| 全国の良い子のみなさん!危険ですから絶対にマネしないでください!」
テレビ放映だとこんなテロップを流すところかもしれない。 私が摘んでいるのはオオスズメバチである。このオオスズメバチはいたって元気であり、麻酔をかけたり、頭をひねったりと、あらかじめ虐めたりはしていないことをお断りしておこう。 体の自由を奪われて、オオスズメバチは狂ったように私の指を刺そうとするのである。 スズメバチの腹部と胸部をつなぐ腰にあたる部分が極端に細くなっているため、こうして背後から摘んでいても、毒針攻撃をかわすことは難しい。 私はこれまで、オオスズメバチには2度、刺されている。いずれの場合も頭をやられた。だからそのときの痛さを忘れたわけではない。
ちょっと白々しいので、ここで種明かし。私が摘んでいるオオスズメバチは、実はオスなのである。 スズメバチのオスには毒針がないから、刺される心配はない。 オスの体の特徴は、触角が長いことでだいたい判る(写真下)。 ところが、私もそこが知りたかったのだが、オスと言えど一応は刺す真似をすることがわかった。 いきなり体を摘まれて自由を奪われれば、そりゃあ、怒るのも無理ないわけである。 そして、嘘としりつつ刺す真似をすることが、こと人間様に対しては、けっこう有効な行動と知っているかのように見受ける。 いわゆるこのような疑似行為は、ハチの姿を真似たカミキリムシにも観察されているのであるから、限り無くオオスズメバチのメスに酷似したオスが、自分たち兄弟の、その刺す真似をするのも当然のことと思える。 | |