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草千里を歩く 2005/08/24
 朝から小雨模様だったが、草千里に着いてからしばらくすると雨は止んだ。いつ降り出してもおかしくない雲行きなので、カメラはE-1にした。このカメラはレンズも含めて、水で濡れても平気だから安心して歩ける。今回は牛糞や馬糞をめぐる昆虫を中心とした生き物たちの生き様を撮影するのが目的の一つ。草千里の広大な平原をひたすら糞を眺めながら歩き、しゃがみこんでは糞をスライスしたりひっくり返したりする作業が延々と続く。一口に糞といっても新しいものから古いものまでいろんな段階があって、それぞれに集まる昆虫の種類も違ってくる。糞の新旧をすばやく見定め、どんな昆虫、生き物が発見できるかといった検討をつけながら慎重に糞の解体作業に取り掛かる。この作業に必須なのは、長いピンセットと根堀りの二点セットだ。
 こうして糞を見ていくなかでとくに多く見つかるのが糞虫のオオセンチコガネ(写真上)。金属光沢の美しい体色を見た目通りに撮影するのは難しく、できれば自然光で撮るのがいい。新しい糞ではハエ類がたかっていることが多いが、このハエたちをねらって徘徊するのがサビハネカクシだ(写真下)。このハネカクシは動きが素早く、まるでネズミを追いかけるイタチのような俊敏さだ。残念ながら補食シーンを見ることはできなかった。
 糞を食べものや隠れ家として利用する昆虫や、それをねらう捕食者、そしてさらに糞を分解する菌類とに至るまで、糞をめぐる生物の食物連鎖は複雑で多様である。
 午後4時半過ぎころから急に雲が厚くなって、小雨が降り出したので急ぎ足で車に戻った。そのとたんにかなりの土砂降りになってしまった。新開 孝

再び熊本、阿蘇へ 2005/08/23
 本日は小雨のなか松山空港から熊本行き「天草エアライン」のプロペラ機に乗った。こういう小型機に乗るのは初めてなので、ちょっと興奮する。この路線は一日一便で昨年の10月から就航したばかりのようだ。松山空港を離陸して熊本空港までは50分程度のフライトだった。
 空港からレンタカーを運転して1時間で阿蘇山上の草千里に着いた。あいにく雨が降っているが、とにかくも今日から阿蘇での仕事開始だ。今夏の私の休みは松山と西予市明浜町で家族と過ごした2日半のみだ。なかなかまとまった休みを家族と過ごすことは難しい。新開 孝

オオチャイロハナムグリ 2005/08/20
 石鎚山系を松山から望むと厚い雨雲にすっぽりと覆われている。予報でも雨となっていた。それでもとにかく石鎚スカイラインの入り口まで出向いてみた。平野部は晴れているからわずかな望みがある。しかしさすがに標高の高い所は完全に雲の中なのでスカイラインを登るのは諦めて、面河渓に入ってみることにした。面河渓谷は学生時代によく通ったが、今日訪れるのは20年ぶり位になる。
 渓谷沿いの遊歩道を奥に進んで第二キャンプ場の広場に入ってみると、大きなヒノキの幹をオオチャイロハナムグリが這っていた。「おお!オオチャイロだあ!」と思わず声をあげてしまった。生きている姿を見るのはこれが初めてだから興奮する。オオチャイロハナムグリはちょうど私の目線の位置にいてゆっくり歩いている。この大きなハナムグリは奇麗だし独特な体型が目をひく。
 面河渓で仕事を進めるうちにここでも雲行きが怪しくなってきた。しだいに雨も降り始めたがカメラを撤収して、しばらくは仕事を続けてみた。林の中だからずぶ濡れになることもない。新開 孝

糞そっくりのハバチ幼虫 2005/08/19
 今日も石鎚山系の伊吹山近くに行ってみた。雲が多かったのだが、しだいに晴れ間が広がり、瓶が森へとむかう縦走路から石鎚山最高点、天狗岳の頂上が見えてきた(写真上、私の背後右手が天狗岳)。
 ノリウツギの葉表にとぐろを巻いた格好のハバチ幼虫が見つかった。最初は鳥の糞か、と思っていたのだが近寄ってみるとハバチの幼虫だった。こうしてアップの写真でみるとそうでもないが、自然光下ではもっと糞に紛らわしいのである。もちろん種名はわからない。午後2時ころから急にゴロゴロと雷鳴がとどろき始め、雨も降り出した。ちょうど仕事も一段落したところなので、慌てて車に飛び込んだ。
それにしてもやはり標高が高い所は涼しくていい。汗かいてもすぐに蒸発してしまう。アサギマダラがふわふわ舞う姿を眺めながら石鎚スカイラインを下っていった。新開 孝

石鎚山山頂は雲の中 2005/08/18
 15日に四国、松山に来て16日には西予市明浜町俵津に移動、ここで17日までビデオ撮影の仕事をしていた。ビデオの撮影をしている間は通常、写真撮影はできない。そもそも現場にカメラを携行していないから当然ではある。ビデオと写真の仕事は同時に進行できないし、それはやらないことにしている。
 さて本日は石鎚山脈の伊吹山近くにやってきた。今日は写真の仕事。石鎚山の最高峰は天狗岳で1982メートルだが、私が立っている縦走路の標高は1500メートルあたりだ。生憎、天狗岳の頂上は雲に隠れて見ることができない。ほおかぶりしている私(写真上)だが、これはイヨシロオビアブという吸血アブへの対抗手段だ。もっとも半袖Tシャツではアブ対策も完璧ではないが、今日はどうにか刺されずに済んだ。すれ違う登山者には頭からすっぽりメッシュをかぶっている完全武装の人もいたが、そういう養蜂家のような格好までいくと仕事にはならない。
 瓶が森へと向かう縦走路は一面、ササ原だがあちこちにブナが生えており広葉樹の林も抜ける。ササ原ではチチチチーッ、ツツツツというツユムシの仲間の鳴き声が多い。声を頼りにツユムシの姿を探してみると、縦走路のすぐ傍らのササの葉上でオスが次々と見つかる(写真下)。できるだけ高い場所を選んでそこで鳴いているのは、いかにもナワバリ宣言のようにも感じる。なかなか奇麗なツユムシだが、種名を私は知らない。

 明日も石鎚山通いだ。今夜は久しぶりに友人と松山の街で飲むことになっている。幼少から学生時代までを過ごした懐かしい街だ。


新開 孝

蛾の繭、2種 2005/08/14(その2)
 先日、港区での昆虫調査で見つけたキノカワガの繭(写真上)。キノカワガの繭が着いていたのはカキの葉裏であった。繭には直線上に合わさった羽化口がしつらえてあって、そこを押し開くと中の蛹が見える。流線型をしたこの見事な繭の形状を眺めていると思い起こすのがウスタビガの繭「ヤマカマス」(写真下)だ。
 写真のウスタビガの繭も上部の羽化口から中に入っている蛹の頭を見る事ができる。キノカワガとウスタビガの繭は構造的によく似ている。ただしキノカワガの繭にはヤマカマスの繭底にあるような水抜き穴はない。
 さて、じつはこのウスタビガの繭の方は一週間ほど前に山梨県の山中で見つけたもの。ウスタビガ幼虫は6月ころに繭を造るが、夏の間は蛹のままで夏眠し、成虫が羽化するのは11月以降である。夏の林で梢に隠れた夏眠中の繭を見つけるのは容易ではなく、私もこれまでに探して見つけることができたのは数例に過ぎない。今回の繭はまったくの偶然で目に入ったもの。


『四国、九州への遠征』

 明日からしばらく新開は四国、九州を巡ります。
九州では再び阿蘇へ行きますが、ツツガムシ病、日本紅斑熱病などへの対策はきちんとしたいと思います。先月はけっこう辛い思いをしましたから。
 最近、国内のホテルにはパソコンさえ持ち込めばLAN接続できるところが増えてきました。ですから事前にそういうホテルを選べばいいのですが、今回、四国で滞在する私の実家ではそういう通信環境は望めません。なんといまだにダイヤル式の黒電話なのです。ジーッコ、ジーッコと丸いダイヤルを回す電話機なんて、今では探すのも難しいくらいではないでしょうか。 新開 孝

リンゴツノエダシャクのオス 2005/08/14
 3日前からうちの玄関近くの外壁にべったりくっついていたのは、リンゴツノエダシャクのオス。灯りに飛来してから落ち着いてしまったようだ。はねの開張は6センチ程度。リンゴと名前にあるが幼虫の餌になる樹木の種類は多く、ツツジ、カエデ、コナラ、ヤナギ、ニレ、バラなど。
 建物の外壁などに静止しているとはねの紋様はなかなか綺麗でよく目立つが、樹木の幹などに止まれば、隠蔽擬態の効果は大きいと思う。新開 孝

クロタマムシの顔面模様 2005/08/12
 埼玉県狭山市にある「赤坂の森」で昆虫観察会をおこなった。主催は三富地域農業振興協議会。生憎の天候であったが、朝から降っていた雨は観察会が始まるころにはすっかり止んでくれた。活動する昆虫の姿は少なかったが、それでもいろいろな昆虫を見ることができた。
 アカマツの枯れ木で見つけたのがクロタマムシだが、私はこれまでオスの顔面模様を知らなかったので、種名がその場ではわからなかった。クロタマムシのメスにはほとんどこのような顔面模様がなく、メスしか私は見た事がないのである。これまで種名のごとく、いかにも地味なタマムシだと思っていたが、オスの顔面にこんな面白い模様があるとは驚きであった。新開 孝

都会の昆虫を見る 2005/08/11
 今日は港区の白金近辺を歩いてきた。このあたりにどんな昆虫がいるのか、それをロードセンサス方式で調べ、可能な限り写真撮影するというのが私の主な仕事だ。7月に引き続き今回は2回目となる。
 一見、建物と道路だけの街のように見えるが、そこかしこのわずかな緑地環境には思いもよらぬ昆虫世界がある。首都高速の脇、明治通りに沿って流れる古川は3面護岸で下水溝のような川(写真)ではあるが、よく見てみるとシオカラトンボ、ウスバキトンボ、オオシオカラトンボ、ショウジョウトンボ、コシアキトンボ、など5種類のトンボたちが飛び交っていた。水面にはアメンボの姿も多い。先月はこの川沿いにナガサキアゲハのメスが飛んでいたのも記憶に新しい。
 どんな昆虫がどこでどのように暮らしているのか。そういう意識さえ持てば、この日本という国土において昆虫の姿が皆無という環境こそが珍しい、とも言えるのではないだろうか。新開 孝

傷ついたオオセイボウ 2005/08/10(その2)
 メタリックな輝きで目をひくのがセイボウの仲間だが、そのなかでも大型種のオオセイボウは大きい個体となると、体長2センチもある。このハチは普段動きが速くて、撮影するのも一苦労する。ところが今日、出会ったこのオオセイボウの動きは少し緩慢であった。緩慢とはいえ常に歩き回るのでシャッターチャンスは意外に少ない。どうも動きがおかしいと思っていたら、左のはねを付け根から失っている。人に置き換えれば重傷かもしれないが、オオセイボウはそれでもトコトコ歩きを止めようとはしない。そっと指先で行き先を遮ると、驚いてぽろりと地面に落っこちる。そして体を丸めて死に真似まで見せてくれた。
 オオセイボウは大きな泥巣を造るスズバチに寄生する、寄生バチである。産卵は固い泥巣の外壁から産卵管を刺し込んでおこなう。新開 孝

カメムシ3種 2005/08/10
 「お化け山」のコブシの実にはクサギカメムシ(写真上)、アカスジキンカメムシ(写真中)、マユミの実で交尾するキバラヘリカメムシがいた。アカスジキンカメムシは成虫数頭に混じって、若い幼虫も見つかった。
 関東周辺ではアカスジキンカメムシの繁殖は7月後半からだが、身近な場所ではコブシやオニグルミで産卵、繁殖する姿をよく見かける。他にはシンジュノキ(ニワウルシ)、キブシなどにも好んで集まる。どの木も幼虫が成長するために必要な実をたくさんつける。アカスジキンカメムシの繁殖はこれから9月ころまで見られる。
 クサギカメムシは地味な姿だがもっとも目につくカメムシの代表種といえる。秋には大集団をつくって人家にも入ってくるので、とても嫌われるカメムシでもある。新開 孝

コミスジ幼虫の隠れ家 2005/08/09

 うちから歩いて1分の場所にある雑木林は、通称「お化けやま」と呼ばれているようだ。なぜ「お化け」なのか名前の由来をまだ聞いていない。今夏は遠征などの仕事が多く、「お化けやま」をゆっくり散策する時間がほとんどない。今日は午前中、編集者の方の訪問があったり、室内作業に追われていたが、やっと夕刻になって30分ほどだけ「お化けやま」を歩いてみた。
 もうオオカマキリ成虫が出ているかもしれないと思って探してみたが、幼虫すら見つからなかった。昨夜、オニグモに捕まったコカマキリ成虫を見たせいもあって、けっこう期待してみたのだが。

 さてクズの葉でコミスジ幼虫の隠れ家を見つけた。幼虫は葉っぱの付け根、つまり葉柄部をかじって葉っぱを萎れさせ、丸くカールした内側に隠れている。幼虫の姿そのものが枯れ葉にそっくりの擬態をしているが、こうしてさらに枯れ葉のシェルターに潜むというのはいかにも用心深いように思われる。



 

 『日本紅斑熱病』

 先月、熊本から戻って体調を崩した私だが、その病状について「夏バテ」「夏風邪」という指摘を数人の方からいただいた。しかしながら私はどうもそういう手合いではないなあ、なんだか奇妙だなあと感じていたのである。これまでに経験したことのない症状であり、もしかしたら内蔵疾患ではないか?などと不安になったりしていた。
 しかし今日、ある方から「つつがなく」というタイトルのメールをいただき、これはもしかしたら「日本紅斑熱病」だったのかもしれないと納得した。しかもこの手の病気は町中の医師では診断できない可能性が高いらしいので、病院に駆け込んでもわからないことがあるらしい。まあ、確証はないのであるが自覚症状は「日本紅斑熱病」のものとまったく合致している。
 この病気はツツガムシ病にきわめて良く似ているが、発病の原因はマダニ類による吸血から感染する。実は熊本の現地では、ツツガムシ病の注意は事前に受けていたのである。だがしかし、いったいどう予防対処すべきなのか検討もつかないでいた。「日本紅斑熱病」のことを知ってから、ふと思い出したのだが、牧場で取材中、私は馬の鼻面を撫でようとしてそこにマダニが這っているのを見て、思わず手を引っ込めたこともあった。もしかしたらその前後に気付かないうちにマダニの吸血を受けていたのかもしれない。新開 孝

オニグモとコカマキリ 2005/08/08(その2)
 午後9時過ぎころ、うちの玄関ドアのところで「クモが大きな獲物を捕まえている」と嫁さんが見つけた。あわててカメラをセットして出てみると、獲物はコカマキリであった。クモはオニグモで、ずっと前からうちの玄関先の天井に住み着いているやつだ。蛍光灯の灯りにやって来る獲物をもっぱら餌にしているようだが、今夜みたいな大物は珍しい。オニグモは夜になってから毎晩、新しい巣網を張っている。それにしてもコカマキリの成虫を見るのは今年に入って今日が初めてである。新開 孝

オオミズアオ 2005/08/08
 夏の夜、灯りに舞うオオミズアオの姿は艶やかだ。
今日の写真は8/7の午前中に撮影したもので、場所は山梨県長坂町の深沢温泉の宿。部屋の中にまで飛び込んで一夜を明かしたオオミズアオに障子が似合っている。深沢温泉の夜は大変涼しいため久しぶりに熟睡できた。オオミズアオは5月ころと今頃の夏本番との年2回、成虫が現れる。新開 孝
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