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阿蘇のダイコクコガネ 2007/09/12
 今日は、熊本県阿蘇町を訪れてみた。目的はダイコクコガネだ。

 日本最大級の糞虫、ダイコクコガネは、昔から憧れの虫だった。

 愛媛大学農学部の昆虫学研究室に私が在学していたころ、博多出身の後輩がいた。あだ名は「うまかっちゃん」。
 その彼はとことん虫屋だったけれど、ある日、ダイコクコガネがづらりと並んだ標本箱を持って研究室に現れた。

 「どこで採ったん!すごいねえ!!こんなにおるん!?」と私。

  うまかっちゃん曰く、「阿蘇山に行けば、いくらでもおるとですよ。」

 広大な草原で放牧を行う畜産業は、今の日本ではきわめて稀になってしまった。ところがダイコクコガネは、そういう放牧地でないと生きていけない。

 阿蘇山系では大規模な放牧地が、あちこちでさかんである。したがって、ダイコクコガネもたくさん生息している日本有数の場所となっている。

 2年前、小学館の図鑑の仕事で阿蘇山は何度も訪れた。そのおかげでダイコクコガネの生態が少しずつ見えてきた。

 さっそくめぼしい牛糞を探し、掘ってみれば、糞球3個とオス、メスのペアが出て来た(写真上)。
 糞球(写真中)をそっと割ってみれば、すでに産卵してあった。ただし、3個の糞球のうち、卵が入っていたのは2個だけ。
新開 孝

悠久の森 2007/09/11(その4)
 鹿児島県、財部町の大川原渓谷の奥には、「悠久の森」と称して森林浴のコースが整備されている。

 ここの遊歩道に沿っては、流れのゆるかな渓流があってとても気持ちがいい環境だ(写真上)。

 財部町は霧島山の南側のふもとであり、霧島山の伏流水があちこちで湧いており、どこへ行っても清流やあるいは滝も多い(写真中)。

 その遊歩道を1キロばかり奥まで歩いてみれば、気になっていたキノコバエ科の一種の成虫がいた(写真下)。

 

 新開 孝

変形菌類 2007/09/11(その3)
 大川原渓谷の倒木上で、奇妙な変形菌類を見つけた(写真上)。

 どうやらムラサキホコリ目の類いのようだが、よくは判らない。
 まるで人工頭髪のコマーシャルを見ているようだが、ほんとうに不思議な生き物だ。

 同じ倒木上には、クッキーのような(マメホコリ?)菌体も群れていた(写真下)。新開 孝

マムシに会う 2007/09/11(その2)
 今日はお隣、鹿児島県は財部町(たからべちょう)の大川原渓谷へ行ってみた。

 6月末頃にこの渓谷で見つけた奇虫、キノコバエ科の一種の様子を観察してみようというのが目的だった。ずっと気になっていたが、仕事の関係でここへ通う時間がなかった。

 車道から渓谷に降りる途中、崖の砂地にマムシがとぐろを巻いているのに気付いた(写真上)。こういう雨の当たらない砂地には点々とアリジコクのすり鉢状の巣穴があるが、まさにその巣穴の間にとぐろを巻いていたのである。

 マムシは体長30センチほどの幼蛇であったが、枝で突いてみるとしっかり攻撃態勢を構えた(写真下)。枝が短いので、これはちょっとヤバイのではないか、そう思ったが、せっかちな私はとりあえず突いてみたのである。

 マムシがこういう場所にいるのは、おおよそ察しが付く。こういう崖の棚は、野ネズミの活動場所でもある。崖には空洞がいっぱいあって、野ネズミの隠れ家ともなる。数年前に東京都、町田市のある谷戸で、崖のそばにロボットカメラを設置したことがあるが、毎晩のようにアカネズミがフィルムに写っていたのを思い出した。

 それと以前、マムシを飼ったことがあるという方から、興味深い話を聞いた。マムシにカエルを与えても見向きもせず食べないというのであった。その方の説明では、「マムシは温血動物しか食べんのよ。」ということだった。そういえば、マムシの捕食シーンの写真を私は見た事が無い。

 (写真/E-330  50-200ミリズーム FL-50ストロボ使用)
 新開 孝

カジカガエル 2007/09/11(その1)
 大川原渓谷では、岩の絶壁にしがみつくようにしていたカジカガエルもいた(写真上)。なるほど回りの環境にうまく溶け込んでいる。

 カジカガエルはけっこう大柄なカエルだ。私の手のひらに乗せれば、なんとかギリギリ納まるくらいの大きさがある。

 で、このカジカガエルをじっくりと眺めてみれば、後ろ脚や前脚などの模様が、どことなくマムシの体模様に似ているのであった(写真中)。

 カジカガエルが、その手足をマムシに似せる理由はなんだろう?

 もしかしたら、それは蛇を恐れる鳥に対してのメッセージではないだろうか?

 では、カジカガエルの天敵は何だろうか?

 絶壁からダイビングして岩場に着地したカジカガエルは、カメラを構える私を嫌って、もう一度大きく青黒い淵へとダイビングして姿を消した。

新開 孝

コナラシギゾウムシの産卵 2007/09/10(その2)
 今日は、ようやくコナラシギゾウムシの産卵シーンを写真撮影できた。

 同じシーンをビデオ撮影しなければならないときには、まずビデオ撮影を優先している。最悪、写真撮影ができないときには、ビデオ映像から写真を抜き出すという手段があり得るからだ。もっとも私が使っている民生ハイビジョンカメラのHDV-FX1から、どれだけ使用に耐える画質が取り出せるのかは、まだ試したことはない。

 先日、コナラシギゾウムシの産卵シーンをビデオ撮影できたことは書いたが、そのときは産卵姿勢がちょうど良いアングルで撮影できた。産卵管をドングリの中に差し込んだ様子や、卵がニュルリと管の中を移動していく様子まで克明に見えた。

 今日はしかし、産卵のタイミングで、真横から撮影することになった。
 卵が産卵管内を移動する瞬間などは、やはり動画でないとほとんど表現できない。

 昆虫の生態を表現するには、ビデオ映像のほうが向いていると思うが、かといって写真で表現する面白さは、また別世界だ。ビデオと写真の仕事を両立させるのは、私のように一人でやっている身の上では無理である。
 ビデオの仕事は素材映像を特注で受けるのが、精一杯である。

(EOS-5D  100ミリマクロ)
新開 孝

獲れたて芋虫 2007/09/10(その1)
 ホウセンカの花はまだいっぱい咲いているが、もう盛りを過ぎたといえる。

 そのホウセンカを眺めているうちに、でっかい糞があちこちで見つかった。糞をたどっていくと、セスジスズメの幼虫が今朝だけで5匹。嫁さんが騒ぐので、全部回収して飼うことにした。

 ケースに収穫して仕事部屋に戻ろうとしたら、上がり口の下の地面をウロウロしている芋虫もいた。こちらはホウセンカから離れて、蛹になる場所を探しているようだ。体色が淡くなっており、蛹化が間近いことを物語っている。この芋虫はさっそく土入りのケースに移しておいた。セスジスズメの幼虫は土中で蛹になるからだ。

 今年の6月に福音館書店から出した『虫のこどもたち』には、4ページにセスジスズメ幼虫の写真が、65ページには蛹の写真が出ている。
 幼虫の写真は小さいのでちょっと残念だが、いづれは、この幼虫をでっかく扱うような本も作ってみたいと思っている。

 多くの方が綺麗だと感じる昆虫は、これまでにほとんどの種類がさまざまな本や雑誌などで紹介されてきている(国内に限っての話)。つまり美麗種と呼ばれる昆虫は、どれもこれも有名になって、ああ、どこかで見たな、ということになる。
 
 私は日本の昆虫のなかで、これまで見落とされてきた美麗種を発掘してみたいと常々思って来た。美麗種と言い切ると、なんだか面白くないかもしれないが、怪しい美しさ、とでも表現すればいいだろうか。
 そんな構想で本を作るためにも、ここ九州の地は自分にとってはいかにも神秘的で新鮮な気分で仕事を続けることができる。

(写真/E-500 35ミリマクロ+1.4倍テレコン)
 新開 孝

キボシアシナガバチの離散 2007/09/09(その2)
 庭のケヤキに営巣していたキボシアシナガバチが、おそらく今朝になって離散していた。

 昨日の夕方までは、新女王、オス蜂ともに多数が巣に群れていたのだが、今日の昼になって見てみれば、巣は空き家になっていた(写真上)。

 このキボシアシナガバチの巣は、台風4号の風雨を凌ぎ、そして5号の強風では枝が折れるという災難に遭いながらも、かろうじて生き延びてきた。

 まさに薄皮一枚で枝に宙ぶらりんの格好になりながらも、子育ては着々と進んでいた。風が吹けばクルクル巣は回転し、幼虫も成虫もよくもまあ、目を回さないで済むものだと心配したくなるほどに、不安定な巣であった。

 空っぽになった巣をいじっていると、一旦は離散した新女王が戻ってきた。しかし、巣に近づきながらも一度も着地することはなく、やがて去っていった。

 しばらくして近くの植え込みの梢で身を潜めていた新女王の一匹を見つけた(写真中)。
 その梢の上の方では、セグロアシナガバチたちが数匹群れていた(写真下)。セグロアシナガバチの方は、巣をスズメバチに襲われて逃げてきたようだ。

(写真/E-500 14-54ミリズーム/35ミリマクロ+1.4倍テレコン)

 新開 孝

ナナホシテントウ 2007/09/09(その1)
 クヌギの小木にはクリオオアブラムシがついている。今日、久しぶりに見たナナホシテントウはそのアブラムシがお目当てだったようだ。

 クヌギ小木は庭の水道栓の横に植わってあり、朝の散水時にはかならずそばを通る。葉表に静止していたナナホシテントウは、特別目立っていた。

 ナナホシテントウは暑い夏が苦手だ。真夏は草むらのススキの根際などに潜り込んで夏眠しているので、ほとんどその姿を見かけなくなる。

 しかし、秋の気配にナナホシテントウは敏感なようだ。
 昨夜は窓を開けたままで寝ていると寒かったくらいだ。
 ナナホシテントウの活動もこれから盛んになってくる。

(写真/E-500  50ミリマクロ)新開 孝

最寄り駅とは 2007/09/08(その2)
 東京の清瀬市のマンションに住んでいたころの最寄り駅は、西武池袋線の秋津駅と、JR武蔵野線の新秋津駅であった。新秋津駅までは徒歩で12分ほどで、秋津駅なら7分であった。

 さて、宮崎での今の住居の最寄り駅は、JR日豊本線の餅原駅(もちばる)である。今朝の犬の散歩では初めて、この餅原駅をコースに組み込んでみた。

 駅までの道はほぼ一本道で、それも畑の中を行く農道だから、家並みの続く清瀬の道のりとは、はなはだ距離感が違う。おそらく秋津駅までの道のりに比べれば、2倍とは言わないまでも1.6倍くらい遠いのだろう。
 こういうとき、きちんとなんらかの方法で計測すればいいものだろうが、数字をはじきだすことが嫌いな私は、距離感というものにまず頼る癖がある。

 最寄り駅があると言っても、この餅原駅を利用することは極めて稀であって、これまでこの駅で乗り降りしたのは、一度きりしかない。もちろん無人駅だ。

 餅原駅から宮崎までの所要時間は1時間だ。この電車は旅を楽しむにはもってこいの路線だと思う。ただし、餅原駅から宮崎空港まで電車は乗り入れてはいるが、本数が少なく、航空便との接続も悪い。うちから宮崎空港まで行くには、むしろ車の方が早くて便利だ。空港周辺の駐車場も、一日500円〜300円という金額だから、長期出張でなければ車の方が経済的だろう。

 単線のこのJR日豊本線は、草刈り作業を絶え間なく施していないと、すぐにも草むらに埋もれてしまいそうだ。

 散歩からうちに戻ってみると、庭にヒガンバナが咲いていた。

新開 孝

キュウリと昆虫 2007/09/08(その1)
 昨日、キュウリに来る虫として、「キウリハムシ」と書いてしまったが、これは「ウリハムシ」が正しい。したがって、昨日のアップ記事は訂正しました。

 昆虫の和名については、私の勘違いが時々あって困る。
 例えば、「オンブバッタ」は「オンブニバッタ」とか、「トビサルハムシ」を「サルトビサスケハムシ」とか、いい加減なことを言ってしまう。「キウリハムシ」も「キュウリにつくハムシ」だから「キウリハムシ」となってしまった。ともかく、間違いは間違いだから、言い訳は無用。

 さて、そのウリハムシは、今日も花びらをかじりに来ていた(写真上)。
 キュウリの害虫ではあるけれど、さして大害を与えるでもなく、彼らの顔つきを見ていれば、なんとも可愛いではないか。

 さらに、ノコギリカメムシの1令幼虫も見つかった。とても小さい(写真中)。

 キュウリの花(写真下)は、それでも次々と開いていく。

新開 孝

ウラギンシジミの幼虫 2007/09/07(その4)
 あちこちでクズの花が目立つようになった。

 できるだけ楽して幼虫を見つけようと、花を手に取り易い場所だけに限定して探してみた。すると2箇所目で最初に覗きこんだ花に幼虫がついていた。すぐそばにもう一匹いた(写真上)。
 
 さっそく指先でそっと幼虫の体に触れてみたら、お尻にある突起から毛柱のようなものがピュルルル、とすばやく飛び出しては引っ込んだ(写真中)。何度見ても不思議な光景だ。

 ウラギンシジミ幼虫の場合、二本のつのような突起は、じつはお尻のほうに生えている。通常の感覚だと、つのは頭に生えているでしょ、と思う。
 
 例えば写真下のクロコノマチョウ幼虫(うしろから頭部を見たところ)のように、
ふつうなら、つのは頭に生えている。しかし、ふつうなら、という感覚は昆虫の世界では通用しない。へんちくりんな昆虫はいくらでもいる。

 クロコノマチョウ幼虫の方は、ウラギンシジミ幼虫の見つかったクズ群落のすぐ近くにあったジュズダマの葉っぱで見つけた。新開 孝

虫えい 2007/09/07(その3)
 イスノキの梢に多数の「虫えい」(虫こぶ)がついていた(写真上)。

 それはまるで、果実がたわわに実っているかのように見える。長径は小さいものでも3センチ、大きなものでは9センチ近くある(写真中)。

 手に取ってみるとかなり堅いが、重量感はなく、ともかく触ってみれば果実とはまったく違うことがよくわかる。

 そこで、この虫えいを割り開いてみれば、中は厚い壁に閉ざされた空洞となっており、多数の小さなアブラムシが潜んでいた。

 アブラムシの名前は、モンゼンイスアブラムシ。このアブラムシの生活はとても複雑なので省略するが、5月上旬ころにふ化したアブラムシの幼虫が小枝の先端部の芽に寄生して虫えいを作る。虫えいは5月の末ころには最大の大きさまで成長するという。

 虫えいの名称は、「イスノキエダチャイロオオタマフシ」。

(撮影場所/都城市山之口町)新開 孝

ノコギリカメムシ 2007/09/07(その2)
 うちの畑のキュウリの収穫の成績は良く、しかもおいしかった。しかし、さすがに台風や病気のせいで、2株あったキュウリもくたびれておしまいとなった。

 そこで、キュウリの種子を蒔いてみたら、アッと言う間に人の背丈よりか高く伸びた。今は花を次々と咲かせている。

 キュウリの花にはいろいろと昆虫もやって来るので、ときおり覗いてみている。一番よく目立つのはウリハムシで、花粉や花びらをかじったりしている。葉っぱも喰う。まあ、ウリハムシのせいでキュウリの収穫ができなくなる訳でもないので、大目に見ている。

 さて今日は、キュウリの茎で汁を吸う、ノコギリカメムシの幼虫(写真上、中)と成虫を見つけた。ノコギリカメムシは他にもスイカなど、ウリ科の植物で育つ。幼虫の数は4匹ほど。

 腹部に並んだ突起の形状から、ノコギリカメムシという和名がついたようだ。

(写真/E-500  35ミリマクロ+1.4倍テレコン)新開 孝
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