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アゲハ蛹とヤドリバエ 2004/12/03
『遊星からの物体X』というSF映画では南極観測所が舞台となっていた。そこに宇宙から飛来した謎の生命体が、観測所隊員の体に乗り移ってしまう。しかし、外見上の変化はなく人間になりすましている。これに気付いた隊員の一人の主人公は命からがら、その正体を暴こうと試みる。とりあえず同僚全員を椅子に縛り付け採血する。主人公はシャーレの中の血に熱した銅線を押し付けるという手段を思い付いたのだ。謎の生命体は人間の細胞全てに便乗しているから、例え血液でももがき苦しむのではないかという仮説だった。何人目かでその仮説通りシャーレの血が飛び跳ね、そして縛られていた一人が悶え始め、異様な生命体が正体を曝け出す。

昔観た映画のそんなシーンを思い出したのも、
今朝はアゲハの蛹からヤドリバエ幼虫が脱出するところを目の当たりにしたからである。

このアゲハの蛹は先月、ハイビジョンカメラで蛹化シーンを撮影したあと、ベランダに置いてあったものである。
足場糸、そして帯糸がけから蛹化脱皮まで、一連の手順を見事に披露してくれたのである。
11月に入って急遽、近所を探し回りようやく一匹だけ見つけることのできた幼虫であったが、
その幼虫はすでにしてヤドリバエの卵を体内に宿していたことが、
今になってわかったのである。
そう言えば、昨日ちらりと見た蛹の体色が少し変わったなあと感じていたのだが、、、、。
とにかくこのヤドリバエの類いは、
巧妙にアゲハ幼虫の体内に寄生しており、
蛹化が終了するまでは外見上まったくなんの兆候も掴むことができない。
ヤドリバエ幼虫はアゲハの幼虫が蛹となり、そしてその体がしっかりして落ち着いたころ、
蛹体内を猛然と喰い進み一気に最後の成長を遂げるのであろう。
蛹が空洞となった(写真上)ところで蛹の外皮を喰い破り、
命綱を伸ばしながら地上へと降りて行く(写真中、下)。
ちなみにヤドリバエ幼虫の目のように見える二つの黒点はおしりの方で、頭ではない。新開 孝

クロスジフユエダシャク 2004/12/02
すでに中里の林でもフユシャクの仲間が舞うようになった。これまで観察していたゴマダラチョウ幼虫もすべてエノキの梢から姿を消して1週間が過ぎた。
やはりもう、冬がきたようだ。
北風が冷たい中、クロスジフユエダシャクのオスが地面近くをチラチラ舞っている。
そのうちクヌギの幹でじたばたしているオスを見つけた(写真上)。交尾かと思って近寄ってみると、幹のしわの奥に潜んでいたクモに捕まったようだ。クモをひっぱり出そうとしたが、奥深く逃げ込まれてしまい撮影できなかった。
しばらくすると落ち葉の上でメスが見つかった(写真中)。
ほどなくクヌギの幹を登り始めた(写真下)。
メスのあしは異様に長い。歩く速度も早い。
やがてオスが飛来して交尾するのだろう。
その交尾が成立する瞬間を見たのは、過去に一度しかない。それも別の種類だ。
クロスジフユエダシャクは昼間に数多く舞うので、シジュウカラなどの格好の餌になりやすい。

新開 孝

ムクノキとフジ 2004/12/01(その2)
マンション裏には大きなムクノキが3本ある。
いや、あったと言うべきで、3本のうち真ん中の一本はとっくに立ち枯れている。
写真上の左の立ち枯れがその一本だ。
そして見て御覧のように、右側のムクノキにはフジの太い茎がまるで絞め殺しの木のごとく這い登っている。
フジは毎年5月ころ豪華絢爛に花を咲かせるのであるが、
いかんせんムクノキの頂上付近で開花するため、
その花を見るのは容易ではなく、花びらが散り始める頃にようやく開花に気付くという案配なのである。
で、その見えないフジの花では毎年、せっせとウラギンシジミの幼虫が育っており、
その幼虫が低いところの葉っぱで蛹になったりする。
しかもこのフジは8月の真夏には必ず狂い咲きして、
そしてそこへはすかさずウラギンシジミが産卵していくのである。
そんなムクノキも今は見事な色付きをしており、
面白いことにフジの紅葉もまさに同調して、鮮やかな黄色葉を展開している。
ムクノキの実はいかにも見た目には美味しそうで、無い!のであるが、
しかし、ムクドリやキジバト、ヒヨドリがぱくぱくと食べていく。
その実はまた、地上に落下するとそこで熟して、ヒカゲチョウやカメムシや他いろいろの昆虫の御馳走となっている。

新開 孝

キョウチクトウアブラムシ 2004/12/01(その1)
体の色は黄色というか蜜柑色に近い。
このアブラムシは夏の間、キョウチクトウの新梢に夥しいコロニーを
見るのであるが、いつしかその姿が消えてしまう。
それが秋も深まると、今度は写真のごとくガガイモのつる茎に出現するから、不思議な気がしてならない(写真上)。
アブラムシをよーく見ると、肩のあたりが膨らんでいる。これはやがて成虫へと羽化すれば有翅虫になるという証しである。
その有翅虫たちは何処かへと旅立つのであるが、これからいったい何処に降り立ち新しい世代を産卵するというのであろうか?
ちなみに寄主であるガガイモの方も、今は種子を放出する時期であり、
これだけアブラムシにいたぶられても、ちゃんとどっこい次世代を残すのである。
ガガイモの種子はタンポポの綿毛を何倍にも大きくしたようなパラシュートであり、
それが一個の実にぎっしり無数に近く詰まっている。
まるでタコのような姿をした種子は、
ふんわ、ふんわ、とのんびり秋風に乗って旅に出る。新開 孝

ミノムシの開き 2004/11/25(その1)
9月ころ一本のエノキに多数のミノムシが着いていた。
エノキは小木だが、ミノムシの数は異常なまでに高密度であった。ときおり幼虫がミノから体を乗り出しては、葉っぱを食べる姿も観察できた。

それが10月に入ってから様子が一変したのである。
まずミノを外から軽く摘んでみる。するとどのミノムシも全てがペシャンと潰れてしまうのだ。
さてはヤドリバエの仕業であろうと思って放っておいたのだが、今朝、いくつかのミノムシを回収してきた。
さっそくミノを切り開いてみたのが今日の写真である。
で、判ったことだがミノムシ幼虫に寄生したヤドリバエは一種ではなく、さらに寄生バチも関与しているらしい。
ミノムシ幼虫の体は頭部以外は著しく萎縮して、わずかに残骸が残るのみ。
そしてミノ内部で目立つのは寄生バエや寄生バチの蛹殻である。
その蛹殻はミノによって数、大きさ、色、形に違いがあって、これは寄生者の素性の違いと見てとれる。
中段の写真を御覧いただきたい。
ミノ外皮(写真右側)に寄生バチが産卵管を引っ掛けたまま死んでいたのだ。ハチはこのミノムシから羽化して出て来たのであろうか?

さて、本日の写真はカメラを使用していない。
忙しいからという理由もあるが、ふと思い付いてスキャナーを使ってみた。
ミノムシの開きなら厚みも少ないのでいけるだろうと思ってさっそく試してみたが、これはほんとうに楽ちんで面白い。
葉っぱを全て等倍スキャニングした樹木の植物図鑑も最近出版されている。(小学館、フィールドガイド22『葉で見分ける樹木』林 将之 著)
新開 孝

ハラビロカマキリのメス 2004/11/23(その2)
ハラビロカマキリに元気はなかったが、それでも私が手を差し出すと鎌を振り上げ、威嚇のポーズをとる。
この先まだ産卵できるかどうかは定かで無いが、12月も半ばを過ぎると、木の幹に生きていた時のままの姿で死んでいることがよくある。
その死に様は、まるでゼンマイ仕掛けの人形が、動力をしだいに失ってゆっくり静止するときのような、そんな光景を想像させる。
新開 孝

オオキノメイガ 2004/11/23(その1)
ウコン色の蛾がコナラの幹にぴたりと静止していた。
紅葉の色付く雑木林には、とても似合うと思った。
調べてみるとオオキノメイガだ。
幼虫はポプラを食べるそうだ。ポプラはこれまでほとんど注目してこなかったが、こんな蛾の幼虫がついているなら今後は気を付けてみたいものだ。新開 孝

今日のゴマダラチョウ幼虫 2004/11/22(その2)
朝から暖かい日射しを浴びて、3匹のゴマダラチョウ幼虫がエノキの梢に悠然と構えている。
ここのエノキの並びでは、すでに2匹の幼虫が地面へと移動した。
今頃は木を降りるかそれともまだ留まるかという、
微妙な時期でもあるようだ。
しかし、これらの幼虫が皆、地面の落ち葉へと姿を消してしまうころはもう冬の到来も間近ということになる。
今年の秋は雨も多く、フィールドを歩く時間も極端に少なかった私にはやけに秋が短いと感じる。新開 孝

ヒメエグリバの幼虫 2004/11/22(その1)
今朝はゴマダラチョウ幼虫の様子を撮影していて、その側で日光浴しているヒメエグリバの幼虫を見つけた(写真上)。
体長は3センチ位。
この幼虫の食草はつる植物のアオツヅラフジで、エノキに絡んでいる。
若い幼虫のまま冬を越し、来年5月頃羽化するそうだ。
黒地に黄色、朱色の丸模様が2列に並び、かなり目立つ配色。
それで、ふと去年の7月、石垣島で撮影した幼虫のことを思い出したのでここにアップしておこう(写真下)。
やはりつる植物に止まっていたのだが、種名についてはわからない。
こうした場合、飼育して成虫を羽化させれば、種名も判明するのだが、、、。新開 孝

Dipteraは、ギリシャ語 2004/11/21
昨日アップの文章中、誤りがあったので訂正したい。
Dipteraは、英語ではなく、ギリシャ語のdis「二倍の」、ptera「翅」という意味でありpteraはpteronの複数形。
これは双翅目という日本語にそのまま約されている。
つまりDipteraは、一対の前翅しかなく後ろ翅は退化して平均棍(へいきんこん)となっているのが特長。







ちなみに写真上はキンアリスアブ、
写真下はミナミカマバエ。
いずれのDipteraも、かなり変ちくりんな虫だが、
ミナミカマバエはまだこの季節、成虫が活動しているので水辺を探せば見つかると思う。
写真は所沢市と東村山市の境近くの畑の間を流れる小川の岸辺で撮影したもの。
もう15年近く前のことで、今、そこの場所には住宅がびっしりと建ち並び、小川こそ残っているがカマバエはもう生息していないだろう。
キンアリスアブは今頃、幼虫がクロヤマアリの巣内でアリと一緒に過ごしているはずだ。
幼虫は夏の間にかなり成長し、終令にまで育っている。
新開 孝

今頃のヒトスジシマカ 2004/11/20
今日は久しぶりの秋晴れとあって、さすがに外を歩きたくなった。アゲハ幼虫はひとまず前蛹で休眠状態であるから、明日まで見張っている必要はない。
そして、原稿書きも休むことにした。
唐突だが、ハエ、アブ、カといった昆虫は双翅目という分類群に属する。「そうしもく」という言葉はどうも「相思相愛」といった風にも誤解されそうで、耳に馴染みにくい。そこでいっそギリシャ語のディプテラという言葉のほうが簡潔で覚え易い。
そうDIPTERA、でぃぷてら、ディプテラ、である。
そのディプテラは総じて寒さに強い。他の昆虫が冬に向かってどんどん姿を消していくなかで、
なぜかディプテラは悠然と活動している。
もうやぶ蚊に刺されることもほとんど無くなったのであるが、ヒメジョオンの花で吸蜜に余念の無いヒトスジシマカを見つけた(写真中、下)。
蚊といえば、人の生き血を吸う、にっくき奴らというイメージしかないのが普通だろう。しかし実際に吸血する種類は数少ないのであり、しかも吸血はメスの卵巣成熟に必要とされるだけである。

新開 孝

アゲハ幼虫 2004/11/19
先日、11/6に急遽アゲハ幼虫を探し2令幼虫を見つけたことを書いたが、この幼虫はやがて脱皮し終令となった。つまり体は小さかったけれど、本当はもう4令幼虫だったわけである。
その幼虫が今日、原稿書きしている横で下痢便をした。
いよいよ前蛹準備が近いということで、あわててビデオ撮影のセッティングを開始した。
前にも書いたがこれはハイビジョン撮影。おお、すごい!
ハイビジョン!である。しかしうちにはハイビジョンテレビは無いし
そして一体、近所でもどこぞの家庭にハイビジョンテレビがあるというのだろうか?
まあ、そういうことはとりあえずかまわない。
いずれデジタル放送に移行するというが、それも別にかまわん。
とにかく、私は仕事をせんといかん。
セッティングが終わったところでまた原稿を書く。いや打つ。
おお我が子らよ!今夜はこの父が腕ふるってチャーハンを作るつもりが、
しばし待てよ。母やんが戻るまで。
新開 孝

キボシカミキリ 2004/11/18
たしか去年の今頃も、この同じ場所のヤマグワでキボシカミキリを撮影したはずだ。
去年の観察ではキボシカミキリがいたどころではなく、交尾したり産卵していたのだから、印象に強く残っている。
今朝は気温も低く、駐車場からうちに戻る途中に見つけた時点では、写真のごとく枝にぶらさがっているのがやっと、という格好だった。
ここのヤマグワはひょろひょろの痩せ細った小木で、幹の一番太いところでも直径は6センチほどしかない。
去年も今年も、この木にはキボシカミキリが多数、産卵しているのだがどうもここでは幼虫が育った形跡が見られない。
案外、産み付けられた卵は大方が孵化することなく死んでしまったのではないか?
その根拠としてはキボシカミキリ成虫の羽脱穴がまったく見当たらないからだ。
つまり他所で育ったキボシカミキリが新天地を探しあぐねているうちに、
わがマンション裏のか弱いヤマグワに辿り着いたのではないか、と想像している。

新開 孝

今日のゴマダラチョウ幼虫 2004/11/17
例によってマンション裏のゴマダラチョウ幼虫。
数日前、4匹のうち1匹は地上に降りたようだ。
残る3匹は色付き具合がそれぞれに違っており面白い。
その体色変化の程度は、どうやって決まっていくのか興味は尽きない。




















『新開 孝からのお知らせ』

事情あってしばらく、この『ある記』は休みがちになります。
何かと机に向かう仕事が多く、その中には来年出版予定の本の原稿書きなどもあって、フィールドを歩く時間がなかなかとれません。
私は最低7時間以上の睡眠が必要な人間であります。
原稿書くのは昼間でしかできません。
夜は酒飲んで寝るのが一番、案配がいいわけです。
というわけで今晩も午後10時前ですが、皆さんお休みなさい。
新開 孝
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