| タイワンツバメシジミ 2008/09/13(その1) | | 一週間ぶりに更新。 さて、いろいろと紹介したいことがある中、今週はタイワンツバメシジミとショウリョウバッタモドキの2種に絞ってみた。まずは、タイワンツバメシジミから。
タイワンツバメシジミは、本州では紀伊半島南端の一部のみ、四国では徳島、高知、愛媛の非常に限られた地域、そして九州では全県、さらに南西諸島の沖縄本島まで分布している。このように西日本のしかも南方地域に偏って生息していることから大方の人にとっては、たいへん馴染みのうすいチョウであろう。 一方、同じツバメシジミ属のツバメシジミは、南西諸島をのぞくほぼ日本全土に分布している普通種。街中でもちょっとした緑地があれば、このツバメシジミの姿をよく見かける。ツバメシジミの食草は多種類のマメ科植物にわたり、人工的に植え付けられたシロツメクサなどのおかげで、たくましく分布勢力を広げる。 ところが、タイワンツバメシジミの食草はマメ科植物のなかでもシバハギにのみに限定される。 ぼくの郷里、愛媛県では、タイワンツバメシジミは南予、宇和島市の限られた場所でしか見つかっていなかった。今はどうなっているのか知らないが、たいへん希少種であることには変わりないだろう。高校生のころはずいぶんと気にかかっていたが、ぼくにとっては幻のチョウでしかなかった。
さてさて、先日のことだ。うちの近所のフィールドへカバキコマチグモを探しに出掛けた。9月に入ってから室内でやるべき作業が増えたため、例え天気が良くても、野外に出る時間にはかなりの制約を受ける。だからその日も午後の2時間だけと決めていたのだが、肝心のカバキコマチグモの産室がまったく見つからなかった。 カバキコマチグモの産室はススキの葉の先端部をちまき状に巻いているので、遠目でもよく目立つ。関東の武蔵野ではあちこちで見たけれど、かといってススキ原さえあればどこにでもいるわけではなく、意外と生息場所は限定されていた。 宮崎に来てからカバキコマチグモをまだ一度も見ていない、というのはちょっと情けない、と思いつつススキ原を歩いていると、足下をヒラヒラと舞うシジミチョウがいた。翅表がブルーだ。うん?どこか飛び方が変だと思い、そのチョウを見ていると、ススキの合間を縫うように低い位置を飛翔する。 しばらくして、ようやく葉っぱの上に静止してくれた。間近で見るその姿はツバメシジミによく似ているが、そうではなかった。ぼくとしては初めての出会いだったが、タイワンツバメシジミに違いないと確信できた(写真上/メス)。
ススキ原をかきわけながら歩くと、それまで見かけなかったタイワンツバメシジミが次々と飛び立ち、一気ににぎやかになる。オス同士の追いかけ合いもあれば、ヒョンヒョンと足下を横切って行くもの、あるいはぼくの姿に驚いて一気に数メートル上の樹上へと舞い上がっていくものもあった。しかし、ほとんどの個体がススキ原の隙間を縫うように飛翔しており、なんでこんなせせこましい場所にこだわるのだろうか?と不思議に思えてきた。これはジャノメチョウの習性とよく似ているが、実際ここの草地にはジャノメチョウも少ないながら生息している。
ススキ原を巡るうち、足下に目を惹く赤い花が咲いていた(写真中)。マメ科植物のこれまた初めてお目にかかる種類だ。しかもよく見れば、小さな白い卵が点々と付いている。これがもしかしたらシバハギではないか!そう感じながら佇んでいると、目の前にタイワンツバメシジミのメスがやって来て産卵を始めたのであった。
高校生のころだから、もう30年も昔になる。その当時、なんとかシバハギを見てみたいと思っていた。チョウに夢中になればなるほど、チョウの食草や食樹のことにも興味が湧いてしかたがなかった。あれから30年かあ、、、、。
先日、訪れたススキ原の草丈は全体に低い。高い場所でもぼくの腰あたりまでだ。けもの道の轍を辿って歩くと、シバハギがあちこちで見つかるが、シバハギはススキの下に這うように生えており、たいへん目立ちにくい(写真下)。なんとも窮屈そうに花を咲かせていると印象が強い。したがってシバハギがどの程度あるのか、多いのか少ないのか、よくはわからない。 ただし、タイワンツバメシジミは狭い範囲にかなりの密度で見られるから、個体数もけっこうな数になるだろう。彼らがまるでススキのジャングル内をかいくぐるかのようにして舞う理由も、食草シバハギとの深い関わりを思えば、なるほどな、と感心するのであった。
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