menu前ページTOPページ次ページspace.gif

アケビコノハ 2006/10/24
 都内での用事を済ませてうちに戻ってみると、マンションの外壁にアケビコノハが止まっていた。昨夜あたりに、近くの雑木林から灯りにつられて飛来したのだろう。

 そっと手に乗せようとしたら、急にはばたいて逃げてしまった。アケビコノハはずいぶんと昔に何度も撮影したことがあるが、秋の雑木林を歩いていると、足下からいきなり飛び出してきてびっくりさせられる。

 アケビコノハは夜行性であり、他の多くの蛾類と同じように、成虫の生活を写真でとらえることは、極めて難しい。ただし、彼らは夏の夜の果樹園にしばしば飛来し、果実から吸汁する。それがために、害虫として嫌われることもある。果樹園を経営する方にとっては招かざる存在であり、それも当然のことだろう。

 もう20年以上も前のこと、私は四国の実家の近くで、ガガイモの花のそばで交尾中の本種を撮影したことがある。それは天候のすぐれない曇り空の下、日中の出来事であった。

(E-500  マクロ35ミリ+1.4倍テレコン)


 今日は、免許証の更新で新宿の都庁に赴いた。
 私はある事情で、免許書が優良ではなかったので、うちにもっとも近い石神井警察署での更新はできず、最寄りの更新場所は府中試験場であった。しかし、ここは交通の便も悪く、いかにも陰気な場所という印象がこれまで強かった。そこで、他の用事も兼ねて動ける、新宿の都庁の免許書更新センターに行ってみることにした。都庁を訪れるのも初めてだし、これが最後でもあるから、一度くらい見学しておこうと思ったのだが、結局、都庁のどこも見学せず用事だけ済ませてさっさと、地下街のカレー屋に飛び込んでしまった。
 ただ今回の選択は正解であり、平日とはいえ人も少なく、更新手続きもかつてなく迅速に終了した。もっとも1時間の講習は免れることができず、これは仕方が無かったが、巨大な都庁の一角のこじんまりとした空間で、スムーズに手続きを終えることができた。なんと言っても多くの人で混雑しないのが良い。
 しかし、更新手続料金はいかにも高い、と感じた。

新開 孝

ハードディスクは、ときに幻と化す! 2006/10/23
 本日は朝からずっと部屋に籠ったまま、写真探しとそのリスト整理などに時間を費やし、外出できなかった。幸いにも一日中雨だったので、おかげで室内作業に専念することができた。

 私の撮影の仕事では、2004年度からほぼ完全にデジタル写真に移行しており、したがって去年あたりから取り組んでいる自著の出版本などは、ほとんど100%に近い割合でデジタル写真を使っている。
 本作りのスタートラインでは、過去のポジフィルムを有効に活かして、できるだけ無駄を省くように考えてはいても、じつは撮影を初めてみれば、デジタル撮影というのはポジフィルムの時代よりか格段に生産性が高く、いつのまにか当初の予定よりか上回る撮影項目をこなしてしまっていることに気付く。そうなると、本の構成にも余裕ができて、敢てポジフィルムのストックを使わなくても良いというケースが多くなってくるわけである。

 ところが、一方でデジタルならではの、深刻で困った問題も発生してくる。
特に保存データの扱いだが、今日は2003年に撮り貯めたデータの入っている外付けハードディスク2台が、急にパソコン上で認識できなくなった。どうやら周辺機器のドライバーソフトとコンフリクトを生じているのではないか、という疑いが濃いのであるが、もしそうでなければいよいよ深刻である。
 
 私はデータのバックアップを逐一、DVDディスクなどに焼き込むことはほとんどしておらず、全てハードディスクに頼っている。そこで少なくとも2台のハードディスクに分散化する対策を施しつつあるが、デジタル移行の初期のころのデータについては、まだその対策が追いついていないのであった。

 少し悔しい気もするが、もしも2003年の1年間の撮影データを失ったとすれば、それはそれで、もっといい写真を撮ればいいだろう、とも思う。2003年度といえば、まだ銀塩フィルムカメラを主力で使っている時期で、デジタルカメラは400万画素のEOS-1Dをテスト的に使っていた頃ではある。
 テスト的とは言っても、カメラはけっこう高価だった!それだけに思い入れは強く、デジタルに100%移行したい!という気持ちが先行していたころだった。

 そういう過渡期に撮影した写真には、やはり迷いも多かったのではないか?
そう思い直すことで、究極の事態に覚悟もしておいたほうが良さそうだ。

 
新開 孝

三匹の子豚 2006/10/22
 台所の窓の外にはクスノキが茂っており、例年、アオスジアゲハが卵を産んでいく。

 先月、9月7日には母チョウが産卵している写真を紹介したが、そのときの卵はやがて10月3日に終令幼虫として育ち、その写真を再び紹介している。そして、そのときの幼虫はやがて無事に蛹となったのであるが、今朝になって寄生を受けて死んでいることがわかった。寄生バエのウジ虫が蛹の殻を突き破って出たのは、つい最近のようである。

 ところが、今月に入ってから再び、若い幼虫が5匹見つかった。一枚の葉っぱの裏に5匹が並んでいたので、けっこう目立っていた。食事のたびに離散するも、休息するときには皆が、元の場所へと戻ってくるのであった。
 その様子を面白がって眺めていたが、ここ数日に至って集合場所に戻ってくるのは、3匹だけとなった。あとの2匹はそれぞれ分家してしまい、孤独に過ごしている。

 今いる幼虫たちが無事に成長できたとすれば、みんな越冬蛹になると思われるが、11月おそくにも飛んでいる成虫を見かけることもあるので、断言はできない。

(E-300  マクロ50ミリ+中間リングEX-25)

 新開 孝

トンボの催眠マジック、ふたたび 2006/10/21(その2)
 近所の「せせらぎ公園」に下の子供と散歩に出掛けたおり、アオイトトンボを見つけた(写真上)。

 「トンボがいるよ」と教えたら、子供は前にやった「トンボマジック」を試してみたい、と張り切って捕まえようとする。簡単には捕まらないだろうと見ていたら、あっという間に指で摘んでいた。

 先々週にアキアカネやウスバキトンボで何度か経験しているので、子供はさっそく自分の膝の上で、手際良くマジックを開始(写真中)。私も半信半疑で眺めていたが、なんと見事にアオイトトンボはでんぐり返ったまま、動かなくなった(写真下)。
 ただし、手を打ち合わせた程度では覚醒せず、脚に触れてやるとびっくりしたように飛んで行った。

 このトンボを仰向けにして、翅を根元から外側にむけて擦ると、まるで眠りこけたようになる、という現象は、どうやらアカネ類のみならず、トンボの仲間の多くに起きうるようである。もっともオニヤンマのようなでっかい種類でも有効なのかどうか、まだまだ試してみたい気がするが、そうなってくるとまずは捕獲そのものが、チョイと手掴かみで、というわけにもいかない。

(E-500  ズイコーデジタルズーム14−54ミリ)新開 孝

アシブトハナアブの卵、ふたたび 2006/10/21
 昨日、見つけたアシブトハナアブの卵をさらに拡大撮影してみた。
 
 さて、こうした高倍率の接写では、被写体の固定方法や焦点面の選択など、撮影前のセッティング作業が重要であり、その作業いかんによって写真の仕上がりの善し悪しが決まる。
 その作業のなかでも厄介な一つは、被写体に付着した微小なホコリの除去であろう。この作業を徹底して行なうには、撮影台にセッティングする前に、実体顕微鏡下で丁寧に掃除を行なう必要がある。

 今日は卵塊に繊維状のホコリが着いていたので、これを面相筆で取り去ろうとしたのだが、ハナアブの卵は少し触れただけでパラパラと分離してころがり落ちてしまうことがわかった。そこで結局、できるだけホコリを避けて撮影することにした。厄介とはまさにこのことで、被写体によっては非常にデリケートなものもよくあるので、常に細心の注意が必要である。
 
 今回撮影に使用したレンズは、OLYMPUSの旧OMシステム、マクロ20ミリで、これとOLYMPUSベローズを組み合わせた。カメラはEOS-5D。
 照明は正面側に、NikonマクロスピードライトSB-21を使用し、逆側にサンパックのB3000Sを1灯配置するというきわめてシンプルなもの。SB-21は池袋のミヤマ商会で新古品を安く入手した。

『ストロボは消耗品だが、、、、、、』

 先日も書いたが、私の所有しているストロボのうち、スレーブ専用として使ってきた小型ストロボが立て続けに、4台も作動しなくなった。撮影機材のなかでもストロボは故障する確率が高いので、いきなり困ることがないよう、予備ストロボを用意はしているが、これで予備が目減りしたわけだから、さっそくその対処もしないといけなくなった。
 そういう事情から、都内に出たおりには、普段からこまめに中古カメラ店を回り、安い新古品ストロボがあればできるだけ購入しておきたいのである。私の場合、TTLオートやさらに進化した最新の調光システムはほとんど必要としないので、昔のマニュアル中心の製品で充分ありがたい。

 なお、先日、2台も動かなくなったハクバのデジタルスレーブストロボについては、その故障の原因を問い合わせている最中なので、メーカー側から解答が戻り次第、報告したいと思う。なにせ、超小型のスレーブストロボは捨て難い機材であり、そうそう簡単には諦め切れないのであった。
 
 新開 孝

アシブトハナアブの卵 2006/10/20
 畑の脇に水を張った発泡スチロールのケースが3ケース並べてあった。泥が底に厚く盛られており、水生植物を栽培していたのだろうと思う。枯れ残った茎の脇には、雑草がポツポツ生えている。

 なんとなくそのケースを眺めていると、水面に何度も触れるように舞うアシブトハナアブの姿があった。それは産卵に関わる行動ではないか?すぐに私はそう感じて、しゃがみ込んでみた。

 するとやはり、雑草の葉っぱには無数の卵塊が産み付けられていた(写真上)。

 さらにしばらく待っていると、アシブトハナアブのメスがやって来て、水面近くの葉うらで産卵を始めた(写真中、下)。

 どうやらアシブトハナアブの場合、水際に産卵して、ふ化した幼虫たちは自力で水中へと移動するようだ。

(E-500  マクロ35ミリ)

 17年前、当時住んでいた東村山市のアパートの近所で、ミナミカマバエという奇妙なハエの撮影に熱中したことがある。

 アパートは西武池袋線の秋津駅から歩いて5分の場所にあり、そこから歩いて2分のところには小川が流れていた。小川は秋津神社のそばの湧き水から流れており、やがて柳瀬川に合流するまで、ほとんどが護岸もされていない、きわめて自然度が高いせせらぎであった。小川と言っても幅は広いところでもせいぜい1メートルに満たないものだったが、クリ林や畑、草地などを巡るゆるやかな流れは見ているだけでも心地よく、私は頻繁にそこへ出向いていた。2月末ころにはヒキガエルの産卵も毎年盛んであった。

 そんな小川の周辺は、近年、住宅やアパートが立ち並び激変してしまった。おかげで、線路沿いにあった雑木林への小道も閉鎖され、かつてはシロスジカミキリの産卵や、ノコギリクワガタ、ヒラタクワガタといった昆虫たちを撮影したクヌギの木にも行き着くことができなくなっていた。
 
 今日はある目的でこの場所を久々に訪れてみたのだが、あまりにも変わり果てた環境に覚悟はしていたが、唖然とするしかなかった。護岸されていない小川の一部はまだわずかに残されていたが、まず間違いなくミナミカマバエはもう生息していないだろう。
 その小川のそばには、かつてあった畑の名残りのような菜園があり、その脇には
アシブトハナアブの産卵するケースが置かれていたのである。

 このところ、私はかつて頻繁に訪れていたフィールドを、過去の記憶を辿りながら再度、歩いてみている。そのフィールドというのは、私が居住してきた西武池袋線の秋津駅周辺ということに他ならなず、きわめて狭い範囲である。半径わずか2キロの円周内だろうと思う。
 どこをどう巡ってみても、昆虫写真家という私の職業の身にとって、あまりにも厳しい環境になってしまった、と言わざるを得ない。
 
 自然保護の活動も清瀬市内ではきわめて熱心に取り組まれてはいるが、住環境を求める人々のエネルギーの前には、あまりにも微弱である。

 東京を去る決意は、若いころから決めていたことではあるが、このわが町、清瀬がここまで住居主体の町に激変してしまうとは、想像できなかったことであった。


 新開 孝

『新開 孝からのお知らせ』 2006/10/19(その2)
 すでにお気付きの方もいらっしゃると思いますが、「新開孝の昆虫写真工房編集室」宛のメールアドレスは、しばらく前に削除いたしました。

 これにつき、新開への直メールアドレスを新規に設置します。

 新規アドレスは、yamakamasu@shinkai.info です。

 これまでに編集室宛にメールをいただいた方々みなさま全てに、新規アドレスをお知らせする作業は時間が掛かり過ぎ、たいへんご迷惑を御掛けしております。
 とりあえず新規アドレスを「昆虫ある記」の更新のなかで、一週間おきに告知いたしますので、よろしくお願いします。

(写真/日没時のジョロウグモ EOSキッスデジタルN シグマ50ミリマクロ)新開 孝

トホシクビボソハムシ 2006/10/19
 クコの紫色の花と朱色の実を、今は同時に見ることができる。

 花にはよくミツバチなどが来ているが、葉っぱを暴食する虫もいて、とくに目立つのは、トホシクビボソハムシである(写真上)。もっとも小さな甲虫だから食べ痕ばかりが目立って、虫の姿はそれなりに意識してかからないと、ちっとも目に入ってこない。

 「トホシ」と和名はついているが、黒斑がまったくない無紋タイプが多く、今日観察したクコの株上では、文字通り「トホシ」を背負った個体はわずか一匹であった。
 成虫も幼虫も、クコの葉を食べるのであるが、幼虫は自分の背中に排泄物を背負っており(写真中)、頭部と胸脚以外はまさに、うんちのかたまりなのである。つまり自分の糞が身を守る隠蔽物となっているのである。

(写真上、中/EOSキッスデジタルN  マクロ65ミリ)
(写真下/EOSキッスデジタルN   シグマ50ミリマクロ)新開 孝

ジョロウグモの獲物 2006/10/18(その3)
 ジョロウグモの網巣は、とくに林縁部に多い。そういう場所は、獲物となる昆虫類が多く訪れ、また通過する空間であり、じつに巧妙な場所選びをしているなあ、と感心させられる。

 どういう昆虫たちが、クモの仕掛けたトラップに捕まったのか調べてみるのも面白い。
(写真上/アキアカネ、写真下/ツクツクボウシとアオマツムシ)

(E-500  ズイコーデジタルズーム50-200ミリ ストロボFL−50使用)

 
『ハクバのデジタルスレーブストロボ』

 ハクバのデジタルスレーブストロボは、手のひらサイズで小さく、野外で多灯撮影を行なうときには、けっこう便利で使ってきた。室内撮影でも、ちょっと光りをアクセントとして加えたいときなど、重宝することもあった。

 それでこのストロボはこれまで3台を使ってきたのだが、すでに1台が一月程前、そして2台目が昨日、まったく作動しなくなってしまった。
 2台とも購入してから1年も経ておらず、1台は一ヶ月半しか使っていない。こんなに早くも不調(というか完全な故障)になるというのは、どういうことだろうか?

 振り返ってみれば、もっとも多機能的に使用し、長く使用に耐えているストロボは、サンパックのB3000Sくらいではないかと思う。もっともこのストロボも以前に4台まとめ買いをしたとき、不安になって店頭で発光テストをしてみたら、一台はまったく作動せず、危ういところで交換した、という経験がないでもないが、、、。新開 孝

ツマグロヒョウモン 2006/10/18(その2)
 幼虫探しに出掛けた林は、所沢市の航空公園の少し東に位置する。

 ここの林は18年前からもっとも頻繁に訪れていたフィールドだが、5、6年前からは年に2、3回程度と通う回数は減ってしまった。それはあまりにも雑木林が荒廃してしまったからであり、また大規模な清掃工場の建設、運動公園としての開発など、以前のような豊かな里山環境が寸断されてしまったことが主な理由である。

 それでもピンポイントで虫探しができる林くらいならわずかに残っている。必要に迫られてここのフィールドを訪れるのは、きわめて目標を絞り込んだ時に限られる。今朝は早々とその目的を達したので、少しだけ肩ならしのつもりで撮影してみた。

 前にも書いたが、OLYMPUSフォーサーズの交換レンズに、まだ100ミリクラスの望遠マクロがない。100ミリというのは35ミリ版換算で200ミリということになる。そこでトンボやチョウ、セミなど望遠マクロを必要とする撮影の場合には、ズイコーデジタル50-200ミリズームを代用として使っている。
 このレンズは意外と撮影最短距離が短く、マクロレンズではないがけっこう昆虫写真でも使える。今日は天気も良いので、専用ストロボFL-50を装着して、FP発光モードで撮影してみた。

 私がもっともお気に入りのクリ林はひどく荒れ果てて、今はセイタカアワダチソウまでが入りこんでしまっている。その黄色い花ではツマグロヒョモンのオスが吸蜜していた(写真上)。
 しばらくするとメスが現れ、するとオスは吸蜜を中断して(写真中)、メスに懸命に求愛し始めた(写真下)。

 (E-500  ズイコーデジタルズーム50-200ミリ ストロボFL−50使用)
 

 新開 孝

タマムシの幼虫 2006/10/18(その1)
 ある仕事で急にタマムシの幼虫の写真が必要になった。
以前にポジフィルムで撮影した写真があったのだが、幼虫の潜んでいた材が非常に固くて、割った断面にナタのつけた削り痕が目立つので気に入らないカットであった。そこで、コクワガタ幼虫の写真も新たに必要となっていたので、今朝一番で幼虫探しに出掛けてみた。

 現場には15分で着き、そしてさっそくこれはと思う朽ち木にナタを入れてみた。すると、コクワガタ、タマムシとも10分と経ないうちに条件に見合った幼虫を割り出すことができた(写真上/コクワガタ、写真中、下/タマムシ幼虫)。
 
 特にタマムシは一発で形の良いトンネル室が出て来て、少し驚いた。コクワガタ幼虫の方は、室内で体の細部を撮影する必要があったので、すぐに帰るつもりだったが、あまりにも幼虫探しがうまくいったので、少しだけ野外撮影をしてみた。

(E-500  マクロ35ミリ)
新開 孝

ハラビロカマキリの威嚇行動 2006/10/17
 うちから1分ほどのところの空堀川遊歩道は、ちょうど雑木林の梢が道に沿って庇となっており、ほとんど直射日光が入らない。
 
 そのせいだろう、明るい草地を好むオオカマキリはこの道沿いにはほとんど姿を
見せず、多く見られるのはハラビロカマキリで、その次にコカマキリをよく見かける。

 先日、オオカマキリの威嚇行動について紹介したが、カマキリの威嚇行動の写真というのは、そのほとんどがカメラマンに向って構えているのであり、自然界での出来事を捉えた瞬間とは言い難い、ということを書いた。
  カマキリが人以外の生きものに対して威嚇行動をとっているところを撮影したい、というのが私の強い願望であり、これまでのところ目撃すら経験がない、というのはいささか情けないとさえ思っている。

 ところで今日は、その願望にはまだ遠いのであるが、少なくとも私というカメラマンに対してではなく、同種の相手に対して威嚇ポーズをとっているハラビロカマキリのメスを観察することができた(写真上)。

 写真中の画面左が威嚇するメスであり、お腹はほとんどぺしゃんこである。
それに対峙した画面右側のメスは、お腹がパンパンに膨れ上がり、近日中にも産卵するであろうと思われた。
 この両者は互いに緊張感が張りつめているかのように、微動だにしない。しかし、わずかに威嚇メスのほうが、ときおり体を揺するような仕草を見せており、「いつでも飛びかかるワよ!」という気配を感じた。
 私が近寄って撮影しても両者はまったくこちらには無関心で、ずっとにらみ合いが続いた。まさに火花が空中に散っているかのような緊迫した事態であった。

 そして、ついにしびれを切らしたかのように、身重のメスがわずかに前進を試みたその瞬間、腹ぺこメスが身重メスに向ってすばやく跳躍したのであった。

 だがしかし、足場が悪かったせいだろうか、ジャンプした腹ぺこメスは、身重メスにぶつかってから、すってんコロリと柵の中段へと落っこちてしまった。

 さて、この出来事を振り返ってみると、果たして腹ぺこメスはほんとうに、身重メスを獲物として狙っていたのであろうか?
 私は、腹ぺこメスが狩りに失敗した、と一旦は思ったのであるが、、、。

 もしかしたら、身重メスを前にして、「これ以上近付くと、容赦しないワよ!」、という警告をするがために威嚇ポーズをとり続けていた、とも言えなくはない。それでも警告を無視して、危険距離を侵して接近して来た身重メスに対して、制裁の鎌パンチを見舞った、という見方もできるのではないだろうか?

 私は威嚇ポーズをとっていたメスが、あきらかに空腹であろうと思えたので、同種と言えど、接近して来た相手を獲物として捉えているのではないか、そう最初は考えたのである。実際カマキリの産卵期のメスではそういう共食いも頻繁に起こる事なのである。しかし、狩りの構えとして威嚇ポーズをとる、というのはなんだかそぐわない行動と、あとになって考え直したのであった。まあ、実際のところはよくわからない。

 どんなに普通種であっても、昆虫の行動の野外観察を積み重ねることは、決して容易ではない。その一つ一つを解明しようなどとは、夢のような話だと私には思える。せいぜい探偵気取りで推理を楽しむのが良い、と思ったりした。

(写真上/E-500 マクロ35ミリ。写真中、下/E-330 魚眼8ミリ)新開 孝

「かまきりオーケストラ」とは? 2006/10/16
 ジャジャジャ、ジャ〜ン!!

 ジャ、ジャ、ジャ、ジャ〜ン!!

 おなじみベートーベンの交響曲「運命」のメロディーを想像しながら、写真を見ていただきたい。

 指揮者はハラビンカマヤン、、、、、ではなく、ハラビロカマキリ。

 (EOSキッスデジタルN  シグマ50ミリマクロ)
 

 今日の写真に余計な説明はいらないと思う。
 しかし、少しだけ補足しておくと、ここでは3枚の写真しか出ていないが、実際にはもっと多く連写している。したがって、それらの複数カットをアニメーションソフトで処理すれば、リアルな指揮者の動きを再現できたかもしれない。
 そういう遊びも面白いとは思うが、実はこのような生きものの写真を擬人的に操作してコミカルなアニメーションに仕上げることには、個人的には抵抗を感じる。

 写真の単純な羅列である限りにおいては、観る側の想像力に委ねる割合が大きいと思われるが、これが動画となってしまうと、かなり強烈なメッセージとなる。

 ここから先、もう少し動画と写真の違いについて語ろうか、などと思ったりしたが、そういう濃いお話は「ある記」には不向きのようだ。
 
 さて、ハラビロカマキリの仕草にいろいろと変化をつけるには、ちょっとしたコツが要る。つまり演出である。とは言っても、たいした事ではなく、いずれにせよカマキリのそのときの気分?に大きく左右されるので、同じことをいつでも演出できるとは限らない。
 こういう遊びは、皆さんがフィールドに出掛けられた折りに、個人的にちょっと戯れて楽しんでいただければ良いのではないか、と単純に思う。新開 孝

オオミズアオ幼虫の死骸 2006/10/15
 駐車場からマンションに戻る途中の小道で、オオミズアオ幼虫の死骸を見つけた(写真上)。

 体の後半部分がほとんど消失しており、激しく喰いちぎられた痕が痛々しい。幼虫の胸脚はわずかに動いているが、もちろん蘇生などするはずもない。無数の小さなアリたちがその肉片を収穫し、こぼれる体液を自らの胃壷に貯めている。

 この死骸を見つけてすぐに、近くの地面を見渡せば、幼虫が落とした糞もいくつか見つかった(写真下)。さらに頭上のイヌシデを見上げれば、幼虫が暴食したと思われる食べ痕もあった。

 ほとんど毎日のようにここの小道を歩いていながら、頭上ででっぷりと肥えたオオミズアオ幼虫が育っていたことにこれまで気付かなかった。このことは少々、悔やまれる。

 ただ、今年の春に近所の雑木林では、イヌシデの葉に産み付けられたオオミズアオの卵を撮影している。そのときはイヌシデが食樹となりうるのかどうか、疑問に思っていたのだが、どうやらイヌシデもオオミズアオの食樹の一つと確認できたようだ。

(EOSキッスデジタルN  シグマ50ミリマクロ)

『おばあちゃんの玉手箱』

 今日は、吉祥寺にある児童書専門店「おばあちゃんの玉手箱」で、昆虫のお話の講演をさせていただいた。(「おばあちゃんの玉手箱」で検索してもらうとホームページあります。)

 こういったユニークな書店があることをこれまで私は知らなかったのだが、吉祥寺という街には、おもちゃ屋さんから書店までけっこう面白い店が多い事をあらためて知って驚いた。というか、20年以上東京に暮らしていても、これまで吉祥寺には一度も行ったことがなかったのだが、その街のにぎわいぶりに驚愕し、これだけの人が集まるなら、それなりにユニークなお店が多く繁盛しているのもうなずけるのであった。聞けば人の多さは今日のような日曜日だけでなく、平日も変わらず多くにぎわっているそうだ。
 あちこちで行列をなしている飲食店があれば、ローカルな民芸店も多く、また沖縄料理関係の食材店やら、昔ながらの魚屋さんなどと、まさに日本の庶民の生活市場が凝縮したような街、そんな気がした。しかもまるで迷路のような細い路地裏にそういうお店がぎっしりと並んでいる。
 こんな活気に満ちた街など、そうそうあるまいなあ、と今日は思ったりしたが、考えてみれば、私は普段からそういう人が多く集まる場所を避けるようにして、できるだけ自然のフィールドに、しかも孤独に身を置く生活をしているのだから、吉祥寺のようなにぎわいに接してみれば、まさに未開人が都会に初めて出たような状況に近いものがあったろうと思う。それは異様な活気に久しぶりに触れたとでも言えよう。

 今日の講演に駆けつけていただいたポプラ社の担当者の方からは、帰り際にとてもユニークな書店を教えてもらったのであるが、その店のみならず、なんだか街の隅々を探検してみたい誘惑すら感じてしまった。街中ぜんぶがお祭りなのだ。そういえばテント張りの「おもちゃ市場」という催しもあって、ここは人だかりが一杯で、ものすごく盛況であった。
 しかし、今日は講演後、せっかくここまで来たからと、吉祥寺を出て中央線沿いの中野まで脚を伸ばしてみた。カメラのアクセサリーの中古品でも漁ってみるつもりだったが、しかしお目当てのものは見当たらず、手ぶらで帰ることになってしまった。

新開 孝
menu前ページTOPページ次ページspace.gif
Topics Board
ホーム | 最新情報 | 昆虫ある記 | ギャラリー | リンク | 著作紹介 | プロフィール