| オオハンゴンソウ属やクズの草むらには、多数のスケバハゴロモがついている。 このスケバハゴロモの透けた翅を通して腹部に注目してみると、何やら白っぽい塊が付着している(写真上)。 それではと他のスケバハゴロモの様子を窺うと、翅を押し上げるようにしてもっと大きな白い塊が付着している(写真中)。 この大福餅のような塊は、ハゴロモヤドリガの幼虫である。 幼虫は体全体に白いワックスを被っているから、とても芋虫には見えない。 しかし、ちゃんと幼虫の頭はスケバハゴロモのお尻の方を向いており、 白いワックスを落とせばその頭をスケバハゴロモの体に押し付けるようにしているのがわかる。 幼虫のサイズは、スケバハゴロモの腹部より大きく、これはいかにも重い荷物ではないかと同情したくなるのだが、それに反してスケバハゴロモの動きは敏捷さを欠いてはいない。 ハゴロモヤドリガ幼虫は、スケバハゴロモだけでなく、ベッコウハゴロモやアオバハゴロモ幼虫(写真下/背中に背負っている)にも寄生している。 前にセミヤドリガのことを紹介した。 セミヤドリガの幼虫は地上に現われたヒグラシの成虫に外部寄生するのだが、 ハゴロモヤドリガの場合は、寄生対象がハゴロモ類であることに加えて、成虫、幼虫のあらゆる成長段階の個体に寄生する点で、セミヤドリガとは大きく違っている。 5月頃、ハゴロモ類は越冬卵から孵化して若い幼虫が登場する。 この若い幼虫の体を仔細に見てみると、すでにハゴロモヤドリガの小さな幼虫がくっついている。 これはハゴロモヤドリガの孵化時期が長期に渡っていることを示唆している。 ハゴロモヤドリガについて書き出すと長くなってしまうので、 もう止すけれど、最後にひとつ。 一匹のハゴロモに外部寄生するハゴロモヤドリガ幼虫の数は、セミヤドリガの場合と同じように、大抵は数匹以上である。 しかも各幼虫の成長段階にはばらつきがあり、若い幼虫はハゴロモの体や翅などに散らばっている。 最終的に成熟しうる場所は、ハゴロモの腹部という「ゆりかご」なのであるが、 この「ゆりかご」が空くまで、それぞれが順番待ちをしているかのようである。 | |