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2003年:7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月

遊歩道の昆虫 2003/09/02
(写真上)は脱皮を終えたばかりのクワコ幼虫。止まっている葉はヤマグワである。ここは私のマンション裏の駐車場に抜ける小道であり、ほとんど毎日のようにそばをすり抜ける。ここのヤマグワに限らず、空掘川の遊歩道の植え込みにはあちこちにヤマグワが生えており、散歩すればクワコ天国が嫌でも目に入る。植え込みにあるヤマグワはほとんどが鳥の落とした糞に混じった種子の実生である。つまりヤマグワの果実を食べる鳥たち。種子をあちこち散布してもらうヤマグワ。ヤマグワで育つクワコ。そしてクワコを食べる鳥たち。という具合に生物連鎖がなりたっていて、これは見ていて楽しい。クワコはさらにクモや寄生バチ・ハエ、アシナガバチなど様々な天敵に取り囲まれている。ヤマグワを喰う昆虫にはキボシカミキリ、クワカミキリ、クワエダシャクなど、思い付くまま書き出すとキリがないほどだ。また小鳥たちをねらって、たまにだがチョウゲンボウも上空を舞う。もちろん植え込みそのものも生態系に取り込まれる。(写真下)のキバラヘリカメムシ幼虫群は、野生のものよりこうして人工植栽のニシキギなどで見かけることのほうが多い。生物と生物の関わりが複雑になればなるほど、見ていて頼もしい。キバラヘリカメムシにとって天敵はなんだろうか?えっ!?カメムシ嫌いの人間!なるほど、そうかもしれない。
新開 孝

アケビコノハとオオカマキリ 2003/09/03
雑木林でアケビコノハ幼虫を見つけた。目玉模様が大きいのですぐわかる。アケビの葉を食べていた。アケビは庭や公園にもよく植えてあるので、この幼虫はごく身近な芋虫だ。写真の幼虫は成熟した終令幼虫だが、体の色はこの他にうす緑色のタイプも見つかる。毒々しいが手にもっても大丈夫。もうじき葉っぱを綴った中で蛹になり、年内に羽化する。アケビコノハは成虫越冬だ。少し歩くとオオカマキリも見つかった。羽化したばかりだろう、体はまだ柔らかい。オオカマキリはまだまだ幼虫の方が多い。動きもぎこちなく、おどおどしている。今は羽化時期のようだ。オオカマキリの成虫を見かけ始めると、夏も終わりやなー、という気分になる。
新開 孝

緑の博物館 2003/09/05
狭山丘陵に『緑の博物館』がある。広大な雑木林と湿地の谷戸からなる、まさに緑の野外博物館だ。今日はタマムシを撮影するために訪れてみた。奥の斜面林で伐採されたところがある。南向きで陽当たりがよく、2年前そこで多数のタマムシが産卵していた。しかし伐採地は3年経って草丈がかなり伸びている。積まれた材は草に埋もれてしまいタマムシの姿もまったく無い。上空を見渡したが飛翔する姿さえない。伐採地ではサトクダマキモドキのオスがいただけ。斜面林を見下ろす尾根道に出ると私の汗にクロヒカゲが寄って来た。はらってもすぐ戻ってくる(写真上)。足下からはセミヤドリガの白い幼虫を腰につけたヒグラシが飛び出した。タマムシをあきらめて林のなかを歩いていると、ヤマカガシの幼蛇に出会った。しかもヒキガエルをくわえている。ヒキガエルも親指くらいの幼体だ。撮影しようとしたがヤマカガシは獲物を吐き出し、落ち葉の影に隠れてしまった。ハンノキでおびただしい虫喰いあとがある。よく見るとハバチ幼虫のしわざだ。物凄い数だ(写真中)。尻をぶらんと垂れている姿勢には何かわけがありそうだが。クロクサアリの行列を眺めていたら、ワキグロサツマノミダマシをくわえたヒメベッコウバチの一種が近くを歩いている(写真下)。ハチは一旦獲物を置いて飛び去ったがしばらくして戻って来た。私が気になるらしくクモをすぐにはくわえようとしない。ここはこちらも我慢のしどころである。微動だにせず岩となるのである。昆虫というものは動くものには敏感だが、人がいてもじっと動かなければ岩や木と同じ存在に見えるようで、平静に行動する。こういうことを日々繰り返している昆虫写真家は肥る。というのは冗談だが、ようやくハチも安心したのかクモをくわえて運び始めた。新開 孝

野津田公園 2003/09/08
東京都町田市、野津田公園の雑木林を訪れた。この日は『野津田・雑木林の会』のスタッフの方と観察会の下見をすることになっていた。駐車場に車を止めて広場のコブシを見上げると、多数のアカスジキンカメムシ幼虫がかたまっている。さて、観察会は草地の昆虫を中心に見るということなので、林より草地を重点的に歩いた。クズではハゴロモヤドリガ幼虫を背負ったベッコウハゴロモやスケバハゴロモがけっこう見つかり、ヤドリガの真新しい繭も数個ある。広いススキ原では夥しいナンバンギセルが花を咲かせている。こんなに無数のナンバンギセルを一ケ所で見るのは初めてだ。会員の方たちが適度に草刈りしており歩き易い。ススキに止まっていたエビイロカメムシを見たりしているうちに、羽化直後のオオカマキリが見つかった(写真上)。レースのような柔らかい翅がゆっくり伸びていく。これにはスタッフの方も大喜び。たしかにいいタイミングだった。私はさっそく撮影する。撮り終えて脇へ回ると、そこにはクスサンのメス(写真下)が、待ってました、とばかりぶらさがっていた。私はさっそくスタッフの方たちの前でそっとクスサンに息を吹き掛けた。「見ていてください。はねを拡げてくれますよ。」言葉通りの反応に、またもや拍手の歓喜。女性のほうがこういうときはやりがいを感じる。男だと低い声で「おーっ!」とか「はあーっ!」だろうが。それはさておき、クスサンはここ多摩地方では近年、あまり姿を見かけない。日本各地で大量発生が話題になっているのとは逆である。細々と世代交代しているようだが、さて来年あたりはどうであろうか?
新開 孝

クロアゲハとスミナガシ 2003/09/14
昨日の雨から一転、今朝はよく晴れる。今日は町田市、野津田公園での観察会本番。私は昆虫観察の講師として呼ばれていたが、時間を間違えて1時間以上も早く着いてしまった。そこで小野路に回ってみた。アワブキにはスミナガシ幼虫のカーテン巣が多数ある。若い幼虫が多いが4令も少しいた(写真上)。観察会で披露するために4頭採集しておいた。アオバセセリの幼虫は見つからない。






谷戸のあぜ道を歩くと、クロアゲハのメスが地上で何かを吸っている(写真中、下)。そっと寄ってみると獣糞だ。どうも野生の匂い?がする。タヌキの糞だろうか?ここにはキツネもいるし、アナグマもいる。糞の中身など詳しく見ておけばよかった。イヌのかもしれんが。クロアゲハはずいぶんと糞に御執心で、私が這いつくばってカメラを差し向けてもおかまいなく朝食を続ける。クロアゲハのうしろ翅の尾状突起の長さは、南西諸島では短くなる。八重山諸島ではさらに短くほとんど無尾型の個体も混じるようだ。クロアゲハは町中でも見かける普通種だが、こうして目を遠方にまで広げると面白いことがわかる。
新開 孝

ヤマトシジミ 2003/09/15
マンション裏手のムクノキ根元にヒガンバナが花を咲かせた(写真下)。毎年ながら「おっ」としばらく足を止める。このムクノキは8月(8/7〜10)にノコギリカミキリのメスがコーリングしていた木だ。空掘川の遊歩道に出てみると、エノキの枝でヤマトシジミが交尾していた。右の翅がくたびれているのがオス。左のメスは新鮮な個体だが、今朝あたり羽化したのかもしれない。9月のこのころヤマトシジミはかなり数が増える。陽気のいい草原では足元にわんさか舞う姿がある。地味だがこのチョウほど年がら年中、目にするチョウは他にない。食草はこれまた町中から都会に至るまでどこにでも生えるカタバミだ。いつかこのチョウを小学校理科の教材にする試みの記事を何かで見た。モンシロチョウやアゲハが教科書には出てくるが、確かにヤマトシジミの方が余程身近で、かつ入手もし易い。ただ、その試みの気持ちは良くわかるのだが、いかんせんヤマトシジミは小さい。これは子供にとっても観察し難く、色・姿の魅力という点ではやはりしんどいようである。新開 孝

ゴマダラチョウ幼虫 2003/09/19
エノキは町中の何処に行っても生えている。鳥が実を食べ、あちこちで糞とともに種子を播いているからだ。
ときにはアスファルトとコンクリートの隙間から大人の背丈もあるようなものまで、実生で育ったエノキは逞しい。マンション裏の小道にもエノキの小木が何本も生えており、いつもそこにはゴマダラチョウの幼虫が見つかる。今朝は暖かい日射しを受けて、3令幼虫が体をくの字に反らしているのに出会った。この幼虫は時期的にみて年内羽化はないであろうと思う。それにしてもなかなか立派なツノだ。自信たっぷりのようにも見受けるが、そっと息を吹きかけると体をすっと伏せてしまった。しばらくすると、ゆっくり体を反らし始める。
この幼虫が鎮座しているエノキはマンション裏の駐車場に行く小道沿いなので、これからも毎日、気にかけてみよう。
新開 孝

クチバスズメとアケビコノハ 2003/09/23
近くの雑木林でクチバスズメの幼虫を見つけた。クヌギの幹にべったりと止まっていたので目立つことこの上ない(写真上)。本種を含むウンモンスズメガ亜科数種の幼虫たちは、よく似通っているので注意が必要だ。
しかも9月から10月にかけてこれらの幼虫たちが現れる。皆似たものどうしだが、幼虫が食べていた、あるいは止まっていた植物がなんであったかがわかれば、種名の検討はつけ易い。いずれにせよスズメガ科の幼虫たちは大柄なものが多く、身近な環境に棲んでいる種類もかなりある。芋虫遭遇事件でよく騒がれるのもこのグループであることが多いようだ。お尻にツノが生えているので印象もはっきり残るのだろう。クチバスズメの幼虫を手にのせて林を歩いていると、少し見上げた位置に枯れ葉のようなアケビコノハがいた。ピカピカの新鮮個体だ。この成虫が止まっている場所はアケビがあって、9/3に幼虫を見つけた場所とほとんど同じであった。うしろ翅を見たいので軽くつつくとバタバタッとぎこちなく2mほど飛んだ。やはり羽化して間もないのであろう。力強い飛翔はできなかった。
新開 孝

モモスズメとコミスジ 2003/09/29
前回(9/23)、スズメガ類の幼虫がこの時期に多いと書いたばかりだが、今日はモモスズメの立派な幼虫(写真上)。
空掘川沿いのヤマブキの植え込みで見つけたのだが、写真ではちょうど糞をするところである。路面を見るとおびただしい糞がころがっており、ヤマブキも幼虫の回りは刈り込んだように葉がなくなっているので、これまた目立ってしようがない。名前のごとく幼虫はモモをはじめウメ、サクラ、アンズ、カイドウ、などバラ科の樹木につく。立場違えばこれはただの害虫ということになる。モモスズメの体型を見ていると頭は尖ったように先にいくほどすぼまっており、お尻のほうが太くなっている。胸脚も体にぴったりすぼめているので余計に頭部のほうが小さく見える。これは弱点の頭を目立たなくする効果をねらってはいないだろうか?
ガードレールの下から路上にはみだしているクズの葉では、コミスジの幼虫がたくさん見つかった(写真下)。写真ではわかりにくいと思うが、右下の主脈上に下向きに止まっている。クズの葉の先端部分をかじり食べ残しの枯れ葉が何枚もぶら下がるので、この幼虫もいたって見つけ易い。すでに終令となっているが年内羽化は稀で、落ち葉の間などで冬越しすると思う。
新開 孝
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