| 『いのちのカプセル まゆ』(ポプラ社) 2008/05/29(その2) | | 本日、6月刊行予定の拙著『いのちのカプセル まゆ』(ポプラ社)の見本が届いた。本書はポプラ社の「ふしぎいっぱい写真絵本」シリーズの12冊目。
もう十数年前になるが、ヤママユガのなかまに夢中になった時期がある。とくにこだわったのがウスタビガ。繭の形が出来上がる過程は何度見ても飽きることがないが、その繭から成虫が顔を出す瞬間をどうしても野外の自然状況下で撮影したかった。飼育すれば室内でも撮影は可能だが、ウスタビガのほんとうの羽化時刻というものを知りたいとこだわったからだ。ずいぶんと時間や経費も掛かってしまったが、その努力の結果、オスとメスの野外羽化の瞬間を撮影できた。撮影を思い立ってから3〜4年目のことだったと思う。 ウスタビガについては月刊誌などで写真の一部を公表したが、いづれは一冊の本としてまとめたいと考えていた。しかしそれは難しいとも思え、急遽ヤママユに変更し、あらためて1年間撮影し直し『ヤママユガ観察事典』(偕成社)が出来上がった。それから10年が経つ。
今回は「まゆ」というテーマで写真絵本を作ってみた。そのなかでウスタビガは大きなウエイトを占める。と同時に、「まゆ」はカイコなど蛾の仲間だけが紡ぐものではなく、いろんな虫たちが作るいろんな形の「まゆ」があることも盛り込んである。 「まゆ」には綺麗なものやへんちくりんなものまでいろいろあるが、「まゆ」を不思議に感じるのは、生き物そのものではないが、かといって無機質な物体にも思えないところだろうか。「まゆ」は芋虫たちが吐き出した命の糸からできでいるからであり、その糸の組成が科学的に微細に解明されていても、神秘的な「まゆ」の魅力は少しも色あせることがない。
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