| わずかな時間の中で、雑木林のキノコを探してみた。 さっそく地面や朽ち木に、小さな盃型のキノコが並んでいるのが目に止まった(写真上)。 上から見た盃の直径は8ミリ程度。 高さは1センチに満たない。 中には盃の上部が白い膜で閉じたものもある(写真中)。 さらにその白い膜が三方向に破れて開きつつある菌体もあった(写真下)。 とにかく小さいのと、林内は暗いので、その気になって探さないと見過ごしてしまう。
以前、明るい草地の地面で、ハタケチャダイゴケというキノコを撮影したことがあるので、今日のキノコも同じ仲間であることがすぐわかった。 ハタケチャダイゴケでは、盃の中に黒い碁石のような胞子の塊が詰まっていたが、このスジチャダイゴケでも同じような構造となっている。 昨日からの雨で、その碁石(専門用語では「小塊粒」というらしい)はどれもはじき出されたようだ。 雨滴によって胞子の塊を飛散させるというところが、 何とも興味深い。 その瞬間を超高速ストロボと特殊なセンサーでもって撮影してみたい、などと思う。
『図鑑は楽しい読み物だ!』
さて、本日の写真、スジチャダイゴケと断定したのではあるが、少し気になって、 つい先月、山と渓谷社から発行されたばかりの『きのこワンダーランド』(森の休日シリーズ)を開いてみると、うまい具合にハタケチャダイゴケとスジチャダイゴケの写真が出ていた。 この本ではキノコが実物大で印刷されており、図鑑ではないけれど、ちょっと身近なキノコを照らし合わせて調べてみたくもなる。実物大というのは有り難い。 するとこの本に載っているスジチャダイゴケの姿は、私が今日撮影したものよりか、かなり縦長くてパッと見たイメージが違う。 むしろ全体の感じは、ハタケチャダイゴケの方に似ている。 しかし、発生場所や白い膜などの細かい特徴を図鑑で調べた結果、どうやらスジチャダイゴケで合っていると私には思われた。 キノコに限らず、植物などもその成育条件などで、ずいぶん個体差があって、そういうバリエーションまで図鑑の情報に取り込むのは不可能に近い。 図鑑というものはどんなに努力しても、完璧なものなど出来はしないのだが、 ひとえに図鑑を作ろうという情熱こそが大事で、それがにじみ出た図鑑本には実用の域以外に、読む楽しさというものがある。 そう、図鑑は普段、ごろりと横にでもなってパラパラ眺めるだけでも楽しい。 掲載されたイラストや写真、解説文などから、様々な状況に想像を巡らせれば、まさに世界観まで広がるというものだ。 先の『きのこワンダーランド』の写真を撮った大作晃一さんの夢は、日本一のキノコ図鑑を作ることだそうな。これは実に楽しみな話しである。
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