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キイレツチトリモチと昆虫 2007/11/20(その1)
 ドドーンと波が砂浜に打ち寄せる音が聞こえ,潮風が吹き込んでくる海岸林の背丈は低い。そのなかに潜り込んでみれば意外と明るい。こういう環境にキイレツチトリモチは見つかるようだ。

 鹿児島県,喜入町で最初に見つかったことからついた和名がキイレツチトリモチ。喜入町も海岸に近い町であり,鹿児島県下の他の産地もみな海辺よりとなっている。

 花穂には密生した雌花の合間にポツポツと雄花が白い花粉塊を見せており,なおかつ蜜を分泌しているのでアリの仲間がやって来る(写真上)。
 あるいはショウジョウバエ類も来ては蜜を舐める(写真下)。こうした昆虫たちが頻繁に訪れることにより花粉媒介ができるようだ。

 それにしてもふしぎな植物だ。このような海岸林という限定された環境下でしか生きてはいけないのだろう。

 キイレツチトリモチは九州の長崎,宮崎,鹿児島各県と沖縄に分布している。

 新開 孝

迷彩色のトゲナナフシ 2007/11/19
 このところトゲナナフシによく遭遇する(写真上,中)。トゲナナフシは秋に成虫が多いが,いづれ成虫は死に絶え,産み落とされた卵で冬越しする。

 彼ら(彼女ら,というべきか。メスだけで単為生殖する)はどちらかといえば夜行性である。夜になってから森や公園などの木が繁った場所へ出掛ければ,けっこう数多く見つけることができる。しかし昼間は偶然に見つかることが多く,いざ探してみようとしても意外と見つからないものだ。

 さて今朝,庭にいたトゲナナフシの体色にはまるで地位類のような緑色がうっすらと混じっていた(写真下)。これは迷彩色になって隠蔽擬態の効果も増すだろうか。
 トゲナナフシに緑色型の記録はなかったと思われる。ないとは思うが,もし緑色のトゲナナフシがいたらびっくり仰天だ。ちょっと期待してみたくなるがやはりいないだろうなあ〜。

(写真上/E-330 8ミリ魚眼)
(写真中,下/E-500  35ミリマクロ+1.4倍テレコン)

 新開 孝

もっと光りを! 2007/11/18
 11月に入ってからうちの雑木林の下刈りを本格的に始めたことはこれまでにも何度も紹介してきた。

 そのおかげである編集者の方にはたいへん御迷惑をお掛けすることになってしまった。ほんとうなら今頃はある本のための原稿書きを少しづつでも進行しているはずだが,林の下刈りだけでもと手を付けたら,それがどうにも止まらなくなったのである。

 おそらくこのまま連日,下刈りに明け暮れればこの冬の間にわが雑木林のササ薮の駆逐はほぼ完了するものと推測できる。雑木林の再生整備はこれも仕事ではあるけれど,かといって現状の差し迫った仕事のもろもろをほっぽり出してしまっているのも問題ではないかと少しは考え直し,そろそろ原稿書きの準備も平行して始めようと反省している。林の整備については具体的な目処がたてば,それだけでもずいぶんと前進したと思えばいいだろう。

 さて先日,突然わが家にある方が訪れて講演の依頼を受けた。講演の対象は視覚障害者の方達ということだった。訪れた方も視覚障害者の方だったが,私は写真家という立場上,写真を披露しながらお話しをするというこれまでの形式にこだわってしまった。写真家が写真無しでお話をするという形式を今までやったことがなく,ちょっと躊躇してしまった。それで少し冷たい返事になってしまったかな,とあとで後悔してしまった。
 視覚障害者の方達に写真無くしてもお話する工夫はできたはずだ。

 じつは今度書こうとしている本というのは,写真はおまけ程度であり本の内容は9割がた文章となる予定だ。はじめての試みだがやり方はいろいろあるので腰を据えるのに手間取っている。そういう最中のことで今回の講演依頼にも歯切れの悪い解答をしてしまった。

 雑木林はこれまでササ薮に占拠され,林床は暗闇に閉ざされて来た。
 しかし, そこにようやく陽の光りが注ぐようになってきた。ササが刈られてしまうと,いかにも寂しい疎林の風景になってきたが,いずれこの林床にはコナラ,クヌギの幼木をはじめ,さまざまな草本植物が四季折々姿を見せてくれることだろうことを願っている。

 私の仕事場である雑木林をどういうふうに整備していくか,それを考えながら体を動かし,そして仕事の上での表現をいかに工夫するべきか考えるとき,「もっと光りを!」と求めているのは雑木林だけでなく,自分の頭の中でもそう叫んでいることをひしひしと感じる。

(E-330  7-14ミリズーム)

新開 孝

ホコリタケ 2007/11/17(その2)
 最初はトチノキの実と間違えそうになったが,よく見ればホコリタケだった(写真上)。茶色になった老菌だ。

 

 こんなホコリタケを見ると遊んでみたくなる。


 「プヒョ!」(写真中)

 画面に登場の左手と,シャッターボタンを押す右手とのタイミングを合わせるのも意外と難しい。何度も「プヒョ!!」を繰り返していたらホコリタケはふにゃふにゃになってしまった(写真下)。




(写真/E-330 8ミリ魚眼)新開 孝

アゲハチョウ科,3種 2007/11/17
 朝一番でうちの雑木林の手入れをした。フィールドに出掛ける前の1時間ほどだ。刈ったササを処分作業場まで運び上げておいた。

 さて刈ったメダケを拾い集めているうちに,カラスアゲハの蛹がついていることに気付いた(写真上)。雑木林には大きなカラスザンショウの木があるから,そこで育った幼虫がメダケに移動して蛹になったようだ。蛹のついていた場所はメダケの高い位置であり,こうして刈ってみて初めて遭遇できたわけだ。

 一仕事してから鹿児島県の財部町(たからべまち)の渓谷に行ってみた。以前にも紹介したことがある『悠久の森』だ。ここは緩やかな川の流れに沿って遊歩道が整備されている。しばらく歩くうちにキハダの幼木が目に止まり,そこにミヤマカラスアゲハの終令幼虫がデ〜ンと構えていた(写真中)。蛹化も間近だろうと思えるほど成熟している。

 さてうちに戻って再び雑木林の手入れ作業に取り掛かった。ササ刈り作業は果てしなく続くわけだ。
 ふとキンカンの根際を見れば,そこにナガサキアゲハの前蛹が着いていた(写真下)。うちの庭ではただ一本しかないキンカンだが,この木にはモンキアゲハとナガサキアゲハがよく産卵していく。
新開 孝

コササコクゾウムシ 2007/11/15
 体長は3〜4ミリほど。この小さなコクゾウムシの一種はメダケの枯れ茎を処分しているときに,棹の中からパラパラと数匹同時に出て来た。
 和名は漢字表記すると「小笹穀象虫」。枯れたササなどを食害するそうだ。

 枯れたメダケやホテイチクの解体処分を日々行なっているが,一昨日はニホンホホビロコメツキモドキがメス13匹,オス8匹。そして今日はメス21匹,オス16匹が出てきた。枯れササの中から見つかる数種の昆虫のなかで,もっとも個体数が多いのがニホンホホビロコメツキモドキである。
 荒れた雑木林にはまだまだ膨大な量の枯れササがある。そこに潜むニホンホホビロコメツキモドキの生息数はかなりの数になるだろうことは疑いない。

 それにくらべるとコササコクゾウムシなどはかなり数が少ないようだ。

(EOS-5D 65ミリマクロ)新開 孝

ヤママユのメス 2007/11/14(その3)
 午前中,隣町の山之口町のある渓谷に入ってみた。

 ここは照葉樹林が濃く残された場所としてずっと通っているフィールドである。その環境の様子から冬虫夏草のヤンマタケも期待できるためかなりの時間を費やして探してもいる。ミルンヤンマの姿も多いがまだヤンマタケは見つかっていない。

 今朝は薄暗い林道でヤママユのメスを見つけた。もうかなり弱っていて翅をわずかに動かすだけだが,お腹はすでに萎んでいるから,いくらかは産卵を済ませているのだろうと見受ける。

 この時期はウスタビガのシーズンであり,とっくにヤママユのピークは終わっているはずだ。こうして11月のなかばにヤママユを見るのは初めてのことでもあり少し驚いた。

(写真/E330  8ミリ魚眼)

 
新開 孝

ツワブキと蝶,ふたたび 2007/11/14(その2)
 今日の正午頃,庭のツワブキの花にモンシロチョウとキチョウが続けてやって来た。

 昨日は吸蜜することなく去ってしまったが,今日はいづれも吸蜜していった。
 
 それにしてもキチョウの翅を逆光で透かして見ると,翅脈が緑色に見えて新鮮だった。これは光りの当たり具合でそう見えるのだろうか?それとも個体差だろうか?

(E-330  50ミリマクロ)



 新開 孝

ツマグロヒョウモンの威嚇行動 2007/11/14(その1)
 今朝は霧が低く立ちこめてはいたが気温はさほど低くはなかった(写真上)。
うちは田上地区という自治会なのだが,霧のなかにかすかに見える集落の中心からはポツンと一軒だけ離れた丘の上にある。まだ田上地区がどこからどこまでなのかをはっきりとは認識できていないが,子どもの同級生やお友達の御自宅が少しづつわかってきて,自治会の境界線というものもおぼろげに描くことができるようにはなってきた。
 
 さて霧がたちこめているうちにと,いつものチョウのねぐらの場所に行ってみた。タテハモドキやキタテハはいつも通りいたが,今朝はツマグロヒョウモンの姿もあった(写真中)。

 そっと指先を近寄せると,ツマグロヒョウモンはすぐさま反応してサッと前翅をずらした(写真下)。

 午前7時を過ぎているが,夜露をびっしり纏ったツマグロヒョウモンはまだ飛び立てない様子だ。しかしこのように私の指の動きには敏感に反応するところを見るとすでに目覚めてはいたのだろう。

 前翅をずらすと派手な桃色の紋様が見える。じつはツマグロヒョウモンのメスはさらにもう一匹見つかり,同じ行動を確認できた。これは威嚇行動ではないだろうかと私は感じたのだが,しかし前翅に桃色紋様のない雄が果たして同じ行動をするのだろうか?というあらたな疑問が生じた。

 ツマグロヒョウモンのオスのねぐらをどうしても見つけねば。

(写真/E-500 35ミリマクロ+1.4倍テレコン)
 
 新開 孝

ツワブキと蝶 2007/11/13
 昨日紹介したツワブキの花には様々な昆虫が来ていた。

 ハナアブやツヤハナバチの仲間などは動きもせわしくほとんどじっとしていない。しかしツマグロヒョウモンやベニシジミは一つの花でゆっくりと吸蜜しており撮影も簡単にできる。他にはモンシロチョウ,スジグロシロチョウ,キチョウなどが飛来したが,この3種のなかで蜜を吸っていったのはスジグロシロチョウだけだった。

 昆虫がツワブキの花に来ていたのは正午前後だけであとはパタリと姿が途絶えてしまった。

(E-330  50ミリマクロ)新開 孝

ラブ&ピース 2007/11/12(その2)
 うちのトイレの窓からは畑が見下ろせる。眺めが良いということは外からも中が丸見えになるということだ。もっとも庭に入ればの話だが,風呂場も同じ事情となっている。まるで露天風呂みたいなものだ。

 畑には先月なかばまでモロコシが植わっていたがそれも収穫され,農家の方がときおりやってきてはトラクターで耕している姿を見ていた。畑は牛の牧草用でありこんどはいつ頃種を蒔くのだろうか?年に何回くらい牧草を収穫できるのだろうか?などと気に留めながらなんとなく外の風景を見てきた。

 またこうして土だけになるとタヌキやノウサギの足跡なども多くなって,それを眺めては想像に耽る楽しみもある。

 さて先日のこと,写真のごとく二つ並んだハートマークができていた。

 まさか意図的にとは思えないが,わが家から一番良く見える場所にあり,他の誰もこの絵図を眺めることはないだろう。

 まあなんであれ,トラクターを使ったこのようなシャレた技があるとは,
これまで知らなかった。

 
(写真/E-330  50-200ミリズーム)新開 孝

ツワブキとセグロアシナガバチ 2007/11/12(その1)
 先日,セグロアシナガバチの新女王たちの集団を紹介したばかりだが,今日の夕方巣を見に行ってみると,もぬけの殻となっていた(写真上)。

 新女王たちが巣を去ったのはもしや昨日あたりだったのかもしれない。冷たい北風が一日中吹き荒れたから,そのせいでもっと寒さを凌げる場所へと離散したと考えることができる。

 日々寒さを感じるようになったこの頃,庭のツワブキが花を咲かせ始めた(写真下)。草木が冬支度に入るなか明るい花を咲かせるツワブキはなんとも有り難い存在に思える。
 九州の海岸には,葉っぱが大きく花茎も1メートル近くになるオオツワブキという品種があるそうだ。海岸の崖に群生するオオツワブキなるものを一度は見に行ってみたくなった。

(E-330  マクロ50ミリ)新開 孝

雑木林の再生作業つづく 2007/11/11
 今日も朝から雑木林のササ刈り作業を行なった。
 先日刈って積んであったササの枝を落とし,竿置場に移動。その作業を終えて作業場を空けておいてから,再び雑木林のなかから刈った大量のササを運び上げた。

 つまりある程度の量のササを刈ると,一旦それを庭の作業場へと運び上げ,そこで枝落としやその枝の焼却をおこなう。刈るだけなら作業効率はかなり上がるが,置き場所に限界があるから適度に刈ったササを解体処分する作業をはさむ必要がある。

 朝から冷たい北風が強く吹き,力仕事をするにはちょうど良かった。普段なら今の時期でも汗だくになる作業量だ。

 さてジャングルのごとく密生したササを刈っていると,かなりの割合で立ち枯れた株が混じっている。全体の1割かあるいはそれ以上かもしれない。立ち枯れはその腐朽程度にもよるがグイッとねじれば根元からポキンと簡単に折れる。あるいはすでにでんぐり返っている株も多いが,この横倒しになった枯れ株が複雑に絡み合い,ササ刈り作業にとってはたいへん厄介だ。だからこの立ち枯れササを前もって間引いておく方が良いようだ。

 しかし刈っても刈ってもまさに無尽蔵に生えてる様な気がするササの圧倒的な量を前にして,今の作業をコツコツとこの先続けることには限界が見えている。どこかで一気に処分する方策もとる必要があるだろう。
 そのためには2トントラックをレンタルして清掃工場や廃棄処分場など公的施設に持ち込むしかない。

 ササを原料にする炭窯でも作ればいいかもしれないが,それを始めたらもういきなり老後の境地だ。炭焼きは今の写真家稼業を引退した後の老後の楽しみにとは思っているが,まだ少し早い。炭焼きして酒代だけでも稼げるかな,と思ったりする。

 新開 孝

ねぐらの2匹(タテハモドキ) 2007/11/10
 先月からキタテハやタテハモドキのねぐらを何回も紹介してきた。

 狭い範囲の草むらに毎日のようにねぐらを定めるわけだから,そのねぐらポイントにも自ずとお気に入りねぐらがいくつか絞られてくる。
 そうなってくるといづれは一箇所のねぐらに複数個体が鉢合わせすることも稀だろうけどあるだろうと予測できた。そしてその予測通り,今朝は2匹のタテハモドキが寄り添うようにしてねぐらに止まっているのを見つけた(写真上)。

 タテハモドキには集合してねぐらに入るという習性はもともと無いものと思う。したがってこの2匹は偶然にも同じねぐらについたのだろう。このポイントはキタテハもよくねぐらとして使っており,葉っぱの広さも2匹が並ぶだけの余裕があった。したがって今後,キタテハとタテハモドキが一緒のねぐらにつくという可能性もあり得るわけだ。

 さすがに11月,霜月だ。朝晩は冷える。畑には低い霧がたちこめる日も多い(写真中)。
 今朝は4匹のタテハモドキのねぐらの姿を見たがどの個体の翅もびっしり霜に覆われていた(写真下)。

(写真上,中/EOSキッスデジタルN  15ミリ水平魚眼)
(写真下/EOSキッスデジタルN   シグマ50ミリマクロ)

新開 孝
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