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ウスバフユシャク 2004/01/19
午前中はけっこう雪が降ったが、積もることもなく
午後からは日射しが出た。

中里の林では「ウスバフユシャク」のオスが
見つかった。(写真上)
冬尺蛾/28種の中でも、ウスバフユシャクは
厳冬期の1、2月に登場する。
先日、紹介したシロオビフユシャクは12月下旬から
2月上旬に現れるのでほぼ同じ頃に両種が見られる。

ウスバフユシャクが枯れ茎に止まったので、
私も落ち葉に寝転んで顔を拝見してみた(写真中)。
この写真ではわかりずらいが、確かに口吻が見当たらない。
オスもメスも食事をしないというのは、
蛾の世界では珍しいことではなく、
天蚕で有名なヤママユガも口吻が退化している。





金網柵の昆虫観察トラップでは廂を覗き込んで歩くと
冬尺蛾のメスが見つかった(写真下)。
完全に無翅タイプだが、種名はわからない。
ウスバフユシャクか、シロオビフユシャクのどちらか?かもしれない。




中里の雑木林では何種類の冬尺蛾が生息しているのだろうか?
これをきちんと把握するには、新鮮な個体の標本を揃えるべきだが、
あの小さな体を展翅するのは厄介だろう。
図鑑の標本写真は全て展翅標本であるし、
正確な同定を専門家に依頼するにしても標本は必要である。

まずは自分で標本を作り、その標本写真をきちんと
撮影してみようかしら、などと考えている。
講談社の大図鑑、写真が小さいし製版がすこぶる良く無いと思うからです。
とりあえず『中里のフユシャクガ、超ミニ図鑑』でしょうか。
と言ってもすでにクロスジフユエダシャクは終わってしまいました。

新開 孝

フクラスズメの冬越し 2004/01/18
せせらぎ公園ではネコヤナギが開花し始めていた。
赤い大きな冬芽が花芽だが、ぽつぽつと開いている。
ずいぶん早いのではないだろうか(写真上)。







小川の底にはカワニナが這い回った足跡が夥しい。
これは秋の頃よりずっと多いように思う(写真中)。
今頃になって活発に動くのは何故だろうか?
水中の石をよく覗き込んでみると、
たくさんの稚貝がいる。
水の中の世界はようわからんだけに不思議で面白い。



「わあ、大きな蛾がいる!」と嫁さんが叫ぶ!
「おっしゃあ!それはフクラスズメぞなもし!
 見んでもわかるんよ。」と私が駆け寄ってみると、
確かに『フクラスズメ』(写真下)だ。
うちの寝室の窓枠サッシで、いつのまにやら冬越ししている。





中学生の頃、こやつは薄汚い蛾!
としか思っていなかったのだけどなんと後ろ翅には、
青くて怪しい紋様を隠しており、
それが発覚してからは汚いという印象は吹っ飛び、
私は深く蛾の世界へのめり込んだ
そんな想い出深いフクラスズメです。

「蛾」という呼び名はいかにも投げやりな表現だが、
しかし、この昆虫のグループは実に素晴らしい世界を構築している。
夜の暗闇に生活する上で、
「こんなことやってみました!」と
言わんばかりの多様複雑な世界は、
昆虫界の王者にもふさわしい!
と、私は思う。

新開 孝

シロオビフユシャクのオス 2004/01/17
今年に入ってから中里の林でよく見かける冬尺蛾は
この「シロオビフユシャク」のオスである(写真上)。
翅を広げると3.4センチくらい。

ずっと以前のことだが、
本種のオスが林床に舞い降りるやいなや、
興奮して歩き回り、すぐ落ち葉の下に潜り込んだ。
すかさず後を追って覗き込んでみれば、
なんと無翅メスと交尾が成立していたのである!
午後3時頃の出来事であった。
フユシャクの配偶行動を見たのは、
後にも先にもこの一回きりだ。

バックナンバー10/20に初めてアップしたクロアゲハ蛹。
あれから林に出向いた時には欠かさず見て来たのだが、
本日も無事を確認(写真中)。
遊歩道の奥からおばさんたちが歩いて来るのを
待っていたのだが、くるりとコースを替えてしまった。



アブラゼミの抜け殻が、粉雪舞う林で見つかる(写真下)。
セルロイド模型のような抜け殻は、何か物言いたげでもある。
しかし寒風に揺れて今にも落っこちそうだ。
夏の記憶を呼び戻すにも、あまりに風景が違い過ぎる。
今日はどんより曇った一日だが、
真夏の日射しを抜け殻に照らしてみた。




「お知らせ」

1/15のフィールド探索地は「飯能市」ではなく、
「日高市」でした。あとで訂正しましたが、
糸崎さんたちを案内した私が間違えてどうする!という
お粗末でした。
なんとか電車で行けるフィールドということで、
西武秩父線、高麗駅下車で徒歩の散策でした。
ご苦労様の一杯まで楽しめて、車無しの利点を発見!!
新開 孝

カマキリモドキ幼虫、登場!! 2004/01/16
昨日の掘り出し物とは、カマキリモドキ幼虫、
が取り付いているかもしれない
「コアシダカグモ」のこと。

正確には「キカマキリモドキの1令幼虫」。
クモを見つけたからと言って、
カマキリモドキ幼虫がそこにくっついている、
という保証は無い。
無いにもかかわらず、私には自信があった!
過去の経験から勘が働くのだ。
それで日高市では糸崎さんも訝しがるほど、
懸命にクモを捕まえまくったのだ。

そして今日、14匹捕獲したコアシダカグモを
詳しくルーペで調べてみたところ、
4匹のクモの体から各1頭づつ、
キカマキリモドキ1令幼虫の姿を見い出した。

(写真上)
    コアシダカグモ、丸く囲った中央に幼虫が。

(写真中)
    矢印の先がしがみつく幼虫、頭が上向き。

(写真下)
    1令幼虫の顕微鏡写真、体長1ミリ程度。



今日撮影したキカマキリモドキ幼虫は、
照明の熱のせいで、もぞもぞ動き始めてしまった。
「これはまずい!」ということで、
超拡大接写撮影は諦め、
以前撮った顕微鏡写真を使用。

カマキリモドキ類の生態については、
拙著『珍虫の愛虫記』(北宋社)を参照されたい。
本屋さんで見つからない場合
(池袋、淳久堂には置いてます)は、
神田の生物関係の古書店に行かれるといい。
山積みされているそうだ。
新開 孝

オオムラサキ越冬幼虫 2004/01/15
かねてから山地よりのフィールドに行きたいと思っていたが、今日は埼玉県、日高市に出向いてみた。
同行したのは『フォトモホームページ』でお馴染みの糸崎さんとその友人、有竹さん。

小川沿いの大きなエノキの根元では、久々に「オオムラサキ越冬幼虫」を見つけた。オオムラサキは落ち葉の下で次から次へと見つかり、ゴマダラチョウ幼虫より数が圧倒的に多い(写真上、左上の一匹がゴマダラチョウ幼虫)。
山間の日影でしゃがみ込んで撮影していると
かなり冷え込むが、
日射しのあるところへ歩み出ると暖かく、
昨日の寒さ程では無い。

名前のわからない木の梢では、
「ゴマダラカミキリの死骸」があった。
カビの一種による病死であろう(写真中、下)。

水生ものに詳しい有竹さんが、小川を掬って川虫数種を見せてくれた。
小さなミルンヤンマと思われるヤゴや、ヒラタカゲロウの一種の幼虫、トビケラ類幼虫、
そして黒くてブヨブヨの大きなウジムシ型芋虫は
ガガンボ類の幼虫のようだ。
いずれはきちんと川虫を撮影したいと考えているが、近所の空掘川ではどんな川虫が見つかるだろうか?
案外、燈台元暗しで多様な種類のものが生息しているような気がする。




さて、今日は他にも成果につながりそうな掘り出し物
があったのだが、明日に御報告したい。

これまた私にとって久々の対面になるかどうか?
明日にならねば、私にもわからないのである。
新開 孝

エリマキアブ幼虫を再びビデオ撮影 2004/01/14
エリマキアブ(フタスジヒラタアブ)幼虫のビデオ撮影を行った。
すでに捕食シーンなどは撮影済みだが、押さえカットが足りない。襟巻きの状態を説明する絵柄などが欲しい。もちろんこの時期でも捕食していることがあるが、さすがにその頻度は極少ない。
ともかくビデオカメラを担いで林に赴く。
しかし、今日は北風が凄い!
幼虫は細いエノキの枝に止まっているので、
ビュンビュン揺れている。
引いた画角からズームアップすると、幼虫の姿はブレてしまって何がなんだかわからぬ。
昆虫はどうしても接写絡みとなるが、
倍率が上がればその分、風の影響が大きい。
私は辺りを見渡してから、大声で「カット!カット!なんぞな!
これは。仕事にならんぞなもし!」と叫んでいた。
幸いこの強風で散歩する人も少ない。

というわけで写真撮影はほとんど行っていない。
特別な事情がないかぎりビデオ撮影をする場合は、
それに専従するからである。
ビデオでは出来映えのいい1カットがあっても、
その前後カットが構成されていないとまったく使い物にならない。
ビデオでは絵柄の流れ(時間軸)で文脈を作るからだ。
写真であれば1カットに文章を組み合わせての表現ができるが、
動画ではそうはいかない。

今日の撮影風景を紹介しておこう(写真上)。
当サイトではもうお馴染みとなった中里、雑木林の金網柵である。
ここの小さなエノキにはエリマキアブ幼虫が巻き付いている。少し白っぽい個体だ(写真下)。
幼虫の体の色、模様には変異が多くて面白い。
ビデオカメラはキャノンのXL-1、初期タイプ。
実にマニアックなカメラでして、
持ち運びや収納では不便だが、
撮影している時の気分は良いのです。
なんといっても、キャノンのスチールカメラレンズが装着可能であるから、
接写や超望遠に極めて威力を発揮してくれる。
もっとも風景などロングな絵柄はおまけ程度であり、
そこはやはり業務用カメラで撮影しなければならない。

●『最新情報』更新しました!
新開 孝

ホタルガ幼虫、冬を越す 2004/01/13
ホタルガ幼虫は昨年の秋にも紹介したが、その後の様子を見に行ってみた。ハマヒサカキには夥しい食痕が残っているが、秋のときほど簡単には幼虫が見つからない。かなり分散してしまったようだ。それでもようやく1令幼虫を1頭と、2令と思われる幼虫3頭が見つかった(写真上)。
幼虫の居場所は秋のときと同じ葉裏であり、冬越しのための特別な措置をとっているわけではない。したがってゴマダラチョウやコムラサキの幼虫のように『越冬幼虫』と呼ぶにはためらいを感じる。しかし、今日見つけたホタルガ幼虫のうち1頭だけはハマヒサカキから離れたヤツデの葉裏で見つかった。一緒に並んでいるのはウロコアシナガグモだ。(写真中)この場合は食樹を離れているので、幼虫が越冬場所を選んでいると言えるだろうか。だとすれば『越冬幼虫』でもいいかもしれないが、暖かい日にまたハマヒサカキに戻る可能性もあるのでやはりそうはいかないだろうか?
要はホタルガ幼虫の冬越しスタイルが少し曖昧に見えるということなのである。
ホタルガ成虫がこの先姿を現わすのは5月頃だ。そして9月頃にももう一度その子供たちの成虫が出る。


「エリマキアブ幼虫、脱糞して歩く」

中里の林では今日現在、エリマキアブ幼虫が6頭、観察されている。そのうち1頭は注意書きの立て看板にかなり前から静止していた。その幼虫が今日の午後、タール状の糞を残して移動していた。この後はおそらく地上の落ち葉へ移動して蛹になる準備に入ると思われるが、追跡するのはかなり難しいだろう。
新開 孝

クワコの空繭 2004/01/12
ヤマグワの木は中里の林をはじめ空掘川の遊歩道沿い、あちこちの植え込みなどに多数生えている。そして木の大きさに関係なく、冬のこの時期、クワコの空繭が多数見つかる。いくつか空繭を集めてみたのは、繭の中のクワコがどういう顛末を迎えたのか、少しだけ興味があったからだ(写真上)。
こうして並べてみると繭の大きさにもずいぶんばらつきがあることがわかる。どれも営繭(「えいけん」:繭を紡ぐ営みの意)時にそばの葉っぱを土台にして綴り寄せているので、それが枯れ葉となって繭を包んでいる。なかには風雨ですっかり枯れ葉が落ちてしまい裸になった繭もある。
さて、この繭を包む薄皮の絹糸を剥がしたのが、下の写真である(写真中)。
こうして並べたものが、繭の本体である。紡錘形をしたクワコの繭の特徴がよくわかるし、大きさの比較もほんとうはここで始めて正確に把握できる。
繭の片側がぽっかり大きく口を開け、さらに繭の表面に茶褐色の滲みが付いているものが、無事に羽化できた繭だ。ぐるりと外周に多く並べたものがそれである。
一方、赤丸でマークした中央部の4個の繭は、羽化した穴はなく、その替わり小さな丸穴が開いていたり、まったく無垢の状態であったりする。これらは寄生を受けたか、蛹の段階で死んでしまった者達だ。成虫として羽化できずに脱落したのである。
ここに集めた23個の繭のうち、4個が成虫になれず死んだわけで、実に約17%もの死亡率である。
もちろん営繭する以前に幼虫、卵の段階でも数多くの者達が命を落としているのであるから、成虫まで無事に辿り着ける幸運なクワコがいかに少ないかは言うまでもあるまい。
たくさん見つかる空繭も、まさに氷山の一角に過ぎないのであろう。

『オオタカの仕業』

今朝早く、空掘川の遊歩道でドバトの羽毛が散乱していた(写真下)。
これは今までにもよく見て来た、オオタカの食事跡ではないだろうか。
しかし、この中里近辺では珍しい出来事ではある。
所沢郊外のもっと広大な雑木林ではよく出会す光景なのだが。
オオタカにとってドバトは食べ応えがあり、もっとも手に入り易い餌なのだろう。
ドバトはあちこちで人様が餌をやって増やしており、そのドバトをオオタカが喰うのであれば、
オオタカは今や人様が間接的に飼っている、
いやそれが言い過ぎなら、食糧供給に多大の手を貸しているとぐらいは言えるだろう。
この空掘川にはカルガモや冬鳥のオナガガモ、コガモなどが多く、
毎日にように入れ替わり立ち替わり、餌を播く人が絶えない。
まあ、どこにでもある光景であり、大概は「餌をやらないで!」という看板もあったりするが、
むしろ堂々とそれを無視する勢力の方が圧倒的だ。
ペットも野生動物も味噌糞という自然観の欠落や、
食べ物をどうやって人間社会が自然界から収奪しておるのかという根本問題への
配慮の欠如、などなどこの餌やりについては語ればキリが無い。
可愛いカモさんに餌を播くことがドバトへの給餌になっていることも
もちろん皆さん承知である。
新開 孝

スジグロシロチョウの越冬蛹 2004/01/11
うちのマンション裏手には、アブラナ科の一種が群生する草地が狭いながらもある。春ともなれば黄色い花壇となり、いろんな虫がやって来る。そのアブラナの一種は夏、秋にも根生葉を繁らせるので、「モンシロチョウ」や「スジグロシロチョウ」、そしてカメムシの「ナガメ」などが秋遅くまで繁殖を繰り返す。草刈りされてもしばらくすると根生葉が地面から湧いて出て来る。今も青々と葉が繁っていて、七草粥にでも摘めそうだ。
ここはガス工事屋の資材置き場ともなっており、物置き小屋がいくつかある。そこの外壁を見ると「スジグロシロチョウの越冬蛹」が付いている(写真上)。モンシロチョウの蛹もあるが、スジグロの方が多いようだ。
ツマキチョウの蛹!も一つあったが、残念ながらこれは寄生されて体が崩れてしまっている。
ともかくこうして小屋の外壁などであれば、まだ安全かもしれないが、小屋からはみ出た資材などに付いたものは、人為的な移動の際に潰れてしまう可能性が高い。今日も資材が動かされ配置が替わってみると、あらたに二つの蛹が登場してきた。今までは物影になって見えなかったものが、私の目に止まったのだが、これには救出の手を伸ばすことにした。そっと傷つけないように蛹を剥がしていくつか回収したのである。
その蛹を部屋で撮影してみた。チョウの蛹には怪しい魅力を感じて、私は好きでたまらない。
こけしのような蛹には、生命が宿っているのか無いのか、はたまた寝ているのか起きているのか、といったきわどい存在感が漂い、それがいいのだ。
このスジグロシロチョウ蛹も翅のあたりを透かして見ると、薄い緑色のゼリーのようで実に神秘的だ。
スジグロシロチョウの蛹はモンシロチョウの蛹とよく似ているが、写真の矢印で示した突起がモンシロチョウより大きく張り出しているので、簡単に区別できる(写真中)。また蛹を背中から眺めると頭の突起も長いぶん、モンシロチョウよりか、ほっそりした体型だ(写真下)。新開 孝

キヅタ喰う幼虫、再び 2004/01/10
12/20にアップした幼虫は、今年に入って飼育の下、蛹になった。
幼虫は葉を綴って繭部屋とし、その中で蛹化した(写真上)。
この蛹が羽化すれば、謎であった幼虫の正体もいづれ判るだろう。

ところで、中里のキヅタでは同じ種類の幼虫たちがさらに次々と見つかっている。最初に幼虫を見つけたエノキで1匹追加、そしてすぐ側のケヤキで2匹という具合だ。いずれも若い幼虫で(写真中、下)、終令幼虫と比べると体の色や模様はずいぶん違う(12/20の写真が終令幼虫)。狭い範囲で幼虫が見つかっているので、同じ母蛾が産卵したものだろう。
幼虫は普段はキヅタから離れ、木の幹で休んでいることが多い。
特に脱皮をするときは2、3日幹上で休眠する。
キヅタは常緑植物なので、冬でも餌の心配はないわけだ。
しかしこの寒い中、キヅタの葉をもりもり食べて育つ蛾というのも初めて知ったので驚きだ。








左写真:キヅタの茎に静止する幼虫(頭が下向き)。
こうしてキヅタで幼虫が見つかることは少ない。キヅタの葉に夥しい食痕があれば、近くの幹表面を探すと幼虫が見つかることが多い。新開 孝

ダイミョウセセリ幼虫、冬の隠れ家!! 2004/01/09
チョウの越冬の仕方は種類によってほぼ決まっている。今回紹介するセセリチョウ科の「ダイミョウセセリ」は幼虫越冬だ。ダイミョウセセリの幼虫はヤマノイモの葉っぱを食べ、特徴のある巣を造るので、チョウの幼虫のなかでももっとも簡単に見つけることができる部類に入る(拙著『里山 蝶ガイドブック』136ページを参照のこと)。だがしかし、これまで私は冬ごしするダイミョウセセリの幼虫を一度も見たことがなければ、探そうと思ったことさえない。とにかく探すといっても難易度が高過ぎるのだからあきらめるしかなかった。
そこで昨年の秋から、ダイミョウセセリの幼虫巣をいくつかマーキングし、ヤマノイモの地上部が枯れてからも幼虫を追跡できる手立てを打った。これ言うは易いが、そううまくはいかず、幼虫が消え去ったり、病気や寄生のために死んでしまったりで、結局なんとか冬越しに入った幼虫巣を回収できたのはわずかに1例のみとなった。

越冬幼虫が潜む隠れ家は、御覧のように何の特徴もないただの枯れ葉団子である(写真上)。
大きさは長辺で1.5センチ程度。こんなものを大海のごとく積もった落ち葉の中から探し出すことは到底不可能だということが、おわかりいただけるだろう。
この団子をピンセットを使ってそおっと開けていくと、茶色をしたダイミョウセセリ幼虫の頭が見えてくる(写真中)。幼虫は糸を吐いて枯れ葉を綴っているようだが、さほど強固ではない。
幼虫には申し訳ないが、「撮影する間だけだから」と心の中でつぶやきながらさらに開くと、白っぽくなった幼虫の全身が現れた。
幼虫は居心地悪そうに頭をゆっくり動かし始めたのでさっさと撮影してまた閉じてやる。
頭以外の体は秋の頃より少し縮んでいるのがわかった(写真下)。

ヤマノイモの鉢植えでも作り、それを網ですっぽり覆っておき、その中で幼虫を秋から飼えばやはり越冬幼虫を今回のように手に取って見ることも可能であろうとは思う。
手間暇はかかっても確実な方法だが、私は敢えて野外のヤマノイモで冒険してみた。
全く徒労になることも覚悟していただけに、1例とはいえ越冬幼虫を見つけることができて嬉しい。
今後はベランダで過ごしてもらい、蛹になることを期待しよう。
新開 孝

今朝の林、その2 2004/01/08
(今回は2回目のアップです。その1が、前にあります。新)
下新井の雑木林では冬越しの昆虫探索が主な目的であったので、撮影は二の次でいい。そういう日も私の場合はけっこう多い。もちろん撮影機材はできるだけ少なめにおさえるのだが、G5だけであれば全く問題が無い。ただし、G5は接写の点ではあまり高望みできない。今の所キャノンの専用クローズアップレンズを2枚重ねて倍率を稼いでいるが、アカマツの朽ち木内で越冬していた「ハエの一種」(写真上)、このサイズが私のG5では限界である。ハエの体長は8ミリ程度だ。

アカマツの朽ち木では他にも、コクワガタ、コカブトムシ、コガタスズメバチ、そしてこの「クロナガオサムシ」(写真中)が見つかった。

「林はあらゆる人間が出入りする場所なり」

さてさて、林の中ではこんなものまで見つかった(写真下)。
二つ並んだ鳥カゴである。右のカゴの中ではメジロが一羽、せわしなく跳ねている。
餌と水入れもちゃんとある。そして隣のカゴといえば、天井が一本の支え棒で大きく開かれている。
誰が見ても容易に察しがつくだろうが、これはメジロ捕獲のための罠である。
数年前にもこの林では、鳥カゴの横でさえずりの録音テープを流してメジロを捕獲しようとしていた、おっさんに出会ったこともある。
ああ、またやっとるなあと思う反面、それほどまでにメジロを飼い慣らすことが面白いものなのか?という素朴な疑問が湧いた。
たしかにメジロはすぐそばで見ると綺麗な鳥だ。さえずりも可愛い。
これが数十年前の昔なら、とやかく言うこともない普通の趣味でもあったろうが、今や違法行為である。
まあ、法律うんぬん以前の問題です!と野鳥の会やらその他のいろんな方に叱られそうだが。
もっとも今朝一番、この罠の現場に辿り着く前に、林の別の場所でパトカーが珍しくも止まっており、おまわりさんが一人のおっさんを事情聴取しているのを目撃している。
おっさんは自転車に乗っていたようだが、私はあとでメジロ罠を見つけた時、いつもにない不審な場所での事情聴取にピンときたのであった。
もしやあのおっさんが通報された犯人か?もちろんあくまでも状況から見た推測に過ぎない。
全く別件であって、おっさんはすごく善い人だったかもしれない。
ただ、ここの林ではいろいろ怪しい出来事が過去にもずいぶんあって、いかんせん人間とは人目が薄いところでは何をしでかすやらわからない、もっとも厄介な存在だ。
私は泡や人から絞め殺されそうになった恐ろしい経験すらあるのだが、
そんな極端な犯罪めいたことはさすがに希有にしても、
都会近郊の雑木林ともなると、
そこにはいろんな考えを持った人が出入りすることをちゃんと認識しておくべきだろう。
サバイバルゲームに興ずる人達、持て余した粗大ゴミをこっそり捨てに来るにいちゃん、蘭を根こそぎ持ち帰りたいおっさん、おばさん、雪駄はいてオオタカ密猟を狙うあんちゃん(これはほんと凄かった!)、ハチ採りで走り回るおじさん達、エロ本を隠し読む中学生、粗大ゴミを漁るじいちゃん、首吊り自殺を実行した会社員などなど林における人々の目的は様々だ。
そしてかく言う「昆虫を探し歩く私」などは、人様から見ればこれくらい怪しい人物は他にないかもしれぬ。

と、いつになくメジロ罠のことで話題が飛びまくりました。
ここの林もいずれ、『カルチャーなんとか公園』という整備がなされ、そして隣接する大きな国体競技場も完成すれば、嫌でも人目の絶えない、完全なる都会の一部となる予定です。
新開 孝

今朝の林/その1/ナミテントウ越冬集団 2004/01/08
今朝はすっきり晴れて気持ちはいいが、北西の風がかなり強い。所沢市の下新井という雑木林に自転車で向ったのだが、砂埃が吹き荒れる中、車の往来が激しい路肩を走るのは最悪の状況である。せめてゴーグルは付けないとたまりません。しかも私の自転車はギヤ変速機もない、いわゆる「お買い物チャリンコ」である。上り坂では立ち漕ぎの連続で悲鳴を上げたくなるほどだ。砂埃のあまりのひどさを考えると、デジタル一眼レフカメラは使えない。乾燥による静電気も大敵だ。こういうときにはオリンパスの新機種E-1がいいと思う。なんといってもCCDへのゴミ付着問題にきっちり対処しているからである。残念ながらレンズがまだ出揃っていないので仕事に導入できないでいる。そこで今朝はコンパクトデジカメ、キャノンG5の出番だ。フルセットを用意しても収納はデイパックの半分以下のスペースで済む。自転車で遠乗りするときは、このスタイルがいい。と言っても、下新井は自転車で40分程度の所だが。

さて、毎年12月ごろナミテントウが集まって来る電柱に行ってみた(写真上)。さすがにナミテントウは一匹も歩いていないが、電柱に巻き付けてある看板裏が怪しいと思えた。そっとめくってみると、期待通りナミテントウの姿が見えた(写真中、矢印)。さらにゆっくりめくっていくと、50匹ほどの集団が現れた(写真下)。看板側に止まっている数を加えても全体でせいぜい70匹程度であろうか。
この集団では黒地に赤紋が二つある「二紋型」が一番多いが、他には黒地に赤紋が四つある「四紋型」、赤地に黒点を多数もつ「紅型」などが混じっているのがわかる。黒地に赤の紋を12個もつ「斑紋型」が見当たらないが、「斑紋型」はこのあたりでは少ないように思う。昨年の秋、中里の林で「斑紋型」を見たのは2個体だけであった。ナミテントウの斑紋パターンは遺伝的に決まり、上記4タイプがもっとも普通に見られるが、さらに複雑な組みあわせが他にも50種近くあるというから驚く。(斑紋型については、偕成社『テントウムシ観察事典』小田英智/著を参照しました)

ナミテントウの越冬集団としては規模が小さくて寂しいものがあるが、広大な雑木林のなかでここの電柱だけには毎年、多数集まってくるのは興味深い現象だ。実際に集まる個体数はもっと多くて数百から数千以上にのぼると考えられるが、それぞれがあちこちの越冬場所へと分散してしまうようだ。過去にもその場所を林のなかでずいぶん探し回ったのであるが、まったく見つかっていない。
新開 孝

クビキリギスの顔 2004/01/07
中里の雑木林と空掘川の遊歩道に挟まれた金網柵。ちょうどその柵が二重に重なったところに、落ち葉がたんまり溜っていた(写真上、矢印)。
ここには何かいるだろうと思い、葉っぱをめくっていくと「クビキリギス」が潜んでいた(写真中)。
体長は4センチ位で後ろ脚がやたらと長い。その脚を体にぴったり付けて、写真のように伏せているとササか何かの葉っぱのようにも見える。
しかし、体を持ち上げて顔を見てみると御覧のごとく厳つい顔をしている(写真下)。
よく和名を「クビキリギリス」と読み間違える方もいるが、私は「首切り」の「ギスちゃん」と読み変えて覚えた。確かに朱色の大顎に指でも噛まれるとたいへん痛い思いをするし、それが他の虫なら首なんぞ一発でちょん切られてしまいそうだ。名前はそこから来ているのだろうが、この「ギスちゃん」は草食であり、キリギリスのように他の昆虫を捕らえて食べることはしない。
強面のせいで誤解を受ける人も世の中には結構いらっしゃるが、この「クビキリギス」も顔の正面アップの写真だけを見せられると、獰猛な肉食バッタと勘違いしてもおかしくはない。

そう言えば私がカメラを構えて昆虫を撮影していると、横で見ていた子供に「父やん、物凄く恐い顔してる!」と指摘されたことがある。
それは私が極度に慎重かつ熱心に仕事をしているという証しであり、まさかニコニコ、ニタニタしながら撮影するわけにもいかんではないですか。さらには間違っても被写体の昆虫に向って話し掛けたりはできないであろう。どんなに気分が高揚していても、人目があるときの撮影時には恐い顔しているのがもっとも無難です。
もちろん意識しているわけでもないですが。
新開 孝
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