| 『遊星からの物体X』というSF映画では南極観測所が舞台となっていた。そこに宇宙から飛来した謎の生命体が、観測所隊員の体に乗り移ってしまう。しかし、外見上の変化はなく人間になりすましている。これに気付いた隊員の一人の主人公は命からがら、その正体を暴こうと試みる。とりあえず同僚全員を椅子に縛り付け採血する。主人公はシャーレの中の血に熱した銅線を押し付けるという手段を思い付いたのだ。謎の生命体は人間の細胞全てに便乗しているから、例え血液でももがき苦しむのではないかという仮説だった。何人目かでその仮説通りシャーレの血が飛び跳ね、そして縛られていた一人が悶え始め、異様な生命体が正体を曝け出す。
昔観た映画のそんなシーンを思い出したのも、 今朝はアゲハの蛹からヤドリバエ幼虫が脱出するところを目の当たりにしたからである。
このアゲハの蛹は先月、ハイビジョンカメラで蛹化シーンを撮影したあと、ベランダに置いてあったものである。 足場糸、そして帯糸がけから蛹化脱皮まで、一連の手順を見事に披露してくれたのである。 11月に入って急遽、近所を探し回りようやく一匹だけ見つけることのできた幼虫であったが、 その幼虫はすでにしてヤドリバエの卵を体内に宿していたことが、 今になってわかったのである。 そう言えば、昨日ちらりと見た蛹の体色が少し変わったなあと感じていたのだが、、、、。 とにかくこのヤドリバエの類いは、 巧妙にアゲハ幼虫の体内に寄生しており、 蛹化が終了するまでは外見上まったくなんの兆候も掴むことができない。 ヤドリバエ幼虫はアゲハの幼虫が蛹となり、そしてその体がしっかりして落ち着いたころ、 蛹体内を猛然と喰い進み一気に最後の成長を遂げるのであろう。 蛹が空洞となった(写真上)ところで蛹の外皮を喰い破り、 命綱を伸ばしながら地上へと降りて行く(写真中、下)。 ちなみにヤドリバエ幼虫の目のように見える二つの黒点はおしりの方で、頭ではない。 | |