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カギシロスジアオシャク成虫 2004/05/07(その1)
本日、羽化したシャクガはまたもや青チーズを連想させる大人の雰囲気。

まさに清楚な美しさだ。
思わず唸ってしまう!

このガは名前を「カギシロスジアオシャク」という。

本種の幼虫は擬態の名人であり、なおかつその擬態変身まで行うから凄いのだが、ちょうど海野さんの『小諸日記』には幼虫の写真がこのところよく登場しているので、リンクからそちらを見ていただきたい。

また拙著『珍虫の愛虫記』にはこのカギシロスジアオシャクの幼虫の写真、解説文も書いてあるので時間のある方は覗いていただきたい。

新開 孝

エノキハトガリタマフシ 2004/05/06
今日もエノキに関わる虫の話題。

この奇妙な形をした虫コブの名前は「エノキハトガリタマフシ」(写真上)。

ちょっと憶えにくい名前だ。
ましてこの虫コブを作った犯人がタマバエ科の「エノキトガリタマバエ」であるから、なおややこしい。

とにかく虫コブの中を覗いてみると、白い幼虫が一匹ずつ入っている(写真下)。




中はけっこう広い空洞だが、幼虫はここでなんらかの栄養を内壁から得ているのであろうか。
こうして切り開くと幼虫はもぞもぞ動く。

虫コブあるいは「虫えい」というものはなかなか複雑な生物世界だ。
全国農村教育協会から出版されている『日本原色虫えい図鑑』は、その奥深い虫コブ世界の道案内となる貴重な文献だ。

さて、この図鑑の解説を読んでみて驚いたのが、エノキトガリタマバエ(というかタマバエ類全般)の生態である。
その驚きの要点は二つ。

まず成虫タマバエの寿命はとても短く、1、2日という!!
口は退化していて食事どころではない。

そして二つ目は、幼虫の休眠期間が異常に長いこと!
5月下旬頃に虫コブはエノキの葉から脱落し、そのまま地上で翌春を迎えるという。
つまり幼虫は成長を終えても蛹にはならず、虫コブシェルターの中に籠ったまま、夏、秋、冬と過ごして翌春にようやく蛹となって羽化するというのだ。

ということは交尾や産卵のタイミングも極限られた時間に集約されることになる。

そこいらにいくらでも見つかる「エノキトガリタマバエ」の虫コブも、その一生の全貌を撮影しようと企てるなら、それ相当の根気と努力が必要である。

科学写真としてなら真面目に取り組めばある程度は撮れてしまうだろう。
だが、私はそれではつまらんなあと思うのである。
新開 孝

ヒモワタカイガラムシ 2004/05/05
ゴマダラチョウが先日羽化したエノキの枝を少し剪定した。

駐車場へ通じる小道の脇なので、他の誰かにいつバッサリ枝落としされるかわかったもんでない。昆虫観察の自衛策として先手を打っておくのだ。

剪定しているうちに小枝で「ヒモワタカイガラムシ」が見つかった(写真上)。

白い筒状のものはカイガラムシが分泌したロウ物質。


わたしはこれまでロウ物質の中身を見たことがなかったのだが、本日初めて断面を切り開いてみた。

すると白いロウ物質は薄皮でしかなく、この筒の中には橙色の小さな卵がぎっしりと詰まっていた(写真下)。

卵は長楕円形で1ミリにも満たない。筒全体に納まっている卵の数は膨大な数字になるだろうと思う。

この卵が孵化するのがいつ頃で、その幼虫たちがどのように暮らして成長するのであろうか?
どこにでも見かけるこのヒモワタカイガラムシについて、私は何も知らない。
もっともヒモワタカイガラムシを見て、これが昆虫の一種と気付く人もそう多くはないのかもしれない。
それほどに昆虫としての存在感が希薄ではあるのだ。
昆虫が進化の過程で植物化する生き方を選んだというようなヒモワタカイガラムシは、まさに生命の神秘を感じさせてくれる。

新開 孝

謎の「マウス蛹」!! 2004/05/04
写真上は以前にもアップした「アリスアブ」の蛹である。
前回には前蛹の写真も紹介した。

今回、前蛹から蛹化したといっても2本の角状の呼吸突起が生えただけである。

さてアリスアブの蛹がいくつか揃ったところで整理していたところ、妙な蛹が混じっていることに気付いた(写真中、矢印先)。

この蛹はまるでパソコンの「マウス」、あるいはネズミそのものという姿をしている!(写真下)

この「マウス蛹」はよくよく見れば、細長い体型ではあるが2本の角状突起、お尻の突起という基本構造ではアリスアブの蛹に似ているではないか!
実はこの蛹の前身である幼虫は、アリスアブ幼虫採集時に混入していることに気付いていた。採集地は群馬水上町。
トビイロケアリの巣内にアリスアブ幼虫と共にころがっていた姿は、一見してハナアブ類の幼虫とはわかったが、差程気に留めることもなく一緒に持ち帰ったのであった。

さてこの「マウス蛹」の正体とはなんであろうか!?
新開 孝

春型ゴマダラチョウ羽化する 2004/05/03(その3)
バックナンバー4/11で紹介したゴマダラチョウ幼虫がその後蛹化し、本日めでたく羽化した。

ゴマダラチョウの春型はこうして翅の色模様が白っぽいのだが、特に写真の個体はまるで「スジグロシロタテハ」とでも言えようか。

「めでたく羽化」と書いたのも、実はこのゴマダラチョウの蛹は蛹化時にかなり損傷を被っており、羽化できるかどうか、危ぶんでいたのである。蛹化するときに近くの葉っぱが擦れたようだ。

羽化したもののよく見ると翅脈に異常が見られ、翅もわずかに波打っている。
新開 孝

ナナフシの幼虫 2004/05/03(その2)
雑木林の梢では4月の芽吹きころから無数のナナフシ孵化幼虫が見られた。

その中には触角の長いトビナナフシ類の幼虫も混じっていたが、今日エノキの葉に止まっていた「ナナフシ幼虫」は、少し成長した姿をしている。

大きさだけを問わなければ、もう立派なナナフシだ。
新開 孝

蛍光緑色幼虫の正体!! 2004/05/03
バックナンバー5/1の緑色に輝く幼虫は本日、脱皮した。

ここに至って幼虫の種名は「キバラモクメキリガ」と判明した!
幸いにも幼虫は脱皮終了後も2日前と同じ場所に留まってくれたおかげで、
名前調べができた。

5/1の段階でこの幼虫は脱皮が近いことがわかっていた。したがって終令幼虫ではないと知れると、その種名探索は脱皮を待つしかなかったのである。

国内だけでも数千種いるとされるガだけに、その幼虫の正体を成虫と照合するのはたいへんな作業である。
しかも身近な環境にいる普通種でも今回のように若い幼虫となるとなおさら種名探索は困難を極める。

キバラモクメキリガ幼虫の劇的な変身には本当に驚いた。
いくら図鑑を調べても名前のわからない幼虫には、こうしたトリックみたいな事情があることを疑ってみる必要がある。
新開 孝

コアシナガバチの営巣 2004/05/02(その2)
昨年、うちのマンションベランダ外植えには「コアシナガバチ」の大きな巣が見つかり、冬を迎えての終息までを見届けた。

今日、その巣があった木を刈り込みながら様子を見てみると、なんとほぼ同じ場所に女王バチの単独営巣が確認できた(写真上)。しかも少し離れて二つある。

私が草刈りやら枝刈りを遂行したがために、女王バチは一時巣を離れてしまったが、数分して戻って来た。巣房内を覗き込んでみるとすでに幼虫の姿もある(写真下、矢印先)。

ここもまたいずれ、地主や業者が入って草刈りを行うので、コアシナガバチの巣が生き残れる確率は低い。
そこで無闇に巣を破壊されないよう、事前に私が草刈りをしておくことにした。
また、裏のアブラナ草地で営巣している巣も、ベランダの外壁隙間に移設するつもりだ。

だからといって特別、ハチ擁護に徹しているつもりはない。ただ、少しの労を注げばハチ達の暮らしぶりをじっくり拝見できることができる。
これは私にとっての仕事の一部でもあるが、ただ単に撮影することだけを目的にしているのではない。
生き物たちの複雑な環境世界に浸れるきっかけ作りには充分なり得ると、私は知っているからだ。
きっと何がしか他の生き物がここへは絡んで来るのだ。
新開 孝

オオスズメバチ女王の巣作り 2004/05/02(その1)
昨日、中里雑木林に赴いたらこのような注意書きの札がぶら下がっていた。

この場所はオオスズメバチ女王が単独で巣作りを始めた所であり、遊歩道の脇であるから当然の対処であろうと思う。

私が『清瀬の自然を守る会』の会員の方にお話しした結果である。会では自然全般への御理解が深いと思い、しかも中里の雑木林の管理にも関わっているので、今後のことは会の方達と相談するのが順当だと思われた。

こうして札でもって勧告してもらえると、間違ってもいきなり市役所なりへ市民の方から駆除願いが行ったりはしないだろうと期待したいのだ。
もっとも現時点でオオスズメバチの巣作りだと、気付く人は皆無に近いだろうが。

今日、写真の札をかけてくれた会員の方とお話ししてみると、会としてはしばらく様子を見てみたい、ということで少し安心した。しかしいずれは市役所に駆除を要請するともおっしゃる。
私は市役所に駆除を要請することには反対の意志を伝えた。
行政を巻き込むとそこで要らぬ税金を使うことになるからだ。
それと今の段階なら薬剤など使わなくても、巣場所の移設や排除は簡単にできる。
巣が大きな規模まで発展すれば問題だが、現時点では何も恐れる事態は発生し得ない。それまでにはまだ時間的猶予もたっぷりある。
使うべきは人々の頭だ。税金ではない。自然とともに歩もうという『清瀬の自然を守る会』の主旨からすれば、おおいにここで策を練るべきではないだろうか。

ただ、今日の観察ではさらにもう一匹の女王が少し離れた場所で巣作りを始めたことが判明した。
先の女王とは4メートルほどしか離れていない。
帯状に積まれた朽ち木の山は、様々な生き物にとって実に魅力的な巣場所には違い無い。
その中でオオスズメバチだけが疎まれるのも、考えてみれば非常に気の毒でもある。
概ね排除という考えになりかけていた私も、今日の時点ですっかり考えが一転した。

おそらく市役所なる行政を説得するのは不可能だと考えるが、ここはむしろオオスズメバチに営巣させてやるべきではないか!
そしてこの場所への立ち入りを禁止するのだ。遊歩道を一部コース変更すればいい。
今や自然を潰し、叩きのめし、生活の都合に併せて改変し、危険とみるやすぐさま排除し、というような横暴を働いて、先人の知恵を大事にしなくなった私たち、日本人は、そもそも雑木林の自然を大事にしようと立ち上がったのであればこそ、ここいらで、我々人間たるものが、一歩下がってみてはどうだろうか。
オオスズメバチの巣は近寄らなければ危険はない。彼らが生きるということは、中里の雑木林が健全な生態系を維持し得ているという証拠ではないか。
現に林床植物を守るという主旨ではロープ柵を張り巡らし、人の侵入を規制しているのである。
これがオオスズメバチのためにはできない、というのでは矛盾しているとも言えるだろう。
住居地域が林に隣接しているからなどという口実で、駆除を優先するのがいずれ行政の考えそうなことだろうなあ。

オオスズメバチの巣を残せ!人がそこを立ち去れ!などと主張するのは私一人くらいだろう。
こういう発言をすれば、ハチから被害を被ったら、誰が責任とるのだ!という議論に終始するのみだ。あるいは「お前は虫が好きだから、そういう身勝手なことを言うのだ。」とも誹られそうだ。

私はなんだかどうせ期待し得ない発展に望みを託すのは止めることにして静観することにした。

新開 孝

蛍光色に輝く芋虫 2004/05/01(その2)
こんな芋虫がロープに隙間無く並んでいたら、なんとも見事な『電飾遊歩道』ができる!

残念ながら芋虫の体は陽射しを受けない限りこのように発光したようには見えない。

想像するにこのような芋虫の行列がもしもあったとするならば、それはそれで経済バカになってしまった日本社会に、ギャフンと一発天誅を下す彼ら昆虫界のメッセージと受け取ってもみたいものだ。
新開 孝

アカシジミの蛹、ロープで見つかる 2004/05/01(その1)
中里雑木林内の歩道柵ロープで「アカシジミ」の蛹を見つけた。

これはウラナミアカシジミの可能性もあるが、今の所はよくわからない。

足場糸や体を固定する帯び糸もよくわかる。幼虫の抜け殻も残っているので今日あたり蛹化したのではないだろうか。

羽化はおよそ2週間後だが、せめて羽化直後の成虫くらいは見ておきたいものだ。
新開 孝

空中曲芸師の技に見愡れる! 2004/04/30
ぶらんと糸の先に垂れた白い楕円球状のものは繭だ(写真上)。

長径5ミリわずか。
この繭は今日の午後6時ころ撮影したのだが、まだ完成していない。
繭を作り始めたのは昨日の午後5時43分だからすでに24時間も経過したことになる。

なぜ完成していないと言い切れるのかといえば、幼虫が八の字状にせわしく糸吐く頭の動きが繭壁を透かして見えるからである。



さて繭を作った曲芸師とはヒメバチ科チビアメバチ亜科に属する寄生バチの幼虫である。

チビアメバチ類は主にガ類の幼虫に寄生するのだが、こうして特徴ある繭を紡ぐので雑木林でもよく目立つ。

(写真下)は中里雑木林のイヌシデ葉裏で見つけた繭とその犠牲者たるシャクガ幼虫の屍(抜け殻)である。

私はこの摩訶不思議な空中ぶらさがり繭がいかにして製造されるのか!?
それをぜひとも見てみたいと長年願ってきたのだが、
ついにそれが昨日、念願叶ったというわけである!!

寄生バチ幼虫がシャクガ幼虫の体壁を内側から突き破り姿を現わす瞬間は、
実におぞましい!のであるが、私は一種異様な興奮を伴いながらそれを撮影していた。
そしてそのあと、いわゆる蛆虫君がそそくさと所定の行動を正確に着実に遂行する姿は、どう見ても崇高ですらあったというしかない!
空中でなんの道具も使わず、
自分の体を器用に正確に動かすことによって、
摩訶不思議な繭を紡ぐのである。

残念ながらこの一部始終を写真で紹介するには、スペースが足りない。
いずれ印刷媒体でもって公表させていただきたい。

新開 孝

アオクチブトカメムシ 2004/04/29
中里雑木林内のロープ柵では
様々な昆虫の姿、そしてその昆虫たちのドラマを観ることができる。

今日は「アオクチブトカメムシ幼虫」。





前々から歩道柵では多数の芋虫類が目に付いていたが、ついに捕食者たる者が登場した。それがアオクチブトカメムシ3令幼虫だ。
写真ではハバチの幼虫を吸血している。

本来アオクチブトカメムシは、関東地方では山地性のカメムシであったが、近年になって平地の雑木林でもよく見かけるようになった。

本種は2令幼虫まではクヌギやコナラなどで生活しその汁を吸うのであるが、やがて肉食へと転じ主にチョウやガの幼虫を専門に吸血する。

新開 孝

ツマキチョウの卵、幼虫 2004/04/28
マンション裏つまり私の部屋から玄関出て20秒の草地には今月初めころから「ツマキチョウ」がよく飛来していた。

セイヨウタンポポ、アブラナなどの花で蜜を吸ったりもするが、なんといってもメスが産卵する姿が一番嬉しかった。
私の目論見としてはツマキチョウを飼育して来年こそ羽化シーンを撮影したいのである。




そこで数日前に卵を採取しておいたところ、数匹が孵化してさっそくアブラナの蕾を食べ始めた(写真上)。

今日は餌換えのため新しい蕾を摘んで来たら、産卵直後の真新しい卵が一つ付いていた(写真下、矢印先)。
新開 孝
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