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小学館図鑑NEO「カブトムシ クワガタムシ」 2006/07/02(お知らせ)
 小学館からNEO図鑑の「カブトムシ クワガタムシ」が発売された。

 本書の特徴はいろいろあるが、コガネムシやハナムグリなどを含むコガネムシ上科全体までを扱っている。したがって、これまでクワガタやカブトムシに偏って嵌っていた子供達のなかから、コガネムシやハナムグリにも広く興味を示す子らが増えてくれることを期待したい。

 今回、私は本書の全ての標本撮影を担当させていただいた。撮影に取りかかったのは実に一昨年の12月からだが、冬場を利用して短期集中型の出張撮影を数回に渡って行なった。場所は群馬県、前橋市。
 前橋は県庁所在地ではあるが、新幹線もお隣の高崎市が停車駅とあって、なんとも寂しい街という印象が強かった。県庁だけは飛び抜けてでっかい高層ビルであり、県内のほとんどの場所から眺望できそうだ。
 夜のネオン街に出歩いてみれば、呼び込みのお兄ちゃんはやたらといても、お客の歩く姿はほんとうに稀であった。不思議な光景ではあったが、魚の美味しい居酒屋を紹介してもらったおかげで、一日、一日の疲れを癒すことができて助かった。

 撮影はデジタルカメラを使ったので、撮影結果は現場でほぼ確認できたし、何といっても都内のラボまで往復する必要もなかったので、とても効率的な仕事ができた。
 ただし、撮影結果をモニターに表示したものと、標本実物を並べて比較すれば、写真で厳密に色を再現することの難しさを改めて感じた。なおかつ、そのデジタルデータをCMYK変換しての4色印刷製版の段階を経れば、さらに色再現は困難を極める。それでも、刷り上がった本書を開いてみれば、かなりよく発色できたなあ、と私個人としては感心している。

 標本写真以外にも生態写真の撮りおろしではいろいろと苦労したり、新しい発見があったりと、初めて経験することも多かった。また様々な方達との出会いもあったおかげで、この図鑑の仕事はより想い出深いものとなった。 
 その辺の撮影記はいずれまた紹介できるのではないか、と思う。

 新開 孝

「切り取り線」 2006/07/02(その1)
 ヤマノイモの葉っぱに波形の「切り取り線」を見つけた。

 葉っぱの縁2カ所から始まって2本の切り取り線は互いにぶつかる手前で留まっている。したがって、その切り取られなかった部分を折り目として、切り取り線の内側をぺろんと左右どちらかへ折り返せば、そこはサンドイッチ状態となる。
 そのサンドイッチの具になっているのは、ダイミョウセセリの幼虫である。

 ヤマノイモにこうして作られたダイミョウセセリの幼虫巣は、幼虫の成長に伴い変化する。写真の巣は、ほぼ熟令期のものだが、もっと若い幼虫の巣での切り取り線はストレートな切り取り方で、写真のように波打ってはいない。

 幼虫の体が大きく成長すると、当然ながらその体を納める巣のサイズも大きくする必要がある。ヤマノイモの葉っぱは薄くて柔らかいので、大きい断片にした場合には、構造的に弱い。
 幼虫巣の造りはいたって簡単で、二枚に折り返した屋根の部分の縁を数カ所、糸で綴っているだけだ。
 このとき屋根の縁を波形にしておけば、単調な曲線よりかは構造的な強度が得られるのではないか、と想像している。そしてその強度に助けられて、糸での綴り留めも数カ所に施すだけで済ますことができているのではないか。

 ダイミョウセセリの幼虫巣には、建材の節約と建築作業の効率化、という少なくとも2点の工夫があるのではないか、と思った。
 新開 孝

アケビコノハの若い幼虫 2006/07/02(その2)
 アケビの蔓が、空堀川遊歩道の林側のフェンスに絡んでいる。
 春先には紫色の怪しい雰囲気をした花を咲かせるアケビは、あちこちでよく見かける。その理由は、アケビの実を食べた鳥が落とした種子でもって、いろんな場所で萌芽する機会を与えられているからだろう。

 それはともかく、フェンスの脇をふと歩き過ぎようとして、黒い小さな、小さな芋虫が目に入った。
 しかもその静止した姿の、体の折り曲げ具合は、いかにも見慣れた芋虫ではないか。

 つい2週間ほど前に愛用のルーペ(志賀昆虫社で購入)を紛失してしまい、こういうときにはたいへん困っている。現場では、その小さな芋虫はただの真っ黒にしか見えなかったが、持ち帰って拡大撮影してみると、すでに幼虫の体にはちゃんと眼玉模様がついていたのである。

 ルーペを一個買うだけで、渋谷の志賀昆虫社まで出向くわけにもいかない。近場では池袋のハンズあたりかもしれないが、手頃なルーペがあるだろうか?それにしても、池袋までの往復だけでも1時間半以上かかる。しばらくはルーペ無しでフィールドを歩くしかない。よく考えてみれば、これまでにもルーペは2回紛失しており、ようやく長いストラップを採用してからは、ずいぶんと長持ちしていたのだが、、、。
 新開 孝

ゴマダラカミキリ 2006/07/01(その1)
 近所の生け垣のカラタチでは、このところ毎日のようにゴマダラカミキリに会える。

 いつも2、3匹のゴマダラカミキリがカラタチの茎をかじっている。茎の表面はかじられて白い食痕となっているので、新しい食痕を探していけばそこで必ずゴマダラカミキリが見つかる。

 カミキリムシと言えば、私が子供の頃にはこのゴマダラカミキリが一番身近で親しみ深かった。

 このカミキリムシはいずれ丁寧に撮影してみたいと考えているが、今日は少しテスト撮影をしてみた。飛翔シーンなどは、やはり野外で撮影した方がいい。
 

 新開 孝

負傷したキカマキリモドキ 2006/07/01(その2)
 一昨日に埼玉県、飯能市で見つけたキカマキリモドキ(写真上)。

 このキカマキリモドキはメスだったので、卵を撮影したくて飼育してみることにした。
 捕まえたときには気付かなかったが、今日あらためて見てみると、左の前脚が腿節の途中から欠如していた(写真下)。その切断部分は黒く変色している。

 キカマキリモドキは、他の昆虫などを捕らえて食べる肉食性だが、それでもあらゆる危険に常にさらされていることには変わりないであろう。どういった事件が起こって大事な前脚の片方を失ったのかは、想像しようもない。

 しかし、このキカマキリモドキは右前脚だけでも獲物をがっしりと捕り押さえて、もりもりと食事をしている。
 
 
新開 孝

イワタセイボウ 2006/06/30(その1)
 ヒメジョオンの花でメタリックな輝きの小さなハチを見つけた。
 体長は8ミリ程度。

 お尻から見ると、赤い腹部がよく目立つ(写真上)。

 顔を正面から見れば、これまた綺麗な金緑色(写真中)。

セイボウの仲間にはこうしてお花畑で出会うことができるが、彼女らは寄生バチであって、その生活の真相を覗き見ることはかなり難しい。



新開 孝

対岸の火事!? 2006/06/30(その2)
 エゴツルクビオトシブミのオスが、胸はって威張っている(?)ところへ、オオイシアブが獲物を捕らえて、すぐ後ろへやって来た。


 その瞬間、私はエゴツルクビオトシブミは逃げ去るだろうと思ったのが、意外にも、そのまままったく動じることなく、じっと同じ姿勢を保っていたのである。
これには少し驚いた。

 エゴツルクビオトシブミも運が悪ければ、いつオオイシアブの餌食になってもおかしくない。新開 孝

白髪太郎 2006/06/29(その1)
 草やぶでクスサンの真新しい繭を見つけた。

 網目状の繭内にはまだ幼虫の姿を見ることができたから、その繭が紡がれて日が浅いことはすぐに知れた。
 だとすれば、まだ近くに幼虫「白髪太郎」がいるに違いない、そう思って探してみたところ、近くのヌルデが食樹であろうと思われた。しかしヌルデの高い梢をいくら眺めても、食痕はあっても幼虫の姿はなかった。

 幼虫探索を諦めて少し山道を進むと、目の前を「白髪太郎」がゆったりと歩いていた。
クスサンの幼虫たちはほとんどが成熟して、繭つくりの時期に入っているようだ。
 新開 孝

ヘラクヌギカメムシ 2006/06/29(その2)
 クヌギカメムシ類は、秋冷のころにクヌギやコナラにオス、メスがやって来て交尾や産卵をすることで、よく知られている。

 しかし、5月ころに羽化して成虫になったあとは、どこともなく分散して、永い放浪生活に入るようだ。

 今日は埼玉県、飯能市の天覧山を歩いてみたのだが、いきなり見つけたヘラクヌギカメムシを手に取ってみた。するとさっそくカメムシ特有の臭いを放った後、飛び立ってしまった。そこをすかさず、またもや手で捕らえたら、今度は私の腕の上を歩きながら、さかんに翅をはばたくのであった。
 しつこく干渉されて、このヘラクヌギカメムシは怒ったのかもしれない。

 ヘラクヌギカメムシがはばたきをしている間、ずっと臭いがしていたのは、羽ばたき旋風でもって臭いを集中的に送り出そうという戦略だったのかもしれない。新開 孝

オオカマキリの幼虫 2006/06/28(その1)
 オオカマキリの幼虫たちも、すでに体長3、4センチ程度まで成長している。みな幼虫であるから、もちろんまだ翅は生えていないが、顔つきや獲物をねらう仕草は、もう成虫となんら変わりない凄みさえ感じられる。

 さて先日、紹介したヒメカマキリモドキの食事シーンは、今日のオオカマキリの姿を見れば、そっくりであることがよくわかる。
 それぞれの顔と口元をアップで写真にすれば、「そっくり」ということが印象付けられるが、しかし、これはあくまでも撮影上の「切り取り」による効果が大きい。

 実際に野外でヒメカマキリモドキに遭遇したとすると、その姿、外観から受ける素直な印象とは、多くの場合じつは「カマキリ」ではない。

 ヒメカマキリモドキは、うんと近づいて虫眼鏡の力を借りて覗いてみれば、それは「カマキリ」なのだが、原寸大で見れば、ほんとうは「ホソアシナガバチ」そっくりと表現した方が良いのかもしれない。

新開 孝

カラスアゲハの幼虫 2006/06/28(その2)
 近所のサンショで、カラスアゲハの幼虫を見つけた。

 ここ清瀬市で、カラスアゲハはきわめて少ないチョウの一つだと思う。盛夏にはクサギやネムノキの花で蜜を吸う姿をたまに見かけることもあるが、成虫の舞い飛ぶ姿に遭遇する機会は少ない。

 また、こうしてサンショや他にはコクサギなどで幼虫を見つけることも、ほんとうに数少ない。

 さて、サンショ(山椒)と言えばアゲハ(ナミアゲハ)を連想する方も多いだろう。ベランダに置いたサンショの鉢植えが、いつのまにかアゲハ幼虫に丸坊主にされてしまった、ということも多いからだろう。

 そういうわけもあってだろうが、私どもの仕事では、アゲハと言えばサンショを舞台にした写真でないと全く売れないのである。昆虫関係の児童書では、まず例外無く、アゲハの幼虫が育つ植物はサンショなのである。
 この出版界の状況を見ていると、まるでアゲハはサンショが一番好きかのようにも受け取られそうだ。もっともサンショは絵作りの上では、ミカンやカラタチなど柑橘系の植物よりか「絵にし易い」「綺麗」という条件を備えている。

新開 孝

羽化したヒトツメカギバ 2006/06/28(その3)
 先日25日に紹介した蛹が今朝早く、羽化した。
 羽化時刻は、午前5時半から5時45分頃と思われる。

 昨夜は、蛹の体に翅の紋様が浮き出ていたので、おそらく今朝には羽化すると思っていたのだが、宮崎日帰りで少し疲れたのだろう、今朝起きたのは午前6時だった。その時点ではすでに翅が伸び切る寸前。

 本種は、若い幼虫で樹上越冬することがわかっている。しかし、これまでのところ、私はその越冬幼虫を見つけたことがない。
 新開 孝

宮崎県 三股町 2006/06/27
 今日は4時起きで始発電車に乗り、羽田へ向った。
 
 午前8時55分定刻に宮崎空港着。昨夜から今朝にかけて、宮崎県は激しい雷雨があったそうで路面が濡れていた。空気はじっとりとしているが、ああ、宮崎に来たなあ、と妙に嬉しくなる。

 さて、前々から何度も触れてきた九州への移転問題は、とりあえず土地と家屋の登記簿移転や不動産購入の支払いもほぼ完了したのである。転居は来年3月を予定している。
 
 来年からの新住居は、宮崎県南部の北諸県郡、三股町となる。大字、小字がつく住所にはこれまで憧れていたが、とうとうそんな田舎に住むことになった。
 もっとも田舎といっても山深い辺鄙な所ではなく、なだらかな丘の上にあって、霧島山系を西に望むことができる明るい、開けた環境。周辺は田畑、牧草地と牛舎が多い。
 
 土地の境界線を確認して歩くうちに、でっかいコガネグモのメスを2匹、敷地内で見つけた。新開 孝

ヒメカマキリモドキの食事 2006/06/26
 一昨日から二日連続してヒメカマキリモドキのメス2匹が羽化した。

 この2匹のメスは、いずれもマミジロハエトリの卵のう内から見つけた繭から羽化したのであった。
 したがって、ヒメカマキリモドキ成虫の野外における発生時期を推測する上で、この羽化日のデータは参考になるだろう。

 これまでにヒメカマキリモドキの一番遅い成虫の記録は、千葉で11月という観察例を聞き及んでいるから、そこまでも含めると成虫の出現期はかなり長期に渡る。このことについては、もしや年2回発生の可能性も視野にいれておく必要があるだろう。それと同時に、クモの産卵時期が種類によってどういうタイミングになっているのか、そこを知ることも必須の条件となる。

 さて、羽化したメスの餌には生き餌が必要。しかも捕らえることのできるサイズまで考えればユスリカ程度が無難のようだが、今朝は少し大きめのハエの一種を与えてみた。
 これはちょっと大き過ぎたかな、と見ていると、ヒメカマキリモドキは前脚一本でサッと難なく押さえ込んでしまった。そしていきなりハエの頭からガブリ、ガブリと食べ始めたその様子は、やはりカマキリなのである。
 前脚で押さえ込む力は相当なものらしく、たしかにまるでポパイの腕を連想するほどの逞しさがある。



『宮崎県 北諸県郡 三股町』

 明日は、日帰りで宮崎に行く。
 これまで数回通ったのも、来年の移転先を探すためだったが、いよいよその移転先が決まった。
 
 今日の九州はニュースを見たり聞いたりしていると、たいへんな雨量でもって、あちこちで被害も出ているようだが、それに反して宮崎は真夏のような晴天であったそうだ。
 たしかに九州は、北と南では気候がかなり違うと聞いているけれど、ずいぶんと極端だなあ、と感じた。
 せっかくの九州行きだが、今回は特に事務処理のみで、フィールドを巡る時間は全くない。 せめて明日も晴れて欲しいところだが、予報によれば宮崎も明日は雨ということになっている。新開 孝
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