menu前ページTOPページ次ページspace.gif

ハンミョウの成虫 2004/10/28(その2)
昨日のハンミョウの続き。
(写真は先月、撮影したもの)

今日は狭山丘陵にある『緑の博物館』に立ち寄った。そこの情報掲示板には、四季折々の自然写真が展示されており、ハンミョウの写真もあった。撮影データを見ると、今年に撮影されたものだった。

私の住む清瀬市から、ハンミョウ生息地としてはもっとも至近のフィールドかもしれない。
しかし、いったいどれくらいの生息密度であろうか。来年の春から夏にかけて確かめてみたいものだ。


新開 孝

オオスズメバチを手掴かみ! 2004/10/28
全国の良い子のみなさん!危険ですから絶対にマネしないでください!」

テレビ放映だとこんなテロップを流すところかもしれない。
私が摘んでいるのはオオスズメバチである。このオオスズメバチはいたって元気であり、麻酔をかけたり、頭をひねったりと、あらかじめ虐めたりはしていないことをお断りしておこう。
体の自由を奪われて、オオスズメバチは狂ったように私の指を刺そうとするのである。
スズメバチの腹部と胸部をつなぐ腰にあたる部分が極端に細くなっているため、こうして背後から摘んでいても、毒針攻撃をかわすことは難しい。
私はこれまで、オオスズメバチには2度、刺されている。いずれの場合も頭をやられた。だからそのときの痛さを忘れたわけではない。

ちょっと白々しいので、ここで種明かし。私が摘んでいるオオスズメバチは、実はオスなのである。
スズメバチのオスには毒針がないから、刺される心配はない。
オスの体の特徴は、触角が長いことでだいたい判る(写真下)。
ところが、私もそこが知りたかったのだが、オスと言えど一応は刺す真似をすることがわかった。
いきなり体を摘まれて自由を奪われれば、そりゃあ、怒るのも無理ないわけである。
そして、嘘としりつつ刺す真似をすることが、こと人間様に対しては、けっこう有効な行動と知っているかのように見受ける。
いわゆるこのような疑似行為は、ハチの姿を真似たカミキリムシにも観察されているのであるから、限り無くオオスズメバチのメスに酷似したオスが、自分たち兄弟の、その刺す真似をするのも当然のことと思える。新開 孝

ハンミョウの幼虫 2004/10/27
地面の穴を塞ぐように、ハンミョウの幼虫の顔が見える(写真上)。
この幼虫は先月、仙台で採取したものだ。つまり、今もうちの部屋で飼っている。
ちなみに成虫の顔もアップしてみた。この写真(下)は夏に撮影したもの。さすがに成虫は、野外ではもう崖などの隙間に潜り込んでいるのではないかと思う。
私はこれまで「ハンミョウは成虫越冬」、という知識しかなかったので、こうして今でも幼虫のままでいることに少し驚いた。
そこで調べてみると、夏に孵化した幼虫はとりあえずは越冬し、翌年も順調に餌を食べることができたら夏頃(つまり1年目)に羽化できるそうだ。もし餌を充分得ることができなければ、幼虫は成長できずさらに翌年以降の夏へ羽化が持ち越しとなる。
縦穴に籠って地面を通り過ぎる獲物を待ち伏せするのであるから、餌にありつけるかどうかは、巣を構えた場所の善し悪しにも大きく左右されるわけである。
したがってハンミョウの幼虫は飢えにはやたらめったら強い。2ヶ月間位は絶食に耐えるそうだ。


『ハンミョウは確かに減った』

昆虫の生活サイクルを、実際に自分の目で確かめるのはほんとうに根気を要する仕事だ。
昆虫に限らず、生き物の生態を克明に知りたいと思ったとき、そこには様々な障害があったり、膨大な時間を必要とするのが常である。
現代に生きる人々は、膨大な情報を簡単に入手できるためなのか、自らの込み上げてくる情熱でもって、生き物の生態をとことん追い掛けてみようというエネルギッシュな人など、ほんとうに稀になってしまったようだ。
私はハンミョウというさして珍しくもない昆虫について、しかしながらほとんど自らの観察にもとづく知識を持っていないことに、今日あらためて驚愕した。
ただそれには少しだけ言い訳をしてもいいと思っている。
つまりハンミョウは、この関東地方、いや全国の里山環境において、かつてほどの繁栄はしておらず減少傾向にあるということだ。
東京都内にも生息地があるが、それはいたって局地的である。
ハンミョウなどは本来、どこにでもいる人里の馴染み深い昆虫の代表格ではなかったか。
私が幼少の頃は、わんさかと這い回るこのハンミョウに、感激する暇もなく踏みつぶす遊びに興じていたくらいだ。
さすがにすばしこいハンミョウのこと、いつも逃げられてしまったが。
新開 孝

家庭菜園のキアゲハ幼虫 2004/10/24
清瀬市内のある小学校脇の畑で、キアゲハの幼虫を見つけた(写真上)。

畑といっても様々な作物が植えられた家庭菜園である。一株のミツバでとうが立ち、花蕾には数匹のキアゲハ幼虫が登っていた。キアゲハの幼虫はセリ科植物のセリ、パセリ、ニンジン、アシタバなど作物にもよくつくので、少しでも畑仕事をしたことがある方ならきっとその姿を見ているはずだ。
野原で見かけるハナウド、シシウドなどでももちろんキアゲハ幼虫は見つかるのだが、彼らは好んで花芽や花を食べることが多い。葉っぱも食うけれど、それ以上に花が好きなようだ。
今日、見つけた幼虫たちも花上やその間近に止まっているものがほとんどだった。
して、おそらくはこの菜園の片隅にあるミツバはしばらくの間、持ち主の目に触れること無く過ごしてきたようだ。
そうでないとするなら、余程芋虫に対して寛容なお方か、逆にむやみやたらと芋虫を恐がる方かの、どちらかであろうと思う。

そんなことをぼんやり考えながら、子供の学童祭りの喧噪から逃れるようにして、自転車をふらふらと漕ぎながら自宅に戻った(写真下/自宅近景)。


『「このカードには異常があります!したがって画像を読み取ることができませんでした」という警告にうろたえる』

デジタルカメラを使っていると、全くトラブルを経験しないということは、まずないと思う。
もっとも日常的に多いのは、うっかりの操作ミスによるデータの消失といった、人的要因の場合かもしれない。
しかし、一方、予期せぬハードやソフト内での損傷、不具合などでいきなり撮影データが壊れてしまうことも決して少なくないようだ。
私の場合、後者のような避けようも無い深刻なトラブルは、人づてに聞く程度で、まだ一度だけしか経験がなかったが(パソコン側のトラブル)、ついに今日はコンパクトフラッシュ(CF)が問題を起してしまった。
本日撮影したデータの1ファイル、及び数日前に撮影したデータの数ファイルが異常になっており、それらのファイルを開くことができなくなった。
ビュワ−ソフト上ではサムネイル表示できることから、ファイルが完全に損傷しているわけでもないようだが、対処の仕方が今のところわからない。
幸いにしてそれらの写真データファイルは捨てても惜しく無い、仕事に差し支えないカットだった。
だがしかし、こういう問題が一度起きるとその再発を防ぐ対策をとる必要が出て来る。
以前にも書いたことだが、カメラの画素数が上がって今や800万画素を超えるまでになったが、だからといって記録媒体のカードもそれに準じて高容量にするのは危険だと思う。
私も一度は2GB以上のCFを検討したが、すぐに取り止めて、最高でも1GBまでしか使っていない
むしろ通常の撮影なら500MB程度でカード枚数を揃えた方がいいと考え直している。
昆虫写真の場合、記録重視の連続カット撮影などでは、一枚のカードの撮影枚数に余裕が必要なこともあり、そういうときは1GBあるいはそれ以上を使わざるを得ないだろう。
しかし、フィールドで拾い撮りする場合などでは、小休止の時間も考えれば、せいぜい500MB程度の容量を使って、危険の分散を計った方が良いと思う。
そしてバックアップをこまめにポータブルストレイジャーで行う習慣もつけると、一層良い。これについては、ポータブルストレイジャーの性能の善し悪しが重要なので、慎重に機種選びをしたい。
なんだか、カメラ雑誌に出てくるうんちく書きみたいになったが、
考えてみれば私の使っているEOS1Dマーク2では、2つのカードスロットがあって、2種類のカードへ同時書き込みできるのであるから、それをバックアップとして使うのが手っ取り早いではないか。
もっとも、そうなるとさらにカード枚数が倍にも増えるので、カードの取り替えが実に煩雑なものとなりそうだ。
まあ、デジタルデータの損傷、消失に関わるトラブルをできるだけ回避するという対策のひとつとして、データ収納を小部屋に振り分け、危険拡散に努めるという姿勢は大切だということをあらためて考えてみた。
もちろんカード容量が小さいからトラブルが減るというわけではないが、
撮影データの損失数をできるだけ少なく抑えるという、トラブル一回あたりのダメージ軽減化にはなるということだ。
新開 孝

すぐわかる幼虫の特徴 2004/10/22(その4)
エノキの葉表で見つかる幼虫2種。
写真上がオオムラサキの幼虫。
写真下がゴマダラチョウの幼虫。

一目で両者の違いはおわかりいただけると思う。
特に背中の鱗のような突起の数がポイント。

いずれの幼虫もやがて、体の色が黄色そして茶褐色へと
色変わりして、落ち葉の中で冬越しする。新開 孝

よく見れば違う顔 2004/10/22(その3)
エノキの葉っぱもかなり黄色く染まり始めた。
ゴマダラチョウの幼虫も、この先成長することなく、いずれ冬越しのため地上へ移動するのを待っている日々だ。
さて、先日、町田市の野津田公園の観察会の際、私は参加者の皆さんにゴマダラチョウ幼虫を見せてあげようとして、エノキの梢を引き寄せた。
ところが手に取った葉っぱには、オオムラサキ幼虫がいてびっくり。予定外のオオムラサキ出現に、少し説明が煩雑になってしまった。
で、あらためて秋の今時分、オオムラサキ幼虫とゴマダラチョウ幼虫の姿を比較してみた。
まずは、顔の様子。
写真上がオオムラサキ、写真下がゴマダラチョウ、である。
両種はよく似ているが、角の大きさや形、顔巾のバランス等、よく見れば違いが大きいことがわかる。

新開 孝

キノコを食べるカタツムリ 2004/10/22(その2)
キノコの柄をえぐるように食べているカタツムリを見つけた。
カタツムリやナメクジが、夜になるとキノコをよく食べているのは知っていたが、こうして昼間にも食べることもあるようだ。

カタツムリもキノコも種名を調べる時間が無いので、
とりあえずアップしてみた。
新開 孝

スジチャダイゴケの小塊粒 2004/10/22(その1)
昨日は、スジチャダイゴケの小塊粒が見れなかった。
今日になって白い膜が破れた菌体で、中の胞子の塊
(小塊粒)を撮影してみた。新開 孝

スジチャダイゴケ 2004/10/21(その2)
わずかな時間の中で、雑木林のキノコを探してみた。
さっそく地面や朽ち木に、小さな盃型のキノコが並んでいるのが目に止まった(写真上)。
上から見た盃の直径は8ミリ程度。
高さは1センチに満たない。
中には盃の上部が白い膜で閉じたものもある(写真中)。
さらにその白い膜が三方向に破れて開きつつある菌体もあった(写真下)。
とにかく小さいのと、林内は暗いので、その気になって探さないと見過ごしてしまう。

以前、明るい草地の地面で、ハタケチャダイゴケというキノコを撮影したことがあるので、今日のキノコも同じ仲間であることがすぐわかった。
ハタケチャダイゴケでは、盃の中に黒い碁石のような胞子の塊が詰まっていたが、このスジチャダイゴケでも同じような構造となっている。
昨日からの雨で、その碁石(専門用語では「小塊粒」というらしい)はどれもはじき出されたようだ。
雨滴によって胞子の塊を飛散させるというところが、
何とも興味深い。
その瞬間を超高速ストロボと特殊なセンサーでもって撮影してみたい、などと思う。

『図鑑は楽しい読み物だ!』

さて、本日の写真、スジチャダイゴケと断定したのではあるが、少し気になって、
つい先月、山と渓谷社から発行されたばかりの『きのこワンダーランド』(森の休日シリーズ)を開いてみると、うまい具合にハタケチャダイゴケとスジチャダイゴケの写真が出ていた。
この本ではキノコが実物大で印刷されており、図鑑ではないけれど、ちょっと身近なキノコを照らし合わせて調べてみたくもなる。実物大というのは有り難い。
するとこの本に載っているスジチャダイゴケの姿は、私が今日撮影したものよりか、かなり縦長くてパッと見たイメージが違う。
むしろ全体の感じは、ハタケチャダイゴケの方に似ている。
しかし、発生場所や白い膜などの細かい特徴を図鑑で調べた結果、どうやらスジチャダイゴケで合っていると私には思われた。
キノコに限らず、植物などもその成育条件などで、ずいぶん個体差があって、そういうバリエーションまで図鑑の情報に取り込むのは不可能に近い。
図鑑というものはどんなに努力しても、完璧なものなど出来はしないのだが、
ひとえに図鑑を作ろうという情熱こそが大事で、それがにじみ出た図鑑本には実用の域以外に、読む楽しさというものがある。
そう、図鑑は普段、ごろりと横にでもなってパラパラ眺めるだけでも楽しい。
掲載されたイラストや写真、解説文などから、様々な状況に想像を巡らせれば、まさに世界観まで広がるというものだ。
先の『きのこワンダーランド』の写真を撮った大作晃一さんの夢は、日本一のキノコ図鑑を作ることだそうな。これは実に楽しみな話しである。

新開 孝

コクワガタのメス 2004/10/21(その1)
昨日の台風23号通過後、本日は正午頃より晴れ間が出て、日中は気温も20度を越したようだ。
さっそく1時間程、林を歩いてみた。

キノコを探していると、雨水で黒光りするクヌギの幹で、コクワガタのメスを見つけた。
このクヌギの根元にはクロクサアリの巣があって、いつも行列が出来ているからコクワガタもとんだ災難に見舞われている。
だがクロクサアリにしても、どこから攻めればいいのかと、あちこち噛みついてみては右往左往している。
このメスは8月頃の遅い時期に、蛹室から出て来たのではないだろうか。体を見る限りあまり傷んではいない。
それにしても今月中には、越冬のため朽ち木などに潜り込むはずである。新開 孝

コカマキリの緑色型 2004/10/18
コカマキリは名前のごとく体が小さい。
体格の大きいメスでも体長はせいぜい6センチ位だ。カマキリの仲間では中型と言えるだろう。そのコカマキリで注目すべきは、体の色が褐色のものが圧倒的に多いということだ。
いやむしろ出会うコカマキリのほとんどが褐色型であると言った方がいい。

ところが今日、所沢市の多福寺でコカマキリの緑色型を見つけることができた。過去にも探したことがあるが、目撃した記憶が無くもちろん写真に撮った経験も無い。
今日見つけたコカマキリ緑色型は、お腹の大きいメスだった。このメスの子供たちがいったいどういう体色になるのか、極めて興味深い。
ところで、林の縁でよく見かけるハラビロカマキリ
では、コカマキリとはまったく逆に褐色型が極めて稀で、ほとんどが緑色型である。
過去に私がハラビロカマキリの褐色型を撮影したのは1度だけしかない。
新開 孝

トカゲとアオダイショウ 2004/10/17
地面に頭を突っ込んだままのトカゲ。
土をかき出しているから、掘っていたのだろう。
それにしても「何してんだあ!?」である(写真上)。

尻尾をつついてみると、ずるずると奥に入っていく。
それでも尻尾だけは地上に残った。少し穴を拡張してみると御覧の通り(写真中)、トカゲの顔が窮屈そうに現われた。
何か獲物でも追い詰めていたのだろうか?
狭い穴ん中で一体どうなってんだあ!?である。

しばらくして今度は、アオダイショウの幼蛇である(写真下)。日光浴でもしているようだ。実はこの場所では先日から雨上がりのたびに、この幼蛇が姿を現わすようになった。
体長は30センチ程度。日頃、「爬虫類・両生類」の図鑑を眺めているうちの子供は、「まだら蛇だから、毒があるんじゃない!」と驚いていた。子供が言うように、確かにマムシに似ている。しかし、これは明らかにアオダイショウの幼蛇なのである。ちょっと脅かしみると、口をカッと開けて威嚇のような仕種をした。
雨が続いたあとの晴れ間、体を日乾しするのにうってつけの場所は、こうした金網柵などが最適のようだ。

新開 孝

オオカマキリ、怒る! 2004/10/16
ここは町田市、小野路。
昔はずいぶん通った谷津田だが、今日は近くの野津田公園で観察会の講師の仕事があるので立ち寄ってみた。

車の中で弁当を食べていると、オオカマキリのメスが目に入った。さっそく、ちょっかいを出してみる。
すると怒りのポーズをとった。
しかもしつこく続けてちょっかいを出すと、「おりゃあ!」とばかり鎌を大きく振り上げる。
しかし、なんだか凄みに欠ける。怒り具合が弱いではないか。

昆虫には表情が無いともよく言われるが、オオカマキリの怒りの表情にはかなり個体差があると思う。
このメスの凄みに欠ける理由の一つは、赤い口を見せていないことでもあろう。
その他にも細かい体の特徴の違いや、その使い方の程度で、表情には変化がつく。
こんなことを書いた以上、その個性派をずらりと並べてみんかい!
そう自分に言い聞かせてみたい。
新開 孝

マントカラカサタケの最期 2004/10/15
今日もマントカラカサタケを見に行った。
うちから歩いて2分とかからない雑木林の中だから、
仕事を無視すればいつでも気軽に出向ける場所だ。
昨日までとはうって変わって今日は朝から秋晴れ。
このキノコが朽ち果てるまでを見届けることなど、叶わぬ望みであることは承知している。
マントカラカサタケに限らず、小道沿いに目に付くキノコの大方が、何者かに蹴散らされる運命にあるからだ。
さて、朝日を浴びてそそり立つマントカラカサタケの姿にはすでに衰えが感じられた(写真上)。マントのごとく垂れていたつばも、ほとんど崩れ落ちてしまい、傘のひだも張りを失いつつある。もう胞子は旅立ったのであろうか?

午後3時過ぎ、再び出向いてみると、案の定キノコは根元からへし折られ、でんぐり返っていた(写真下)。
あーあっ、である。


『悪夢の出会い!』

ここまでキノコの日々が続くと、じつに忌わしい想い出が鮮明に蘇る。
それは何年も前の秩父市山中の出来事だ。
8月の蒸し暑い日だった。空は厚い雲に覆われ、今にも雨が降り出しそうな昼下がり。
私はあるNHK番組の仕事のために、コナラの樹液に集まる昆虫をビデオ撮りしていた。
雲行きも怪しくなるし、昆虫の顔ぶれもほぼおさえたしで、そろそろ引き上げようと機材を車に撤収した。
それでもまだ時間には余裕があったので(保育園に子供を引き取りに行く時間)、少し雑木林を歩いてみることにした。
傾斜のきつい林床をゆっくり進むうち、まさか!と瞬時に足が凍り付いた。
それはなんと!ずっとずっと憧れの「キヌガサタケ」であった!
そのマントのごとくあるいは淑女のスカートのごとく広がった網目や、そして何とも形容し難いその怪しい姿に目眩がするほどの感激を憶えたのである。
おお、やっと出会えたかあ!
だが、しかし!その一瞬後に、私と正反対の向きから
もう一つの視線がもの凄い勢いで迫ってきたのには驚愕した。
いや恐怖すら感じた!
一人のおばさんが、キヌガサタケ目掛けて突進してきたのである。
およそ運動神経にかけては、私の足下にも及ばぬそのおばさんが、まさに火事場のバカ力とでも言えよう馬力をここぞと発揮して、猛進してきたのであった。
あーあっ!である。
「わあーっ!あった、あった、収穫うー!」
なんという暴言であろうか!
そして凄まじい手技でもって小脇に抱えた竹編みカゴに
キヌガサタケはあっさり、餌食となったのである。
私の目の前で!
おばさまは、キヌガサタケの姿をほんの少しでも眺めるなどという、
その無駄な時間などいっさいかけず、機械仕掛けの収穫ロボットのごとく、見事に仕事を終えて、さっさとキノコ狩り軍団のところへ自慢しに戻ったのであった。
私の存在など、おばさんの脳みそには無かったようだ。
後にも先にも、キヌガサタケを見たのはそれが最初で最後。この忌わしい想い出のためか、キノコ狩りする人には、思わず殺、、、、、。いや、この辺でよしておこう。
新開 孝
menu前ページTOPページ次ページspace.gif
Topics Board
ホーム | 最新情報 | 昆虫ある記 | ギャラリー | リンク | 著作紹介 | プロフィール