前々から気になっていたのが、彼らの前脚である。前脚の腿節が太くなっており、まるでポパイの腕みたいなのだ。しかも、よく見るとその太い腕には刺が並んでおり、それはまるでカマキリの前脚なのである。

 しかしながら、ヒゲナガカメムシはベジタリアンのようであり、そのごっつい前脚で獲物を狩るわけではないようだ。
 が、ほんとうにそうであろうか?
 ごっつい前脚は、一体何に使うというのであろうか?

(E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

オンブバッタ幼虫 2006/07/23(その3)
 ツユクサでオンブバッタの幼虫が佇んでいた。

 昆虫の仕草のなかで、人の目から見れば、ただ佇んでいるだけにしか見えないことはけっこう多い。彼らのじっと動かない技?には、禅僧も叶わないだろう。

 さて、オンブバッタ幼虫の顔を正面から見る限り、しかも肉眼のレベルで判断するかぎり、すでにして成虫と変わらないかのように見える。
 しかし、視点を変えて背面から見てみれば、まだ翅は生えてなく、やはり幼虫であることがはっきりする。

(E-500   マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝
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