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ノコギリクワガタ 2003/07/01
ノコギリクワガタですら、私の近所ではめっきり数が減ったように思う。少なくとも樹液に来てカナブンやスズメバチと肩並べてなんていう光景はここ数年、数回しか見ていない。ところが保育園で耳寄りな情報を得ることが出来た。うちの子のお友達のお父さんは大のクワガタ好きなのだが、このところ毎朝ノコギリクワガタを見に行っている場所があるという。ヤナギの樹液だがそこにはほとんど人が入らず、行けば必ず数頭のノコギリがいるというのである。私はさっそくその場所へ赴いたのだが、まさに教えてもらった通りノコギリのペアが来ている(写真)。他にコクワガタ、カブトムシ、シロテンハナムグリ、コムラサキ、ヒメジャノメなどもいた。この日は曇っていたので、再度出直すことにした。Mちゃんのお父さん、ありがとうございました!

新開 孝

コムラサキ 2003/07/05
土曜日なので下の子供を連れてまたもやヤナギ樹液に行ってみた。今日も晴天、暑い!もうじき4歳の誕生日を迎える息子には捕虫網を持たせる。今日はコムラサキを撮影するつもり。新しく買ったパワーショットG5の初撮りでもあった。どうやらヤナギの枝が混み合ったところに樹液があるようだ。そこは外からはまったく死角になっているが、さきほどからコムラサキのオスが出入りしている。さっそく潜り込むようにしてそっと近寄ると、コムラサキが8頭も群れている!(写真)こんな光景は初めてだ。しかしG5のようなコンパクトカメラでちょうど良かった。体を少しよじるだけでも木の枝が揺れて、チョウが逃げてしまいそうだ。一眼デジカメを構える余裕がない。ところでこのコムラサキは全国的に減少している。里山の普通種であったはずが、めっきり姿を見かけないチョウになったことの要因の一つには、河川改修に伴い多くのヤナギを切ってしまったからではないだろうか。私の四国の田舎でも田んぼの用水路にはたくさんのヤナギが並んでいたが、20年前一気に伐採され風景が一変したときのショックを憶えている。また私の父親の話しによれば戦前の昭和一桁当時、川辺の大柳からカワウソがドボンと飛び込む音をよく聞いたという。ホタルなどはいくらでも群飛していたころだ。そんなことを思い起しながらコムラサキの撮影に夢中になっているうちに子供の姿がはて見当たらない。近くの草むらでバッタを追っていたはずだが、いつのまにか遠くで泣いている。私を見失いはぐれたと思い込んで、探し回っていたようだ。午前中で撮影は終了し帰ることにした。新開 孝

石垣島日記その1 2003/07/23
動物科学研究所・昆虫研究部のI氏と羽田で合流し、JAL便那覇経由にて石垣島に到着。ホテルに荷物を下ろしさっそくオモト岳へ。去年10月『里山チョウガイドブック』の撮りおろしで来た際、ここの林道が大幅に舗装工事中で入れなかった。気になっていたからまずはここへ。林道が舗装されたことは残念だが、道路沿いの林は以前とさほど変りなく工事から受けたダメージもすでに落ち着いたように感じる。昆虫の姿を探して林道を歩いているうちに強烈な醗酵臭が漂って来る。匂いをたぐって探してみれば、木の根元にパイナップルが積んであった。しかもパイナップルに擬態したかのようなセマルハコガメまで鎮座している!パイナップルの山はクワガタ捕りの業者が置いていったということらしい。I氏は自作の『マレーズトラップ』を林内に手際良く設置し終えた。どんな虫が採れるか楽しみである。夕餉の乾杯は7時近い時刻であったが、まだ外は明るい。蒸し暑いなかでオリオンビールがうまい!
写真上:オキナワナナフシのメスは体の模様の変異が大きい(オモト林道)写真下:パイナップル・トラップとセマルハコガメ(オモト林道)
新開 孝

石垣島日記その2 2003/07/24
石垣島、2日目。先月からずっと雨がないためからからに乾燥しており、昆虫の姿も少なめ。朝晩に雨が短時間降るが焼け石に水であろう。今回のねらいの一つは『マンゲツオオコロギス』。10年ほど前に2度だけ見つけ撮影したのだがすぐに逃げられ思うような写真にならず、ずっと気に掛かっていたのだ。当時はカマキリモドキを追い掛けていたころで、私は血眼になってスィーピング(捕虫網で草むらや梢をまんべんなく掬い、隠れている昆虫を捕まえる手法)を連日行い、その副産物としてマンゲツオオコロギスを捕らえたのであった。6mの捕虫網をかつぎ、届くところは全てという徹底ぶりだったが、今思うとあのころのエネルギッシュな私には脱帽である。今回ももちろんスィーピング探索が中心であるが6m竿は止めて、短い竿にしルッキング探索も重視することにした。というのもコロギス類が作る葉っぱの住居のなかでも、マンゲツオオコロギスが作るものは特上サイズと思う。これを発見できる可能性も見逃せない。
写真上:夕方ねぐらに落ち着いたカラスアゲハのメス(オモト林道)
写真下:チブサオニグモのメス、ふたほし型というタイプで他にも模様の変異が多い(オモト林道)
新開 孝

石垣島日記その3 2003/07/25
快晴!暑いのはいいが虫が少ない。あちこちで林縁、林内を丹念に見て回りスィーピングも行うがマンゲツオオコロギスはまだ見つからない。小さなハネナシコロギスはいくらでも網に入り、巣もあちこちで見るのに。3日目に入って多少あせりを感じる。御神崎の灯台手前の草地では野焼きのためにモモタマナが半分立ち枯れていた。そこへアオムネスジタマムシが何頭も飛来している。メスはさかんに幹を登り降りしながら産卵しようとしていた(写真中)。於茂登トンネルの近くでミカンキンカメムシを発見!5月の雨の中、貴重な1頭にすぐ逃げられてしまって以来の10年ぶりの再会だ。少し興奮する。センダンの実が青々と成っていて、木の下から梢を仰ぐようにして探すのだが、意外と小柄なキンカメで見つけにくい。メスだったので卵を産むかもしれない。実といっしょに持ち帰ることにした(写真下)。I氏は2ケ所にマレーズトラップを仕掛けていたが、どうも成果が芳しくない。そこで一張りを場所替えするため万勢山林道へと回ってみた。マレーズトラップは場所しだいで大きく成果に影響する。オオジョロウグモの大きな巣網がかかっている空間など、とても良さそうだと感じたが、なかなか場所決めのコツを掴むのは容易ではない。まさに「虫の道」を探り当てなければならないのである。うーっむ、しかしミカンキンカメムシは収穫!泡盛で乾杯であった。毎晩のことだけど、、、、。

写真上:万勢林道から名蔵、オモト岳を望む
新開 孝

石垣島日記その4 2003/07/26
地元のK氏に教わり、北端の平野へ赴く。氏の話では知人がバンナ岳の尾根でつい先日、マンゲツオオコロギスを捕らえたという。なんともうらやましい!おそらく場所を問わずあちこちに棲息しているのであろうが、とにかく個体数が極めて少ないようだ。と、思いたい。今日はK氏お薦めの平野の川辺でヒメシュモクバエ(写真上)などの撮影をすることにした。この珍奇なハエは、オモト林道沿いの川でかつて1995年に撮影した経験がある。その当時、ハエが発見され記載されてからまだわずか2年目。もちろん私は国内にシュモクバエの1種がいることなど知るはずもなく、最初見たときは驚愕のあまり「もう石垣島に永住しよう!」などと一大決心が頭をよぎったほどであった。私はさっそく翌年1996年の『科学朝日』3月号で、「日本でも見つかった奇虫シュモクバエ」と題して写真記事を掲載した。さて、平野へ行く途中、ずっと手前の星野の川も覗いてみたが川へ降りる道がわからない。付近をうろつくうちに見つけたのが、オキナワツノトンボのメスであった(写真中)。平野へもうじきという吉野の集落を過ぎたあたりで狩猟の人達に会う。猟犬を連れトランシーバーで連絡を取り合っている。なんだろうと不思議に思っていたら、目的地の川辺について答えがわかった。リュウキュウイノシシの狩りだったのだ。獲物の骨が多数ぶらさがっている(写真下)。
新開 孝

石垣島日記その5 2003/07/27
丸1日動けるのは今日が最後。マンゲツオオコロギス探索に気合いを入れたいところだが、どこのブッシュを見ても怪しい場所ばかり。他の昆虫へと目をむけるあいだに偶然、ひょっこり現われてくれることに期待するしかないようだ。そんな中でこのヤエヤマカネタタキ(写真上)にも訪れる先々で出会うが、なかなかすばしこくて思うように撮影できないでいた。ハッとさせられるほどの鮮やかな色模様は、東京のカネタタキと比べるまでもない。しかも体は一回り大きく触角とおしりの尻尾が異様に長く、いかにも亜熱帯の昆虫という風格がある。しかしやっとこの日の朝一番にヤエヤマカネタタキのオスを撮影できた。どういうわけか葉表にじっと佇んでいたのだ。私が近寄っても逃げようとはしない。昼食後、車を走らせていると激しいスコールが来た。ずっと遠方のオモト岳に黒ずんだ低い雲がのしかかっていたが、見る間に私達の方へと押し寄せてきた。ズグォーッ、と滝の中に突っ込んでからは、まるで水中をのろのろ這っているようだ。

写真中:産卵中のミナミトゲヘリカメムシ(バンナ公園)
写真下:アカナガイトトンボ(平野)
新開 孝

石垣島日記その6 2003/07/28
時間の余裕もないので移動は少なくし、バンナ公園を午前中いっぱい探索する。池ではショウジョウトンボとベニトンボ(写真上)がにぎやかになわばり争いをしている。色鮮やかなベニトンボは、九州の薩摩半島で1954年に見つかって以来、そこで定着してずっと国内唯一の産地となっていた。それが1981年にこの島でも発見され定着しているそうだ。その後南西諸島広くに分布を拡大している。私は1995年、屋久島でこのトンボを初めて見て驚いたものだが、熱帯圏から日本に渡来し定着したということは極めて興味深い現象だ。さて、目の前を飛び交うベニトンボはすばやく、なかなか思うように撮影できない。100ミリレンズではトンボはしんどい。が、止まり場に待ち伏せてなんとか撮影。とはいえ、これは時間を喰うばかりだし炎天下の待機というのもキツイ。マンゲツオオコロギス探索の中断が長引いてしまった。午後から川平方面へと回り最後に再びバンナ公園のAゾーン入り口あたりで車を止めた。実が成ったセンダンの並木があったからで、ここでミカンキンカメムシの幼虫多数を発見できた。幼虫の美麗さはキンカメムシのなかでも異色!なんという輝きだろう。レンタカーを戻す前に汗びっしょりの体を何とかしようと、空港近くで海水浴場を探したが見つからず、人気の少ない海岸の公衆便所の水道に行きついた。私はTシャツを脱ぎかけて、その襟首にしがみつく妙な虫に気付いた。なんと!オキナワツノトンボの幼虫である!(写真中)マンゲツオオコロギスはついに見つからなかったが、最後のさいごにとんだ珍客であった。

写真下:川平湾を後ろにセンダンの幹に止まっているのはリュウキュウクマゼミ
新開 孝
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