menu前ページTOPページ次ページspace.gif

逆子?の蛹 2006/04/23(その1)
 ツツハムシ類の幼虫は、自分の糞を使ってカプセルを造り、それをシェルターとして過ごす。シェルターから体前半部を乗り出して移動する様は、まるでヤドカリのようだ。

 今日は、冬のあいだに見つけておいた幼虫入りカプセル(写真上)の中を見てみた。
 すると中ではすでに蛹となっていた(写真下)。透けた体の様子からは、まだ蛹化してからさほど日数を経ていないと思われる。

 意外だったのは、蛹の頭の向きがカプセルの出入り口ではなく、底の方に向いていたことである。糞カプセルは2個あったので、もう1個でも調べてみると、蛹の頭の向きはやはり同じであった。
 
 蛹は糞ケース内いっぱいの大きさであり、蛹化してから体を反転したのではなく、幼虫時期に反転したことがわかる。また幼虫の抜け殻が入り口の方にあることもその証となっている。
 
 しかし、なぜ、蛹は幼虫時代に体を乗り出していた入り口穴のほうではなく、カプセルの底の方に頭を向けているのだろうか?
 その理由は案外、次のようなことだと思う。

 まず、カプセルの入り口は幼虫時代には自分の頭で塞いでいたが、蛹になる前にはしっかりと自分の糞を使って完全に塗り固めていることがわかる。
 つまりこのふた固めの作業をする上で、幼虫はお尻を入り口のほうに向ける必要があったのだ。

 幼虫はふた固め作業の後、蛹化に先だって再び反転することが可能だったはずだが、なぜそれをしなかったのか?という疑問も湧く。
 で、こういう疑問が湧くのはカプセルの出入り口にこだわっているからに過ぎないのだろう。おそらくは、蛹化に先だって入り口を塞いだ時点から、カプセルの壁はどの部分もほとんど均質の密閉壁になってしまったのではないか、と想像するのである。
 羽化したあとの成虫は、口器を使い時間を掛けて脱出口を穿つのではないか、と思う。

 いずれにせよ、じきに成虫が羽化して姿を現せば、この謎?も解明できるはずだ。
 
(EOS-5D  マクロ65ミリ)新開 孝

コンボウアメバチの蛹、そして意外な発見! 2006/04/22
 冬の雑木林で見つけたヤママユの繭が一つ、ずっと私の机の上にころがっていた。
 ずっしりと重みもあるけれど、それは寄生バチに侵されている証、ということを、「ある記」バックナンバー、3/28の「ヤママユの繭の中」で書き込んだ。

 さて、そろそろ繭の中のヤママユ蛹のなかでは、寄生バチのコンボウアメバチが蛹になっている頃と見当をつけ、本日、中を切り開いてみた(写真上)。

 するとどうだろう!?まずは目に飛び込んで来たのが、濃緑茶色の液状物質であった。その液状物質に埋もれるようにして、コンボウアメバチの頭部が見えている。
 最初は切開時に手元が狂って、ハチを傷つけてしまったか!と驚いたが、いくらなんでも体液がこんなに一気に浸出するはずもない。
 で、ピンセットでそっと除去してみたら、これがすんなり摘め出せたのである。
 つまり液状物質はゼラチン質の膜で覆われており、ピンセットで摘む程度では破れないのであった(写真中)。
 
 そして、液状物質に埋もれていたコンボウアメバチの蛹は、すでに眼の部分が色付き始めていた(写真下)。

 コンボウアメバチ蛹の繭中を大きく占めていた液状物質は、おそらくアメバチ幼虫が成長するに伴い生じた排泄物であろうと思う。
 このように排泄物がゼラチン質の膜袋で覆われていることで、蛹が汚物で溺れてしまう危険を避けているのでは、と考えられる。
 
 そう言えば、野鳥のヒナは巣の中で、やはりゼラチン質膜に覆われた糞をする。親鳥は自分に尻を差し向けて排泄された糞をそっと嘴でくわえとり、巣の外に捨てにいくのである。鳥の糞は未消化物が多く、腐敗しやすいので、狭い巣のなかに捨て置くわけにはいかないそうだ。
 
(OLYMPUS E-500 マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

「てんとう虫」はナナホシテントウ 2006/04/21
 和名のテントウムシは、ナミテントウとも呼ばれる。
それは「てんとう虫」と言えば「ナナホシテントウ」のことと広く認識されているからだ。ナナホシとテントウムシを混同しないがために、ナミテントウと呼ぶ必要があった。
 テントウムシ類でもっとも人気があるのはナナホシテントウだ。
 
 ナナホシテントウはじっくり観察してみると、けっこう表情豊かな昆虫だということがわかる。昆虫にはあまり表情がないと言われるが、ナナホシの動きや仕草には愛嬌すら感じる。
 またナナホシの頭部は体に比して小さく、そして細かく動かすことができるので、余計に表情を豊かにしている。

 (EOS-5D マクロ65ミリ)新開 孝

ナナホシテントウの食事メニュー 2006/04/20
 明るい草地ではナナホシテントウが盛んに活動している。

 交尾カップルも多いが、すでに卵塊もあちこちで見つかる。
 ナナホシテントウの餌は主にアブラムシだが、よく見ているとアブラムシ以外のものもよく食べている。

 (写真上)/種名がわからない何かの幼虫を食べている。この幼虫はカラスノエンドウにつくが、クロヤマアリに持ち去られて行くのもよく見かける。

 (写真中)/カラスノエンドウの花外蜜線をしきりに舐めている。

 (写真下)/同種の産んだ卵を食べるメス。このメスはお腹が大きかった。

 ナナホシテントウはこの他にも様々な花の花粉や、熟れた落ち柿などを副食として食べている。

(Canon EOS-5D マクロ100ミリ/マクロ65ミリ)新開 孝

コウチスズメの眼玉模様 2006/04/19(その2)
 ウチスズメは刺激を受けると、うしろ翅の眼玉模様を誇示することはよく知られており、拙著「虫たちのふしぎ」(福音館書店)でもその様子を掲載している。

 ところで、本日、飼育して保管していたコウチスズメの蛹が羽化していた(写真上)。コウチスズメはウチスズメによく似ているので、うしろ翅の眼玉模様が簡単に撮影できると思っていた。ところが、これがまったくうまくいかない。

 コウチスズメが落ち着いて静止しているときは、前翅と後ろ翅を重ねている。そこで刺激を与えると、ウチスズメのように翅を拡げるかと思いきや、そうではないのであった。
 コウチスズメは刺激を受けると激しく翅をはばたき、しばらくするとピタリと最初の状態に戻ってしまうのである。これは何度やっても同じで、ついには飛翔移動してしまう。

 で、肝心の眼玉模様はプルプルとはばたいている間に、チラチラと瞬間的に見えるのであった(写真下)。

(E-500 マクロ50ミリ)新開 孝

羽化しないツマキチョウの蛹 2006/04/19(その1)
 先日、ツマキチョウの羽化撮影について書き込んだが、そのころは羽化のピークとも言える状況で、数日間にわたって羽化が続いた。

 ところが、いまだに羽化しない蛹が4つ残ってしまった。

 蛹を強い光にかざしていくら眺めても、蛹の体内で成虫の体つくりが進行している様子は微塵もないのである。もしかしたら寄生を受けているのだろうか?
 しかし、そうであればとっくに寄生バチなり寄生バエが登場してもおかしくないはずだ。

 この4つの蛹は、今年の春の羽化を見合わせて、来年に羽化する可能性も考えられる。ツマキチョウにはそのような2越年する蛹もあるのである。
 だが、どういった条件でそうなってしまうのか、まったくよくわからない。少なくとも去年の飼育条件はみな一緒であったはずだ。

 チョウの世界では、同じ個体群のなかでも蛹が休眠を決め込んで、羽化時期をずらすという現象は他でもよく知られている。
 
(E-500 マクロ50ミリ)新開 孝

タンポポと春の蝶 2006/04/18
日本在来種のタンポポが群生している場所に行ってみた。
 これまでカントウタンポポと呼ばれていたものも、今では整理されて「タンポポ」と統合されているとも言われる。

 さて、ここのタンポポは背丈が低く、吸蜜に訪れるチョウや昆虫を撮影する上では、OLYMPUS E-330と魚眼レンズの組み合わせでライブビュー機能がおおいに役立った。現場でレンズの選択をしながら撮影するときは、その切り替えのタイミングが実に微妙で、この選択を誤ると写真は中途半端なものになってしまう。
 E-500には50-200の望遠ズーム、E-330には魚眼8ミリ、E-300には14-54ズームレンズをそれぞれ装着して撮影に臨んだが、チョウの動きしだいでどの組み合わせがベストかは、刻々と変化する流れでこまめに選択するしかない。

 今日、一番多く飛来したのはスプリングエフェメラルのツマキチョウ(写真上)で、次にキタテハ(写真中)、そしてミヤマセセリ(写真下)であった。

 一度だけコツバメの飛翔する姿を見たが、撮影はできず残念!あとはモンシロチョウとスジグロシロチョウがそれぞれ一度だけ姿を現したが、とにかくチョウが少なくなったなあ!と感じる。清瀬市近辺で思いっきり撮影しようにも、昆虫はあまりにも減ってしまったのだ。

(写真上/E-500 ズイコーズーム50-200ミリ)
(写真中/同上)
(写真下/E-330 魚眼8ミリ+1.4倍テレコン)

 新開 孝

春のゴマダラチョウ幼虫 2006/04/17(その2)
 ゴマダラチョウの越冬幼虫は、毎年サクラの開花とおよそ時期を合わせるかのように脱皮し始める。
  脱皮したての幼虫の体は鮮やかな色彩をしていてとても綺麗だが、また一方ではエノキの若葉にうまく溶け込む擬態色ともなっている。

 マンション裏の幼虫もここ数日、撮影したり眺めてきたが、今日は午前中を
中心によく晴れた。そこで青空も取り入れての撮影をしてみた(写真上)。
 
 この幼虫を横から見た様子が、写真下である。

(E-500 マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)

 マンション裏というすぐ近場でもあり、相手は逃げもしないので、今日は同じゴマダラチョウ幼虫をNikonD200とOLYMPUSのデジカメE330,500で比較撮影してみた。
 CanonのEOS5Dも使ってみたかったのだが、今は室内セットで撮影待機中のため、カメラを動かしたくなかったのでCanonはキャンセルとなった。まあ、総合実力では5Dの画質がダントツに良いのではないか、と思えるのだが、、、。
 
 およそNikonカメラの描写特性も掴めてきたころで、その結果は予想通りであった。今回、一番注目したのは空の色だが、忠実な再現をしたのはNikonで、OLYMPUSはやや強調した青となる。ここは好みの問題でもあろう。また同じ絞りでは当然ながらOLYMPUSフォーサーズの方が深度がより深く、特に魚眼接写で遠景までフォーカスが欲しいときにはOLYMPUSに軍配が上がる。もっともアスペクト比で横長いNikonの画角は若干ワイド感が強く感じられる。
 カメラ操作感の上で心地良いのはNikonである。Nikonはさすがにメカとしての完成度の高さを感じる。また内蔵ストロボの露出制御でもNikonはまったくオートで安心して使えるが、OLYMPUSの場合、オートではマイナス2の露出補正でもオーバー気味で制御が効かない場面があった。かと言ってマニュアル発光に切り替えての調整にも制約の狭さがあり、OLYMPUSのオートストロボ制御については、もう少し改善して欲しいと願う。
 こういったメーカー間での性能比較については、カメラ雑誌などでよく特集記事になっていることでもあり、特に私が付け加える事は無い。
 ただ、比較撮影してみた結果、今後の仕事をする上でメーカーを違えての撮影が製版結果に大きく影響するかどうかは疑わしいとの感触も改めて得た。
 つまり写真データを印刷所に入稿する上で、事前に色調を揃える作業も可能な範囲ではないかと思える。
 デジタルデータの印刷製版については、もっと複雑な事情もあるが、その辺はまたじっくり書き込みたい。


 新開 孝

ミツバツチグリ 2006/04/17(その1)
 確かめたいことがあって、近所の雑木林に赴いてみた。
 去年の春の観察で、ある昆虫の羽化について実に興味深い事実を掴んだ。その事実をきちんと見極めておこうと思ったのだが、少し時期が早過ぎたようだ。
そして、その羽化の瞬間はぜひとも撮影しようと思っている。今はその準備中。

 ちょっと当てが外れた気分を取り直すつもりで、すっかり芽生えた雑木林をゆっくり一巡してみれば、ほんとうに気分が良い。早春のこの華やいだ風景は心落ち着く。
 巡り歩いているうちに、林床の一部がぽっかりと黄色く染まっているのが目に入った。
 カメラ目線を小さな小人に据え替えてみると、まるで林床一面が花畑になった。

(写真上/E-300 ズイコーデジタル14-58ズーム)
(写真下/E-330 魚眼8ミリ)
新開 孝

羽化不全のツマキチョウ 2006/04/16(その2)
 マンション裏の草地でじっと静止しているツマキチョウのオスがいる。見つけたのは昨日の午後4時頃だ。

 このオスは右のうしろ翅が伸び切らずにそのまま固まっている。飛翔はできると思うが、かなりぎこちない飛び方となるだろう。
 そしてこのオスが今後、番相手のメスをうまく探し当てることができるのか、いささか不安に思える。

(E-330 魚眼8ミリ+1.4倍テレコン)

新開 孝

ゴマダラチョウ眠起幼虫 2006/04/16
 いつも歩く小道のエノキに、ゴマダラチョウの眠起幼虫がデーンと構えていた。今年の春はここのエノキにはゴマダラチョウ幼虫が登っていないと確認済みであったので、少し驚いた。
 そこで慌てて枝又を見ていくと、ちょうど道から死角になったところに脱皮殻がついていた。これまでずっと幼虫のすがたを見落としていたのだ。
 
 (E-330 魚眼8ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

ソラマメの花外蜜腺とクロヤマアリ 2006/04/15
 モンシロチョウがときおり訪れる畑のソラマメ(写真上)を見ていたら、クロヤマアリの姿が多い事に気付いた。

 クロヤマアリのワーカーがソラマメに登ってきている理由のひとつは、ソラマメの花の脇にある花外蜜腺がお目当てである(写真中、下)。

 クロヤマアリは花外蜜腺に頭をつっこむようにして、盛んに蜜を嘗めとっているようだ。
 
(OLYMPUS E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

中里の春 2006/04/14(その2)
 清瀬市、中里にある雑木林は、うちのマンションから歩いて1分とかからないフィールドのひとつだが、ここは通称「化け山」とも呼ばれているようだ。

 さすがにカタクリの花もすっかり終わり、雑木林の芽吹きもますます盛んとなった。そしてヤマザクラの花びらが林床一面に降り積もっている。
 このところ悪天候続きだが、午前中だけは晴れ間もあって、この中里の雑木林で撮影の仕事をした。

 撮影は順調に終わり、帰り際に林をゆっくり歩いてみるとイヌシデはすっかり若葉を広げ(写真上)、空堀川沿いのヤマブキも次々と開花していた。

(OLYMPUS E-330 魚眼8ミリ+1.4倍テレコン)
新開 孝

ウスバカゲロウ類の徘徊性幼虫 2006/04/14(その1)
 セイヨウタンポポでツマキチョウのオスが吸蜜していた。花から離れてもまたすぐ戻ってくるので、よほどお腹が減っていたのだろうか。

 そこでタンポポに近づいて魚眼レンズで撮影してみようと思った。私が近づく前にツマキチョウは飛び去ってしまったが、とにかく待ってみることにした。
 しばらくしゃがみ込んで花を眺めていると、すぐそばの地面をトコトコ歩くものがいる。

 なんと、ウスバカゲロウ類の幼虫であった。

 種名まではわからないが、おそらくはマダラウスバカゲロウかもしれない。幼虫の姿格好はまさにあの「アリジゴク」タイプであるが、この種類は砂地にすり鉢状の落とし罠をつくらない。
 そしてアリジゴクが後ずさりにしか歩けないのとは違って、この徘徊性幼虫は前向きに歩く事が出来るのが特徴である。
 体がよくわかるように、白地の上で撮影してみた。

 体つきは丸々と肥えており、これはしばらくすると繭をつくるかもしれない。
 羽化まで飼育して、種名を確かめてみようと思う。

(OLYMPUS E-500 マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝
menu前ページTOPページ次ページspace.gif
Topics Board
ホーム | 最新情報 | 昆虫ある記 | ギャラリー | リンク | 著作紹介 | プロフィール