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ヨコヅナサシガメの成虫は? 2005/01/05
昨年暮れの29日、9時半から放映されたテレビ朝日の番組で、清瀬市で越冬するヨコヅナサシガメのことが出たらしい。これは私が現場を案内した録画であり、当ある記でもすでに書き込んだことだ。
らしい、というのも私自身はこの放送を観ることができなかったからだが、今日ある方からいただいた年賀ハガキでそのことを知ったのである。
およそテレビ放映というのは流動的であり、予定が崩れるのも仕方が無い世界であるから事前にあまり期待はしていなかった。そんなことを書くと当日のディレクターの方には申し訳ないが、しかし御当人こそ承知のことである。おまけに9時を過ぎると我が家では就寝時刻であり、いつ流れるかわからないシーンを待機するなど、到底叶わないことである。

さて、そのヨコヅナサシガメだが、越冬幼虫の姿は嫌と言うほど存分に観察できるが、春となり羽化した後の成虫の生活ぶりは、意外とほとんど知られてない(写真/ヨコヅナサシガメの♀成虫、1990年5月末、四国/松山で撮影)。
それというのも羽化した成虫はすぐに分散してしまうからである。
この不可解な暮らしぶりに関しては、他のカメムシ類にも多く共通するところがあり、例えばクヌギカメムシなどもその典型的な一例であろうと思う。
彼らは産卵とか幼虫期については私たちに存分に暮らしぶりを披露してくれる反面、成虫期は謎に包まれているのである。

さてさて、予告めいたお話ではあるが、
来週からはまたもや、私は幽閉状態の仕事に入ることとなる。冬とはいえ、フィールドから隔絶された空間に籠り、朝から晩まで室内撮影に没頭するのも、ある程度の日数なら簡単にやり過ごせるのであるが、これが幾日にも渡って連続するのは、、、、、、、、、、。
というわけで、ここしばらくフィールド歩きが大幅に断絶することは確実であり、なおかつホテル暮らしのなかでの更新はさらに厳しいものがあることを、一応お伝えしておきたい。のです。新開 孝

エナガ 2005/01/04
とりわけ冬だから鳥の行動に目がいくというわけでもないが、この時期に昆虫食を好む鳥たちが何処でどのような虫を見つけて食べているのか、いささか気に掛かるのである。
で、少し近所を出歩いてみれば、すぐさまシジュウカラやメジロの元気な姿に出会える。その機敏で落ち着きのない動きを眺めていると、「そうか昆虫探しにはああいった動き、目線が大事なのだなあ!」と頷けるのである。やはり小さな昆虫を見つけるのは、探す方もできるだけ小柄な方が有利に違い無い。それもせっかちな動きが伴うともっといいようだ。
そうこうするうちに「ツリュリュン、ツリュリュン」という特徴のあるさえずりが近づいて来た。エナガの登場である(写真)。エナガのその愛くるしさは、少女漫画のキャラクターどころではない。3羽のエナガはシジュウカラ2羽も伴い、この小さな混群はやがてカワヤナギの木にとりついた。そのとき私には彼らのお目当てがすぐに知れたのだが、そうした私の視線を気にするかのようにシジュウカラの動きが少しぎこちない。ところがエナガの方は何かまわずお目当ての餌を次々とたいらげていく。しばらくたって、その姿に安心したかのようにシジュウカラも負けじとばかりアクロバットのような身のこなしで梢から梢と渡り歩くようにして餌をほおばり始めた。
カワヤナギの枝にはヤナギミキアブラムシのコロニーが無数ついており、うっかり枝を掴もうものならその潰れた体液が手にべっとり付くほど繁殖している。
このヤナギミキアブラムシを眺めながら、私は最初、エリマキアブ幼虫の存在を期待したのだが、あまりのコロニーの大きさを見るにつけ、これはむしろ幼虫はおらんだろうと納得したのである。
これだけ餌が豊富な環境なら、エリマキアブ幼虫はとっくに成熟し蛹へと成長を進めてしまった後だろう、としか考えられないのであった。
エリマキアブ幼虫の探索が無意味に思えた瞬間、私はとくにエナガの愛くるしい姿をしばらく見つめていたのであった。そして、できればこの手にとって、その丸っこい羽毛の塊の体温を一瞬でも感じてみたいと思った。新開 孝

ゴマダラ幼虫、梢で新年を迎える! 2005/01/03
去年の12月、エノキの樹上で越冬しているゴマダラチョウ幼虫のことを書いた。エノキはマンションから駐車場へ向かう小道沿いにあるので、毎日とは言えないまでも週に一回以上は歩きざま、ゴマダラ幼虫の姿を見上げている。
大晦日の降雪と冷え込みなどが続き、幼虫にとっては厳しい冬を過ごしていると思われるが、今日も相変わらず梢の枝又に伏せている姿を確認できた。
先日から書いているように、他の場所でこうした樹上越冬する幼虫がなかなか見つからないこともあって、ますます写真の幼虫の動向には注目していきたいと思う。

幼虫の体を大きく撮影したかったので、脚立に登りE-1を使ってみた。今の所、レンズは14ー54ズーム1本しかないので、ズイコ−マクロ80ミリとエクステンションチューブを組み合わせてみた(写真下)。ストロボはサンパックのB3000Sの改造品。
ズイコーレンズをE-1ボディに取り付けるにはオリンパスから無償でもらえる OMフォーサーズアダプターを使用しているが、このリングでは絞り込み撮影になってしまう。
絞り込み状態ではファインダーが暗過ぎてピント合わせは不可能に近い。
そこでリングの絞り込み用突起をニッパーで取り外しておいた。これで撮影時はレンズの絞り込みボタンを押してからシャッターを切ればいい。
ズイコ−レンズにはこの絞り込みボタン機構が備わっているので重宝するが、
しかし、この方法でも撮影は非常にしづらいことに変わりは無い。
私はE-1を購入するに際して、システムレンズの50ミリマクロは選択からはずしたのだが、その理由はこのレンズは実質倍率が2分の1であり、レンズ先端からの撮影距離、つまりワークディスタンスが短いことが気に入らなかったからだ。
オリンパスからは、いずれ望遠マクロが発売される予定のようなのでそちらに期待したい。新開 孝

エリマキアブ幼虫 2005/01/02(その2)
昨日のエリマキアブ幼虫が何か獲物を捕らえてないか、見に行ってみた。
幼虫の体をよく見るとずいぶん肥えている(写真上)。食事シーンは見ることができなかったが、明らかにここ数日内に獲物を得たのは間違いない。
エノキの幹の皺の間ではオオニジュウヤホシテントウが冬ごししていた(写真下)。このテントウムシとて、暖かいからといって外をうろついているとエリマキアブの餌食になりかねない。
それにしても写真のエリマキアブ幼虫が蛹になる準備を決断するのは、いつごろになるだろうか?
すでに成熟しているように見えるが、この蛹化前ぎりぎりの行動がなかなか読めないでいる。新開 孝

テントウムシとハエ 2005/01/02(その1)
南向きのコンクリート壁にキヅタが這い上がるようにして絡んでいる。
朝から酒を飲んでいるので、マンションのすぐそばをうろついた程度だが、キヅタの葉っぱで蛹化寸前のナミテントウ幼虫を見つけた(写真上)。
ナミテントウは成虫越冬のはずだが?
コンクリート壁ではナナホシテントウの幼虫と蛹(写真中)が見つかったが、こちらは今頃いてもおかしくない。ナナホシテントウは暑さには弱いが、寒さには強いからだ。
今日も晴天で風がほとんどないので、日溜まりはけっこう暖かい。
キヅタの葉上でオオクロバエが多数、日光浴していた(写真下)。
新開 孝

平成17年、元旦のエリマキアブ 2005/01/01
晴天の朝。近所の八幡神社に家族で初詣でに行った。
その帰り道、空掘川沿いの遊歩道(写真上)に生えているエノキの小木を見て回った。
すると久しぶりにエリマキアブ(ヨコスジヒラタアブ)幼虫が枝に巻き付いているのを見つけた(写真下)。
昨年の秋からエリマキアブ幼虫には気をつけてきたのだが、昨年は極めて数が少なく、12月に入って他の場所のエノキで一匹見ただけである。

こうして幼虫は枝に巻き付いたまま獲物を待ち受けているのだが、真冬の今頃でもそこそこ餌にありついているのだから、
人間で言えばそれは凄まじいほどの忍耐力ということになる。
新開 孝

大晦日の積雪とハエ 2004/12/31
東京は午後から雪が降り始めた。
29日にも少し積もったが、今日はそれ以上の雪景色となり近所では車がカーブでスリップしたり、立ち往生したりしていた。大晦日となってようやく冬らしい冷え込みとなった。
中里の林の雪景色も珍しいのでさっそく撮影に出向いてみた。さすがに昆虫の姿はまったく見当たらない。
今日もオリンパスのE-1を使用。粉雪を被っても安心して撮影できるのがいい。

部屋に戻ってみると、取り入れた洗濯物の上をハエの一種が歩いていた(写真下)。
ハエと言えど、6本脚の生き物、昆虫を見ていると嬉しくなる。このハエのことを思いやるなら、むしろ暖かい部屋の中よりか外のベランダに出してやったほうがいい。撮影が終わってからそっと窓から外へ放しておいた。新開 孝

冬の雑木林を歩く 2004/12/30
ふかふかの落ち葉を踏みしめて、林を歩いてみた。

暮れの大掃除で私が担当すべき場所は嫁さんが決めていたので、そのうち半分を昼過ぎには片付けておいて出掛ける。
今日はゴマダラチョウ幼虫の樹上越冬型を探すべくエノキにこだわって歩き始めたのだが、
これはやはりそうそう多くはないように思えてくる。
片っ端からエノキを舐めるように見て回るが幼虫は全く見つからない。

スイカズラは冬でも緑の葉っぱをつけている(写真上)。
このツル草ではイチモンジチョウの越冬幼虫が見つかるはずだが、なかなかこれも難しい。
そう言えばヒヨドリが、この青い葉っぱをぱくぱく食べているのをずっと前に見たことあるが、冬野菜の食糧としてスイカズラは鳥たちに利用されている。

ノイバラの赤い実は、いかにも旨そうだ(写真中)。
これもヒヨドリやジョウビタキがついばんでいく。

エノキとクヌギの木が根元で抱き合っているような格好(写真下/右がクヌギ)。
こうして見てみると、エノキは根元を拡げて展開できるのに対してクヌギ地上部ではずどんと太い幹を維持したまま成長する、というような木のそれぞれの個性が窺えるようだ。



新開 孝

ヤナギの木の受難 2004/12/27(その2)
コムラサキ越冬幼虫を見つけたヤナギの木には、この夏に開けられたゴマダラカミキリの羽脱口(写真上)が多数あった。
カミキリムシの成虫が材中のトンネル内で羽化したあと、自力で穴を開けて外に出て来るわけだが、その穴は写真のごとくきれいな円形なので、すぐに誰の仕業かわかる。
さらにこうして材中に潜り込んでいるカミキリムシ幼虫を食べようと、キツツキ類が掘った穴(写真下)も生々しく残っている。
金山緑地公園では、カミキリムシ幼虫(大方がゴマダラカミキリ)の食害によって、かなりのヤナギに被害が目立ち、今年はそうして枯れた大きな枝の伐採作業も行われた。
ほっとくと歩道に倒れたりして危険でもある。
もっともカミキリムシのおかげで樹液レストランがあちこちにでき、ノコギリクワガタやヒラタクワガタ、カブトムシ、コムラサキ、キタテハ、シロテンハナムグリ、スズメバチ、他さまざまな昆虫の餌場ともなっていた。

新開 孝

コムラサキ越冬幼虫 2004/12/27(その1)
金山緑地公園でコムラサキ越冬幼虫を探してみた。去年、見つけたヤナギの木のしかもまったく同じ部位で幼虫が見つかり驚いた。
余程その場所が良い条件を備えているのか、あるいは他にはお気に入りの場所が見つからなかったのか。
ただし去年と違ったのは、鳥の白い糞がべったりと幼虫の体を覆っていたことだ。この糞のおかげで最初は見落としてしまいそうであった(写真上/矢印先)。川の水を滴らせてなんとか洗い流してやろうと試みたが糞の白化粧が残ってしまった(写真下/頭は右向き)。
まあ、そのうち雨でも降ればきれいになるだろう。

『フィールドを歩いている場合ではないが、、、』

今の時点で私の仕事として優先すべき作業とは、室内に籠ってひたすら写真を引っぱりだし整理して、出版社に手渡すことだ。
それもかなりひっ迫している!
それはよくわかっているのだが、いかんせん今月は標本撮影出張が毎週続き、フィールドに出る時間が全くない日々を過ごしてくると、今日はいてもたってもいられずコムラサキ越冬幼虫を見に行ってしまった。
これも仕事のうちではあるが、今日やらなければという範疇のものではない。
だからかなり後ろめたい。
「あいつは、何やってんだあ!!」という編集者様の怒る顔すら浮かんで来る。

ところで、先日から気になっていたデジタル撮影時のバックアップのトラブル問題。
これについても今日はさらに検証してみた。
早く解決すべき用件である。
カメラを修理出しする前に、いったいどういった現象が起きているのか、
もう少しきちんと把握しておく必要がある。
それでいろいろな可能性を想定しながら、テスト撮影を繰り返してみた。
するとどうも新規に購入したSDカード自体が怪しい!
新たなSDカード(一応、別のメーカーにしてみた)を使ってのテストも加えてみた。
するとやはり問題は、SDカードの方にあることをほぼ確かめることができた。
量産規模からいえば、カードメディアの方が圧倒的にEOS-1Dマーク2の生産台数より多いのであるから、
製品トラブルが生じる可能性からすれば、カードの方をまず疑うべきだったのかもしれない。
これでまずは、カメラの修理出しという面倒な事態は回避できそうだ。
そんなことしたら仕事ができないが、、、(ちなみにEOS-1Dマーク2のレンタル料金は21000円/日!しかもキャノンから代替カメラを都合つける見込みもゼロ)
それにしても今回のようなカードの不具合というものは案外、多いのではないだろうか。
購入時に書き込みテストができればいいのだが、店頭でそれをやるのは無理だろう。
仕事に際しては、あらかじめ日程の余裕をみて事前にテストすべきであり、
今回は飛び込みでカードを購入したのがいけなかった。大いに反省。

というところで、保育園の子供を迎えに行く時間となった。
今夜は嫁さんが忘年会なので、夕食から寝床までとことん子供に付き添うことになる。
これでまたしても写真出し作業が遅滞するのは確実。

新開 孝

再びゴマダラチョウ幼虫 2004/12/25
先日、23日にアップした樹上越冬ゴマダラチョウ幼虫を、目線で撮影してみた(写真上/矢印先が幼虫、同下)。
脚立を立てての撮影だが、カメラは軽量なE-1だから片手でのホールディングでも安心できる。

今日は他のエノキも見て回ったが、樹上越冬の幼虫を新たに見つけることはできなかった。まだめぼしい場所を全部見て回ったわけではないので、今後の探索には期待できるものがある。
ただこうした樹上越冬の幼虫が無事に春を迎えることができるのかどうかについても、継続観察が必要である。
新開 孝

オリンパスE-1 2004/12/24
オリンパスE-1(写真)については発売当初から注目していたのだが、
初期のレンズラインナップ状況などの理由から導入が大幅に遅れていた。
しかし本日、正式に購入してようやく自分のカメラとなった。
今後は仕事に活用すべく、Eシステムのレンズを揃えていく予定である。
そもそもデジタル一眼レフカメラとして、これ程までにまじめな取り組みをしたカメラメーカーは、オリンパスのみと言える。
ボディとレンズの設計を全てシステム丸ごと、ゼロ地点からの立ち上げであるから、これは快挙としか言い様が無い。実にわかりやすい。納得がいく。
ただこのEシステムを素直に導入するには、特に既存の一眼レフカメラシステム財産を有している人にとっては、かなり躊躇せざるを得ない事情もよくわかるのである。

このところの更新停滞気味のなかで、少し後ろめたい気もするが、今日はついでに少し機材関連のお話をしておきたい。
特に先日、撮影データ書き込み時のトラブルがEOS-1Dマーク2で発生し、仕事の現場でずいぶん動揺してしまった。
それというのも、この「ある記」で以前、2枚のメディアカードを使用して撮影時にバックアップをとるという話しを書き込んだばかりだが、
そのバックアップすべきSDカードのデータファイルが一部分、いやかなりの数が壊れていたのである。
これはショックだった。
SDカードの方に問題があったのかどうか、いろいろ試してみた結果、
どうやら私の使っているEOS-1Dマーク2が欠陥を抱えているようにも思える。
どういうことかというと、CFカードの方は全く問題なくデータ書き込みできているのに、
SDカードの方ではJPGファイルに限って飛び飛びでファイル崩壊が起きているのだ。
しかしながらよくよく調べると、
SDカード内でもRAWデータの方は全て生きていたのである。
これはカメラ内で、SDカードスロットル側のみ、JPG同時記録がうまく機能していなかったことを物語っている。
そういうことが何故、生じたのか!?
ほんとうに原因はカメラ側なのか?SDカードには問題がないのか?
いくら考えていても解決には結びつかない。
どうやらカメラの点検修理出しが必要のようであるらしい。



新開 孝

ゴマダラチョウ幼虫の樹上越冬 2004/12/23
ゴマダラチョウ幼虫が樹上越冬しているかどうか、マンション裏のエノキを覗いてみた。するとさっそく枝又に1匹の幼虫を見つけることができた(写真上、中)。
幼虫が台座糸に落ち着いていた高さは、地上から2メートル20センチくらい。
樹上越冬する幼虫の体色はうすい緑色を帯びており、
落ち葉の下に潜り込む越冬幼虫の茶褐色とはずいぶん異なる。
こうやって少し探して見つかるくらいだから、他の場所でもゴマダラチョウ幼虫の樹上越冬はかなり多いのかも知れない。
中里の林ではヘラクヌギカメムシのメスがまだ歩いていた(写真下)。
樹上越冬する幼虫がいとも簡単に見つかるわけも、やはり暖冬の影響かもしれないが、あるいはこれまではただ単に見落としていただけのことかもしれない。
新開 孝

ヨコヅナサシガメ幼虫集団 2004/12/14
今日はテレビ朝日のスタッフの方々が、ヨコヅナサシガメの取材と撮影のために私の所へ来られた。
年末29日のテレビ朝日『報道ステーション』の特番の中で、温暖化とその影響を受ける生物の特集を組むそうだ。
ヨコヅナサシガメについてはこの『ある記』でも去年から取り上げてきたのだが、この関東地方での分布拡大はここ5、6年からせいぜい7、8年くらい前からではないかと想像している。
かつて私が学生の頃、もう26年も昔のことだが、そのころのヨコヅナサシガメの分布北限は滋賀県あたりであった。
愛媛の松山でこのサシガメを観察していた私にとって、今振り返ってみれば、このサシガメの生態写真を撮り始めたのが昆虫写真に本格的に取り組んだ最初である。
そして昆虫学教室の卒業論文とはこのときに撮影したスライド写真で構成したものであったことも今では懐かしい想い出の一つとなっている。
今朝はスタッフの方を近くの雑木林に案内し、越冬中の幼虫群を前に少しおしゃべりもした。
で、大きなクヌギの幹に巻き付けてあるネームプレートをめくると、なんと60匹を優に上回る集団が見つかり、
これには私も正直驚いた(写真上、下/矢印先)。
去年もこの場所には越冬集団が形成されたのだが数は比べ物にならない位少なかった。
しかし、このネームプレートが設置されたことが、
ヨコヅナサシガメのメスにとって、非常にありがたい産卵部位を提供した結果となったようである。
実際、彼らが産卵場所として選ぶ条件には、樹木の北側の雨風を凌げる、そしてある程度の高さが求められる。
本来なら樹木の大きくえぐれた窪みとか、剥がれかけた樹皮の下などが格好の場所というわけだが、
生きた樹木につながる条件を満たしておれば、
産卵場所、つまりは幼虫たちの越冬場所というのは、
人工物であってもいっこうに差し支えないのである。
このことをもっと明解に如実に物語る観察例を、
私は松山の実家のすぐそばで体験したことがある。
長くなるのでその観察例の話しはいずれかの機会でできるもかもしれない。
いずれにせよ、ここ数年前まではヨコヅナサシガメの撮影は
松山に帰省したときのささやかな楽しみの一つであったのだが、
今ではここ東京にいながらにして撮影できる昆虫になってしまったわけである。

新開 孝
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