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ファウストハマキチョッキリ 2006/12/09
 中里の雑木林で落ち葉をかきわけてみた。

落ち葉の下に潜り込んで冬越しする昆虫を探すときは、まず大きな樹木を選んで、その根際から見ていくといい。
今回は一本のイヌシデを選んで軽く落ち葉をかき寄せると、すぐにファウストハマキチョッキリが姿を現した。

 このチョッキリムシは、体長5ミリほどしかないので、うっかり見落としてしまいそうだ。しかし、よく見ると体の背面は赤紫色に輝いており、
小さな宝物を見つけたときのような、ちょっと得をしたような気分となる。
 
(写真上/E−500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)
(写真中、下/EOSキッスデジタルN  MP−E65ミリマクロ)


『ハードディスクは短命な消耗品』

先日、120G容量の外付けHDDが立て続けに2台、パソコンで認識できなくなったと書き込んだ。元データとそのバックアップ先のHDDが2台とも共倒れとなり、バックアップ先としてHDDを使ったことがいかに愚かであったことかを痛感したしだい。
 
 デジタル撮影に移行してからこれまでの4年間、データ保存のほとんどをハードディスクで賄ってきた。ハードディスクは大量の写真データを保管、管理する上では、相当の省スペース化が実現できてきわめて便利この上ないのであるが、その裏腹にいつなんどきデータが壊れてしまうかもしれぬという危険性を孕んでいる。ハードディスクのそうした危険性を今まで知らなかったわけではないが、便利さにかまけて油断していた。

来年の宮崎移転を控えて、その引越しにも備えて、今は過去の写真データをDVDメディアに焼き込む作業を連日、続けている。少しでも効率良く作業をこなすために、3台のパソコンがフル稼働している。私の所有するマックのパソコンに内臓されたドライブではDVD−Rしか焼けず、しかも書き込み速度が遅いので、作業はなかなか終わりそうにない。古いデータほどマックの環境下にあるので厄介だ。
その反面、新規に導入したウィンドウズのマシンは、扱えるメディアの種類も多い上に書き込み速度も速く、非常に効率がいい。マックについてはOSのクラシック環境上でしか動かないソフトもあるし、いろいろ作業をする上ではメリットよりかデメリットの方が上回る一方なので、いずれパソコン環境の全てをウィンドウズに移行するつもりでいる。

今回のデータ損失の教訓としては、
 
@ 大容量のHDDは、使うべからず!
A バックアップは必ず、DVD、CDなど多岐のメディアにこまめに行うこと!
B バックアップとしてプリントアウトも活用せよ!
C データ保管をパソコンに頼りきるな!

 危険の分散ということからも、大容量HDDは危険である。万が一、HDDに不具合が生じてデータの復旧を業者に依頼するにしても、その場合の料金は容量が大きいほど高くつくことも知っておいたほうがいいだろう。データ損失の共倒れの犠牲を少しでも減らす手立てとしても、せいぜい60GB程度のポータブルHDDに保存するくらいのほうが、安全ではある。
 写真データをプリントアウトしておくのも、ひとつのバックアップ手段として有効だといえる。これは数多く実行するには無理があるが、限定したデータ数で行うには実効性が高い。例えば印刷入稿用のデータとして、高精細なプリントだとデータよりも良い結果を得ることができるからである。

 デジタル写真は便利だし今後、社会的趨勢からしても、もうアナログのフィルムに逆戻りすることはあり得ないだろうと、思う。
だがしかし、行く先を見失った感が強いデジタル社会の迷走は、その加速度をいよいよ高めて、人々の真に求める理想の姿とはかけ離れていく一方だという気もする。新開 孝

クロスジフユエダシャクのオス 2006/12/05(その1)
 このところ雑木林で昼間からたくさん舞っているのが、クロスジフユエダシャクのオスである。ときおりシジュウカラやヒヨドリのフライキャッチでパチンと音がしては、食べられてしまう。しかし、鳥に食べられても食べられても、クロスジフユエダシャクの飛び交う姿は減らない。どこから湧き出すのやら、と思わせるほどに数が多い。

 林の地面に近いところを、ころがるように舞い続けているが、今日はエノキの葉上で休んでいるオスに出会えた。

(E-330  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

ヒメヤママユの卵探し 2006/12/05(その2)
 先日の1日に、ヒメヤママユの卵を探しに出掛けてみた。
 場所は所沢市航空公園の東にある雑木林である。地名は下新井。

 ヒメヤママユの卵はヤママユ科のなかでも、見つけるのがもっとも容易で、昔には撮影もずいぶんしたし、飼育もよく行なった。
 しかし、卵の写真は銀塩ポジ写真しかなく、デジタルデータがあったほうが何かと便利なのと、久しぶりに越冬卵を見ておきたくなった。

 1時間ほど探し歩いてみた結果、以前に比べると数がずいぶんと少ないことに気付いた。ヒメヤママユの産卵場所は、樹木の幹表面が多く、しかも目線の高さから地上高30センチあたりの低い場所でよく見つかる。そして卵のついている方角はだいたい幹の北側である。
 樹種は様々だが、大きなヤマザクラを見て回るのが効率が良いようだ。

 卵は多くて5個ほどが並べて産み付けられていることもあるが、1個か2個並びで見つかることが多い(写真上は1個)。
 またエナガやシジュウカラの仕業と思われるが、ヒメヤママユの卵は鳥に食べられてしまうことも多く、幹に卵の食べ殻だけが残っているものもよく見受ける(写真下)。

(EOSキッスデジタルN   シグマ50ミリマクロ)新開 孝

梢の探し物、そして「お知らせ」 2006/11/30(その2)
 さいたま市、秋が瀬公園に出向いた理由は、クヌギカメムシの様子を見ることであったがついでに探しておきたいものがあった。

 その一つは、ミドリシジミの越冬卵である。
 秋が瀬公園は、ミドリシジミを多産することで有名だが、じっさい幼虫も成虫もよく見かける。落ち葉の下では蛹も見つかる。しかし、これまで越冬卵を探してみたことがなかった。そこでクヌギカメムシのついでに少しばかりハンノキの梢をのぞいてみたら、すぐに卵は見つかった(写真上、中)。

 さて、もう一つの探し物は、はやにえ、である。モズのはやにえに、どんな獲物が立てられたか、これを見るのは秋、冬のフィールド巡りの楽しみのひとつ。
 こちらはミドリシジミ越冬卵を探しているうちに、偶然、見つかった(写真下)。
 ハンノキの枯れ枝に、のど元からグサリと串刺しにされたカナヘビは、まだ死後硬直がきておらず、触ってみるととても柔らかい。こんな大物の獲物をはやにえに立てるということは、モズの食欲は左程でもなかったということか。

(E-330   マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)
(写真中のみ、E0S5D MP-E65ミリマクロ)


 『「昆虫ある記」毎日更新の休止のお知らせ』

 少し以前にもお知らせしましたが、「昆虫ある記」の日々更新は、今日をもって一旦、休止とします。

 来月、つまり明日からは不定期更新となります。これまでの3年間、この「昆虫ある記」を熱心に訪問していただいた方々には、深くお礼を申し上げます。

 不定期更新とは、一週間に一度くらいの更新になるかと思います。ときたま、チェックしていただければ幸いです。

 そこで、この3年間を振り返って、少し気に掛かっていた事についてですが、一つは2004年の暮れから2005年の2月にかけての朝日新聞連載記事のことです。この連載記事の写真は、地域によっては写真がカラーでないとの声をいただき、その写真を当「昆虫ある記」で紹介するとしました。しかし、8回連載のうち2回分のみのアップしかできず、たいへん恐縮しております。
 やはり日々のフィールドある記を綴っていると、その日その日の情報を優先してしまいます。毎日の小さな観察記録をホットとなうちにお伝えしたい、という本来の筋を通してしまいました。また、もう一つの理由としては、朝日新聞社から写真原版がまだ返却されていないことです。連載に使った写真は、デジタルデータとポジ写真の混成でした。返却を請求することも、思い出してはすぐ忘れてしまう、ということをずっと繰り返してきました。これはまさに怠慢としか言いようがありません。もうそろそろ、しっかり請求しなければいけませんね。

 さて、細かいことですが、機材のお話で、「ハクバのデジタルスレーブストロボ」が調子悪くなりメーカーで調べてもらっていることをお伝えしました。
 その結果の連絡が、ちょうど今日になって届きました。メーカー側からの説明によると、故障した詳しい原因は結局、判明しなかったそうです。ただし、デジタルスレーブストロボの電気回路は、アルカリ電池用に設計されており、水素ニッケル電池やリチウム電池を使用すれば回路に負担がかかることが考えられるとのことです。そう言えば私は水素ニッケル電池を使ってきました。何といっても電池の持ちがアルカリよりか格段にいいからで、しかも充電式のほうが経済的です。チャージも速いです。
 アルカリ電池を使うとなると、実用的には問題が生じてきますが、使えないわけではありません。私の場合は使用頻度が高過ぎるのでしょう。

 スレーブストロボと言えば、サンパックから今月末に新製品が出ているはずです。このストロボには私も期待していますが、仕様を見る限り水素ニッケル電池も使えるはずです。

 
 日々更新が、一週間おきの更新となりますが、来年4月からは宮崎県三股町での新「昆虫ある記」を始める予定です。是非、御期待ください。


  なお、新開への連絡は、yamakamasu@shinkai.info  まで。

                            新開 孝
 
新開 孝

クヌギカメムシふたたび 2006/11/30(その1)
 「日本原色カメムシ図鑑」によると、クヌギカメムシは東日本において、ヘラクヌギカメムシやサジクヌギカメムシの2種よりかはるかに少ない、と記述がある。
専門家の方からも直接、クヌギカメムシは関東では少ないと聞いている。

 さて、私の住んでいる清瀬市や近所の所沢市などの雑木林では、たしかにクヌギカメムシは数が少なく、ヘラクヌギカメムシのほうが圧倒的に多いことを実感している。
 ところが以前から気になっていたのだが、さいたま市の秋が瀬公園では、毎春、多数のクヌギカメムシであろう幼虫を観察している。もしかしたら秋が瀬公園では、クヌギカメムシが多いのではないだろうか?
 幼虫の姿だけでクヌギカメムシと断定するにはいささか不安もあったから、ほんとうにクヌギカメムシが多いのかどうか見極めるために、秋が瀬公園にまで出掛けて、今日は成虫を観察してみることにしてみた。

 結論から言えば、まず秋が瀬公園では、多数のクヌギカメムシを見る事が出来た。そのほとんどがメスであり、クヌギの幹で産卵しているものが多かった(写真)。オスは1匹だけいた。しかも私が今日見た範囲では、全てがクヌギカメムシであり、ヘラクヌギカメムシは全くいなかったのである。
 これで秋が瀬公園にクヌギカメムシが多産することは間違いない、と言い切れる。

 そこでクヌギカメムシとヘラクヌギカメムシの2種の間にはどういう関係があるのだろうか?とあらためて疑問が湧く。
 生態も形態も非常に酷似した両種は、本来その生息域をすみわけているのではないか?そんな仮説が成り立つような気がする。
 両種の詳しい分布データがあれば、そういう仮説の検証もできるのだろう。

(E-330  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)

 クヌギカメムシという昆虫はいかにもマイナーであり、これまで昆虫写真家の大御所の方々にはほとんど相手にされてこなかったようだ。いやクヌギカメムシに限らず、カメムシというグループそのものが、マイナーとされているのだ。
 昆虫と言えば、チョウ、カブトムシ、クワガタムシ、トンボ、カミキリムシ、セミ、ホタル、バッタあたりが世間で認知されたグループであろう。それ以外の昆虫となると、世間でも少数派の虫好きの方でさえ、「雑虫」という扱いをする。そういうなかで、商売にはならない「雑虫」をよく相手にする昆虫写真家というのは、私くらいかもしれない。
 私はしかし、マイナーであるとか、世間に知名度が高く人気があるからとか、そういう尺度で、撮影対象の昆虫を選ぶ事はあまりない。「雑虫」か否かは、判断基準とならない。もちろん全く意識しないかといえば、それは嘘になる。当たり前だが、やはり売れる写真はきちんとおさえなければ、この仕事は続かない。

 ただし、昆虫写真家としての私なりの姿勢はある。
 それはさまざまな昆虫の魅力を自分なりに発見できたとき、その発見の感動に素直に従う、という姿勢である。これはじつに簡単なことのようだが、実践するにはそれなりの心構えと、戦略めいたやりくりが必要とされる。世間の仕事の需要にきっちり応えていくのと同時に、写真家という肩書きには各々の個性が強く要求もされるのである。
 
 新開 孝

クヌギカメムシとヘラクヌギカメムシ 2006/11/29
 先日も紹介したが、クヌギカメムシ科の4種のうち、清瀬市など武蔵野の平地で普通に見られるのがクヌギカメムシとヘラクヌギカメムシの2種類。

 クヌギカメムシは近年数が減っているが、今日は近くの雑木林で一匹のメスを見つけた(写真上)。同じ林で、ヘラクヌギカメムシの方はメスを4匹見ているから、やはりクヌギカメムシは少ないようだ。

 さて、ヘラクヌギカメムシ(左)とクヌギカメムシ(右)を並べて撮影してみた。両種の区別は難しいとこれまで何度も書いてきた。しかし今日の個体は並べてみるとかなり形態の違いがわかる。もちろん個体差もあるから、いつもこうしてうまく見分けられるとは限らないだろうが、この写真を見て両種の特徴をしっかりと覚えておけば参考になるだろう。
 ちなみにクヌギカメムシのメスの腹部気門が見える写真(写真下)も載せておいた。腹部をきっちりと観察しておけば、さらに確実な区別ができる。

(E-500   マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

昆虫3種 2006/11/28
 厚い雲がどんよりと空を覆った、暗い一日だったが、少しだけ中里の雑木林を歩いてみた。

 遊歩道のロープ柵の杭に止まっていたのは、ウスミドリナミシャク(写真上)で、とても新鮮な個体。
 前脚をL字型に構えているところがなんとも奇妙に思える。本種の幼虫はイヌマキにつき、年に6回程度発生するらしい。図鑑によれば蛹越冬、とあるので、今頃の成虫はこれから産卵するのだろうか?

 暗い林内をクロスジフユエダシャクの雄(写真中)が低く舞っていた。とうとう冬尺蛾の登場する季節になった。今日見た雄は2匹。

 カラスウリの葉うらでは、まだトホシテントウの幼虫が葉っぱをかじっている(写真下)。画面右の幼虫は、あらかじめ描いたミシン線の円周内を食べているところ。画面左の幼虫は脱皮を終えて休んでいる。

(EOSキッスデジタルN   シグマ50ミリマクロ)新開 孝

一年前の今日とは 2006/11/27
 今日は朝から雨ということもあったが、室内での仕事に追われて、ほとんど外出できなかった。外を歩かず、カメラをまったく手にしない一日、というのも久しぶりかもしれない。

 さて、そこで去年の同月同日の「昆虫ある記」を覗いてみた。するとアカスジキンカメムシ成虫の写真がアップされていた。この時期に成虫がいるということは、本来なら幼虫で越冬するはずが、年内に羽化してしまった、ということである。これはちょっとした珍事であるが、このところアカスジキンカメムシの生態にも少しばかり異変?が生じつつあるのかもしれない。
 今年の秋の中里では、アカスジキンカメムシの幼虫を見かける機会が去年よりかはるかに少ない。

 このところ仕事の内容がいろいろと錯綜してきており、私の脳内スケジュールも混乱しているようだ。とくに今日は、先日から依頼を受けていた写真データを送り忘れていて、慌ててファイル送信をすることになった。あってはならないことだったが、先方の担当者の方が早めに気付いてくれて助かった。新開 孝

ヘラクヌギカメムシの産卵 2006/11/26
 今日の写真は、数日前の23日に撮影したもの。

 コナラの樹皮がめくれた所へお尻を差し入れ、産卵していたのはヘラクヌギカメムシのメスである(写真上、中)。
 本種とよく似たクヌギカメムシとの区別点である、「腹部気門部分」が見えており、そこが黒く縁どりされていないことから、ヘラクヌギカメムシと断定できる。
 別の場所の樹皮裏に産卵されていた卵塊も見つけた(写真下)。

 近年、クヌギカメムシのほうは数が減っているということだが、たしかに清瀬や所沢周辺などでも、その傾向を強く感じる。その理由たるやまったく想像すらできないが、雑木林のクヌギやコナラと密接な関係をもって生きるクヌギカメムシ類が衰退していくのは、寂しい限りである。

 さて、クヌギカメムシ科にはヘラクヌギカメムシとクヌギカメムシ、サジクヌギカメムシ、そしてナシカメムシの4種がいる。なかでもUrostylis属の、ヘラ、クヌギ、サジの3種はきわめてよく似ており、形態から識別するにも慎重を要する。
 
 しかし、この3種のそれぞれの産卵習性を見ていると、かなり種ごとに違いがあるようで、私はその産卵習性の違いという観点からも3種を区別できるのではないだろうか、と感じている。
 サジクヌギは武蔵野周辺ではほとんど生息していないようなので(標高が高い場所か、あるいは少し北の地方に見られる)、とりあえずは過去の観察経験に頼るしかないが、クヌギ、ヘラの2種は平野部の雑木林で混生しているので、この冬はもう一度、その産卵習性の違いの観察を積み重ねておきたい、と思っている。

(E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

チャエダシャク、メス現れる 2006/11/25
 今朝はチャエダシャクのメスを見ることができた(写真上)。

 チャエダシャクのメスはエゴノキの幹にいた。非常に新鮮な翅をしているので、昨夜あたり羽化したのであろうか。
 一昨日、昨日と紹介してきたオスに比べると、メスの触角は単調な針状である(写真中)。蛾類では一般的にオスの触角が大きくて複雑な形状をしており、メスは小さく単純な形であることが多い。
 
 コナラの樹ではオス2匹が並んで止まっていた(写真下)。

 チャエダシャクは夜行性であり、交尾や産卵行動を観察するためには夜の雑木林を歩く必要がある。昼間は樹木の幹に貼付いてじっとしているだけであり、またおそらく餌もとらないのではないかと思われる。

(E-500   マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)

 ※新開への連絡はこちらまで→yamakamasu@shinkai.info


 昨日は午後から都内の出版社に出向いて打ち合わせがあった。池袋に出てから山手線の五反田駅で、東急池上線に乗り換えることになる。出版社は大田区内にあって他の出版社からみると少し辺鄙な場所にある。ここまで書くとどこの出版社か、わかる人にはすぐわかってしまうだろう。
 池上線に乗るのも10数年ぶりではないだろうか。20数年前には池上駅が最寄り駅の大田区、池上という街に住んでいたから、この池上線にはよく乗ったものだ。池上に住んでいたのは4〜5年の間だったが、その当時の木造アパートはもう無いだろう。
 さて、約束の時刻には余裕をもって出たので、五反田で昼食をとることにした。一度だけしか入ったことがない豚カツ屋だが、好印象だったのでそこに行く事にした。ところがその店が無い!普段は滅多に外食をしないから、こういう機会での店選びはささやかな楽しみとなるが、お気に入りのめし屋が無くなることが一番辛い。
 そこですぐ目についた吉野家に入った。すると座ったカウンター横には、西欧人のサラリーマン風の男性が二人、おしゃべりをしながらじつにゆったりと食事をしていた。もちろん英語で会話しているわけだが、スプーンを使っておるのだろうと思いながらちらりと見やれば、割り箸を上手に使っている。
 そしておもむろに一人の男性が「すみません、お茶ください!」と湯呑みをテーブルに置いた。
 もしも私が誰かとゆっくり昼食をとるなら、最初から吉野家を選びはしないだろう。しかしながら、この外人男性たちに限らず、ひところの牛丼専門店からメニューがいくらか多彩になった吉野家の客層は、もう誰もが気付いているようにあきらかに変わってきている。若い女性が連れ立ってカウンターに並び、あるいは家族連れというケースもよく見かけるようになった。

 だがしかし、私はこだわりたい。吉野家では背中を丸くし、一人孤独に丼をかき込むのが、一番似合っているのだ。
 新開 孝

ヤマザクラの紅葉 2006/11/24(その1)
 今朝の中里の林では、ヤマザクラの落ち葉に見とれて、ついつい足を止めてしまった。

 ここの林のヤマザクラはどれも高木となっていて、その梢の様子は普段は見落としがちである。すっかり紅葉していることに気付くのは、こうして地上に辿り着いた落ち葉に出会う瞬間となってしまう。
 次々と降ってくる紅葉は、まだ人の足に踏まれることも蹴散らされることもなく、地面で思い思いの着地姿勢をとっている。その姿が面白いと思えた。

 同じ雑木林でも、クヌギやコナラの紅葉はあまり芳しくない。黄色や赤色に染まることがないまま、茶褐色となってしまうからだ。コナラやクヌギの色鮮やかな落ち葉も撮影してみたい、そう思うがそれはなかなか叶わないようだ。

(写真上、下/E-330 8ミリ魚眼、写真中/E-500 マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

チャエダシャク、ふたたび 2006/11/24(その2)
 昨日に引き続き、今朝もまたチャエダシャクの雄を見つけた。

 コナラとエノキの幹でそれぞれ一匹づつ雄を見つけたが、まだメスは見ていない。さて、彼らが樹の幹に貼付くように静止していると、幹の紋様に体全体が溶け込んで、それは見事な隠蔽擬態となっている。

 で、その姿勢のときに彼らの顔を見届けようとしても無駄な事がすぐにわかる。つまり彼らは、まず大きな触角を翅の下に折りたたみ、なおかつ脚を思い切りベタリと伸ばし切った姿勢をとっている。まさに伏せの姿勢をとっているのである。なおかつ毛深い彼らは、その房状の睫毛でもって大きな複眼を隠してしまうのである(写真上)。

 そこで、小枝を用いて伏せている彼を少しばかりくすぐってみれば、おもむろに脚をふんばり顔を持ち上げてくれる(写真中)。そのときに大きなウサギのような触角もピョンと拡げるのであった(写真下)。

(E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)新開 孝

チャエダシャク 2006/11/23
 ウワミズザクラの幹に貼付くように静止していたのは、チャエダシャク(写真上)。

 本種は晩秋から冬にかけて、成虫が現れる。幼虫は5月ころの雑木林で、各種の樹で見つかる茶色のシャクトリムシだ。だから「茶枝尺」なのか?しかしときに茶畑で害虫となることもあるそうだから、むしろ「茶につく枝尺」ということかもしれない。

 さて、秋も深まって寒い季節になってから登場する昆虫は、とくに蛾のなかまに多い。チャエダシャク成虫の寿命はどの程度かわからないが、やがて産卵して冬越しは卵でおこなう。どういう場所にどんな卵を産みつけるのか、私はまだ見たことがない。

 2匹目のチャエダシャク成虫が見つかった。こんどはクヌギの幹に止まっていた。少し高い場所だったので息を吹きかけてみたら、ヒラヒラと舞いおりてきた。ウサギのような大きな触角から、オスだということがわかる(写真中)。
 櫛状の触角は細かい枝分かれをしており、羽毛のような構造をしている。その細かい枝分かれ構造のせいで、光りの当たり具合によってはキラリと輝いて見える(写真下)。
 今日、見つけた2匹のチャエダシャクはいずれも羽化して間もないのであろう。翅はとても綺麗である。これから先、メスも登場してくるのだろう。

 今日の写真を見ていると、昔、愛媛の小田深山で撮影したウサギコウモリのことをふと想い出す。

(E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)

 新開 孝

謎のハエ集団!?(キモグリバエ科) 2006/11/22
 その謎の集団は、秋から冬にかけて林の縁の葉上でよく見かける。縁とはいっても、日射しがあまり届かない薄暗い場所に限られる。今朝はいつもと違うコースを歩いたせいで、そのような小暗い環境に行き着いた。
 
 ハエ集団は整然と同じ方向に頭を向けて並んでいる。どのハエもまるで号令に従っているかのようで、そこが何とも不思議に思える。
 集団の形成される葉っぱはアオキ、シラカシなど大抵は常緑樹だ。寒くなればなるほど、集団の密度も濃いような気がするが、今日見た範囲では剥き出しの葉よりか、葉と葉が重なった隙間のほうで密度が濃い集団となっていた。
 しかし、その隙間の集団を撮影しようと、ほんのわずかでも葉に触れると、たちまちにハエ達は離散してしまう。パラパラと飛び去るハエが顔面にぶつかり、目にも入ってしまいそうなくらいの勢いだ。飛んでどこに行くのか?ほとんどの姿を見失ってしまうのだが、何匹かは近くの葉上に着地する姿を確認できる。

 それまでピタリと静かに整列していたハエたちは、意外に外部からの刺激に敏感である。外気温の条件も関与しているのだろうか?

 それにしてもこのハエ集団は、とにかく不思議としか表現のしようがない。目的があるのか、ないのか?まさか、こうして人を不思議がらせて楽しんでいるとも思えないが、、、、、。

 この集団の形成理由を少し科学的に考察するために、我々素人でも出来る事があるとすれば、まずは集団を構成するハエの性比を調べることあたりだろうか?その作業を的確に行なうには、集団ごとそっくり採集し標本にする必要もあろう。またかなりの倍率で検鏡できる実体双眼顕微鏡もいる。

 さて肝心のこのハエたちの種名であるが、そこまではわからない。ただし、彼らはキモグリバエ科に属することまではわかる。で、その生活ぶりであるが、これも判然としない。

(写真上、中/E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン、
 写真下/EOS-5D  MP-E65ミリマクロ、トリミングあり)
新開 孝
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