| | | | 休日の朝、犬の散歩は私の役目となる。 犬は寒さには強いらしい。霜柱を蹴散らし、霜の降りた葉っぱをシャリシャリと音を立てておいしそうに貪る。雑種だからか、逞しい。冷凍サラダはけっこういけるようだが、犬の味覚とは人のそれとはいかにもかけ離れているようだ。 穴掘りも熱心だ。何か獲物の臭いを嗅ぎ付けたのだろうけれど、固く張った草の根を土ごと噛み切らなければならない。前脚のショベルだけではなかなか掘削作業がはかどらないようで、もどかしい犬の気持ちが伝わってくる。根っこを噛み切ってはペッと吐き出す。そしてまたガリガリと前脚ショベルで掘る。キツネのように細長く突き出した顔つきはこういうとき、鼻先を穴深く突っ込むのに適している。興奮しながらフンフンと嗅ぐ様子を見ていると、こちらまで期待感が増す。いったい何が土のなかにあるというのだろう? しかし、田んぼの畦だからあまり大きな穴を掘って欲しくはない。ある程度頑張った様子を見届けてから、可愛そうだけど穴掘りを断念させる。犬は未練がましく何度も何度も穴のところへ戻ろうとするが、私はグイグイと紐を引いて先へと進む。もちろん穴は埋め戻しておく。 じつはうちの犬が熱心に穴掘りして、その様子を辛抱強く眺めてみたことはこれまでにも何度かあるが、一度として獲物を得たことはない。いや一度だけあったのだが、一瞬にして飲み込んでしまって獲物の正体を見届けることができなかった。私としては犬が何を嗅ぎ付けたのか、その正体をどうしても見届けたいのである。
今朝はいかにもカブトムシ幼虫が潜んでいそうな朽ち木に行き当たり(写真上)、そっとめくってみれば、やはり(写真下)。カブトムシ幼虫の糞が一杯、地面に積もっている。どうやらこの場所では少し餌不足に落ち入っているようでもある。こういう条件で育つと、オスであればあまり立派なツノの個体には育たないかもしれない。でもカブトムシであることに変わりはない。小さくたってちゃんと彼女を見つけ出すくらいの根性はあるはずだ。でっかいカブトムシに負けてばかりではない。ふと、夏場の樹液酒場のにぎわいを思い描いてみた。カリカリ、ゴソゴソ。樹液に酔いしれるカブトムシたち。 夏のシーンを思い起こしながらカブトムシ幼虫の撮影をしていると、待ち切れなくなった犬が、クーン、クーンと甘えたような声で先へ行こうよとせがむ。
(写真/リコー Caplio GX100)
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