| 三股町に住むようになって、驚いたことの一つが田んぼをスイー、スイーと泳ぐコガタノゲンゴロウの存在だった。その泳ぐ姿が、またじつにカッコいい!
5月から6月にかけて、早苗が風になびく水田の泥底から、キョトンとしたような表情でコガタノゲンゴロウがぼくを見上げている。 陸の畦道から覗き込む、ぼく。そして田んぼの水底から眺めているコガタノゲンゴロウ。両者を隔てているのは分厚い空気層と薄いわずかな水の層。
水生昆虫は水の中でこそ命が輝く。
水の中の生活。これは昆虫写真のなかでもかなり技術を要する分野ではなかろうか。
水環境をいかに表現するか。
こういうとき「ライブ感」という言葉が、とても重要な気がする。
そう「ライブ感」だ。
水生昆虫の撮影というと、どうしても水槽内での撮影が多くなる。しかし、当然、そこでは「ライブ感」とは程遠くなりがちだ。昆虫の姿だけでなく、その昆虫にまとわりつく水中世界をどう切り取ってくるか、そこがカメラマンの腕の見せ所ともなる。
コガタノゲンゴロウとの出会いで、ぼくも少しは水生昆虫に向き合ってみたいと思うようになった。
だからといって、売れ線の水生昆虫写真を水槽セットで大量生産する気はしない。すれば売れることもよく知っているが、ひねくれた昆虫写真家も一人くらい、居てもいいではないか。
(写真/E-3 ズイコーデジタル50ミリマクロ)
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