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コムラサキ越冬幼虫 2004/01/06
『昆虫ある記』の3回目(7/5)でコムラサキの成虫が登場している。場所は清瀬市の金山緑地公園だった。
ヤナギの樹液に集まるコムラサキの個体数の多さには驚いたものだが、成虫を撮影しているうちに葉っぱでは幼虫も目にしていた。そういうこともあったので、今日は越冬幼虫を探しに行ってみた。コムラサキは秋の最後の世代の若い幼虫で越冬する。
緑地公園の池では、毎度の事ながら朝から野鳥写真を撮るおじさんカメラマンが数人いらっしゃる。まあ、わたしもすでにオジサンの域であるけれど、あちらはもっと年季の入った方々だ。それは別段どうということもないのだが、まだ大学などは冬休みのはず。まったく何時来ても若い鳥屋さんなり、虫屋さんなりに出あわないのが寂しい。もっとも、目を輝かせ好奇心一杯抱えて自然を探索する青年が皆無なのは、なにもここだけでの話しではない。

私はついつい自分が高校生であったころ、自然への熱い想いに突き動かされ、田畑や河川敷をうろついた当時を思い描いてしまう。すべてが新鮮で驚異に満ちた毎日であったと思うが、一方でどこから何を見ていけばいいのか要領を得ず、空回りするもどかしさもずいぶんと味わったものだ。そう、今程に自然界での発見の喜びに浸れる瞬間は、多くはなかった。
そんな高校生のころの4月のある日。私は小川でヤナギの木を丹念に見ている、60は越した小柄なおじさんに出会った。リュックを背負い、足下はキャラバンシューズ。いかにも博物学おじさんといったところか。私はドキドキしながらも、何をしているのか勇気を出して聞いてみた。すると博物学おじさんは
「私ですか?きょうは、ヤナギの木でコムラサキというチョウの幼虫を探しておるんじゃが。
ちょっと、少ないようですね。今度の土曜日に県立博物館でチョウの飼い方という教室を開きますから、
あなたも学校が終わったら来ませんか?」
おじさんは、にこやかに応対してくれながら、川の水で顔を洗い、手拭いを出した。
私はここぞとばかり、今までのもどかしさの中から必死になって優先順位を付け選び出し、いくつかに絞り込んでから怒濤のごとく質問したのを憶えている。藁にもすがる思い、とはそのときの心境であったろう。しかし、おじさんは嫌な顔ひとつせず、丁寧に一つ一つ答えてくださった。

と、いうような28年も昔の回想をしたのも、わたしのようなおじさんに、くらいついてくるような若いにいちゃん、ねえちゃん(さすがに女の子は元々、度珍品です)の輝く目を見ることがないということに尽きる。たまに野外観察会で元気に質問してくる小学生たちに囲まれると、少しは安心もするのだが、だがやはり、その先の世代、思春期、受験といった波風に揉まれるあたりの子供たちや青年期の学生たちの姿に接することがないことには、危機感すら憶えるのである。
などと、とりとめもないことを思いながら緑地公園のヤナギを見て回ったのだが、なかなかコムラサキの越冬幼虫が見つからない。先日、古利根沼でも空振りしているせいか自信がなくなりかけたころ、コムラサキならぬ「エリマキアブ幼虫」がヤナギで見つかった。
おお!まさにコムラサキ幼虫が見つかるはずの枝又に、エリマキアブ幼虫が鎮座している!そして同じ木の別の枝では、アブラムシを捕食中のものまで見つかったぞなもし!(写真上)
さらに3匹目の幼虫も見つかり、エリマキアブ(フタスジヒラタアブ)幼虫はヤナギにもつく(おそらく親がヤナギに産卵したのであろう)ことが判明。これは新たな収穫であった。

そうこうしてヤナギをさらにしつこく探索していると、携帯電話が胸元で鳴る。
なんと川崎市の方では今し方、モンシロチョウが飛んでいる!というお知らせをいただいた。
こんなに早い初見日は、四国でも滅多にないのでは。

最後に残しておいた有望そうなヤナギに場所替えし、探すこと3分。
いました!コムラサキ越冬幼虫。なんと、30年ぶりに見る姿だ。(写真中、矢印の先、頭が下向き)
(写真下)は頭部を拡大したところ。見事なまでに幼虫の体は枝に溶け込んでいる。体長は6ミリ位か。
枝に鼻先がくっつくくらいにして探さないと、見落としてしまう。幼虫の見つかった枝又は地面から45センチ位の高さだ。

新開 孝

落ち葉の寝床/アブラムシのお産 2004/01/05
寒々としたクヌギ林で、エノキを下り歩いていたゴマダラチョウ幼虫。私が林を訪れるのがもう少しでも遅かったなら、あんな光景に出会うこともなかっただろう。自然界の出来事はまさに一期一会だ。昨日の出来事を振り返り、今日はその幼虫が無事にも私が用意した寝床に落ち着いたかどうかを見に行ってみた。エノキ根元に築いた葉っぱの山を一枚一枚、丁寧にめくっていくと、やがてゴマダラチョウ幼虫が姿を現わした(写真上)。枝にしがみついて窮屈そうな格好だが、確かに昨日見た幼虫である。
このまま無事に春を迎えることができるかどうかは、何とも言い様がない。かさかさに乾燥した落ち葉の様子からは、幼虫にとってかなり厳しい条件ではある。オオムラサキの幼虫ならば絶対、生息不可能だ。それに比べれば、ゴマダラチョウたちは実に逞しいチョウとも言えるのだが。

ニワトコの冬芽のニワトコフクレアブラムシも覗いてみると、お産の最中という場面(写真中)もいくつか見られた。その様子を撮影していると、シジュウカラの群れがすぐ近くにやって来て賑やかになった。なんだか私を恨めしく覗き込んではあちこち枝を跳び歩いているようだ。はて?もしかして、アブラムシをねらっているのだろうか?なんだかそんな気もして、ニワトコの周辺を眺めてみると、やたらと鳥の糞も多い。しかし、それにしてはアブラムシのコロニーはまだ随分、健在であるから、これも何とも言い様がない。シジュウカラの好物なのかどうか。鳥は人の姿に敏感だから、昆虫のようにじっとしていれば、何かを始めてくれる、という具合にもいかないのが辛いところだ。鳥の行動を観察し納得のいく撮影をするには、かなりの策略が必要だ。野鳥写真家の方々にも、またいろいろ個性もあるだろうが、ここぞという生態を撮影するにあたっては、並々ならぬ自然界との知恵比べを講じておるはずだ。

「エリマキアブ幼虫のこと」

当サイトと相互リンクしている糸崎さんの「フォトモホームページ」でも語られていたが、確かに和名、フタスジヒラタアブではなんとも味気がない。勝手に私が命名した「エリマキアブ」を少なくともこの『ある記』では当分採用していくことにした。「やっぱり馴染みのある名前の方がよかろ。ほしたら皆も楽しかろう。」「ほうよ、ほうよ!それがええがなあ。」「エリマキアブなんぞ、新開君、あんたくらいしか思いつかんぞな!そう、おしや。」(ここの会話文は伊予弁ですが、この語調を正確に語れる人は関東にはまずおらん、と思います。)で、そのエリマキアブ幼虫は中里の林にて現在、5匹を継続観察中!!幼虫たちはまだ頑張って襟巻きしておりますぞ!

「ハードディスクを追加する」

今日は、去年の暮れに木曽福島で撮影した標本写真の現像出しとその受け取りで、都内に出ていた。この標本撮影の仕事はずっと銀塩フィルムで行っており、撮影したあとは当然、ラボで現像をしなければならず、その上がりを見るまでは仕事が終了しない。今日はラボも仕事始めということと、現像発注の殺到も重なって、通常なら2時間で仕上がるところが、プラス2時間もの遅れが出ていた。それを見越して、現像待ちの時間を利用して、新宿のパソコンショップや書店を巡ってみた。雑木林ではなくビルからビルへと歩くのもたまには面白い。で、一番のお目当てはハードディスクである。デジタル写真が今や仕事の主流となった私としては、その写真データの扱いについては、保存、整理といった基本作業を侮っていられないのである。
私の作業環境では、写真データはまず外付ハードディスクに取り込むことで対応している。これは作業効率が高いこと、高容量のデータを扱えること、経済性という三つの利点で選んでいる。そしてハードディスクの弱点、クラッシュという最悪の事態を回避するためにもできるだけデータの分散化を心掛けている。つまり高容量に頼り切らず、ハードディスクの台数を多くして、分野別にバックアップを構築しているのである。今日はしかし160Gのハードディスクを新たに購入した。なんとこの容量でも2万円でおつりのある安さについ釣られてしまった!



新開 孝

ゴマダラチョウ幼虫、歩く! 2004/01/04
昨日、「樹上越冬のゴマダラチョウ幼虫が姿を消した」と書き込んだばかりである。
そして「今の時期に幼虫が移動するとは考えにくい」として、幼虫が居なくなった理由を天敵のせいにしてしまった。
ところがである。本日、午前11時22分。
クヌギ林の中にぽつんと生えているエノキの幹で、歩くゴマダラチョウ幼虫を目撃してしまった!
幼虫は地上へ向ってゆっくりながら、頭をふりふり歩いて降りていく(写真上)。
つまり昨日の私の推定は間違っていた可能性も高い。
ここのエノキでも、別のゴマダラチョウ幼虫が樹上越冬していたということであろうか?
しかしこの光景は、とても冬のものとは思えない。
またしても繰り返すが、やはりこの冬はかなり暖冬なのだ。

ゴマダラチョウ幼虫が目指す地上には、残念ながら落ち葉が僅かしかない。クヌギ林は落ち葉かきをした後である(写真中、エノキの根元。矢印のところを幼虫が歩いている)。

そこで私は近場から落ち葉を掻き集め、さらに朽ち木や枝も重しとして、幼虫の潜り込める、ふかふかのベッドを用意した(写真下)。
発見当初、幼虫が歩いていたのは地上から50センチあたりであったので、
私の応急処置もなんとか間に合ったのである。
まあ、余計な御世話ではあるが。

ここまで書き込んできて、ふと別の考えが浮かんだ。
はたしてこの幼虫、ほんとうに樹上越冬していたのであろうか?と。
それは幼虫の体の色が落ち葉と同じ茶色であることが、引っ掛かるからである。
今までに私が見た樹上越冬の幼虫はいずれも、樹肌そっくりの灰褐色であったはずだ。
もしかしたら、ここ近日中に行われた「落ち葉かき」の作業でもって、
前々から落ち葉に降りていたはずの幼虫が撹乱され、日光の下に曝され、
驚いた幼虫が渋々樹上に一時避難していたのではないだろうか?
その幼虫が、日曜日の静かな朝、こうして落ち葉の下に戻ろうとしていたのではないか?
新開 孝

6本脚のジョロウグモ 2004/01/03
まだ網を張ってがんばっているジョロウグモがいた(写真上)。クモにしてみればガンバッテいるつもりはないのであろうが、私たちにはそう見えてしまう。8本あった脚が、6本になっているのも、いろいろ危険な目に遭ったことを物語っている。この巣網がある場所は、秋にはかなりの密度の高さでジョロウグモの巣網が掛かっていた場所でもある。待ち伏せ戦略で主に飛翔昆虫を捕らえるクモとしては、できるかぎり昆虫が多く通過する空間を選んでいるはずだ。つまり、そこには「昆虫道」あるいは「昆虫街道」なるものがあってもいいのではないか。
私はジョロウグモが張り巡らす巣網のような、赤外線センサーを造って、その「昆虫街道」を写真映像で表現したいと、常々考えている。もしセンサーを含むシステムが完成したら、まずは狡をして、ジョロウグモ巣網のそばに仕掛けてみようとも思う。

それでふと思い出したのだが、ある秋の事、林の中のジョロウグモ巣網に、やたらとニホンミツバチが掛かっているのに出会した。そのころ、私はジョロウグモの巣網に掛かる獲物の昆虫を調べ集めていたのだが、これはけっこう面白い結果になりそうで、いずれまとめたいと思っている。
それで「もしや!近くにミツバチの自然巣があるのでは!」とさっそく辺りを探ってみたところ、なんとイヌシデの根元からニホンミツバチのワーカーが出入りしているのが見つかった。所沢市郊外の雑木林で自然巣を見つけたのは初めてだったので嬉しかったこと、ジョロウグモに教えてもらったということ自体、大変勉強になったことなど、印象的な出来事であった。

さて、幾度かアップした「クロスジホソサジヨコバイ」のことだが、昨日から近所で若い幼虫から、熟令幼虫、成虫ともに多数、見つかっている(写真下、幼虫、成虫が多数見つかったヤツデ)。中里の林では幼虫がどんどん減っていたので、去年の暮れ慌てて羽化の撮影を強行したのであったが、どうやらそれも取越し苦労であったようだ。このサジヨコバイはいつ頃産卵し、今後どのような生活史を送るのやらも皆目検討が尽きかねるが、いずれにせよ、冬こそわが季節といわんばかりの繁栄ぶりには驚くばかりだ。
新開 孝

ラクダムシ幼虫 2004/01/02
バックナンバー12/10にアップした、樹上越冬のゴマダラチョウ幼虫が姿を消した。
この時期に移動することはまず無いと思うので、鳥か何か天敵に捕食されたのではないだろうか?

先日アオスジアゲハの蛹を拾ったので、前々から気になっていたタブノキを見に行ってみた。
歩いて3〜4分の場所だが、そこのタブノキ葉っぱにはアオスジアゲハ幼虫の食痕が多数付いている。
残念ながら蛹の死骸が3つ、見つかっただけであった(写真上)。
しかし、このタブノキは葉っぱが非常に密に繁っており、私の探索が届かない箇所の方が多いので、
きっと緑色の美しい蛹が付いていると思いたい。
本来、南方系のアオスジアゲハは、東京でもすっかり普通に見られるチョウになっているが、
時代を遡れば稀なチョウであったはずだ。
温暖化とクスノキ類の植樹が都内に増えたことが、アオスジアゲハの北上につながったのであろう。

元旦にも神社に出向かなかった私だが、今日は近くの八幡神社に立ち寄ってみた。
お賽銭は用意してなく、これはいかんなあ、と思いつつ虫探しにはぬかりがない。
境内のスギの樹皮下で、久々に「ラクダムシ幼虫」(写真中)を見つけることができた。
ラクダムシは、分類学的にはアリジゴクのウスバカゲロウやクサカゲロウといった昆虫のグループに
近いのだが、最近は独立した「ラクダムシ目」として扱う向きもあるようだ。
とにかく異色の昆虫には違い無い。
成虫は写真の幼虫に翅を付けたような格好だ。海岸の松林では個体数も多いようだが、
内陸の林ではあまり見かけることがない。
成虫は5月の中頃に現れるが、私自身は昔、大田区の池上本門寺で1回見たのが最後だ。
特別珍しい虫でもないが、そうちょくちょく出会える虫でもない。
しかしながらこうして冬の間に、様々な樹皮下で越冬する幼虫を見つけることは比較的多い。
私はさっそくこの幼虫を持ち帰り、飼育することにした。
ラクダムシは成虫、幼虫、共に肉食であるから、特に冬場の餌調達には神経を使う。
よーし、超!お宅なブリーダーになってやろうではないか!
といって、すでにオキナワツノトンボ幼虫、ヒメマルゴキブリ、エリマキアブ幼虫、
などなどすでに極みに入っておりますが。

ついでに立ち枯れのボソボソになった樹皮をめくると、
「ミヤマオビオオキノコムシ」が出て来た(写真下)。
もっと条件が良ければ、数十頭の集団になることも珍しく無い。
冬越しに際して、同種が集団を成す現象はナミテントウなどでもよく知られているが、
いったい何故?という疑問に明解な答えはまだ、ないようだ。



新開 孝

元旦のセミ!? 2004/01/01
4歳の子供が、マンションの外廊下で「セミがいるよ!」と私を呼ぶ。「なにーっ!?」と駆け寄ってみると
子供がしゃがみ込んで指さす虫は、もちろんセミではなかった。しかし、そう言われてみれば沖縄にいるイワサキクサゼミに似ているようにも見える。クサゼミは小さいセミで体長は1.5センチ程度。で、子供が見つけたセミモドキの正体は体長1センチに満たない「ミバエ」の一種であった(写真上)。私は強いて自分の子供を昆虫少年に育てようとは考えたこともないが、日々散歩に連れ歩いているのだから嫌でも昆虫を見る目が育まれているようだ。それにしても産まれて初めて見る昆虫に対しての子供の反応ぶりは、横で見ていて面白い。

廊下に転がっていたこのミバエはすでに弱ってはいたが、体に大きな損傷は見当たらない。いったいどうしてでんぐり返っていたのか、これも謎だが、ともかく部屋に持ち帰り撮影したのである。

「ミバエ」は英語でフルーツ・フライと呼ばれることからもわかるように、果実、果菜の害虫になる種類も多い。今回、アップしたミバエの種類はわからず、本種も害虫になるのかどうかもわからない。ただ、ミバエ類は翅にも模様があったりして、その翅を拡げたまま葉上でくるくる回ってダンスを披露してくれるので、出会うと印象深い昆虫である。そして特に複眼は微細な金属光沢を放ち、思わずカメラを向けたくなる(写真下)。
今回も65ミリマクロレンズを使用し、昨日が撮影倍率3倍なら、今日は4倍!で手持ち撮影した。この撮影倍率とは、被写体に対してCCD上(銀塩カメラならフィルム上)に写る像が何倍であるかを意味している。通常、小さな昆虫を撮影する場合、カメラを手持ちで撮影するときの倍率は3倍が上限と、私は決めている。その場合でもレンズ先端を地面や木などに手で支えを得ることができるという条件が必須となる(その撮影ポーズはバックナンバー12/23に出ている森上さんの姿を参照のこと)。
自然界ではいろんな障害物もあったりするので、いつも三脚が使えるわけではなく、手持ちでは厳しい撮影も敢えて三脚無しで行うことも多い。だから日頃から手持ち撮影の修練は大事でもある。もっとも私は不精な方で他のカメラマンに比べると三脚は使わないことが多過ぎて、実のところ反省している。
65ミリマクロレンズは等倍から最大5倍までの拡大接写ができ、長いことこんなレンズが欲しいと登場を首を長くして待っていたレンズだ。まさに昆虫写真家、必須のアイテムなわけで、キャノンがこのようなレンズを出してくれるまでは、オリンパスのシステムに頼るしかなく、35ミリ判ではメイン機材がキャノンである私としては、いつも機材軽減の支障になっていた。実はこのレンズの存在が、デジタル一眼カメラの選択にも大きく関与しており、ニコンのシステムも一応は揃えている私だが、ニコンデジカメに魅力を感じつつも導入できない理由はそこにある。ニコンにも高倍率接写専用レンズを早く出して欲しいものである。新開 孝

クサカゲロウ幼虫とアブラムシ 2003/12/31
大晦日とあっては昆虫写真家といえど、いささか動きが自由にならない。つまりフィールドに出る時間がわずかしかないのである。しかしながら以前にも書き込んだササコナフキツノアブラムシのコロニーを見ておくことだけは、予定に入れておいた。
午後3時30分、アズマネザサの葉裏をめくってみると、アブラムシ、コロニーにクサカゲロウの幼虫が頭を突っ込んでいた(写真上)。まさに捕食の真っ最中である。この写真の撮影倍率は約3倍であるから、アブラムシとクサカゲロウ幼虫の体がいかに小さいか御想像願いたい。撮影はカメラを手持ちで行った。捕食シーンを迫力ある写真にするためには、撮影倍率をさらに9倍近くまで上げる必要があるが、もはやそうなると大型三脚に加えて、被写体を固定するための三脚とア−ム類、照明用電源などと、かなり機材的な準備を要する。
それにしても、ササコナフキツノアブラムシのコロニーはいずれも小規模なものばかりしか見つからず、冬を辛うじて越しているという感触を受ける。なんとか春を迎えれば、そこで一気にコロニーの勢力を取り戻そうという、そういうアブラムシたちの生活シナリオを私は勝手に描いてしまうが、実際のところどうなのだろうか?このクサカゲロウの一種の幼虫にしても、勢力の落ちたアブラムシコロニーを頼ってばかりで、それでちゃんと成長できるのであろうか?

「昆虫観察トラップ」の歩道柵を最後に見て歩くと、羽化したばかりの新鮮な「ヒラタアブの一種」を見つけた(写真中)。この個体はメスであるが、オス、メスの見分け方は複眼の形状ですぐわかる。その仔細についてはいずれわかり易い写真で紹介しよう。百聞は一見に如かず、である。
ヒラタアブ類はこのように晩秋どころか、本格的な冬に入ってからもゆっくり成虫となり、そしてそのまま冬を越すのである。フタスジヒラタアブ(エリマキアブ)然り!である。

さらに歩道柵では「アメイロハエトリ」(写真下)が歩いていた。うーむ、このクモの餌となり得る獲物はなんであろうか?真冬で獲物がいない、などとということは無いのであろう。それなりに昆虫は動いておるのだ。
まあ、しかしこの「年末」、「新年」という行事を口実に、お酒を昼間からいただけることに、私はとても嬉しい気分で過ごせることを告白したい。ああ、平成15年も今日で終わり、です。
新開 孝

ニワトコフクレアブラムシとタマムシ類 2003/12/30
中里の林に出向いたのは午後2時頃。ニワトコの冬芽には多数の「ニワトコフクレアブラムシ」が付いていた(写真上)。成虫、幼虫ともに多くアブラムシだけを見ていると真冬という気がしない。よく鳥に食べられてしまわないものだと、不思議にも思う。
今後の推移に気を付けて見ていくことにしよう。

スギの樹皮をめくってみると、タマムシの仲間が3頭見つかった(写真中)。
一番上の小さいタマムシは体長3.2ミリ程度。「チビタマムシの一種」だ。
下の2頭は「ヒシモンナガタマムシ」。こちらは秋のころ朽ち木から羽化した新成虫が、こうして冬越しをし来年の5月ころから活動を始める。
いずれも小さいながらルーペでよく見ると、金属光沢を帯びた微細な紋様があって綺麗だ。
タマムシ類は夏場の活動している時期にはよく動き回り、見つけてもなかなか撮影させてくれないものが多い。

「せせらぎ公園」の流れでは、シマアメンボがわずかに1頭のみ泳いでいた。
また遊歩道の木柵の上で、クロスジフユエダシャク、メスの死んで間も無いと思われる死体を見つけた。
腹部は丸々と肥えており、産卵することなく死んでしまったようだ。

「アオスジアゲハの蛹を拾う!」

昨日、木曽福島から東京に戻り、もうすぐ武蔵野線、府中本町駅近くという路上でのこと。
信号待ちで止まっていた車中の助手席から、私はクスノキの枝が車道にころがっているのが見えた。
街路樹のクスノキから落ちたものであったが、葉っぱも元気で生々しい。
葉っぱの一部には虫食い痕があり、それはアオスジアゲハ幼虫の仕業であろうと思えた。
まさかアオスジアゲハの越冬蛹でも付いておらんだろうなあ、と思い眺めていると、
なんと!枝の近くの路上に蛹が本当にころがっていたのである!(写真下)
信号が変らないうちにと、車から降りて慌てて拾ったのは言うまでもない。
枝が落下したショックで、蛹は台座の糸ごと葉っぱから振り落とされたようだ。
体は綺麗な緑色であるが、角のような大きな頭部上の突起先端が欠けていた。
枝がちぎれて落ちたのは、どうやら大型トラックなどが街路樹のクスノキ梢に接触したせいと思われる。
突起先端の傷はかなりの重傷のようだ。
そこから体液が溢れだし台座糸を黒く染めてしまった。来年、羽化するのは難しいのではないだろうか。


新開 孝

木曽福島町の昆虫 2003/12/29
27日、28日と標本撮影の仕事に励み、本日は午前中の時間を使って木曽福島町(写真上)のフィールドを歩いてみた。
こうして木曽駒ヶ岳を背にした町全景の写真では、いかにも雪に閉ざされたように見えるが、実際には山道に入っても雪の無いところが多く、通常の靴で歩くことができる。さすがに活動している昆虫はガガンボの一種くらいしか目にしないが、気温は5度くらいだろうか。しかし、樹皮の隙間などで冬越しする昆虫をいくつか見つけることができた。

まずは「ベニモンツノカメムシ」(写真中)。
体長は11ミリ程度。ケヤキの樹皮の隙間に潜り込んでいた。ツノカメムシの仲間には色鮮やかな種類が多く、人気が高い。このケヤキでは他にもベニヒラタムシやキノカワガ、クチナガゾウムシの一種など様々な昆虫が潜んだり、静止していて楽しめた。テンのものと思われる糞もいくつか見ることが出来た。ニホンカモシカの足跡もある。

ニホンミツバチの飼育箱も雪対策であろうか、木で組んだ台の上に置いたり、(写真下)のように木の幹に針金で固定したものをあちこちで見かけた。写真の巣箱はスギか何かの木をくり抜いたものだ。ニホンミツバチの巣箱の形態は、日本各地でその土地柄の素材や作り方、置き場所に至るまで千差万別があって、興味深い。
このように丸太をくり抜くタイプは時間も手間も掛かって大変だと思うが、2年前に和歌山県で見た丸太方式ではさらに極め細かい工夫がなされており、野性ミツバチと付き合うなかでのそれぞれの人々の自然観が垣間見え、面白い。新開 孝

ササコナフキツノアブラムシなど 2003/12/26
昨日、「古利根川」と称したが正確には「古利根沼」が正しいという指摘を受け訂正した。なお、市販されている地図では「古利根川」と出ているものもあることを付け加えておく。その「古利根沼」で見つけたヒカゲチョウの幼虫を昨日はアップできなかったので、今日、紹介しておこう。
アオキの葉裏で友人が見つけた幼虫は、体長13ミリ。3令幼虫であろうか(写真上)。写真では左が頭であるが、顔をべったり臥せるようにしているので、体の特徴が掴みにくい。これは隠蔽効果を上げるのに役立っているだろう。ヒカゲチョウは中里でももっとも普通に見られるジャノメチョウ科のチョウで、この『ある記』のバックナンバーでも取り上げている(10/27)。ジャノメチョウの仲間は地味だが、翅の紋様には何か怪しい雰囲気を感じ、私は好きなチョウである。

さて、中里の林を午前中歩いてみたところ、また新たに「エリマキアブ幼虫」(フタスジヒラタアブの幼虫)をエノキで見つけた。中里の林で目下観察中の幼虫はこれで増えたり減ったりしながら、5匹となった。餌が不足しているせいなのか、幼虫たちに動きが見られるようだ。暖冬のせいでこうして遅くまで幼虫たちが残っているのか、それとも通常の生活サイクルなのか興味深い。

林ではなんとか活動中の昆虫を撮影しようと丹念に探し歩いたところ、コナラの立ち枯れで「ヒラタハネカクシ」が歩いているのが見つかった。体長は5ミリと小さい(写真中)。このときカメラのレンズは等倍までしか撮影できないレンズで、一応はそれで写したあともっと拡大接写できるレンズに交換しているうちに、ハネカクシは姿を消してしまった。したがって今回アップした写真はかなりトリミングしている。

アズマネザサの葉裏では「ササコナフキツノアブラムシ」のコロニーが見つかった(写真下)。「ササにつくコナをフイた、ツノまであるアブラムシ」は白い粉を全身にまぶしているため、どこが虫なのやら何匹いるのやらわかりずらい。近日中にこのアブラムシの仔細な姿を撮影して紹介しようと思う。この長ったらしい名前のアブラムシは、兵隊アブラムシを有することや、ゴイシシジミというシジミチョウの幼虫の餌となることでも、よく知られている。その生態に関わる話は拙著『珍虫の愛虫記』にも書いてあるので参照されたい。

「新開 孝からのお知らせ」

またしても木曽福島に出張撮影で出掛けます。27日に出発して29日には帰京する予定です。したがって27、28日とこの『昆虫ある記』はお休みさせていただきます。さすがに今回の木曽福島は雪の中ですし、もっぱら室内撮影の仕事ですので、前回のようにラッキーな昆虫との出会いは果たせないかもしれませんが
、宿は前回と同じ山荘ですから夜の灯りに何か来てくれる可能性もあります。

12/24に種名が不明としたクサカゲロウは、「アミメクサカゲロウ」という御指摘を受けました。どうもありがとうございました。種名の誤りなども是非、メールで御教示いただけると助かります。

新開 孝

古利根沼を歩く 2003/12/25
柏市の友人と飲んで翌日、その友人の案内で千葉県我孫子市の「古利根沼」を訪れた。ここは利根川から三日月湖状に取り残された水域である(写真上)。ここではトンボがよく調査されており、トンボ相はなかなかのものが期待できるフィールドのようだ。平日だというのにのんびり釣り糸を垂れる人の姿も多い。
川岸に沿っての河岸林は主にシロダモ、シラカシ、アオキなどが優占しており、ムクノキ、エノキ、竹林がそこに混じる。川辺にはヤナギ類やハンノキがぽつぽつ生えている。やたらと多いアオキ、ヤツデの葉裏を覗いてみるが、クロスジホソサジヨコバイは全く見つからなかった。しかし、友人はアオキの葉裏からヒカゲチョウの若い幼虫を見つけた。どうやら、まだササの葉で活動をしていたものが、偶然アオキに乗り移ったようだ。あるいはそこで冬越ししていたのかもしれないが。
シラカシではヤママユの繭殻を見つけ、そのすぐ側の枝には卵が多数付いていた(写真中)。数えてみると24個もあった。
川岸を歩いていくと、ヤナギ類のものと思われる立ち枯れの朽ち木が多く、そこにはコクワガタの産卵マークが多数付いている。さしずめ「コクワガタの高層ビル団地」とでも言えようか。さらに朽ち木の柔らかいところにはコガタスズメバチ女王やヒメマイマイカブリなどが潜り込んでいて、なかなか楽しめる。
このあと柏市の「水辺公園」に移動した。ここは通称「カモ公園」とも言うそうだが大きな池と取水口近くの湿地には木道が布設されている。ヤナギでコムラサキの越冬幼虫を探してみたが、見つからない。有刺鉄線ではモズのはやにえがあった(写真下)。アカスジキンカメムシの終令幼虫だ。近頃は暖かい日も多いので、落ち葉の下から這い出て活動していたのだろう。はやにえの近くではモズのぺリットも一つ拾った。これは持ち帰り、どんな昆虫をモズが食べていたのか後日調べることにしよう。新開 孝

エリマキアブ幼虫の正体! 2003/12/24
昨日、多福寺で見つけたクサカゲロウの一種の全身写真を紹介しておこう(写真上)。翅が巾広いため、こうした平面に静止するとどうしても扇状に広がってしまうようだ。ちなみに細い枝に移してみると翅を屋根型にたたんで落ち着いた。体長は2センチ程度だが、触角は翅の長さよりさらに長い。手元の図鑑を調べてみたがこの虫の名前はわからなかった。本種は成虫越冬であろうと思う。

さて、昨日ついに羽化したエリマキアブ成虫を今日撮影した(写真中、下)。謎であった幼虫の正体がようやく判明したわけである。
幼虫はヒラタアブ類の一種であろうことは判っていたので、『ハナアブの世界』というサイトで成虫の名前調べを試みてみた。
その結果、『ハナアブの世界』に掲載されている標本写真から察するに、エリマキアブの正式和名は「フタスジヒラタアブ」のようである。今回羽化した個体はオスであった。
いずれ標本を専門家の方に見ていただき確認をとるつもりでいるので、後日、報告したい。
今までずっと「エリマキアブ」で通してきたので、この名前が頭にこびりついてしまったが、こうなると私が名付けた「エリマキアブ」という呼称は、もはや使いづらくなった。
もちろん、今後も本種の生活については注目していきたいという思いに、変わりは無い。
新開 孝

多福寺の昆虫観察 2003/12/23
12/15発行の『ナショナルジオグラフィック』12月号、日本版の「日本新発見」というページに、ウスバカゲロウ(アリジコク)の生態写真が掲載されている。繭の見事な断面カットでは蛹の顔や、そして滅多に見られない交尾の貴重なカットまである。このページの写真全てを撮影したのは昆虫写真家、森上信夫さんだ。大学職員というサラリーマン稼業でありながら、日夜、昆虫撮影に励んでいる。根っからの昆虫少年がその夢を未だに追い続けており、そのうち私なども脅かすプロ写真家に脱皮しそうなお方である。いやもうすでに充分脅かされているが。

今日はそんな凄い方と埼玉県入間郡の多福寺の雑木林を歩いてみた。
いきなりシラカシの幹で、私がクサカゲロウの一種を見つける。
地衣類にべったりと止まった格好は、翅を扇状に拡げており、隠蔽効果は高い。しかし、森上さんも「普通、クサカゲロウって翅を屋根型にして静止しますよね」という鋭い指摘の発言。そうなのである。「このクサカゲロウはどうもおかしいね」と言いながら私はとにかく撮影開始。デジタルカメラのプレビュー画面を見て、そこそこに終了すると次は銀塩派の森上さんの番だ。「おっ、これは昆虫撮影ポーズのお手本だ!」すかさず私は森上さんを撮影した(写真上)。銀塩派の森上さんはとても慎重に撮影なさる。懐かしい緊張感がそこには漂う。しかも使っているカメラがオリンパスのOM-4チタンだ!おおっ!
このクサカゲロウ、やはり地衣類の上で撮影したのでは何が何だかわからない写真となった(クサカゲロウにとっては好都合!)。今回は顔のアップ(写真中)のみで、後日、姿がよくわかる写真をあらためて紹介したい。
広い雑木林をゆっくり巡るうちに、フユシャクガの一種のオスが地面に降り立った。「あっ、このオスは地面で吸水しているようですよ!」私が叫ぶ。二人とも地面に腹這いになり、フユシャクガの口元を覗き込み、またもや撮影会。口吻はとても短いが、しきりに湿った地面をなぞるようにして、忙しく伸ばしたり縮めたりしている。
よく見ると、口吻の先の方は二つに裂けており、羽化して間も無い個体ではないか?そんな口吻で水を吸い上げることができるのだろうか?などなど疑問の会話を交わしつつ、撮影の手は休めない。
ひとしきり撮影した後で、種名同定のため採集しようと二人で追い掛け回したのだが、ついに見失ってしまった。
こういう現場を普通の人に見られないで良かった、そう思いながらも、二人はおしゃべり絶えることなく昆虫探索を続ける。
それにしても雑木林はとても静かだ。
コナラの枝ではクリオオアブラムシが集団で産卵をしている(写真下)。
茶色に光っているのが卵だ。いずれ卵の色は黒ずんでくる。孵化するのは来年の春だ。
昼飯を挟んで林を一巡したあと、中里の雑木林に移動した。森上さんも私の『ある記』を毎日、覗かれており、現場に行ってみたいと思われたそうだ。それとエリマキアブ幼虫も一目見たいとのこと。森上さんを林に案内し、マンション裏のキボシカミキリも探してみた。残念ながらキボシカミキリは居なかった。

「エリマキアブ・成虫、ついに羽化する!!」

森上さんをお見送りしたあと、ふと気になっていたエリマキアブ蛹の入った容器を覗き込むと、おお、なんと成虫のヒラタアブがケースの壁に止まっているではないか!
昨夜もしきりと羽化兆候を掴もうとしてじっくり観察したばかりだが、何の変化も見つけられなかった。
ヒラタアブ類の羽化撮影はかなり難易度が高いようだ!羽化したのは本日、昼中であったようだ。
しかしながら謎であったエリマキアブ幼虫の正体は、これで間もなく種名が判明することとなった。
その作業にはしばし時間を要するので、成虫の写真アップも後日になることをご了承願いたい。

新開 孝

クロスジホソサジヨコバイ、再び 2003/12/22
12/13にも触れた「クロスジホソサジヨコバイ」。あれ以来、私は彼らの翅の模様にいくつかの変異があることに気付き、それが性差によるものなのか、それとも個体変異なのかを知りたくて、いつかはきちんと調べてみようと考えていた。
クロスジホソサジヨコバイの背中の帯び模様を詳しく見てみると、和名のごとく「黒筋」タイプのもの(写真上)と、黒筋の外側が赤い「赤黒」タイプのもの(写真中)、そして12/13にアップした写真のごとく帯びがほとんど赤色の「赤筋」タイプ、というように黒と赤の帯びの巾の取り合わせがいろいろなのだ。赤と黒の筋模様のバランスがこのように違うのはどうしてだろう?
ところで、今までに出会った個体の性別を見てきた限りでは、なんとメスばかり。メスはお尻の方に産卵管を持っているので、性別を調べるには体をひっくり返して、お尻のあたりをルーペで見ればいい。それで今日あらためて15頭を捕獲し、性別を調べてみたところ、メス12頭に対して、オスはわずかに3頭であった。オス3頭の模様は「黒筋」、「赤黒」の2タイプがあり、やはり多くのメス同様に個体変異があるようだ。
オスが少ない理由はなんであろうか?今の時期はすでに幼虫の数がかなり減ってきており、どうやら羽化ピーク終盤のようにも見受けるが、今後、オスが増えてくるのだろうか?

(写真下はメスの顔)


「羽化撮影待機、終了!」

今日も慌てて午前中の短い時間、中里の林を歩き、クロスジホソサジヨコバイの採集のみを心掛けうちに戻った。
そう、まだ例の羽化待ちをしていたのだ。
しかし午後3時過ぎ、私はその撮影待ちからようやく解放された。
その羽化した昆虫とはクロスジホソサジヨコバイそのものに他ならない。
これで彼らの羽化に立ち会えたのは3回目である。
彼らのように体が小さく(幼虫の体長は5ミリ以下)しかも葉っぱの裏側に貼付いたように薄っぺらな状況では、撮影のライティングも苦労する。
幼虫は羽化を始めるまでけっこう移動するので、
撮影位置をあらかじめ定めてライティングをがっちり決めるわけにもいかない。
葉っぱの微妙なカーブなどが予想外のアクシデントとなり、いざ羽化が始まってから慌ててストロボの位置をセットし直すことになる。
そうこうするうちに撮影の絶妙なタイミングを失ったりもした。
そもそも幼虫がいつ頃羽化するのか、羽化予定時刻までを算出できるデータがないから、
「羽化がおおよそ近いな」という兆候をつかんだらただひたすら待つしかない。
幼虫の翅芽という所が白く濁ってきたあたりから、待機準備に入るのである。
新開 孝
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