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モズのはやにえ 2007/12/17(その2)
 うちのクヌギの梢でマイマイカブリ幼虫(写真上),すぐそばのクリ林のクリの梢ではトノサマバッタ(写真中),カエルの一種(写真下)などがモズのはやにえで立てられていた。

 はやにえは暖かい日には多く立てられる。それは獲物をたくさん得ることができるからだろう。
 逆に霜が降りたような寒い日の午前中などは,次々とはやにえを探し出しては食べるモズの姿を見ることができる。

 はやにえはどうして立てるのか,それについての様々な研究例があるが,いくつかの説があって真相はかなり複雑のようだ。

 いづれにせよモズが立てたはやにえは厳冬期の貯蔵餌にもなり,またモズだけでなくこれを他の鳥や昆虫まで利用しているのも面白い。
 はやにえをついばんでいく鳥は,例えばこれまでにヒヨドリ,シジュウカラ,ジョウビタキなどで観察したことがある。
 また昆虫ではクロスズメバチが,クビキリギスやイナゴのメスのはやにえから卵だけを頻繁にかじり取っていくのを撮影したこともある。

 一時期,私がモズの撮影にのめりこんだのもモズの生活を見ていると昆虫のことや他の生き物についてのしがらみを教わることができると感じたからだ。
 私が生まれ育った松山の,それも重信川という河川敷や農耕地にはたいへん濃い密度でモズが棲んでいた。河川敷の草原などは絶好の観察場所だったが(実家のすぐ前)そこも後年しだいに荒れてしまい,立ち入ることも不可能なくらいササやぶとなってしまった。

 人里の自然とは人がつねに働きかけているからこそ,人里固有の自然環境が成立しそこに様々な生物の棲む世界が安定していく。そういう意味では今の私の住む敷地内の林や草原は,そこがいかに様々な生物で成り立つ豊かな自然環境になりうるかどうかは,私の意識しだいなのだ。

 怪我しても,二日酔いであっても,やはりここは頑張って林を草原を手入れせねばならない。その基盤造りの時期が今なのだ。

(写真/E-3  50ミリマクロ+1.4倍テレコン) 
 新開 孝

ツワブキの花のお客さん 2007/12/17(その1)
 今朝は少し晴れ間が出ていたが午後からどんより曇ってたいへん寒くなった。

 日射しがあるうちは庭のツワブキの花にたくさんの虫が訪れていた。ツワブキの花もそろそろ終わりに近いが虫たちにとっては貴重な餌場となっているようだ。

 ウラナミシジミの後ろ翅には眼玉模様があってさらに尻尾のような尾状突起があるので,そこが偽の頭に見えるとも言われる(写真上)。たしかにそんなふうにも見えないこともない。鳥がこのチョウを見つけたとき,思わず頭と勘違いしてはねの後ろをついばんでしまうなら,翅が破れるだけでチョウは逃げることができるという筋書きだ。ほんとうかどうかはよくわからないようだが,そういう想像をしてみたくなるのが我々,人間なのだ。

 コハナバチの仲間もよく来ている。彼女らは成虫越冬するのだろう。春から夏にかけては子育てのために花粉団子をよく持ち帰って行くが,今のコハナバチは蜜を吸うだけだ。花粉を集める必要があるときの彼女達の動きはたいへん目まぐるしいが,今はゆったりと過ごしている。

(写真/E-3  50ミリマクロ+1.4倍テレコン)新開 孝

モンシロチョウ 2007/12/16
 今の時期,ここ宮崎県南部の三股町ではまだモンシロチョウが飛んでいる。庭のツワブキの花を訪れたり,畑のブロッコリーやアブラナに産卵していく姿も見かける。

 さて写真は昨日の朝に撮影したもの。
 道路の脇に生えていた菜っ葉(種類はわからない)が穴ぼこだらけになっていた(写真上)。

 よくみれば黒っぽい小さな糞粒が葉の付け根にころがっている。そっと葉をめくると霜を避けるようにモンシロチョウの幼虫が潜んでいた(写真中)。

 この株には他にも6匹の幼虫が潜んでいたから(写真下)菜っ葉も穴ぼこだらけになるはずだ。

 どの幼虫もほぼ成熟しているのでそのうち蛹になると思うが,気温が低いので成長は遅いようだ。

 モンシロチョウは基本的には蛹で冬越しすることになっているが,日本本土の暖地では幼虫で越冬することもある。沖縄などの暖地では冬でも成虫が飛んでいるそうだ。三股町では成虫で冬越しするものもいるのだろうか?
 
 (写真/E-500 50ミリマクロ+1.4倍テレコン)

 『忘年会』

 昨夜は小学校PTAの忘年会だった。
 会場は三股町役場の近くにある寿司屋さんだったが,偶然にも少し前にこのお店で昼食をとったばかりだ。ちょっと贅沢なランチではあったがたいへん美味しかった。滅多に寿司屋の暖簾をくぐることはないが,さらに驚いたことにこのお店はうちの子の担任の先生の,実家ということだった。
 忘年会には父兄,先生あわせて40名位が出席し,ゲームの催しには皆が子供のごとくはしゃいで楽しかった。こういう雰囲気の忘年会は初めての経験だ。

 二次会はパスしようと帰り支度をしていたら,PTA会長に拉致されてしまった。
二次会はすぐ道路をはさんで隣の小さなおでんスナック(?)だった。これまでカラオケは唄ったことがない私だが,初めてマイクを手にした。ちょっと自分でも不思議だった。唄った曲はイルカの『なごり雪』。

 普段は25度の焼酎をロックで飲んでいるが,昨夜は20度のお湯割。これは飲むペースがちと違ってくる。

 今朝はなまった体をほぐすべく,林のササ刈りに精を出した。
 作業中,切断した枯れササがいきなりはねて目に飛んで来た。あわやというところで反射的に眼をつぶったのだが,まぶたにおもいきり打ち当たってしまった。出血はなかったのでそのまま作業を続けたが,あとで鏡を見てびっくりした。まるでプロボクサーのパンチをくらったごとく派手な傷となっていた。

 しかしうちの雑木林のササ刈り作業もかなりはかどってきている。
 年内に少なくとも全体の3分の2程度は下刈りを終えそうだ。

 
新開 孝

簡易ライティングシステム 2007/12/15(その2)
 フォーサーズカメラで魚眼8ミリの近接撮影や,あるいは2倍以上の高倍率撮影を行なう際にはストロボの使い方にも一工夫が必要だ。
 
 先日から使い始めたばかりのOLYMPUSストロボ/FL-36Rのスレーブモードはこういうときにたいへん重宝する。まずは写真を見ていただければいかに簡単なセッティングであるかがわかる。

 6ミリ厚,幅4センチ,長さ30センチのアルミプレートにカメラとストロボ2台を取り付けるだけ。ストロボの固定には附属のフラッシュスタンドで,カメラはベルボンのクイックシューアダプターを使ってみた。
 ストロボの発光部には市販のディフューザーを被せてある。

 写真では魚眼8ミリをつけているが,このシステムでは35ミリマクロと2倍テレコンの組み合わせで最大に繰り出してもちゃんと光りが回る。
 作例は(その1)に紹介してあるので見ていただきたい。

 FL-36Rはスレーブモード+マニュアルモードにしておき,カメラの内蔵ストロボもマニュアルで最小光量の1/64にセットしておく。内蔵ストロボの光りの影響をできるだけ無くしておかないと,とくに魚眼8ミリで撮影する場合には影響してくる。   
 テスト撮影してみて驚いたのは,晴れた自然光下でしかも逆光条件であってもちゃんとスレーブ機能が働くことだ。内蔵ストロボの発光角度とFL-36Rの受光センサーの角度はまったく相対していないにもかかわらず,うまく発光するのである。FL-36Rのスレーブモードはたいへん優れているようだ。もっとも太陽光がもろに当たると稀にストロボが誤発光することもあるが,その逆の発光できなかったケースは皆無であったから実用上はまったく問題ないと言えるだろう。

 このシステムではストロボのダイヤル回転操作だけで光量調整が出来るから,撮影結果を順次見ながら,2台のFL-36Rの光量比をいろいろ細かく選ぶこともできる。
 マクロフラッシュあるいはツインマクロストロボはOLYMPUSや他社でもいくつか機種があるが,ツインマクロストロボではケーブルが邪魔になることと,でっかいコントローラがカメラのアクセサリーシューに乗っかることになるのでカメラのホールディング時のバランスも悪く,意外と扱いにくい面もあるだろう。
 その点,今回紹介したやり方では全体にスッキリしホールディングも安定している。そして,何といってもストロボを外せば様々な使い方ができて凡庸性が高い。ストロボとカメラの固定用プレートはちょっと工作するだけで良く,カメラザックの隙間に納まる大きさだ。

新開 孝

テスト撮影 2007/12/15(その1)
 (その2)で紹介したライティングシステムで撮影したのがこちら。

 (写真上/中)は魚眼8ミリに2倍テレコンを組み合わせて撮影。レンズは最大に繰り出してある。ツワブキの花に来たウラナミシジミと,ニシキギの実。

 (写真下)は35ミリマクロに2倍テレコンを組み合わせて最大倍率で撮影したもの。 ツワブキの花に来たツマグロキンバエ。

  35ミリマクロと2倍テレコンを組み合せれば,35ミリ判換算で最大4倍の接写が可能だが,テレコンの影響で露出倍数が余計にかかる。レンズの絞りがF22だと内蔵ストロボとディフューザーの組み合わせでは光量的に無理がある。しかしストロボFL36Rを今回のように2灯使うシステムでは光量的にも余裕ができる。

 もっともライティング効果から見ると,今回のシステムで仕上がる写真には日常に体験している視界感覚と違和感がある。ツインマクロというやり方は影のでにくい無難な写真が撮れるけれど,撮影条件などを考慮してから有効に使いたい。
 ストロボの使い方は被写体の条件に適した方法をそのつど選んでいけばいいので,その選択肢を日頃からあれこれ備えておくようにしている。

 (写真上,中/E-3  8ミリ魚眼+2倍テレコン)
 (写真下/E-3   35ミリマクロ+2倍テレコン)
 新開 孝

ナガサキアゲハ幼虫の今日とは 2007/12/14
 いろいろ考えるところもあって,今日行く予定にしていた延岡市への遠征は中止にした。この遠征計画は来年に持ち越しになったのだが,やる以上は2,3日延岡市に滞在する必要があると判断した。日帰りはできるがそれでは仕事の成果は上がらないだろう。
 北九州市の自然写真家,武田晋一さんのように寝泊まりできる車を持っていれば腰も軽くなるのだろうが,私の自家用車フェスティバミニワゴンではどうにもならない。本当はならんこともないが私はできればちゃんとした布団で寝たい。
 
 そこで今日は,午前中いっぱいは山積みになったままの刈りザサを焼却処分する作業に没頭しなんとかそれを昼食までには終えることができた。

 午後から,これまで気になっていた撮影機材の改善工作をすることにした。それで必要な材料の買い出しに出掛ける前に検討していると,あっという間に1時間以上が経っていた。
 工作材料を買い込んでうちに戻ってみれば,飼い犬のチョロが散歩の時間だよと鳴きわめく。はやく行こうよ!とせがんでいる。

 犬の散歩の途中で昨日のナガサキアゲハ幼虫を見て見れば,寒風のなか元気にミカンの葉を食べていた。
 
 (写真/E-3 50ミリマクロ+1.4倍テレコン)新開 孝

ナガサキアゲハの幼虫と蛹 2007/12/13(その3)
 うちの敷地のすぐ下にクリ林がある。傾斜に3段ほどの平地があって上2段にはコナラやクヌギの幼木と大木があって,オトシブミ類の撮影や他にも昆虫観察の場としてよく通う場所だ。
 そして一番下の段がクリ林となっていて,そこに一本だけ小さなミカンの木がぽつんと隅っこに植わっている。

 ミカンの木は薄暗い場所のせいだろう,この夏にはモンキアゲハの幼虫や蛹殻が見つかっていた。今日は気になってちょっと見に行ってみた。するとナガサキアゲハのでっかい終令幼虫が2匹ついていた(写真上)。

 緑色型の蛹もひとつ見つかった(写真中)。まだ蛹化して間もない様子だ。

 他にも蛹の見落としがないかと枝を見ていたら,モズのはやにえになったカエルもいた(写真下)。カエルやトカゲなどはだいだいこうして脇の下やアゴのあたりから刺されていることが多い。

(写真/E−3  50ミリマクロ+1.4倍テレコン)

 
新開 孝

ゴマダラチョウの越冬幼虫 2007/12/13(その2)
 エノキの大木があったので根際の落ち葉をめくってみた。

 一本のエノキの根際から6匹のゴマダラチョウ越冬幼虫が見つかった。しかしその中に一匹だけツノが長く体型もでっぷりした幼虫がいた(写真上/中)。
 ときにこういう5令幼虫で越冬する場合もあるようだが,数は多くない。
 通常,ゴマダラチョウの越冬幼虫はツノが短い4令幼虫(写真下)だ。
 

 さて宮崎県の南部にはオオムラサキが生息していない。分布南限は都城市の青井岳あたりとも言われるが,確実に生息しているのはもっと北へ上がらないといけないようだ。しかし実際にはどうだろうか。オオムラサキの生息分布を調べるには今の時期に越冬幼虫を探すのもいいだろう。

(写真/E-3  50ミリマクロ+1.4倍テレコン)撮影場所/都城市 母智丘公園

 『ウスタビガのメスのその後』

 じつは,昨日撮影したウスタビガのメスが気に掛かり,今朝はふたたび都城市の関之尾滝に行ってみたのである。
 すると午前9時半の段階でまだ繭にぶらさがったままコーリングを続けていたのであった。その状況を見る限り,少なくともこのメスのもとにはまだ一度もオスが訪れていないことを物語っている。
 ウスタビガの発生時期は地方によっても違うが,早いところでは10月末から現れ始め,遅くは12月末まで見られる。しかし発生最盛期はほぼ11月中のようであり,こうして12月の初冬に入ってしまうとオスとメスの出会いも難しくなってくるようだ。新開 孝

アゲハの蛹の色変化 2007/12/13(その1)
 先日,近くの牛舎で見つけたアゲハの蛹を紹介したのはちょうど1週間前のことだった。
 あのときの蛹をきちんとアップで撮影しておこうと思い,犬の散歩の途中で立ち寄ってみたのが一昨日のことである。

 するとなんと,緑色だった蛹が褐色へと色変わりしていた(写真)。
 

 正確に言うと褐色型への移行途中であり,よく見ればまだうっすらと緑色も残っていた。つまり発見日から数日内に色変わりが進行したようなのだ。
 これはしばらく継続観察しておきたいと思い,一昨日の撮影のあと蛹を回収しておいた。もしかして寄生されている可能性もあるからだ。
 そして今日,私の部屋に回収された蛹を眺めてみれば,完全に褐色型となっている。寄生を受けての色変わりとは違うようだ。

 アゲハの蛹の体色は食樹上では緑色,それ以外に移動して蛹になった場合はほとんどが褐色型や黒色型になる場合が多い。
 ユズの木から離れて牛舎のビニールシートで蛹化したものが,褐色型になるのは当然のことだったかもしれない。しかし今回のケースでは一旦は緑色になったのである。蛹の体色が落ち着くまでにこういう過程が必ずあるのかどうか?
 普通種のアゲハだからといって,こういう細かい観察はこれまで抜け落ちていた。
 かなりショックな出来事だった。新開 孝

ウスタビガのメス 2007/12/12(その2)
 雲行きは怪しいが今日は都城市「関尾之滝」に行ってみた(写真上)。周辺の林をロケハンするのが目的だったが,滝や江戸時代に造られた用水路など見て回るだけでも楽しい場所だった。さすがに観光客も多い。

 「関尾之滝」までは車で30分程度だが,三股町から出発して都城盆地を東西に横断する経路となる。この経路はこれまでに高千穂牧場などに出向く際に何度か通ったことがあるが,都城盆地はいかにも広いなあ,とつくづく感じる。
 もっとも盆地を南北に縦断すれば,さらに広大な土地の広がりを目の当たりにすることになるだろう。
 
 さて遊歩道を歩いているうちに,ケヤキが数本植えられた広場に出た。
 ちょっと貧弱なケヤキだったが,なんだか気になって梢を眺めてみた。もう時期は遅いがウスタビガでもいたりするかもしれない,そう感じたからだ。

 するとその直感は見事に的中した。繭にぶら下がったウスタビガのメスがいたのである(写真中)。同じ木の梢では他にも繭が3個ついていた。

 ウスタビガの羽化ピークはだいたい森林の紅葉時期にほぼ重なると言っていいだろう。しかし紅葉が散り始めてから羽化する遅組も確実にいて,過去には長野県,木曾福島で12月末のメスの羽化を見ている。この年は異例の暖冬でスキー場には雪がなかったのだが,,,,,。

 おそらく写真のメスは昨夜あたりに羽化したのだろう。繭にぶら下がったまま,お尻の産卵管を伸ばし,性フェロモンのうを膨らませてコーリングを続けていた(写真下)。

 しかしながら,このコーリングに応じるオスがはたしてこの時期にいるのだろうか?

(写真/E-3  14-54ミリズーム)
(写真中/E-3  50-200ミリズーム)
(写真下/E-3  50ミリマクロ+1.4倍テレコン)

新開 孝

宮崎市のフィールド 2007/12/12
 宮崎市の南部には双石山山系とその東側に長く続く加江田渓谷とがあって,山歩きやキャンピングなど四季折々,自然を求めて訪れる人が多い。

 双石山(ぼろいしやま)は標高509メートル。青島の鬼の洗濯岩と良く似た奇岩(写真上)や巨石が山の特徴となっており,その砂岩層がボロボロと崩れ易いため「ボロいしやま」の名がついたようだ。

 じつはこの双石山では過去にベニツチカメムシの採集記録があり,前々から気になっていた。宮崎県内でのベニツチカメムシ採集記録や産地情報はまだ少ししか集まっていないが,この双石山は今の所もっとも近場のフィールドである。うちからは車で登山口まで1時間程度で行ける。

 そこで昨日は双石山を訪れ,ついでに加江田渓谷(写真中)も巡ってみた。

 まず現場でやるべきことは,ボロボロノキを見つけることが先決。それも1本やそこらではなく,ある程度まとまって生えている場所を突き止めることが肝要だ。ベニツチカメムシの餌はボロボロノキの実であり,本種はこの木があるていどまとまって生えていて,しかも昼なお暗く強風の日でも穏やかな照葉樹林の林内環境が必須となる。その生息環境の様子は先月,佐賀県の既知産地で確かめてきたばかりだ。

 しかし,双石山での探索歩きの結果,それらしき木を一本だけ遠目に見ただけで,加江田渓谷においてもボロボロノキは一本も見つけることができなかった。どうやら探索ルートの選択が良くなかったようだ。はじめてのフィールドであるからこういう無駄歩きも仕方が無い。

 宮崎に移り住んでから私の知らない初めて出会う樹木はたいへん多い。とくに常緑照葉樹の類いである。宮崎が関東とはまったく違う植生なのは当たり前だが,まるで外国に来たような気分になるほど名前のわからない樹に次々と遭遇する。

 加江田渓谷では幸いにも樹木に種名プレートが付いているものがあって,昨日はタニワタリノキを覚えることが出来た(写真下)。タニワタリノキは九州の宮崎県や天草以南,そして屋久島に分布しているまさに暖地の樹だ。夏には淡黄色の球形花序をたくさんつけるのでたいへん目立つ樹のようだ。

 まだ他にも名前の知らない樹木が多数あってフィールドを歩くたびに気になってはいるが,これから少しづつ覚えていくしかない。

 昨日巡った双石山や加江田渓谷の林は主に照葉樹林で占められており,その豊かな植生には驚いた。宮崎県内や鹿児島,あるいは熊本などでもそうだが,ともかく渓流環境を歩くとどこも素晴らしいと感じてきた。水系環境が豊かなのも九州には火山があるおかげだろう。
 もちろん山の植生についてもたしかに宮崎では植林が盛んではあるけど,それ以上に照葉樹林環境が各地にたくさん残されている。
 私の郷里を引き合いに出すのは気が引けるが,愛媛の山地平地林ともその植林率が極めて高く,しかもミカン果樹園の作付け面積が広大であり,照葉樹林や広葉樹林といった林は宮崎に比べればはるかに少ない。移住先の候補から愛媛を早い時点ではずした理由の一つはそこにあるのだが,もちろんこれは私の大雑把な見方の結果だ。愛媛の自然も豊な場所はいくらでもある。
 仕事場,そして家族の生活の場としての移住先をいろいろと絞り込んで行く作業は長く時間が掛かったが,高知,島根,宮崎の3県が最後に残った候補地であった。

(写真上/E-500  魚眼8ミリ) 
(写真中,下/E-500  14-54ミリズーム)

新開 孝

イチモンジセセリ幼虫 2007/12/11(その2)
 犬の散歩で谷津田を歩いているとススキの葉のかじり痕が目についた。
 しかも葉を透かしてみれば幼虫の姿がシルエットになって見えた。

 そっと葉をめくってみれば,イチモンジセセリの若い幼虫がいた。

 さて,私の大学時代の恩師ですでに故人となられた石原保先生の著わした『農業昆虫大要』(養賢堂)を開いてみた。
 『農業昆虫大要』は私が高校生の頃に買い求め(松山市の「丸三」という書店だった)各頁に引いた赤線が懐かしく感じる。各頁に盛り込まれた昆虫の線画がいかにも魅力的で昆虫学に憧れた時期でもあった。

 先生の著述によればイチモンジセセリ幼虫を「ハマクリムシ」(葉捲り虫)または「イネツトムシ」(稲苞虫)と一般には呼ばれているとある。おそらくはイチモンジセセリという種名よりか,そういう呼称のほうが農家の方には通じ易いことと思われる。ときにイネの葉も加害するので害虫となることもある。

(写真/E-3 マクロ50ミリ+1.4倍テレコン)
 
新開 孝

サツマヒサゴゴミムシダマシ(?) 2007/12/11
 昨日,桝安森林公園で見つけたヒサゴゴミムシダマシの一種。

 「ひさご」という名の通り,体型は瓢箪型である。体長は12ミリ程度。
 本種は朽ち木の樹皮裏で見つけたのだが撮影しているうちに歩き始めた。
 ヒサゴゴミムシダマシ属のなかまは何種類かいて,どれもたいへん良く似ていて区別は難しい。しかし保育社の甲虫図鑑で調べてみると,サツマヒサゴゴミムシダマシのように思える。本種は鹿児島県本土と屋久島に分布していることになっている。桝安森林公園は都城市内であり鹿児島県に接しているからここにサツマヒサゴゴミムシダマシが生息していてもおかしくはないはずだ。

 ちなみにゴミムシダマシ科は日本に約360種,世界では16000種もが知られている。

(写真/E-3 35ミリマクロ+2倍テレコン)新開 孝

シャクトリムシ 2007/12/10
 桝安森林公園はうちから車で5分程度の低い山にある。
 車道は杉植林の中を抜けると様々な植栽木と芝地からなる自然公園に入り,そのままさらに上り坂を一気に突き進めば,眺望の良い頂上近くが終点となる。

 ここの公園は人の手が入り過ぎており,あまり昆虫の種類も期待できそうにないが目的を絞り込んで訪れてみればそれなりの成果がある。
 先日,見つけておいた脇道をしばらく歩いてみたら地面にはイノシシのぬた場の跡がやたらと多いことに気付いた。イノシシのフィールドサインはたいへん多いけれど彼らの姿を見たのはまだ一度だけだ。それも瓜坊だった。
 脇道に沿って照葉樹や落葉樹など雑木が生えており少し期待してみたのだが,道は100メートル程度で行き止まりとなり,その先は杉の植栽地であった。

 頂上近くのクヌギを見てみると,ハミスジエダシャク幼虫と思われるシャクトリムシがたいへん多い。
 写真上はよく見ていただければ左上がシャクトリムシであることがわかる。
 写真下は別個体を背中側から撮影したもの。
 ハミスジエダシャク幼虫の体色紋様には個体差が大きく,まるで別種に見える。
 本種はこうして若い幼虫態で冬越しをするが,暖かい日などは冬芽をかじって過ごす。

 「しゃくとりむし」は特別虫に興味がなくても,おそらく誰でもが知っている昆虫だと思う。
 今年の6月にはポプラ社から『どこにいるの?シャクトリムシ』という写真絵本を出版したので,興味のある方は是非それを手に取っていただきたい。図書館にも置いているはずだ。

新開 孝
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