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雨の日のダンゴムシとカタツムリ 2005/06/15
 身近な生き物のなかでもダンゴムシやカタツムリは、小さな子供たちにたいへん人気がある。その理由はいくつもあると思うが、ひとつには今日のような雨の日に活動する姿が目につくことが上げられるだろう。その点、昆虫の多くは雨の日にほとんど姿を見せないから、余計にダンゴムシやカタツムリが引き立つことになる。
 私自身はやはり雨の日にわざわざ撮影に出掛けることは極端に少ない。今日は室内でビデオ撮影の待機中、うちで飼っている芋虫の餌を調達するためやむなく急いで近くの林に出掛けてみた。で、餌用の葉っぱを少しいただいての帰り道、やたらとオカダンゴムシがあちこちに群れているのに気付いた。特に遊歩道の柵棒に集中している。他にもコナラやヒノキの幹、コンクリート壁でもかなりの集団を見た。
慌ててカメラを取りに戻ってから撮影したのが今日の写真である。そしてケヤキの幹では大きなミスジマイマイが脱糞中であった。
 カタツムリの糞は細長いものをていねいにたたんでから体の外に捨てるそうだが、生憎急いでいたのでその様子を撮影することなくうちに引き返した。しかし、ありふれたカタツムリといえど、じっくり観察する機会が私の場合これまでほとんどないことに改めて気付く。先の脱糞の習性も、九州の写真家、武田晋一さんが私の子供たちに贈っていただいた「かたつむりのひみつ」(サンチャイルドビッグサイエンス6月号)という写真絵本を見て、「あ、そうなの、、、」と教えられた。ちなみにこの写真絵本では武田さんが丁寧にそして見事なまでに美しく、カタツムリの生活、特徴を撮影なさっている。

『雨の日の手抜き撮影テクニックとは』

 最初に断っておくが、そうたしたことではない。だから手抜きなのであるが、、、。つまり雨が降っているので傘をさす。当たり前だろう。ただこういうときには乳白色のビニール傘が役に立つ。コンビニで売っているやつだ。

 今日の写真はすべて15ミリ水平魚眼レンズを使っている。ボディはキッスデジタルN。林のなかでしかも雨だから日中でもかなり暗い条件。どうしてもストロボを使いたい。だがあまり強烈な固い光だと不自然だ。カメラにストロボをつけた状態でディフューザーなどを使ってもやはり光源が近い事、光源面積が小さい事であまり効果が期待できない。そもそも15ミリ魚眼ではレンズも短いため、あまりでっかいディフューザーを装着できない。そこで傘の柄を持った手にストロボを構える。これはちょっとシンドイが我慢する。発光部は傘の方に向けておく。カメラにはストロボを遠隔で発光させるためのトランスミッターを装着している。こういう体勢で撮影するとビニール傘が反射傘となってかなり柔らかい光を演出できる。これはスタジオ撮影でよく使うアンブレラ光源の野外版というわけだ。傘は本来の雨よけにもなっているから安心して撮影できる。ストロボをカメラから離して使いたいとき、ケーブルを使うこともあるがこのケーブルがけっこう邪魔になることが多い。おそらく各カメラメーカーにこうしたワイヤレス発光させるためのシステムがあると思う。CanonではスピードライトトランスミッターST-E2と専用ストロボの組み合わせでワイヤレス発光ができてけっこう重宝する。

 傘をさしてしゃがみ込んだ男。そしてときどき傘がボワッと稲妻のごとく光る。その光景を他人が見たらいかにも怪しすぎる。だが幸いにして、この雨の中、林を散歩する物好きなお方は皆無であった。新開 孝

水入り 2005/06/14
 コブシの梢を見上げたら、でっぷりと太ったハエトリグモがメイガの一種をねらっているところだった(写真上)。このハエトリグモはネコハエトリだろうか?メイガも種名がわからない。しかしこのクモと蛾のあいだには緊張感がじりじりと漂う。さあどうするか!見ているうちにクモはそっと前足で蛾のうしろ翅に触れた。なんとも慎重なやつだ。すると飛び去るかと思った蛾の方は、ブルブルっと翅を小刻みにふるってクモを脅かしてしまった。おお!蛾も負けん気いっぱいだ。クモは一歩うしろに下がってしまった。
 他の用事もあったのでこのコブシの木から30分ほど離れることになった。で、その後どうなっただろうか、と再び見に行ってみるとまだ同じ体勢のままだった。クモは獲物を前にしてじっと見つめ続けるのみだ。蛾も毅然と構えたまま。私はここでちょっかいを出してしまった。この膠着状態を見続ける時間の余裕がなかったからだ。何をしたかというと、そっと両者に息を吹きかけたのである。相撲の水入りで行司がパンと両者の腰をたたくようなことをしたわけである。
 すると瞬時にクモは蛾に飛びかかり、あらかじめ用意していた糸でぶらんと空中に獲物を抱えたままの格好となったのである。蛾はバタバタともがくが、もう完全にクモのあしで押さえ込まれてしまった。なす術も無い。そしてすぐにも毒液が効いたのだろうぐったりとなった。クモはするすると糸を手繰り寄せ葉っぱに接地した(写真下)。
 今日の観察はしかしどうも後味が悪い。私がちょっかいを出さなければ、蛾はもしかしたら逃げ去ることができていたかもしれないからだ。

(Canon パワーショットG5使用)
新開 孝

狭い仕事部屋にHDCAM 「HDW700A」 2005/06/13(その3)
  ビデオの仕事では従来のテレビ画面の場合と、近頃になってよく耳にするハイビジョン画面の二通りがあり、両フォーマットを使い分ける必要があり、少々厄介ではある。
 昨秋そしてこの春から手掛けているビデオの仕事はハイビジョン映像であり、当然ながらカメラはハイビジョンカメラを使用しなければならない。昨年、ソニーから民生機ハンディカメラHDR-FX1が発売され、この画期的なカメラを私の同業者たちもぞくぞくと購入した。しかしながら私は躊躇してまだ導入を見合わせている。その理由はいくつかあるが、一番の理由はHDR-FX1では小さな昆虫の接写撮影ができないことにある。つまりレンズ交換できないカメラには撮影範囲の限界があり、そこそこ使えても肝心なシーンが撮影できないのでは困るのである。
 さて写真のHDW700Aは本格的な業務用カメラであり、レンズ交換ができるのは言うまでもない。今、装着しているレンズはニコンのマイクロニッコール105ミリであり、例えばアゲハのふ化シーンもアップの迫力で撮影できる。もちろんこのカメラはおそろしく高価であり、私は短期間借りているに過ぎない。そしてでかい!重い!一人で持ち回るには無理がある。アシスタント必須である。
 私はハイビジョンカメラについては、Canonに頑張って欲しいと思う。民生機ミニDVカメラXL-1のハイビジョンタイプを出して欲しい。このカメラならCanonのスチールカメラレンズ、EFレンズが交換レンズとして使えるからだ。しかし、世の中そうそううまくはいかないものだ。新開 孝

芋虫三種 2005/06/13(その2)

 ハナウドにキアゲハの幼虫(写真上)。オニグルミにムラサキシャチホコの幼虫(写真中)。そしてアオツヅラフジにマダラエグリバの幼虫(写真下)。
いづれもさいたま市の「秋が瀬公園」で撮影したもの。
この時期オニグルミでは、先のオニグルミノキモンキカミキリとムラサキシャホコ幼虫が必ずセットで見つかる。マダラエグリバ幼虫はずっと昔に撮影したことがあり、拙著「里山昆虫ガイドブック」にも掲載してあるが、そのときの写真はエノキの葉っぱ上であった。今日ようやく食草アオツヅラフジ上で食事中のシーンを撮影できた。こんな普通種でもそれぞれの食草できちんとおさえていくには、けっこう時間がかかるものだ。「身近な蛾類の図鑑ハンドブック」への道のりはまだまだ長いようだ。
新開 孝

オニグルミノキモンキカミキリ 2005/06/13
 ずいぶんと長い名前のカミキリムシだ。だけどその名のごとくオニグルミで見つかるから、いっそ覚えやすいとも言える。体長は1センチ以下で7ミリ前後。オニグルミの梢を下から仰いでみると、緑色に透ける葉っぱにこの小さなカミキリムシが見つかる。ちょっとした振動でも素早く飛んで逃げてしまう。秋が瀬公園にて。

(EOSキッスデジタルN  MP-E65ミリ使用)新開 孝

ササグモの脱皮 2005/06/12
 本日は蒸し暑く陽射しも強い。午前中、マンションの裏の草地に出てみるとササグモの脱皮直後の姿に出会した。体がほっそりとしているのでオスのようだ(写真上)。ふと近くを見るとあちこちにササグモが多数佇んでいる。このクモの生息密度がやたらと高い、その理由もすぐにわかった。昨日草刈り作業が行われ、私が踏み込んだ草むらはかろうじて刈り残された狭いユートピアであったのだ。そうしてしばらく眺めているとお腹のでっぷりとしたメスの個体もけっこう見つかる(写真下)。

(EOS-1D マーク2 100ミリマクロ使用)


 EOS-1D マーク2を使用する頻度が少なくなった。このカメラは野外で昆虫写真を撮影するにはまったく向かないからだ。主に望遠レンズなどをつけてのスポーツ写真を想定して設計されたカメラだから、小さい昆虫という被写体を狙う仕事ではやたらでっかいカメラ本体が邪魔で仕方が無い。例えば地面すれすれのアングルをとりたくてもカメラ下部のバッテリー室部分が大きくでっぱていて、どうしようもないのである。そしてとにかく無意味に重い。
 今はOLYMPUSのフォーサーズシステムをメイン機材として使っているが、それでもレンズの選択といった制約から、EOSシリーズもしばしば使用せざるを得ない。そこでけっこう重宝するのが超小型ボディのキッスデジタルNである。
画質と価格のバランスがとにかくいいのであり、仕事にも充分使えるカメラである。新開 孝

ウスタビガ幼虫、脱皮する 2005/06/10
 ウスタビガ幼虫が脱皮して、終令となった(写真上)。この幼虫は飯能市で5/29に見つけた幼虫。うちに連れ戻ってから2回脱皮したことになる。あの見事な「ツリカマス」、緑色の美麗な繭を紡ぐのはまだしばらく先のことである。
 幼虫はどのステージであっても脱皮したあとは自分の脱けがらを食べてしまう(写真中)。この抜け殻を食べる理由はよくわかっていないようだ。本来、ベジタリアンの幼虫が唯一肉食?となる瞬間でもある。

 昨日の蒸し暑さとうって変わって、本日は小雨模様となった。ベランダの外ではオニグモの一種の巣網に雨滴が光っていた(写真下)。

(写真上、中/E-300 マクロ50ミリ テレコン使用)
(写真下/E-300 50-200ズーム使用)新開 孝

山形の4日間(その3、カラカネトンボ舞う) 2005/06/10
 これまで山形県の自然については何も知らなかったが、今回わずか4日間の滞在でありながら当地の自然環境の濃さを感じ取ることができた。一口に言い表せないが、とにかく目につく昆虫の数、種類が多いのである。山間部の人工林率もかなり低く、広葉樹林の美しい風景に溢れている。
 その中でこのカラカネトンボが多数舞う湿原にも永幡さんに案内していただいた。ちょうど産卵しているメスが一匹いて、このメスを巡って数匹のオスが空中戦を繰り返すので、なおさらにぎわっていた。聞けば山形県内でのカラカネトンボは広く普遍的に生息しているそうだ。
 カラカネトンボはホバリングすることも多いのでその瞬間もねらってみたが、けっこう難しい。結局、ほかの昆虫もいろいろ撮影したかったので、カラカネトンボの撮影はそこそこに済ませてしまった。(6/4から6/7の山形滞在記)

(写真上/カラカネトンボのオス、E-300 ズイコーデジタル50-200ズーム使用)
(写真中/カラカネトンボ、メスの顔、CanonキッスデジタルN マクロ65ミリ使用)

(写真下/月山麓の山村、E-300 ズイコーデジタル14-54ミリ使用)新開 孝

山形の4日間(その2、ヒメシジミ) 2005/06/08(その2)
 曇天のなか小国町のとある河原に車を止めた。永幡さんがここにはヒメシジミが多数、発生するという。幼虫はヨモギを食べるというので、食痕や巣を探してみたがいっこうに幼虫は見つからない。そこで蛹を探してみようということになった。しばらくすると永幡さんが石ころの下から蛹や前蛹を見つけてくれた(写真上、ヒメシジミ蛹を撮影する永幡さん)。
 草むらに埋もれるようにしてころがっている石の下には大抵トビイロケアリの巣があって、ヒメシジミの幼虫はこのアリと密接に関係をもっていることは疑いない。アリは前蛹や幼虫の周りに必ずつきまとっている。アリは幼虫のお尻近くにある分泌腺に惹かれて集まる。そしてときおりその分泌腺に口をそえて熱心に何かを嘗めとっているようだ(写真中、下/アリは前蛹にも執拗にまとわりつく。)
 しかし面白いことに、分泌腺のわきにある一対の穴からは白い突起が出たり引っ込んだりすることがある。そうするとたちまちアリたちは興奮して駆け回るのである。この現象の意味が何度見ていてもよくわからない。ムラサキシジミやムラサキツバメの幼虫でも同じようなことを観察したことがあり、その光景は何とも不思議である。

(6/4から6/7までの山形滞在記)新開 孝

山形の4日間(その1) 2005/06/08
 福島でつばさ号が切り離され、山形新幹線となって走り出すとその速度はもはや新幹線ではなくなる。各所に踏切もあり車窓には人家や畑がせまっている。やがて山間部を抜けるように走り出す。いつまで行ってもその光景は在来線と何ら変わりがない。少しでも線路脇の草刈りを怠れば、すぐにでも路線ダイアが乱れてしまいそうだ。
 しかし私は車窓から外の様子を眺めながら、東京とは違うその植物たちの顔ぶれにいたく感動していた。大きな白花のホオノキがゆったりと風に揺れる。線路脇に長い長い群落をつくるオオイタドリ、あちこちに鮮やかなピンク色で目を惹くタニウツギ(写真上)、今頃が花盛りのミズキ、遠くの田んぼに点々と黄色く見えるのはサワオグルマ(写真中)。やはり東北の自然に踏み込んでみると時間を遡っていく感じがとても心地よい。春に舞い戻ったようだ。
 はたして到着した米沢駅は、なんとも寂しい町中にあった。人口10万というこの町には大きなビルは数少ない。これがいい。
 狭い改札口を抜けると笑顔で迎えてくれたのは、永幡嘉之さんだ。今回は永幡さんに車の運転から撮影場所の案内まですべてお世話になる。32歳にして自然全般の知識、経験、洞察力、いずれも優れた方だ。とりあえず山に向かう前に米沢の町で昼飯の米沢ラーメンを食べた。これがあっさりしていて、旨い!
 (写真下)は、吾妻山の白布峠近くから見た月山。

(6/4から6/7の山形滞在記)新開 孝

幌馬車式いも虫飼育とは 2005/06/03
 毎年ヤママユの仲間(ヤママユガ科)の飼育をするのが習慣のようになっていて、今年も数種のいも虫が狭い部屋の片隅に拉致されている。特別、撮影の仕事に関係するわけでもないのになんとなく飼ってしまう。部屋のなかで、いも虫たちがパリパリ葉っぱをかじる音を聞くのがなんだか嬉しかったりするせいかもしれない。
 しかしいも虫たちは、やがて大きくなるとその食欲も凄まじい。餌の水差しもしだいに大きな枝を用意しなくてはおっつかないのだ。それで飼育箱というものを用意するのもシーズンオフには場所をとってたいへんなので、狭い部屋の主としてはいろいろ手抜き飼育法を考案せざるを得なくなる。
 その一つが写真の幌馬車式飼育である。幌馬車といってもピンと来ない方もいるかもしれないが、西部劇を知っている方なら話は早いはず。私にとって西部のガンマンは憧れのスターであったし、馬上でバーボンをボトルから口のみするシーンはいかにもうまそうであった。もっともそんなことしたら私なんぞ泥酔いしてしまうが、干し肉をかじったり、たき火の前で金属皿をカチカチ鳴らしながらガンマンが独り夕食を食べるシーンなどはたまらなくかっこ良かったし、、、。
 で、幌馬車式飼育ケースとは段ボール箱の底を受け皿として二本の針金を使ったもので、仕組みはいたって簡単。飼育が終われば解体できるのがいい。この方式だといざ撮影のチャンスというときに、幌をはずせば(幌は主にビニールシートで作る)そのまま撮影できる。写真では手前にかけてあるゴース布をはずしてある。通気性抜群で、しかも適度に密封されてもいるので、水差しの持ちもいいのである。

『新開 孝からのお知らせ』

 明日から私はしばらく東北を彷徨います。彷徨いますというのはいかにも意味深のようですが、山形県は初めて訪れるので、そういう感じがするということです。しかも現地では案内していただける方がいて、撮影フィールドの仔細はその方におまかせしているから、とにかく行ってみなければ右も左もわからんのですね。
 こういうケースも初めてです。今頃、あちらはどんな雰囲気で自然が移ろっているのか、いろいろ想像してみますが、ほんとにわけわかりません。こんな撮影行きもドキドキして楽しいかもしれません。
 おいしい日本酒も、いやいやお仕事ですからそれはそれで、、、。夜の楽しみとしまして。では、しばらくこの「ある記」もお休みさせていただきます。

新開 孝

昆虫写真家の仕事 2005/06/01
今日は先日下見(ロケハンともいう)をしたフィールドでNHKの本番撮影に立ち会った。私の役割は撮影に必要な昆虫を揃えること、それらのいわゆる役者さんがきちんと撮影目的にかなった動きをするよう、早く言えば調教することなどである。また撮影の設定条件が自然条件に即しているかどうか監修の目も要求される。こうした昆虫の生態に関わる動画撮影の現場で、私がコーディネーターとして働く機会はかなり昔から数多くあった。
 NHKの理科番組だけではなく、地方の展示映像、あるいはTVコマーシャルとか、それらはいずれも昆虫の専門的知識がそれ相応に求められる仕事である。しかしこうした仕事は、そういった専門知識だけでは成立しない。映像の現場で要求されるシーンを理解し、それに見合ったセッティングを提供しなければならない。つまり撮影スタッフとの協調性とその自覚も大事な要素となる。
 私は昆虫写真家としてほぼ18年くらいを経験して来たに過ぎないが、その割には出版本の数は極端に少ない。駆け出しのころの私にとって、撮影コーディネータの仕事の割合が大きかったことも要因の一つかもしれない。けれどそうした経験は今でも楽しいと思いながら、安いギャラでも文句いわず(ちょっとだけ愚痴はこぼす)可能なかぎり受けている。なぜならビデオにせよ映画にせよ、映像というものはいいものを作りたい表現したいという撮影スタッフ一同の協同作業の賜物だということを、私はよく知っているからだ。
 そうした映像作りの大切な基本を叩き込まれたのは、私のプロフィールにもあるとおり、学研映画での演出助手という仕事の場であった。そしてそこでは実に素晴らしい上司に恵まれ、その厳しい指導があって今の私がある。あるいはそこの仕事現場に出入りする個性豊かなカメラマンや照明、そういったプロフェッショナルな世界にどっぷり浸かっての2年半は、まさに私の修行時代であったと、そう思う。

 で、ふと我に返ると、「新開さん、カブトムシの口がよく見えないですね!」とカメラマンの声。ハイビジョンカメラにしがみつくようにして頑張っているカメラマンの方も汗びっしょりだ。「あ、はいはい。今、向かせますからね。手、入りまあーす!」私はカブトムシのご機嫌をうかがいながら、おしりをちょんと、押してやった。

 テレビの業界というものは総じて、時間との戦いだ。今回も私に仕事の依頼があったのは本番ギリギリ直前であり、また夏の昆虫の録画ということで昆虫役者の調達もかなり難題があった。しかも私自身のスケジュールも過密であり、なんとかその隙間を縫うようにして調節してなお、昆虫調達の時間は二日しかない。そんな悪条件のなか、それでも今日の仕事は無事に終えることができた。撮影現場は飯能市。

(写真上、ロケ現場)
(写真下、仕事の合間に捕らえたクロスジギンヤンマ)
新開 孝

秋が瀬公園の今日 2005/05/31
昨夜はずっと雨脚が衰えることなく、今朝になっても窓に雨しずくがときおり流れて落ちていくのを見た。これで今日のビデオの仕事は中止だ。
 そこで午後からは晴れることを期待して、思い切って鎌倉へ出掛けた。どうしても済ませておく用事があったからだ。まず池袋へ出て、そこから湘南新宿ライナーに乗れば、鎌倉へはうちから2時間もかからない。そしてとんぼ返りで清瀬に戻ると、ちょうど晴れ間が出て来た。
 駅前の駐車場に置いてた車に乗り込み、すかさず、さいたま市の秋が瀬公園に向かった。目的はカメムシ探しだ。秋が瀬公園を歩いていると、ハナウドがあちこちで目立ち(写真上)、その白花には様々な昆虫が訪れている。キスジトラカミキリも食事中だった(写真中)。
 チョウではイチモンジチョウ、ゴマダラチョウ、の姿が目立ちコムラサキも現れた。そしてダイミョウセセリも同じ場所に舞戻っては日光浴を繰り返していた(写真下)。

(Canon PowerShot G5 使用)新開 孝

ツマキチョウの蛹 2005/05/30
 私の部屋のベランダから手を伸ばせば、いくらでもツマキチョウ幼虫が手に入るということを以前にも書いたが、その結果、例年になく多数の蛹を私は確保ができた。確保したというのは、来春の羽化撮影を計画している、ということに他ならないのだが、さて、来春の羽化時期に私の仕事のスケジュールがどうなっているのか、今はまったく想像がつかないでいる。
 蛹の一つはセルロイド板にくっついていた(写真上)。蛹の足場となる糸の貼り方は、広い面になっているので解りやすい。それにしても長い期間、じっと羽化を待つ蛹の様子は、もうまるっきり枝の一部と化している(写真中)。「私の運命はこの場所の枯れ枝に託す!」と言わんばかりのように感じる。
 そういう蛹の数々を眺めていると、蛹化場所をようやく決めた幼虫に出会った(写真下)。この幼虫は明日には蛹へと変身を遂げるだろう。新開 孝
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