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サツマシジミ幼虫(大分5/22) 2004/05/24(その1)
5月22日の大分。
ある県道脇で蕾を多数つけているサンゴジュの木を見つけた。

もしやと思い探すこと数分間。
蕾みにかじりついたままの
「サツマシジミ幼虫」を発見(写真上、矢印先)!!

瘤々した体は蕾群の中に見事に溶け込んでいる。お判りいただけるだろうか!?

幼虫を正面から見ていると、黒い頭部がようやく姿を現わした(写真中)。

サツマシジミ幼虫はその体に比して小粒な頭部だけを蕾の中に突っ込み、蕾の中身を食べているのである。

つまり食事をしている間も体の動きが一切、外へは漏れない。
ムシャムシャ暴食している様を、覗き見しようがないから、そこには蕾そっくりの幼虫の体が静かに張り付いているだけという状況になる。

これはまさに完璧というべき隠蔽擬態であろう!

さらに幼虫は蕾を丸ごと喰い散らすことはない。
頭の入る穴を穿ったあと、その中身だけをいただくのである。一個の蕾の中身がすっかり殻っぽになると、次の蕾へと移動するのだ(その瞬間だけ幼虫の頭を拝見できる)。

もし蕾を丸ごと喰い散らしたらどうなるだろうか?
幼虫の擬態効果は明らかに弱まるであろう。幼虫の回りに多数の蕾があってこそ、擬態効果は高まるのであるから。
(写真下、矢印先が食事の痕の穴)

私はサツマシジミ幼虫をずっとずっと前から見てみたい、そう願ってきたのだが、
大分県のその豊かな里山自然はいとも容易く、その夢を叶えてくれた!

新開 孝

ウチスズメの眼状紋(大分市) 2004/05/23
やっと会えたの蛾!「ウチスズメ」だ。

翅の迷彩模様はなんとも怪しいではないか!(写真上)




ぐるりと横に回って覗き見たその姿はなんともセクシーなポーズではないか!
(写真中)




ヨモギにぶら下がったこのウチスズメはいかにも新鮮な体であったが、

おいおい、ちょっと触らせてなどとちょっかいを出そうものなら、

大きな目玉を剥き出して、怒るのであった。




『豊の国!大分の里山に惚れる!』

ただいま!です。

今日、九州の大分から帰京しました。

5月21日後半から今日まで、私は大分に滞在しておりました。

わずか2日間でしたが、ほんとうに濃い!里山自然環境を満喫できました。

衣食住も含めての心地よさに思わず泥酔するかのような2日間でした!

このような自然豊かなお国が、わが郷里、愛媛の対岸にあったとは、今日の今まで気付かなかったのです。

はっきり言って、ショックの連続でした!

さりとて特別珍しい昆虫に出会ったというのではありません。

日本の里山自然に当たり前に生息する昆虫たちが、そこでもここでもぴょんぴょん元気に登場してくれるのです!

これは驚きです!発見です!

その一端を明日にもゆっくり紹介いたします。

そして5/18から3日間滞在した熊本県阿蘇山の昆虫記については、

『日本列島探虫記』の方にアップします。


新開 孝

ツマキチョウ、蛹化する 2004/05/16(その2)
先日、前蛹になったツマキチョウ幼虫をアップしたが、予想通り昨日中に蛹化脱皮を無事終えた。
(写真下は蛹を背面から見た)

その鋭利な刃物を思わせる体のラインは、かつての超音速旅客機コンコルドを想い起す。

チョウの蛹には不思議な魅力を感じるが、
これもやはり野外で見つけた時こそ、感動ひとしおである。
幼虫がどういった場所を選ぶのか、本当に彼らに聞いてみたい位、これほど探索と推理が難しいものはない。
だから飼育で得た蛹を撮影するときは、なんとも味気ないものだ。
今回は飼育ケース内に枯れ茎を入れておいたら、そこを選んでくれたが、いつもこううまくいくわけではない。
新開 孝

夜間灯火トラップ観察 2004/05/16(その1)
昨夜(5/15)は飯能市で灯火トラップを使った昆虫観察に参加させていただいた(写真上)。

灯火トラップの条件としては風があり、気温も少し低めという悪条件が重なり、昆虫の集まりはあまり芳しく無かった。

それでも宵闇が濃くなるにしたがい、様々な昆虫が飛来した。

蛾類の姿は思ったより少なかったが羽化したてのカギシロスジアオシャクは綺麗だった。
「シロヒトモンノメイガ」もまた小柄ながら目をひく紋様だ(写真中)。

甲虫類ではこの「ヒゲコメツキ」が何度も白布に離着陸を繰り返し、姿だけでなくその落ち着きの無さが面白かった(写真下)。

大型昆虫として見応えがあったのはクロスジヘビトンボ、ついでキマダラカミキリであった。

略して「ナイター」とも言うライトトラップを使用した採集方法は、非常に多種類の昆虫を効果的に採集できる。
特に近年は小型発電機と蛍光灯、水銀灯などを山間部にまで持ち込むようになっている。
ライトトラップでは昼間活動する昆虫でも、普段滅多にお目にかかれない種類のものに出会えることがあり一度でも経験すると病みつきになるようだ。

しかし、私自身がそういったライトトラップを行うことは今までに数回くらいしかない。
また灯火トラップ用具もキャンピング用ガスランプと白布位しか持っていない。
私がライトトラップに積極的でない理由は、単独行動がほとんどなので発電機などの利用が難しいということと、
ナイターでは天候などの条件では当たり外れの大きいことも関係している。
したがってナイターを遂行するとしても、既存の外灯などを見て回る、いわゆる拾い採り(撮り)に徹している。

さらに理由を付け加えるならば、ライトトラップである昆虫を得ても、その先の生態を掘り下げた撮影にはほとんどの場合、結びつかないからである。
かつてカマキリモドキの生活に興味を持ち始めた頃、まずはナイターという手段を頼りにしたのであるが、
やはり成虫の姿を撮影するだけに終始して、いっこうに謎の生態へ迫ることができなかった。
私のように自分が面白いと思える昆虫のキャラクターを、独自の視点で掘り下げるという撮影では、
無理を承知で謎の生態解明に切り込んで行く必要もあるのだ。
これはかなり無謀と見えるかもしれないが、
20年近くも続けておれば嫌でも自然読解力の感性が磨かれるというものだ。
昆虫の生活に関わる感どころが備わってくると、例えて言えば事件解明に活躍する探偵気分で楽しめるから、これこそ病みつきになるのである。

昨日は午前中、子供の遊び相手に野球、昼からフィールドに移動してビデオ撮影を行い、それからナイターに参加した。
「ナイターより、夜は酒飲んでいたいしなあ、、、。」
などという気持ちはいつもながらだが、
こうして人様のナイターに顔出すのは楽でよろしい。


新開 孝

キタテハの産卵 2004/05/15(その2)
アカシジミの終焉を撮影しての帰り道。

キタテハが地面近くをゆっくり舞っていた。

一目でメスの産卵行動だと察しがついた。

連れていた長男が捕まえたいというが「これは卵を産むところだから、父やんが写真とるまで、ちょっと待って」と制止し、カメラを構えた。

キタテハのメスは食草のカナムグラに触れては、すぐ側のカラスムギの穂先に産卵を数回、繰り返した(写真上)。

穂先をよく見てみると確かに卵が産みつけられている(写真下)。

キタテハは、こうして食草以外の植物にわざわざ産卵することがよくある。
もちろん食草カナムグラの近くであるし、メスはちゃんとそのことを確認してから産卵するのだが、孵化した幼虫はえらい迷惑ではないだろうか?

さて私が撮影を終えて、息子には採集許可を出したのだが、素手で捕らえようとして見事に逃げられてしまった。
新開 孝

アカシジミ蛹の終焉!! 2004/05/15
先日からお伝えしてきた歩道柵ロープのアカシジミ蛹。

その蛹の色付き具合から推測していた羽化日は明日あたりであろうと思っていた。
今朝は日射しも強く中里の林に向う途中、嫌な予感がしたのだがそれが的中した。

見ると蛹はすでに抜け殻となっていた(写真上、午前11時)!

しまった!今朝早くに羽化してしまったのか!
諦めきれずに辺りを探してみると、なんと蛹殻のあったすぐ下の段のロープに無惨な成虫の姿があった(写真中、下)

これは一体何事があったのだろうか!?




蛹から無事に羽化したまでは良かったのだが、そのまま真下へと落下したことが窺える。
結局、翅は伸び切らずロープに張り付いていた。
わずかに触角がピクリと動いたが、もう生きているようには思えない。

新開 孝

ツマキチョウ前蛹となる 2004/05/14
飼育していたツマキチョウ幼虫が本日、足場を作って前蛹となった(写真上)。

過去に見た蛹はいずれも頭が上向きであったから、今回のような逆さまの姿勢は少し意外だった。

私が飼育ケースに入れた枯れ茎に落ち着くまで、幼虫は2日間も彷徨い歩いていた。

やはり蛹になる場所選びはけっこう神経質になるようだ。

前蛹はお尻を糸玉に固定し、胴体を一本のU字型帯糸で支えている(写真下)。

野外でツマキチョウ蛹を探すのはかなり難しい。
ときたま偶然に見つけることがあるくらいだ。
私の住むマンション裏の草地では、セイヨウアブラナの結実時期などを見ていると、
5月に入ってから産卵された遅組の卵は、そのあと餌である蕾や花に恵まれず、死んでいく幼虫が多いのではないかと考えられる。

今回の前蛹が蛹へ脱皮するのは明後日あたりであろうと思う。
新開 孝

アリグモ夫婦 2004/05/13
先日、「くわがた蜘蛛」として登場したアリグモ。今日はキヅタの葉で巣を見つけた。

薄く張り巡らした糸屋根の下に番いは潜んでいる(左がメス)。

特にメスの佇んでいるところは糸が密になっており、メスの姿はぼやけて見える。

このキヅタが絡んでいる所はケヤキの幹で、幹の表面にはアリグモのオスが数頭徘徊している。

先日撮影してから意識しているせいもあるが、中里の林内でもやたらと数多く見かける。そのほとんどはオスである。

さて、オスが一頭で潜んでいる巣に他からやって来たオスが入ってしまった。
これは闘争行動を見るチャンスと期待してカメラを構えたが、あっけなく侵入者側が地上へ逃走落下してしまった。
大きな上アゴで取っ組み合いかと思ったのだが、体の大きさにも差があり過ぎたかもしれない。
また、本物のアリがオスに近づいたときのアリグモの反応も面白かった。
襲って喰うどころか後ろへ飛び退いてしまった。
アリグモはハエトリグモ科の仲間だが、ハエトリグモ類は大きい目や、きびきびした仕種など好感が持てる蜘蛛だ。



『新開孝からのお知らせ』

今日は林内の道を歩くうち昨日と同じように青大将を踏みそうになりました。
危うくヘビは機敏な動きで身をかわしてくれました。
小柄な幼蛇でした。
幼蛇の体には銭型紋様があるためマムシに間違える人も少なくありません。

さて、来週18日から九州の阿蘇山へ遠征します。
帰京は23日になるので、その間は「ある記」の更新アップはお休みします。

本日は神田小川町のオリンパスギャラリーで開催が始まる海野和男さんのデジタル写真展「小諸日記Part3」に出掛けます。
展示作品は全てオリンパスE-1で撮影なさったそうです。
私はまだ一度しか写真展をやったことがありませんが、やはりこれは面白く病みつきになります。
次回は私もデジタル写真展になる予定ですが、2台目のメインカメラ「EOS-1Dマーク2」は品薄のため何時手に入るか判らない状況です。
出荷台数より購入希望者が多かったことが原因でしょう。
そのためもあって、阿蘇山遠征には風景用にブローニーカメラを持って行くことにしました。
新開 孝

オオフタオビドロバチ蛹化 2004/05/12
バックナンバー3/16で紹介した「オオフタオビドロバチ」の幼虫が一部、蛹化した。
写真の蛹は大きさからしてメスだと思われる。
しかし、竹筒部屋の配置から推測された性別とは、違う結果となっている。
今後の成りゆきを見てみたい。



『踏んでしもうた!』

今朝はまず空掘川の河原に降りてみた。
というのも、ツマキチョウ幼虫の餌がマンション裏草地のセイヨウアブラナでは供給できなくなったからだ。
もう結実しきって蕾も花もほとんど手に入らない。
そこで河原のセイヨウカラシナに供給源を求めたというわけだ。
ジイーと長く伸ばして鳴くクビキリギスの声を耳にしながら、セイヨウカラシナの蕾や花を摘んでいくうちに、なにやらグニュという感触を足の裏に感じた。
うぬ!?なんじゃこれは!?
足下を見ると、おお!でっかい青大将ではないか!!
しかし、踏まれたアオダイショウはびくりともしない。
「なんじゃい!われ!!」
そんな声すら聞いたような気がして、
「すみません!」私はさっさと現場を立ち去った。
新開 孝

林のシャンデリア 2004/05/11
中里雑木林の歩道柵ロープで見つけたアカシジミ蛹の様子を見ておいた。すでに翅のところが白くなっており羽化は数日内であることがわかった。

その帰り道、金網柵の上に「エゴノキ」の花が白く光っていた(写真上)。

ハッとして見上げるとエゴノキが満開になっていた(写真中)。

つい先日、そろそろエゴノキの開花時期だよなあ、などと見上げていた梢では蕾しかなかった。

あっと言う間に開花が進行するから少しでも気を抜くと、もう散ってしまいました!なんてことになる(写真下)。

武蔵野の雑木林にエゴノキは多い。春先の芽吹きも早く、その若芽の姿から花、そして実に至るまでとても親しみ深い樹木だと言える。

「白いシャンデリア」とは足田輝一さんの著書にあった表現だと記憶している。
まさに豪華絢爛!白い花弁と雄しべの山吹色との取り合わせがいい!
しかも無数に咲き誇るにぎやかさは、桜にも劣らぬ艶やかさがある。
エゴノキの花にはいろんな昆虫も訪れている。
特にクマバチやマルハナバチ、ミツバチ類などの姿が多く、ブ−ンという翅音が上空から降り注ぐと、その音色でもって花に気付くこともよくある。

新開 孝

驚異の脱出劇だあ!! 2004/05/10
クヌギカメムシとヘラクヌギカメムシの幼虫の区別は、文献を参照してなんとか判るようにはなった。

しかし、私はそれぞれの終令幼虫を羽化させて自分の目でも確かめたいのである。

そこで一昨日、クヌギカメムシと思われる幼虫を確保し、本日いよいよ羽化する兆候があったので、撮影待機してみた(写真上、足場を決めふんばるクヌギカメムシ終令幼虫)。

まだ羽化脱皮まで時間的には余裕があるだろうと思い、子供を保育園まで迎えに行き帰宅してみると、しまった!遅かったかあ!である。

羽化が始まったか!と慌ててスタンバイしてファインダーを覗くと、なんだか様子が変だ。

なんじゃあ!?これは!?

カメムシ幼虫のお尻近くからは白いゼリー状の物体がヌメリ、ヌメリとのたくっている!!

なんと!クヌギカメムシ幼虫が力んでいたのは、羽化脱皮が近づいてのことではなかったのである!
私は騙されていたのであった。

劇的羽化シーンを撮影するはずが、
その現場の監督たる私を裏切って、全く別のシナリオが進行していたのであった!

その主人公たるや、寄生バエの幼虫だったのである!

おお!カメムシの体から時間をかけてよじるようにして脱出したウジ虫型幼虫は、その容姿に似合わぬ速度で歩きだし、葉っぱの隙間へと潜り込んで姿を消した。

して、そのウジ虫型幼虫は実に純白な体であり、そしてなんと!その顔面たるや「ゴマフアザラシの赤ん坊」を想わせる風貌にて、私は撮影しつつも思わず内心ニンマリしたのであった。

もっとも、たかがウジ虫なんかをあの可愛いゴマフアザラシの赤ちゃんと一緒にすな!!とお叱りを受けるかもしれぬが、さりとて私には、そう見えてしまったのだから仕方が無い。

およそ生き物の誕生シーンというものは映像としては多くの方々の共感を得て、盛り上がる場面である。
ところが寄生昆虫の誕生というものは大抵はおぞましい場面として忌み嫌われるのが一般的だろう。
私とて驚いた位だが、考えてみれば寄生バエとて生きておる。
それは当たり前のことではないか。
その生なるものをおぞましいとばかり否定的に捉えるのも、また身勝手な考え方ではないのか。
気持ち悪い、はそれでいい。
でもその先には踏み込めない生物の何かがある、という認識に立ち戻れる冷静さ、思慮なるものが必要ではないか。
人間も偉そうなことばかりは言えぬ。
人間社会こそ、お互いに寄生し合って生きているのではないか?その狡猾さでは生物界でもっとも抜きん出ている存在であるはずだ。
そんな話題になると話は尽きない。

新開 孝

くわがた蜘蛛!? 2004/05/09
と、言っても体長わずかに5ミリ(写真上)。

立派な上アゴには鋸状の突起が並んでいる。

カメラを近付けてもどっしり構えてたじろぐことが無い。

よく見れば食事中であった。
獲物は小さなハエのようである
(写真下)。

ムクノキの幹で見つけたこの蜘蛛は「アリグモ」のオス。
離れて見ればクロオオアリやクロヤマアリに似ている。


クワガタムシの大アゴのような「上アゴ」を持っているのはオスだけで、メスは小さく目立たない。
性的多型という点でもクワガタムシに似ているのだが、はたしてアリグモのオス達が、この上アゴを使って闘争するのかどうか?

『マウス蛹の正体!!』

さて、5/4に紹介した『マウス蛹』が昨日、羽化した。
気付いたときには室内を飛び回っていたので、すぐさま容器に回収した。
さっそく調べてみると「ハラアカナガハナアブ」のメスであることが判明した。
ところが不覚にも野外で撮影中に逃走されてしまい成虫の写真が残っていない!
それにしてもハラアカナガハナアブとアリになんらかの関係があるのだろうか?

新開 孝

ツマキチョウ幼虫 2004/05/08
ツマキチョウ成虫はさすがに
ほとんど見かけなくなった。特にオスは完全に姿を消した。しかしそれでも昨日はメスを目撃できた。まだ産卵しているようだ。

飼育中の幼虫は終令まで成長した(写真上)。マンション裏のセイヨウアブラナで卵を見つけものだ。
幼虫が主に食べる蕾や花はとても萎れ易い。そこで水差しにして飼っている(写真下)。幼虫が間違って入水自殺をしてはいけないので、ビンには園芸用品のオアシスを詰めている。こうすれば食草の茎も自立する。


さて昨日、チョウとガの区別について、そもそも区別する必要があるのか?などと書いた。
これは補足しておかないと大いに誤解を招く表現だと思う。

私が言いたかったのは一般常識的に流布している、「ガとチョウの見分け方」などは知識とし諳んじるには値しない、ということである。
チョウとガの区別に分類学的な根拠はないからである。
いわゆる「見分け方」の項目の全てにおいて矛盾する事例が出て来ることはもう御存知の方も多いはずだ。

チョウというグループはガという分類群のほんの一部でしかない。
だからチョウをガと並べて比べること自体がおかしいのである。
チョウが突出して人々から意識されるのは、
それはチョウが昼間に活動しその多くが美麗な翅を持ってるからであろうことは今さら言うまでもない。
この区別感覚には民族の違いによる差異が生じることも矛盾の表れであろう。
昼と夜の対極の世界という認識はごく自然発生的なもので無理がない。(ガを「夜のチョウ」などという表現は案外素直かもしれない。)
そこでこのチョウとガの二分法なる意識が育ち、その解釈を必要としてきたのだが、チョウを差し引いたガの世界とは、
まさに宇宙のごとく深遠広大であり、そのような二分法は意味を成し得ない。
チョウとガの区別にこだわる人は、ガの世界をもっともっと広く知る必要があるだろう。


新開 孝

オオミズアオのオス 2004/05/07(その2)
クリ林で「オオミズアオ」の羽化したばかりのオスを見つけた。

正午過ぎの日射しを受けて翅が透けている。
クリの梢が地面に触れるほど垂れているところに足場を得たのであろう。おそらく越冬繭は地面の落ち葉の中に紛れていたと思われる。

オオミズアオは年2回、春と夏に成虫が登場する。
春に現われた成虫は、雑木林などでは主にミズキ、クリなど、もっと身近な環境ではハナミズキ、イロハカエデなどに産卵する。
特に街路樹や公園などのハナミズキは好まれるのか、そこでは幼虫をよく見かける。

さて、ガとチョウはどこで見分ければいいのでしょうか?という質問は意外と多い。
しかし、そもそもガとチョウを区別しなければならない理由など、あるのであろうか?
分類学で線引きされる区分とはとりあえず人為的、そして便宜的なものであるという点を忘れてはならない。
それよりか、目の前の「翅が大きく発達して粉にまみれた昆虫」が、ガであるのかチョウであるかにこだわる前に、こやつはどんな生活を送る生き物かいな?という素直な疑問に徹してみてはどうだろう。
活動するのは昼間か夜か?とか。

どうしてもチョウとガの区別にこだわりたい人は、国内のチョウは250種程度だから、これを全部憶えてしまうのが早い。
その中でも身近なチョウはだいたい100種以下であるから、それさえ区別できるようになれば、ガの世界がさらによく見えてくるはずだ。

新開 孝
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